内部通報制度 その2

前回は企業法務の観点から見た、新しい内部通報制度の有効性について書きました。今回は内部通報制度の本来の機能について考えてみます。

ガバナンス強化による自己浄化

東証が公表しているコーポレートガバナンス・コードの基本原則2ー5では、内部通報制度に関する体制整備の重要性が示されています。違法、不正な行為等があれば、それを経営に伝えられるよう、また、伝えられた情報が客観的に検証され、適切に活用されることが重要であり、取締役会はこうした体制を整備する責務を負っているとしています

社内に存在する不正等は会社自らが発見し、これに対する対策を速やかに実施して改善していく。この体制を構築し、監督していくのが取締役の責務ということです。これが大原則です。

働き方改革法の施行と公益通報への対応拡充

セクハラやパワハラなどの各種ハラスメント、労使問題やコンプライアンスの問題など、内部通報制度が扱う課題は様々です。これらの課題ごとに別々のホットラインを設ける企業も多いと思います。

2019年4月に働き方改革関連法が施行されます。企業が遵守すべきルールが強化され、法令化されるわけですので、当然企業の取り組みに対する通報は増加すると考えられます。また、働き方改革の一環として、厚生労働省ではパワハラの防止策づくりを企業に義務付ける法律を整備するとしています。

さらに、これらの側面支援的な位置づけと思われますが、労働局における相談員の増員や、夜間や土日の相談窓口を新たに設けるといった、相談体制の拡充に取り組むとしています。公益通報への対応もしっかり進めていくということですね。

内部通報制度の実効性向上

こうなってくると、企業としても外部への通報を発生させないよう、内部通報制度を充実させていかなければなりません。外部通報、つまり先ほどの労働局の相談窓口などに相談されると、当然労働基準監督署の調査を受けたり、出頭要請を受けたりと、大変なわけですね。

問題ある企業については企業名を公表するとも言ってます。ハラスメントに真剣に取り組んでいない企業という評価を受け、これを公表されることは、絶対に避けたいところです。そのため、社内で発見して、社内で適切に対処、解決していくというプロセスが、これまで以上に重要になってくるわけです。

社内の問題や不正等を社外に流出させることなく、より早い段階で発見し、適切に解決していくためには、内部通報制度をしっかり浸透させ、機能させていく地道な努力が不可欠なんですね。

コメントを残す