東海旅客鉄道(JR東海)でも輪軸組立作業で問題が

JR東海は9/14、「輪軸組立作業の点検について」を公表しました。JR貨物で発覚したデータ改ざん問題を受け、中部運輸局から緊急点検の指示があり、同社の輪軸組立作業について点検した結果です。JR貨物の問題が出たのが9/10ですから、かなり早い対応でしたね。

JR東海

JR東海は東海地方最大の鉄道会社。東京、名古屋、大阪間を結ぶ日本の交通の大動脈である東海道新幹線のほか、東海道本線、高山本線、中央本線、関西本線、飯田線など名古屋・静岡地区の都市圏輸送を中心とした12線区の在来線を運営する東証プライム上場企業です。

点検結果

在来線車両の車輪と車軸からなる部品「輪軸」の組み立て工程で、測定する圧力が目安値を超えたものが11本あったと発表。目安を超えた場合の点検などのルールも明確に定めていなかったといいます。同社は9/14、対象の10車両の使用を停止しました。東海道新幹線では目安を超えた輪軸はなかったとのこと。

JR東海は「目安を超えた部品も安全は確保されている」としており、データの改ざんなどの不正もないということです。そりゃまぁ、良かったってことなんですが、指示を受けてわずか数日で不正の有無まで精査できるんでしょうかね。対応が早すぎて逆に心配になります。

(追伸)

9/18、「東京メトロのグループ会社が記録書き換え」という情報が・・・この件は別記事で書きます。

JR貨物(その2) 不正はさらに拡大?

JR貨物は9/11、「現在一時的に運行を停止している貨物列車について」を公表しました。同社の3車両所において輪軸組立作業時に不正行為を行っていた件に起因して、新たに確認が必要となった車両が発生したため、貨物列車 248 本の運行を取りやめたということです。

不正の実態

少なくとも不正は10年前から繰り返されていたということで、会社はさらなる検査不正の可能性があるとみて、11日午前から全列車の運行を順次停止しました。安全性を確認した車両については同日夕から運転を再開し始めたものの、不正の有無が確認できない貨車が新たに300両あると判明。

どうも断片的な情報ばかりで、実態が見えてきません。貨物車両の数は数百両といった単位ではないでしょうから、不正が行われた可能性がありそうな数字だけが独り歩きしているような感じ。すべての車両について信頼できる作業データが存在するのかどうかも微妙です。

事案の影響

国内貨物に占める鉄道輸送の割合は数%にとどまるそうですが、その半面、JR貨物は関東から九州など長距離の幹線輸送を担っているだけに、不通となればトラック事業者にも広く影響が及びます。

ドライバー不足の「2024年問題」で輸送網を鉄道に切り替えるモーダルシフトの機運も高まっていましたが、見事に水を差された格好です。9/12、品質確認が遅れていた300両のうち新たに67両の貨車で不正があったという情報も。

JR貨物 貨物列車の組み立てで不正が発覚

日本貨物鉄道(JR貨物)は9/10、「輪軸組立作業における不正行為の発生について」を公表しました。同社の3つの車両所において、500車両を超える車両の輪軸組立作業時に不正行為があったということです。

JR貨物

日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)は、国鉄がJRグループへ移行する際に、全国6つの会社に分割された旅客事業とは異なり、貨物事業だけ全国規模での営業を続けることとなり設立された企業です。今のところ株式上場の目途は立っていません。

不正の概要

この不正は7月に山陽本線新山口駅構内で発生した脱線事故を受け、同社広島車両所で車輪や歯車などの組み立て工程を確認した際、社員からの申告で判明したといいます。通常、車輪や歯車は圧入という作業工程を経て完成しますが、圧入力が基準値を超過した場合、問題ない数値のデータに差し替えて検査を通していました。

申告を受け、同社はほかの車両所についても調査を実施し、前述の広島を含め、輪西(北海道)、川崎(神奈川)の計3ヵ所で類似の不正行為が判明しました。不正が判明した3車両所の作業員はいずれも基準値の扱いについて、数値が下回ると不具合を起こす可能性があるが、若干超過する分には問題はないと認識していたそう。

国土交通省は9/11、鉄道事業法に基づき同社の3車両所を立ち入り検査しました。

岩谷産業 子会社で高圧ガス保安協会の検査に関する不正行為

岩谷産業は9/6、「当社子会社における不正行為の調査結果および再発防止策等について」を公表しました。まったく気付きませんでしたが、7/19に「当社子会社における設備検査成績書に関する不正行為について」が公表されており、これが第一報でした。

岩谷産業

岩谷産業はLPガスの卸・小売販売量が国内トップクラスの企業。卓上カセットコンロで有名ですね。ほかにも産業用ガス、半導体製造装置などの販売、レアメタルの開発なども手掛ける東証プライム上場企業です。

不正の概要

不正が発覚したのは子会社のエーテック株式会社。エーテックが製造した製品を対象にした特定設備検査において、本来であれば高圧ガス保安協会職員が押印する成績書の一部に、エーテック社員が勝手に同職員名義の印章を押捺及び検査成績書に添付されている証明書(ミルシート)に関する不正行為が発覚しました。

ミルシートってのがよく分からないんですが、どうやら協会検査員の印章を偽造して自ら合格の印を押していたということのようです。よくある検査不正は、そのほとんどが検査を受けるに際して違う素材で受けたり、検査データを捏造したりすることで合格しようとするもの。

ところが同社の場合、検査官の印鑑を偽造して合格させてしまうという荒業です。最も悪質といっていい不正ですが、岩谷産業は同社ホームページで公表しただけ。こんなの誰も気付かないでしょ。子会社の不正も酷いけど、親会社の開示に関する姿勢もいかがなものかと思います。

川崎重工業 今度は船舶用エンジンで検査データ改ざん

川崎重工は8/21、「舶用エンジンにおける検査不正について」を公表しました。またまた川崎重工です。先日、「不正のデパート化」という表現でこの会社の状況を書きましたが、間髪入れずに今度は、船舶用エンジンの検査でデータを書き換える不正が出てきました。

船舶用エンジンの検査不正

船舶用エンジンの検査不正は、今年4月に IHI 連結子会社のIHI原動機で燃料消費率の測定データを改ざんしていたという事案が発覚。続いて7月には日立造船子会社でも同様に、船舶用エンジンの燃費データ改ざんという事案が発生していました。

これを受け、国土交通省は船舶用エンジンを対象とした「NOx 放出量確認試験における不正行為の有無等に係る実態調査」という要請を行いました。その要請を受けた調査で、川重でもNOx 放出量確認試験を含む工場試運転における検査不正が確認されたという経緯です。

2000年以降に建造され、船舶に採用された同社製のNOx規制対象エンジン674台を社内調査したところ、商船向け2 ストロークエンジン673台でデータの書き換えが確認されたということです。2 ストロークエンジンに関しては100%改ざんしていたというありさま(問題なかった1件は4 ストロークエンジン)。

(再掲)川崎重工の不正一覧

・ 2017年 川崎重工製の新幹線台車が規格に沿わない製造により亀裂が発生
・ 2022年 子会社の川重冷熱工業の空調システムに使う機械で検査成績の虚偽報告
・ 2024年 取引先との架空取引で裏金を捻出し海上自衛隊の潜水艦乗組員への金品供与
・ 2024年 船舶用2 ストロークエンジンで検査データ改ざん(←今ここ)

国土交通省は22日午前、神戸市にある同社工場への立ち入り調査を始めました。