東亜道路工業 元取締役が株主代表訴訟を提起される 損害賠償約21億円

少し前になりますが、東亜道路工業は3/1、「株主代表訴訟に関するお知らせ」を公表しました。同社株主1名が同社代表取締役等 10 名に対して、損害賠償を請求する株主代表訴訟を提起した旨の訴訟告知書を受領したということです。

東亜道路工業

東亜道路工業は、道路舗装や土木などの施工とアスファルトをはじめとする舗装材料を製造販売する企業。主に舗装工事会社向けに販売するアスファルト乳剤では、国内トップクラスのシェアを有する東証プライム上場企業です。

訴えの概要

アスファルト合材の販売価格決定に係る独占禁止法違反行為に関し、同社に生じた損害(2019 年7月 30 日に公正取引委員会から課徴金納付命令を受けた 21 億 7,070 万円)について、当時、同社の代表取締役および取締役であった者に善管注意義務違反があったという訴え。

2012年から 2015年までの間に取締役等であった被告 10 名に対して、連帯して、最大 21 億 7,070 万円およびこれに対する損害遅延金を同社に賠償するよう求めています。訴訟を提起したのは 株式会社ストラテジックキャピタルです。10名で21億円、こりゃ、たまらんね。取締役にはこういうリスクがあるんです。

ちょっと分かりにくいかもしれないので平たく言うと、「善管注意義務違反があった元取締役10名が、個人のお金で東亜道路の損害を埋め合わせろ」、という訴訟。そのため、現在の法人としての東亜道路はこの訴訟の当事者ではありません。

世紀東急工業 株主代表訴訟 当時の取締役4名に18億円

世紀東急は1/19、同社の株主1名(ファンド)が同社代表取締役等4名に対して、損害賠償を請求する株主代表訴訟を提起した旨の訴訟告知書を、1/12に受領したことを公表しました。

訴訟を提起した者(原告)

インタートラスト トラスティーズ(ケイマン)リミテッド ソールリー ・・・・(長いので省略)とかいうファンドが原告となっています。このファンドの運営会社はストラテジックキャピタルという会社ですね。同社のホームページで世紀東急を訴えたことが確認できます。

このストラテジックキャピタル、直近では京阪神ビルディングに対して1株1,900円でTOBを仕掛けていましたが、1/13にTOBが成立しなかったと公表した、、、あの会社ですね。物言う株主、次の狙いが世紀東急というわけです。

事件の概要

公正取引委員会は、道路舗装用のアスファルト合材の価格を不正に引き上げるカルテルを結んだとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、道路舗装大手8社に過去最高となる総額399億円の課徴金納付を命じました。2019年7月30日のことです。詳細については「アスファルト合材 価格カルテル 課徴金399億円」を参照。

このうち、世紀東急は約28億円の課徴金(課徴金減免制度を適用後)を食らっています。その後、同社は東京地裁に10億円程度の取消訴訟を提起しているようで、これを除いた約18億円が訴えの対象となっています。

訴えの概要やら

当時の同社の代表取締役1名(現任)と取締役3名に対し、このカルテルを行っていたことに関する善管注意義務違反があったとして、先ほどの約18億円を世紀東急に賠償するよう求めている、、、という訴えですね。

カルテルのメンバーには前田道路(課徴金128億円)も入ってましたね。昨年、前田建設に敵対的TOBを仕掛けられ子会社化されちゃいましたが、ここにも物言う株主入ってませんでしたっけ。他人事ではないですよ。いやぁ、取締役は辛いっすね。

関西電力 旧経営陣を提訴

関西電力幹部らの金品受領問題を巡り、関電は岩根前社長ら旧経営陣を相手取り、損害賠償を求めて提訴する方針を固めたと伝えられました。監査役会が設置した取締役責任調査委員会が善管注意義務違反を認定した旧経営陣5人を提訴するようです。

ここまでの流れ

3/30 関電は取締役責任調査委員会を設置しました。「金品等受領した問題に関して、個人株主から提訴請求を受けたこと等を踏まえて、取締役がその職務執行につき善管注意義務違反等により同社に対する損害賠償責任を負うか否か等について、法的な側面から調査・検討を行う。」と公表しています。

その後、4/20に「株主からの提訴請求について」を公表。その中で「4月18日、当社の個人株主5名から、当社代表取締役社長宛て「監査役に対する責任追及訴訟提起請求書」と、当社監査役宛て「取締役に対する責任追及訴訟提起請求書」を受領いたしました」という内容です。

現旧監査役計7名に対しては、金品受取り問題について監査役が取締役会へ報告しなかったことにより、善管注意義務および忠実義務に違反したとして、総額51億円の損害金の支払いを。

現旧取締役計12名に対しては、金品受取り問題に関する役員の修正申告時における追加納税分の補填を決定・実施したこと、過去の経営不振時の役員報酬削減分の補填を決定・実施したこと、金品受取り問題を公表せず、取締役会への報告を怠ったこと等により、総額55億6,120万円の損害金の支払いを求める責任追及の訴えを提起することが請求されています。

監査役の判断

監査役は、株主からの提訴請求書面の受領日(4/18)から60日以内に、取締役の責任追及の訴えの提起をするかどうかを調査し決定しなければなりません。そのためこのタイミングで、取締役責任調査委員会が善管注意義務違反を指摘した旧経営陣5人を提訴する方針を固めたということですね。