期待したい新技術 無線給電

今月上旬の日本経済新聞の記事に「ソフトバンク、基地局から無線給電 イヤホン電池不要に」という記事がありました。無線給電の技術、かなり進化していってるようですね。無線で電気を送る新たなインフラの登場は、多様な機器やサービスの開発につながりそうです。

無線給電とは

無線給電とは、離れた場所にある電気機器や電気自動車(EV)などに、電源コードを用いることなく、ワイヤレスで充電する技術です。ワイヤレス電力伝送(WPT)とも呼ばれます。有効伝送距離が数10cm程度の「近接結合型」と、10m以上離れたデバイスにも電力伝送が可能な「空間伝送型」に分けられるんだそうです。

スマホへのワイヤレス充電なんかは既に実用化されていて、日経の記事のソフトバンクは、後者の空間伝送型ということになりますね。携帯電話の基地局に送電用の機器を設置し、高速通信規格「5G」に使う28ギガヘルツの高周波帯域を使って電気を送るんだそうです。

人体に影響がないよう、まずは1ミリワット程度の小さな電力を半径10メートルほどの範囲に飛ばし、距離は将来、100メートル程度まで伸ばせるんだとか。ん~、とても便利そうな技術なんだけど、なんだか人間が電子レンジの中に居るようで、ちょっと気持ち悪さも。

料金はどうするんかな

伝送範囲の中に入ると給電が始まるわけですが、その給電の料金ってどんなふうに課金するんでしょうね。携帯電話の使用料みたいに、毎月いくら、、、みたいな課金になるんかな。契約のある機器をどう判別するのか、、、とか、まだまだいろいろ分からないことが。

大阪万博の会場では、太陽光や風力で生み出した電気を無線給電で小型ボートに送る技術を実用化するみたいです。とにかく期待値は大、だと思います。

日本製紙 CNF(セルロースナノファイバー)でレアメタル不要 蓄電池

4/27付け日本経済新聞で、「レアメタル不要 蓄電池 新素材CNF、日本製紙が開発着手」という記事が。昨日に続き、将来期待できそうな技術の紹介です。世界的に需給が逼迫するレアメタルを使わない、高性能蓄電池の開発に乗り出すということです。

セルロースナノファイバー(CNF)

CNFについては以前当ブログでも取り上げました。CNFはナノメートルのレベルで細かく切断した木の繊維を、高速で衝突させ一体化させた素材。樹脂などの素材と組み合わせて使うことで、鉄よりも軽く、強度は5倍、耐衝撃性・耐熱性にも優れるといいます。

従来は、樹脂の補強材としての用途で、製品としては構造材のイメージでした。最近よく聞くのは自動車のボディとかですね。これがいきなり蓄電池とは、、、上手くイメージできません。

蓄電池

CNFを積層し、大量の電気をためられるようにするんだとか。原理は一部のEVなどで使う、大量の電気を貯蔵できる蓄電装置(キャパシター)と同じで、急速充放電ができ、電解液も使わないため耐熱性も高まるそうです。

コバルトやリチウムなどのレアメタルが不要で、量産した際の製造コストはリチウムイオン電池よりも抑えられる。さらに、容量は現在主流のリチウムイオン電池の約2.5倍だそうです。夢のような技術ですが、これから開発に着手という段階ですね。

とはいえ、日経の記事によると、「まずは太陽光発電パネルの裏に設置できる大きさ、横1メートル、幅1.6メートル、厚さ1.3ミリメートル、3.2キログラムの製品を開発する」と、かなり具体的な表現が。

この記事を受け、日本製紙株式は同日寄り付きから買われ、一時10.7%高の1,399円まで上昇しました。

スマホの充電 年1回でOK IOWN(アイオン)グローバルフォーラム 80社超参加

NTTが米インテル、ソニーと組んで設立する次世代光通信基盤の国際的な検討や連携の場である「IOWN(アイオン)グローバルフォーラム」について、80社超の企業(うち日本企業は30社超)が参加を検討していると、12/17付け日刊工業新聞が伝えていました。

オールフォトニクス・ネットワーク

NTTはこれまで主にネットワークで使われてきた光技術を、端末やサーバーでの情報処理にも適用する「オールフォトニクス・ネットワーク」の実現を目指しています。今年10月末にそのための業界団体、IOWN(アイオン)グローバルフォーラムの設立を表明していたんですね。このフォーラムへの参加を検討する企業が80社を超えてきたという報道です。

オールフォトニクス・ネットワーク。簡単に言っちゃうと、PCやスマホからネットワークに至るまですべて光化するというもの。当然、PCやスマホの中でも光半導体が情報処理しちゃうんですね。電力効率が100倍、伝送容量が125倍、伝送時の遅延は200分の1になるんだそうです。

「エレクトロニクスからフォトニクスの世界へシフトすることで社会課題を解決」と説明されてましたが、、、いまいちピンときません。

スマホの充電は1年に1回だけ

素人でも分かりやすい例として、スマホの充電が紹介されてました。1回充電したら1年間使えるスマホも夢ではないそうです。他にも、瞬きする間(約0.3秒)に2時間の映画1万本がダウンロードできるとか。。。これは確かに凄いです。

このような革命的な情報処理能力をもたらすオールフォトニクス・ネットワーク。仕様の確定は2024年、商用ベースでの実現は2030年頃を予想しているとのこと。日本の電機産業復活のきっかけにしてもらいたいですね。

エルシオ フレネル型液晶レンズ 小児弱視の治療に

大阪の光学スタートアップ企業のエルシオは、度数を自在に変えられるレンズを開発したそうです。電圧をかけることで、液晶レンズ内の液晶分子を傾けて、光の進み方を変えることで度数を自在に調整できるといいます。小児弱視の治療期間を最大4分の1にできる眼鏡が実現できそうだとのこと。この記事は7/24付け日経産業新聞から。

小児弱視

日本では約7万人、米国では30万人の患者がいるらしく、成長に合わせて度数を変えながら治療に2年かかるとか。数か月ごとの通院や眼鏡の買い替えで30万円程度かかるらしいですが、この新型の眼鏡であれば、常に最適な度数で使い続けることが可能になり、治療期間も大幅に短縮できるんだそうです。

21年度の発売を見込んでいて、年1万個程度を量産した場合の価格は7万円程度を見込んでいます。治療期間も治療費も4分の1程度に抑えることが出来そうですね。

開発者 渋谷義一氏

渋谷氏はTDKで30年間光記録媒体の研究に従事し、その後は液晶レンズの研究を手がけたものの、商品化できなかったそうです。55歳で早期退職して大阪大学に移り、そこで研究が花開き大学内起業でエルシオを創設したとのこと。

会社でやり残した仕事を退職してからも続け、ここまで育て上げたんですね。カッコいいじゃないですか。kuniと同じ世代ですし、会社を退職した後の人生が少し重なって見えるところもあり、この記事になったってところです。いやぁ、素晴らしい。

フレネル型液晶レンズ

冒頭に書いたように、電圧をかけることで液晶分子が傾く仕組みは、まさに液晶テレビの画面と同じです。液晶分子が傾く(寝てたものが立つ)ことで、後ろのライトが見える。そこが明るく見えるのが液晶テレビの原理です。レンズの場合は液晶分子が傾くことで、その部分を通過する光を屈折させているんですね。

可動機構を組み込まなくてもズームが可能になるため、眼鏡以外にも、監視カメラや車載カメラ等の小型化にもつながりそうだとしていました。スマホカメラの小型化にも貢献しそうですね。

記事にはありませんでしたが、老眼鏡なんかも自由度の高いものが出来そうです。手元を見るための老眼鏡が一瞬にして、遠くを見るための眼鏡になるでしょうし、外に出るときはサングラスにもなってくれそうです。この用途にはもう少し価格が下がらないと難しいですかね。