東洋証券に行政処分

この週末金曜日に金融庁は東洋証券に行政処分を行いました。証券取引等監視委員会の処分勧告に対する回答になります。処分の内容は業務停止が含まれていないごく一般的なものでした。

行政処分の概要

当処分内容に関する顧客への説明と適切な対応、外国株式の正確な損益を伝えるための態勢整備、再発防止策の策定と実行、役職員への研修実施、責任の所在の明確化といったことが求められています。この日から1か月間以内に改善報告書を提出することになります。その後半年間に一度の改善進捗状況の報告もセットになっています。

処分内容のレベル感

先ほど一般的と書いたように、セットメニューのような処分内容になっています。東洋証券の実態、それほど酷いものではなかったのかもしれません。うわさで聞いていた話でもそういう感触を得ていましたが、処分勧告までかなり強引に持って行ったような感じがします。

監視委員会の勧告では「会社ぐるみであり、3線の指摘に対して全く聞き入れない経営」といった構図が指摘されていましたが、そうでもなかったのでしょうか。まぁたまにあるんですよね、「経営に報告され一定の対応がとられていたとしても、実態が改善されなかったら何もしなかったと一緒」なんていう強引な検査官の言い分。やっぱり先祖返りしてるようで、検査官の質の問題もありそうです。

この後の展開

処分内容の概要からいくつか取り上げてみましょう。まず、「顧客への説明と適正な対応」というのがあります。適切な対応というのは、伝えた損益が間違っていたこと、および正しく損益を聞かされていたらその売買をしていなかったという顧客に対しては、当該売買をなかったことにしてあげる(原状回復といいます)ことを指しています。

また、「責任の所在明確化」というのは、まぁ言葉通りではあるんですが、社内的に誰の責任を問うかということでして、通常は誰かを社内処分してこれに応えることになります。1か月間の間に金融庁へ改善報告書を提出することになるんですが、この改善報告の中で役員等の降格や減給といった処分内容を報告するとともに、東洋証券自身のプレスリリースでその処分内容を公表することになります。

東洋証券に関する監視委員会の検査結果をここまでトレースしてきました。森長官退任後に金融庁がどう変わっていくのか、検査のやり方やその結果の評価である程度見えてくると思われます。コンプライアンス等の業務にかかわっていない証券マンの皆さんも、当局の考え方や検査の傾向は知っておいた方が良いですよね。良かったらこの後も一緒に見ていきましょう。

初めての証券投資 発注その2

発注編の続きです。

  1. (顧客コードまたは口座番号)顧客名
  2. (銘柄コード)銘柄名
  3. 売り買いの別
  4. 価格
  5. 数量

【取り上げている注文例】

日立 3400円で2,000株の買い注文

4.価格(成行と指値)

成行(なりゆき)と指値(さしね)の2種類をまず覚えましょう。成行は価格を選ばず注文を発注し、取引所に届いた時点で最も安い売り注文の価格で約定する取引です。また、発注する時間が取引時間意外であれば、その後取引が始まった時の価格で約定します。間違いなく買えますが、取引時間中の売り注文が少ないときなど、予想以上に高い価格で約定してしまうことがあるのがデメリットです。

一方で、指値は買い付けたい価格の上限を指定する発注の仕方です。日立の株価が3,390円の時、3,400円(これが指値)で発注するとします。これは「3,400円を上限で買うよ」という意味になります。取引所に注文が届いた時点で最も安い売り注文が3,390円で出ていれば、3,390円で約定します。

また、日立の株価が3,420円の時、同じ注文を出した場合、すぐには買えません。この場合、価格が3,400円になり、他の誰かが3,400円以下の(または成行の)売り注文を出してきて買い注文とぶつかったとき、初めて約定します。つまり、デメリットは場合によっては買えないこともあるということです。

実は他にも「寄付(よりつき)」であるとか「引け(ひけ)」、「逆指値(ぎゃくさしね)」などといった価格の設定方法がありますが、初めての証券投資レベルでは必要ないと思いますので割愛します。

5.数量を間違えないために

その1で書いたように営業員とのコミュニケーション上は「にせんかぶ」を「ふたせんかぶ」と言ってあげるくらいしか思いつかないんですが、ここではもっと重要なことを。

例として使っている注文が買えると約定金額はいくらになるでしょう。3,400×2,000 で680万円になりますね。顧客が実は100万円のお金しか用意できない場合は200株の買い注文を出すはずですが、誤って2,000株で発注してしまうことが少なくないんです。68万円の買い物の予定が、680万円に化けてしまいます。電話でのやり取りといえども契約は成立しています。680万円をの債務者になるわけです。

10月から取引所での売買単位が100株単位に変更されましたが、こういったことも間違いの原因になります。数量の間違いは顧客にとって非常に苦痛を伴いますので気を付けましょう。注文を伝えた後に、「この買い注文の概算約定金額はいくらくらいになるかしら」と必ず聞いてください。「概算金額は680万円ほどです」とおしえてくれますので、そこで間違いに気が付くはずです。

6.番外編

ほとんどの証券会社では、営業員と顧客の通話を録音しています、注文内容が相違した場合もこの録音をもとに正しい注文内容を見付けて是正することになります。皆さんも約定の結果に納得できないことがあった場合は、録音内容を聞かせてほしいと申し出るのが良いかもしれません。

しかし、そんなことにならないように、ここで書いたことに留意していただき、注文を出してくださいね。ここで書いたようなやりとりを証券マンは絶対嫌がりません。しっかりしたお客さんだなと、あり難がられるくらいです。

初めての証券投資 発注その1

発注と受注

今回は実際に証券会社に注文を出す場面での注意点など。顧客(あなた)が証券会社に注文を出すことを発注といいます。これに対して証券会社は注文を受けるわけですので、受注といいます。同じ行為ですが主体が変わることで表現が変わるんですね。ちなみに第三者が同じ事を指して言う場合、受発注などと言います。

発注時の注意事項

証券会社とのやり取りで一番トラブルが多いのが、この発注の場面です。顧客が発注する際に最も重要なのが正確な注文内容を伝えることです。その際、必要な条件を4要素などといいますが、kuniの経験から5要素あげておきます。株式の場合で説明します。

  1. (顧客コードまたは口座番号)顧客名
  2. (銘柄コード)銘柄名
  3. 売り買いの別
  4. 価格
  5. 数量

これを必ず正確に伝えます。例えば山田太郎さんが日立の株を3,400円で1,000株買いたい場合の伝え方は、「山田太郎の口座で日立を3,400円で2,000株の買い」という具合です。証券マンは必ず同じ注文内容を復唱してきますので、証券マンが認識した注文内容に間違いがないか、良く確かめてください。

「山田太郎さんで日立を3,400円で1,000株の買いでよろしいでしょうか」と聞いてきます。2,000株のところを1,000株と間違って復唱しています。「ふたせんかぶだよ」と訂正します。「2000」と「1000」はよく間違いが起こるので、「にせんかぶ」より「ふたせんかぶ」の方が確実に伝わりますね。

1.顧客名を確実に伝えるために

証券会社では同姓同名の顧客をたくさん抱えています。他にも、漢字は違うけど同じ読みの人もいますし、音だけでは聞き違えてしまうこともよくあります。こうしたトラブルを避けるため、顧客コードまたは口座番号(同じ7桁程度の数字ですが、証券会社によって呼び方が違うようです)を一緒に伝えるのが一番正確に伝わります。

2.銘柄を間違えられないために

これも昔から変わらず多いミスですが、銘柄が間違って伝わらないような工夫も必要です。やはり銘柄コードを一緒に伝えましょう。日本精工と日本製鋼所といった具合に非常に良く似た銘柄名や、略称で呼ぶとまったく音が同じ銘柄が存在します。

先ほどの例でいうと「銘柄コード6501の日立」と言ってあげると間違えることはないでしょう。銘柄コードは四季報や会社情報で調べることが可能です。※1

3.売りと買いを間違えられないために

顧客は相場観を駆使していろいろと考えた末に、買うことを決断して、発注しようとしています。しかし、証券マンはその辺りの事情は知りません。

顧客にとっては買いに決まってるだろうという場面でも、売りで伝わってしまうことがあるんです。意外に多いんですよ。もちろん保有していない銘柄を買おうとして売られることはありません(ない株は売れませんから)けどね。

工夫の仕方としては、「山田太郎の口座で買い注文。日立を3,400円で2,000株の買い」と伝えることで、売り買いの区別がはっきりします。

※1 四季報は東洋経済社が年に4回発行する季刊誌です、デジタル版もあります。会社情報は日本経済新聞社が提供していますが、今では冊子はなくなってデジタル版のみになってるようです。

四季報久し振りに見てみたら2,060円になってました。株式市場は高値の半分やっと越えた程度ですが、四季報はあの当時の2倍の値段になってます。長くなってきたので続きはその2で。

初めての証券投資 受渡

受渡(うけわたし)

口座開設までは何も怖がることないですよ、というお話でした。ここからは証券取引において気を付けておきたい事を書いていきます。命の次に大事なお金に関わる取引(契約)ですから、少々順番は違うかもしれませんが、「受渡」から。

受渡とは買い付けた有価証券の買付代金を証券会社に支払うこと、または逆に売り付けた有価証券の売却代金を受け取ることを言います。債券の利金や投資信託の分配金等を受け取るときにも使います。実際に会話やネットで表示されるときは、「受渡日」や「受渡金額」といった言葉で使用されます。

約定(やくじょう)と受渡日(うけわたしび)

顧客にとって買いの場合も売りの場合も基本的に一緒ですので、買いの場合で説明します。有価証券、例えば株式の買い注文を出し、注文が成立すると、このことを「約定」と言います。その日のことを「約定日」、その金額を「約定金額」というふうに使います。

約定が成立したら、次は買付代金を支払わなければなりません。その買い付け代金の支払期限日が受渡日です。お金の受け渡しをする日ですね。取引所に上場している商品(株式やETFなど)はT+3と言って、約定日から起算して4営業日目が受渡日になります。

10月15日(月)に約定したとすると、①15日、②16日、③17日、④18日、つまり18日(木)が受渡日になります。T+3という言い方は、約定日を①と考えて、その後ろの3営業日目という意味です。

10月12日(金)に約定したとすると、①12日、13日(土)、14日(日)、②15日、③16日、④17日、となり、17日(水)が受渡日になります。4営業日目というのは間に土日、祝祭日が入ると、これを計算に入れないということですね。ご理解いただけましたでしょうか。

なお、2019年7月16日(火)の約定分から、この受渡日のルールがT+3からT+2に変更されることが決まっています。約定日から起算して3営業日目の支払いに変更されるということです。

また、取引所に上場していない商品や、上場商品であってもその商品を募集や売り出しにより買い付ける場合(市場で買い付けるのではない場合)などは、それぞれに受渡日が別途設定されますので、営業員等にしっかり確認する必要があります。

約定金額と受渡金額

約定金額は、買付単価×数量の計算結果の金額です。例えば、500円の株式を1000株注文して約定すると、約定金額は500,000円です。一方で、受渡金額は約定金額に証券会社に支払う委託手数料が上乗せされた金額になります。委託手数料は証券会社ごとに決められており、同じ証券会社においても約定金額によって変わります。金額が大きくなるほど手数料率が低く設定されているんですね。

例えば手数料率が1%であれば、先ほどの計算では500,000円×0.01で5,000円になりますので、受渡金額は505,000円になります。一方で、有価証券の売却の場合は、約定金額から委託手数料が差し引かれる(495,000円)ほか、税金も引かれることになります。

今回は、証券会社との間で行うお金のやり取りに関する知識でした。次回は実際に注文を出すときの注意点など、書く予定です。

株式市場 急落? 調整?

10日の米国株式市場でダウ工業株30種平均が831ドル安、続く11日も545ドル安で、2日間合計で下げ幅は1376ドルになりました。その手前でも若干下げてますので、高値からは約2000ドル下げたことになります。率にして7.4%の下落です。

メディアと下落のサイン

新聞等ではとにかく下げを強調したいため、今年何番目の下げ幅みたいな書き方をしますが、下落率で見ればこの程度です。また、NYダウが10000ドルの時と26000ドルの今では、下げ幅の831ドルの意味合いが全然違います。前者は8.3%の下落ですが、後者(今回)では3.2%でしかありません。メディアはとにかくこんな風に誇張しますので、みなさん煽られないように気を付けてくださいね。

日経平均株価はというと、10月2日に24,271円の高値を付けたわけですが、9月29日付けの日本経済新聞では日本株に超強気の記事を書いてました。「日本株、稼ぐ力に再評価」「日経平均27年ぶり高値圏、割安感と安定感、海外マネー呼ぶ」。面白いもので、こんなふうにメディアがその気になったときは、だいたい天井を打つんです。

そしてもう一つ。取引所が新たな商品や制度を開始すると天井、というのも何度も経験してきました。ちなみに、この10月1日からは、全銘柄の売買単位が100株に変更されました。

健全な調整

目の前で相場が大きく下げるのを見せられると、その下げが永遠に続くかのような怖さを感じるものですが、下げたものはまた上がりますから。今回の下げの原因については色々と言われてますが、一義的にはFRBによる利上げだと思います。まだこの後も利上げを継続すると言ってます。

景気の拡大、株式市場の高騰に対して、利上げでそのスピード等を調整する目的でやっているわけですから、調整局面を迎えることはFRBの意図したとおりです。そうした調整がありながらも、まだまだ拡大、上昇するだろうとの読みがあるからこそ、この後も利上げするぞ、と言ってるわけです。過去の暴落場面はいずれも金利の引き上げを止めてからなんですね。

kuniとしてはとても健全な調整が入ったんじゃないかと思っています。米中貿易戦争も気になるところではありますけど、トランプは中間選挙明けから対中姿勢を軟化させてくるんじゃないかと思ってるんですね。北朝鮮との時もそう、一時はマジで戦争始めるんじゃないかと、みんな心配しましたよね。けど、実は強かに、かつ計画的に実利を取るんですよ、この男。

今年2月にもよく似た下げ方がありました。この時は、日経平均は24,000円から3,500円程度下げて切り返しています。下落率は15%弱ですね。今回はその時よりも少し浅めの押しで切り返してくれると面白くなるんですけどね。

どうでしょう、中間選挙で議席減らしちゃった、って辺りが底になるんじゃないかとも思っています。そうそう、今回の下げの第2の原因は、Taylor Swift さんのつぶやきだったのかもしれません。