帝人 アラミド繊維出荷制限 オランダの工場火災で

日本経済新聞は2/4、「アラミド繊維、帝人が出荷制限 工場火災で復旧長引く」と報じました。ちなみに、帝人はこのことを開示していないようです。そもそも、2022年12月にアラミド繊維の原料を作るオランダの工場で火災が発生したこと自体も開示していません。なんだこれ。

アラミド繊維

同社のアラミド繊維は自動車タイヤの補強材などに使う製品だそう。高い耐熱性と切断・摩耗などに強い性質を持つ合成繊維で、石綿の代わりや、消防士用の防火衣、警察などが着用する防弾ベスト、船体の補強や縄、航空産業などでも採用されるそうです。

開示の姿勢

冒頭でも書いたように、帝人では出荷を制限していることも、昨年12月にオランダで工場火災が発生していたことも開示していません。なんででしょうね。工場火災に関する開示って、「工場のご近所さんにご迷惑を掛けました」というご挨拶くらいにしか考えていないのでは。

調べてみると、同社オランダのアラミド繊維を生産する工場では、一昨年の12月にも電源設備の不具合による停電が原因で、工場の稼働が止まったことがあったようです。この時も後になって、「操業度が悪化し、(営業利益ベースで)数十億円規模の減益要因になる」と発表しています。

工場の操業停止で業績に大きな影響が出ることを昨年経験していながら、なぜ今回もその可能性がある事実を公表しないのか。同社の決算発表は2/8が予定されているようですが、その席でまた減益となった結果だけを公表するんですかね。この開示に対する姿勢はマズいでしょ。同社の株価は2年前の半分近くに下がっています。ここからまた売られるんですかね。

東京ボード工業 焼損事故で工場休止に

少し前になりますが、東京ボード工業は1/13、「チップ乾燥設備故障による佐倉工場休止について」を公表しました。同社佐倉工場のチップ乾燥設備において、低温発火と思われる内部焼損が発生したため、昨年12月下旬から工場を休止しているということです。

東京ボード工業

東京ボード工業は、日本で初めて木質廃棄物直接処理によるパーティクルボードを製造したボード業界のパイオニアなんだそう。マンションの床下地材のほか、体育館などの文教施設、家具や木工などにも使われるパーティクルボードが主力製品です。

原材料となる木材チップは、外部からほとんど購入することなく、受け入れた木質廃棄物を自社で加工して調達できることが強みといいます。なかなか「SDGs」な会社ですね。

焼損事故

チップ乾燥設備において、昨年12月24日から断続的に、温度異常が発生したため点検・整備を行ったところ、内部焼損が生じていたとのこと。幸い大規模な火災事故とはならなかったわけですが、現時点でも操業再開できてないみたいです。

1/10に乾燥設備機械会社のスーパーバイザーが来日し、原因追及をしており、早急な復旧を目指しているということなんですが、部品の調達等に期間を要することが判明し、操業再開の目途が立たないということです。

乾燥設備機械に外国製品を使用しているため、部品等の調達に時間がかかる。これって、あらかじめ想定できることですよね。大規模な火災事故とはなりませんでしたが、同工場の操業(つまり同社の業績)に与えるインパクトはメチャ大きいです。万が一の時に対する備え、、、これもガバナンスです。

大紀アルミニウム工業所 工場火災(その2)

大紀アルミニウム工業所は1/5、「亀山工場における火災発生について(第2報)」を公表しました。といっても、適時開示は行われず、相変わらず同社ホームページでのお知らせでしかないんですが。おまけにこのPDFファイル、平成17年(2005年)に利用したファイルの使い回しだったりします。

第2報の概要

人的被害については、負傷者6名(従業員2名、業者4名)としており、そのうち3名が今現在も入院中だとしています。物的被害については、溶解工場建屋および設備の一部を損傷とだけ。事故原因については、「第一溶解工場での設備入れ替え工事中、作業の過程でガス切断機の炎がアルミ粉じんに引火したことによるもの」と説明されています。

製品の出荷は年末年始休業明け1/5より、工場の操業についても関係省庁より稼働の許可を得て、1/5より再開しているということです。第2報で報告されているのはこんなところ。

1回目の火災は

しかしなぜ、しっかりとした開示を行わないんでしょうね。2019年7月の火災事故はちゃんと適時開示していたのに。そして、上記火災の前日の12/28にも、別の建物でアルミの粉じんにバーナーの火が引火し、約1,700平方メートルを焼く火災が発生していたといいうことについては、未だにひた隠しです。

出来る限り事故の情報が拡散せず、なんとか見過ごしていただきたい。早く忘れてほしい。経営はそんなふうに考えてるんでしょうかね。そんなんじゃ、社内において再発防止を徹底するなんてできませんよ。

大紀アルミニウム工業所 二日連続で工場火災

12/29、大紀アルミニウム工業所の亀山工場で火災事故が発生しました。初報段階では、男性作業員6人が救急搬送されたとのこと。全員やけどを負っており、うち2人が重傷と伝えられました。三重県亀山市の工場、シャープの液晶の亀山モデルで有名な街ですね。

火災の概要

12/29といいますから、工場は年末年始で休業しており、保守点検の作業中に溶解工場から出火したということです。この亀山工場内では、前日の12/28にも、別の建物でアルミの粉じんにバーナーの火が引火し、約1,700平方メートルを焼く火災が発生していたんだそうです。

前日に発生した火災で、本来なら「気を引き締めて」と、全社的に通常以上に警戒して作業に当たるところかと思いますが、翌日にいきなり火災事故。それも6人が救急搬送されるような重大な事故です。これって経営陣の責任、重そうですね。

しかし開示はなし

二日続けての火災事故であり、人的被害もあったにもかかわらず、同社では適時開示を行っていません。同社ホームページでサラリと報告しているだけ。「人的被害 負傷者6名(うち重症1名)、病院に搬送」とだけ記されています。かなり重大な事故であるだけに、この同社の対応は理解に苦しみます。

ある報道では、同社管理部の担当者が「28日のぼやを受けて注意喚起していた中、あってはいけないこと。重く受け止めている」と話したと伝えていました。が、しかし、開示の姿勢を見る限り、経営陣が重く受け止めているとは思えません。

ちなみに、同社では2019年7月にも、結城工場(茨城県結城市)で材料乾燥の前処理設備で火災事故が発生しています。

三幸製菓 火災事故に関する調査結果

今年2月、当ブログでも取り上げましたが、新潟県村上市にある「三幸製菓」の荒川工場で火災が発生し、従業員6人が死亡するという事故が起きてしまいました。同社が設置した事故調査委員会が報告書をまとめ、12/15付けで公表されています。

火災事故調査報告書

調査結果、ずいぶん長い時間がかかりましたね。発生が2月ですから、約10ヶ月です。と、思いきや、調査報告書の日付は11/11となっています。公表されたのは「要約版」となっていますから、委員会が提出した報告書を会社側が要約したということでしょうが、1ヶ月以上遅れたのは何故?

火災の原因については、せんべいを乾燥する機械のなかにたまった菓子のくずが、その下にあった焼き釜の熱によって発火したためとしています。また、火災のときに防火扉から避難する方法が十分に周知されていなかったことや、火災報知器の誤報が過去にたびたびあり、警報音を聞いて避難した人がほとんどいなかったことなどを指摘しています。

防火やいざという場合の避難の訓練といった、どこの会社でもやっている態勢整備が行われてこなかったこと。これにより6名の命を奪う事故になったわけですね。皆さんの会社でもこうした訓練が行われていると思いますが、いざという際のことを想定して、実効性のある訓練になってるでしょうか?

訓練の良い教材に

報告書では、「火災事故発見後の在館者の避難状況」や、「避難及び被害回避につながった行動及び状況」という説明があり、かなり生々しい記述となっています。皆さんの会社で行う訓練等に際しての良い教訓や教材になりそうです。非常に痛ましい事故でしたが、このことを少しでも皆さんの会社でも活かしていければ、、、と思います。