東レ 樹脂製品の米UL認証取り消し

今年1/31、樹脂製品における第三者認証登録に関する不適切行為を公表していた東レ。 3/28には「当社樹脂製品における第三者認証登録の一部取り消しについて」を公表しました。認証登録取消日は2022年3月31日だそうです。

おさらい

ULが実施する認証試験で指定されたグレードと異なる、試験合格用のサンプルを作成し、提出していたこと。また、認証登録された品種の一部で、登録時の組成と異なるものを製造・販売していたことが発覚しました。これを受けて有識者調査委員会を設置して調査を開始しています。

認証取り消し

UL 認証登録が取消となった対象製品は、ABS 樹脂「トヨラック®」 45 品種、PLA 樹脂「エコディア®」 1 品種、LCP 樹脂「シベラス®」 6 品種 の合計52品種だそうです。家電や車部品などに使う樹脂製品で、燃えにくさを示す「難燃性」の認証に関する不正行為がありました。

東レの適時開示では詳細はここまでです。が、しかし、日本経済新聞の報道によると、東レが販売する樹脂製品約1600品種のうち412品種がUL認証を受けていたということです。で、117品種で不正行為があり、うち52品種が認証取り消しとなります。

さらに日経では、取り消しの理由は52品種のうち40品種が「認証登録手続きにおける不備」で、12品種が「難燃性能の不足」だった、としています。

東レは今のところ、不正があった樹脂製品に関して、出荷先から事故などの報告はないと説明しているんですが、これだけの数で不正を行っていたとすると、「それ以外は問題なしです」という調査結果が出てきてもなかなか信用できませんね。

東レ UL に対する 認証不正

東レは1/31、「当社樹脂製品における第三者認証登録に関する不適切行為および有識者調査委員会の設置について」を公表しました。 Underwriters Laboratories の認証登録に関して、不正を行っていたというものです。

UL認証不正

当ブログでもこれまでにUL認証不正を取り上げてきました。東洋紡や京セラ、三菱電機など、我が国の超優良企業が認証不正を働いてきました。そして今回は東レです。

東レ

合成繊維の国内最大手で、炭素繊維は世界トップシェア。衣料用・産業用の各種繊維のほか、炭素繊維、合成樹脂、IT関連材料、医薬品まで幅広く展開する東証1部上場企業です。今さらやねぇ。知らん人いないと思いますが。

認証不正の概要

ULが定めている、樹脂の難燃性能を示すUL94の規格に関し、一部の品種でULが実施する認証試験で指定されたグレードと異なる、試験合格用のサンプルを作成し、提出していたことが発覚しました。

また、認証登録された品種の一部で、登録時の組成と異なるものを製造・販売していました。家電製品や自動車などに使われている樹脂製品らしいです。

昨年、上記のような企業数社がUL認証不正を公表してきたにもかかわらず、東レが自社における認証不正を認識したのは、昨年12月下旬のことだといいます。この時行った社内アンケートで明らかになったと。後手に回りましたね。

同日付で有識者調査委員会の設置を決定し、さらなる徹底的な調査と原因究明を実施。併せて、東レグループ全体にわたるUL認証に関する調査も行うとしています。ほぉ、この事件を受けて、株価は10%以上下落しましたね。

UL認証とは 東洋紡、京セラの安全認証不正取得・・・Underwriters Laboratories

東洋紡に続き京セラでも、米国の安全認証の不正取得が発覚しました。当ブログでもこれらを取り上げてきましたが、この米国のUL認証なるもの。いまいちピンときません。せっかく東洋紡、京セラの記事を書きましたので、UL認証についても素人なりに書いてみます。

Underwriters Laboratories

Underwriters Laboratoriesは米国イリノイ州を本拠とする、試験、検査、認証を行う企業です。120年間にわたり発展してきた、世界的な第三者安全科学機関。政府機関かとも思いましたが、そうではないらしいです。行政上の権限も持ちませんし、政府当局の支配も受けません。

製造者がULから試験や安全認証を自社製品に受けるのは、あくまで任意。ULの認証を受けてULマークを使用しなければならない、と明記した国としての法律もないそうです。

なぜ必要

米国では多くの自治体がその地域内で製品を販売する前に、認可されている試験所による製品の検査を求めています。多くの企業が自社製品にUL認証を取得する目的は、現地で製品が拒絶される可能性を最小限にするためだそうです。

米国最古の安全規格開発機関として対象を拡大してきており、今では自治体などから公的な認証として扱われているようです。任意の認証制度とはいうものの、米国向けに輸出される原料や製品を製造販売する企業はULの認可を不可欠のものと考えているようですね。

米国向けの輸出には不可欠となっている安全認証。これを不正に取得していたのが東洋紡、京セラです。それもかなり昔から。日本が大きく成長したのは米国への輸出を伸ばした時代でした。その当時に不正取得していたのはこの2社だけ、と考える方が無理があるように思います。

京セラ 安全認証不正取得(その2)

東洋紡に続いて、ケミカル製品6製品の難燃性および絶縁性について、認証試験に実際の製品とは異なるサンプルを提出して認証を受けていた京セラ。原因を究明するため、特別調査委員会を設置したのが1/8でした。すでに調査期間は3か月になろうとしています。

対象のケミカル製品

1月に取り上げた際は、詳細まで書けませんでしたのでここらで追記を。難燃性UL94対象製品(5製品)というのが、注形レジン、プリミックス成形材料、フェノール樹脂材料、電機用樹脂ボード、半導体封止材料だそうです。また、絶縁性UL1446対象製品(1製品)というのが、ワニス。と説明されていました。

これらの製品を供給している顧客の数は、発表時点で約160社と認識しているとのこと。対応として、本事案の判明後直ちに当該製品に関わる新規の受注活動を停止しました。とあります。つまり、これら製品の供給(出荷)が止まったということですね。

半導体封止材料

6製品の中に「半導体封止材料」なんてのがあります。上記の開示がされた1月初旬にはあまり話題になっていなかったと思いますが、その後米国での寒波やルネサスエレクトロニクスの主力工場が火災に。車載半導体の不足で自動車生産が止まってしまうという事態になりました。

京セラの決算説明資料の中に、「半導体市場での生産活動の拡大に伴い、半導体封止材料の需要が増加し、京セラケミカルの売上高も増加しました。」などというくだりがありました。ひょっとするとこの事件も半導体不足の一因になってるかもしれませんね。残念ながら同社製品のシェアとかは分かりませんでしたが。