独シーメンスの岩石蓄電 22年にも商用化

初めて聞きました。岩石蓄電だそうです。再生可能エネルギーで発電した電力を使い、岩石を熱してエネルギーをためる蓄電システムです。太陽光や風力といった再生可能エネルギーには、曇りの日や風が止んでしまうと電力の供給ができなくなるという弱点があります。その弱点を克服するために蓄電池が必要になるということですね。

岩石蓄電

今回、独シーメンスが商用化予定の岩石蓄電、容器の中に火山岩が約1000トン詰まっています。風力発電で得た電力でヒーターとファンを稼働させて熱風を作り出し、容器に送り込みます。すると内部の岩石が熱を吸収、保存するというわけです。

一方、蓄積した熱エネルギーから電力を取り出すときは、岩石の熱気で水蒸気を作り、タービンを回して発電するとのこと。

発電量が不安定な太陽光発電や風力発電の設備にこの蓄電池を併設して、発電量の変動を均す(平均する)わけです。現在この役割で最も多く使われているのはリチウムイオン電池だそうですが、蓄電容量が少なく、価格競争力が弱い。その弱点を克服するのがこの岩石蓄電ということです。

この蓄電システムに使われるのは安価な岩石(火山岩なので火山国日本ではそこらにタダで転がってます)、ヒーターやファン、タービンなどの機材はごくありふれた量産品でOK。そのため、システム全体のコストはリチウムイオン電池の10分の1だそうです。おまけに長い利用実績を持つ機器の組み合わせのため、信頼性も高く、耐用年数も長い。良いことだらけです。

もう一回発電するのかぁ

なるほど、安上がりでたしかに実用的ですね。再生可能エネルギーの弱点を克服するための当面の技術かもしれません。が、しかし熱から電気を取り出すのに、もう一度タービン回して発電するというのが何とももどかしい。このプロセスこそ熱電発電素子の出番なんですよね。そう、三桜工業の持つ技術です。その後研究の成果が聞こえてこないけど、どうなってるんでしょうね。

VPP バーチャル・パワー・プラント(仮想発電所)

VPP バーチャル・パワー・プラント とは「分散する再生可能エネルギーや蓄電システム等を一括制御し、一つの発電所のように機能させる仕組み(仮想発電所)」のことです。

7/5付け日本経済新聞に「英蘭シェル、日本で電力小売り」という記事が掲載されました。石油世界大手の英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルが日本の電力小売市場に参入し、販売を始めたとのこと。蓄電池を活用した再生可能エネルギーの需給を制御するシステムの提供も検討すると伝えています。

注目すべきはゾンネン

なんとなくぼんやりしたタイトルになっていますが、この記事で注目すべきはゾンネンというドイツの会社です。2010年に設立された蓄電システムベンチャーですが、2015年からは電力の小売り事業を開始し、クラウド・コミュニティモデルであるゾンネンコミュニティを展開しています。

このゾンネンコミュニティでは、コミュニティメンバーが太陽光発電と蓄電システムを自宅に設置します。これらの世帯をネットワーク化し、メンバー同士で過剰な電力を持つ世帯から、電力が不足している世帯へ融通するというもの。既にドイツ全土に展開しているようです。まさに、VPPの先駆者と言っていい存在です。

毎月20ユーロ(約2,400円)程度の手数料で、従来の電力会社へ支払うべき電気代が不要になっているらしく、かつ、約200万円の初期投資についても、およそ10年間で回収できるとのこと。ちなみにこの設備のライフタイム(耐用期間)は20年だそうです。

ロイヤル・ダッチ・シェルの100%子会社に

と、ここまで日経の記事を無視した展開になってますが、やっとシェルの出番です。今年2月、ロイヤル・ダッチ・シェルがこの蓄電システムベンチャー企業というか、VPP企業のゾンネンを買収し、100%子会社にすることで合意したと発表されました。その後の報道を聞かないんですが、たぶん既に買収については実行済みだと思われます。

そのため、日経の記事ではシェルの話になっているんですが、彼らの日本戦略はどう考えても、ゾンネンが得意とするVPPではないかと。FIT(再生可能エネルギーにより発電された電気を国が定めた買取価格で電気事業者が買い取ることを義務付けた制度)による買取期間満了を迎える日本に対して、まさにVPP本家が殴り込みをかけてきたということです。

住宅用太陽光発電と家庭用蓄電システムを活用した新たなビジネスモデル。ゾンネンの参入を契機に、日本でも一気にVPPが加速しそうな感じです。

ESG 「RE100」 「TCFD」 「SBT」(その2)

一昨日の続きです。一日遅れました。すみません。

SBT(Science Based Target)

世界の平均気温の上昇を「2度未満」に抑えるために、企業に対して科学的な知見と整合した削減目標を設定するよう求めるイニシアティブで、2015年にWWFおよびCDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)が共同で設立しています。日本語だと、「科学的根拠に基づく目標」と呼ばれているようです。

科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標の設定を促すことを目的としており、2019年3月時点で、世界191社が加盟し目標が認定されていて、日本からは第一三共、小松製作所、コニカミノルタ、リコー、ソニーなど39社が入っているようです。また、同時点で350社が2年以内の目標設定を表明しているんだそうです。この中には日本企業は34社だそうです。

やはり、上記の目標が認定までされている日本企業の中に、金融は含まれてませんね。目標設定を表明している34社の中には、損保3社が入ってました。

SBTに加盟することで、イノベーションの促進、規制の不確実性の軽減、投資家からの信用・信頼を高める、収益力と競争力を改善する、などの効果が期待できる。と説明されていました。

まとめ

RE100、TCFD、SBT、について見てきました。このうち、RE100とSBTについては賛同する企業が参加するイニシアティブということでしたが、他にもEP100だとか、BELOW50、EV100などなど、たくさん出てきます。「脱炭素」への取り組みなど、環境問題を重視し、世界中の企業が取り組んでいくことは非常に良いことだと思いますが、イニシアティブの乱立なんとかならんもんですかね。

ここまで書いてきたこと、書ききれなかったことも含めて、環境省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」というページに詳細が整理されています。ご興味ありましたらご覧ください。

ESG 「RE100」 「TCFD」 「SBT」

エネルギー源を石油や石炭などの火力から、太陽光や風力へと転換する、いわゆるエネルギーシフトが世界中で急速に進んでいます。金融機関は二酸化炭素を大量に排出する石炭火力発電には資金を出さなくなってきましたし、商社などもこれに追随する動きを見せています。日本でも「脱炭素」への取り組みが経営の重要要素になってきてしまいました。今日はこの動きを理解していくための3つの用語について、整理しておきます。

RE100(Renewable Energy 100%)

RE100は、The Climate GroupとCDPによって運営される、企業の自然エネルギー100%を推進する国際ビジネスイニシアティブです。企業による自然エネルギー100%宣言を可視化するともに、自然エネの普及・促進を求めるもので、世界の影響力のある大企業が参加しています。

2014年に発足したRE100には、2019年3月時点で、世界の177社が参加しています。日本企業ではソニー、リコー、富士通、コニカミノルタといった企業17社が名を連ねていました。ちょっと意外なところでは、コープさっぽろ、城南信用金庫、ワタミなんて言う名前もあります。残念ながら、金融37社の中には、城南信用金庫と芙蓉総合リースのみ。メガバンクや地銀等の名前はありません。

RE100プロジェクトに参加するには、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うことを宣言しなければなりません。多くの現参加企業は、合わせて100%達成の年を同時に宣言しています。100%達成は、企業単位で達成することが要求され、世界各地に事業所等がある企業は、その全てで100%を達成しなければなりません。また、ここで定義される「再生可能エネルギー」とは、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスによる発電を指していて、原子力発電は含まれないようです。

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

気候関連財務情報開示タスクフォース、だそうです。G20財務大臣・中央銀行総裁会議の指示により、金融安定理事会(FSB)が設置したTCFDの提言が2017年6月に公表されたことをきっかけに、気候変動に関する企業の取組について、投資家等からの情報開示の要請が高まっているということです。

気候変動を含むESGを、リスク管理の強化や新商品の開発といった企業競争のために、どのように活用できるかという視点で、長期戦略の問題として取り組んで行こう。という世界的な取り組みらしいです。つまりこちらは、企業が加盟するとかではなく、賛同して取り組み、投資家に開示する、といった文脈で使われることが多そうです。FSBが中心になっているということもあり、金融機関はこちらへの取り組みがメインになっている模様です。

長くなりました。SBTについては明日、その2として書きますね。