監査役 監査委員 監査等委員

なんでこんな名称になったのか・・・。日本の企業の経営層に関する記事では、この3種類の名称が出てきます。いずれも取締役等が適切に会社運営を行っているかどうかを監査するという機能は同じです。ではどのように違うのか、まずは大雑把に理解しておきましょう。

3種類の機関設計

現在の日本の上場企業には、監査役会設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社の3種類が存在します。そしてその会の構成メンバーがそれぞれ、監査役、監査委員、監査等委員ということになるわけです。

監査役会設置会社・・・・・監査役会・・・・・監査役
指名委員会等設置会社・・・監査委員会・・・・監査委員
監査等委員会設置会社・・・監査等委員会・・・監査等委員

こんな感じです。指名委員会等設置会社の場合は、他に「指名委員会」、「報酬委員会」も設けられていて、3つある委員会のうちの一つという位置付けになります。こうした3種類の機関設計があるため、企業によってその呼び名が違ってくるわけですね。

最も大きな違い

監査役、監査委員、監査等委員の責務や権限など、会社法では細かく定められていて違いはあるんですが、実際の業務レベルではほとんど同じと考えていいと思います。

最も大きな違いは、監査委員会と監査等委員会はいずれも取締役会の中に設置されるということです。そのため、監査委員と監査等委員は取締役なんですね。取締役としての議決権も持ちます。監査役だけは取締役ではなく、議決権はありません。

監査役設置会社が監査等委員会設置会社に移行するというケースがよく見られます。今月、グリーという会社が移行するようです。移行の目的を読むと違いがイメージしやすいかもしれません。以下に引用しておきます。

「取締役の職務執行の監査等を担う監査等委員が取締役会における議決権を持つこと等により、取締役会のモニタリング機能を強化し、経営の透明性を一層向上させることを目的とするものです。」

会社法改正と日本の貧国化?

ダイヤモンドオンラインで「『日本の貧国化』をさらに進める会社法改正案、絶対に通してはいけない理由」という記事を読みました。なかなか良いところをついてるなぁと感じたわけですが、ライターの方とはちょっと違う視点で考えてしまうんですね、株屋的な発想ですね。

これまでの20年間

記事ではこれまでの20年間について、こんなことが書かれていました。「資本金10億円以上の企業で見てみると、この20年で経常利益は3倍強になっているが、従業員の平均給与も設備投資も微減、売上高はほぼ横ばいである。そして配当は6倍以上になっている」

データの出所等については何も明かされてないんですが、このデータを信用しましょう。感覚的には腹落ちするデータのような気がします。要するに従業員への配分と設備投資を犠牲にすることで、株主への還元を強化してきた。そのため、日本が貧国化してきたとの主張ですね。

そして、今回の会社法改正は、こうした実態をさらに加速する恐れがあるので、成立させてはならないというご意見です。

しかし、ここからは

確かに会社法や昨今のガバナンス強化という流れが、株主の利益を増加させてきたのは事実でしょう。しかし、現在の日本企業は、犠牲にしてきた従業員と設備に対する投資を回復させる方向に、既に大きな揺り戻しが起きているように見えます。

働き方改革、最低賃金といった話題が盛んになってきていますし、サボってきた設備投資の付けが回ってきて、老朽設備やシステムの更新などが下支えする格好で、昨年度は9.4%の伸びを記録しました。今年度は若干低下すると言われていますが、それでも8.6%の伸びが予想されています(いずれも日経12/1記事より)。

株主への還元も高水準になってきた、設備投資も決して前向きではないかもしれませんが旺盛に。従業員への還元に対しても積極的になってくれば、「老後2000万円」効果で資産運用に回るお金もさらに増加するでしょう。kuniが考えるとこんな良いとこどりになってしまいます。やはり、日本は今「買い」ですね。