ウイルプラスホールディングス 自己株式を取得し過ぎてしまった件

ウイルプラスホールディングスは8/26、「分配可能額を超えた自己株式取得に関する特別調査委員会の設置のお知らせ」を公表しました。今年5月、自己株式を999 円で700,000 株、総額699,300,000 円を取得したのですが、これが法の定める買い付け可能金額を超えていたと。

ウイルプラスホールディングス

ウイルプラスホールディングスは、BMW、MINI、ボルボ、ジープ、アルファ ロメオ、ジャガー、ランドローバー、ポルシェなどの輸入車ディーラーを運営する持株会社です。グループ子会社が主力の新車販売のほか、中古車販売、車輛整備などを展開。東京・神奈川・福岡を中心に店舗を運営する東証スタンダード上場企業です。

事案の概要

会計監査人からの指摘を受け、自己株式取得の時点で、自己株式取得により株主に対して交付される金銭等の帳簿価額の総額が、会社法及び会社計算規則により算定した分配可能額を超えていたことなどが判明したということです。

時々見る事案ですね。配当払い過ぎちゃった事件や自己株式を取得し過ぎちゃった事件。単純に経理が財源規制に関する法令をしっかり押さえて計算できていなかったってことなんでしょうが、その割に特別調査委員会を設置するというのはやや大袈裟な反応に見えます。

単純なミスではなく、同社株の売り主に対する不適切な対応(無理やり引き取らされた)だとか、経営上の判断に問題があったりするんでしょうかね。

株式会社シグマクシス・ホールディングス 代表取締役増やし過ぎちゃった件

シグマクシス・ホールディングスは3/30、「(訂正)『代表取締役の異動(追加選任)及び取締役選任に関するお知らせ』の一部訂正及び取り下げについて」を公表しました。昨年、代表取締役を追加で選任したんだけど、やっぱりやめときます、、、ってお話のようです。

シグマクシス・ホールディングス

シグマクシス・ホールディングスは、企業の経営課題を解決するための、戦略の立案・策定から、ビジネスモデルの設計、事業運営基盤の設計・構築・導入などのコンサルティングサービスを提供する企業です。このほか、企業への投資事業も手掛ける、東証プライム上場企業です。

定員オーバー

上場企業でも、時々ビックリするようなミスを見ますが、この件も驚きです。同社では定款に、「2名以内の代表取締役を選定する」と規定しているんですが、3人目の代表取締役を選任してしまっていたというもの。

それも、昨年6月の株主総会やその直後の取締役会を経て、当時、常務取締役CFOだった方が代表取締役に選任されています。総会でも役会でも、、、マジで誰も気が付かなかったんでしょうか。さらに、そこから約9カ月間も。普通こういうのって、監査等委員の方が気付きそうなもんですけどね。

今回の開示での言い訳もイケてます。「2022年6月24日の代表取締役への選定決議後、当社を代表して具体的な取引行為や契約行為等を行っておりません。」、だそうです。代表取締役CFOなのに?

総会屋に謝礼 御園座社長を書類送検

3/16付け日本経済新聞は、「総会屋に謝礼渡した疑い 『御園座』社長ら書類送検」と報じました。株主総会の円滑な進行に協力してもらう見返りに、総会屋に観劇券を渡したとして、愛知県警が、会社法違反(利益供与)の疑いで、「御園座」の社長と50代男性課長を書類送検したということです。

御園座

御園座は名古屋市で歌舞伎公演やミュージカル、各種演劇、歌謡ショーなどを上演する劇場事業を手掛ける企業。劇場内では来場客の便宜を図るため、プログラム、飲み物、お土産などの販売も行うそうです。

中部地方にゆかりのある企業や松竹などが大株主に名を連ねる、名古屋証券取引所2部に上場する企業です。前年度はコロナの影響で赤字転落。今期も苦しんでいるようです。

総会屋

何か久しぶりに見るニュースです。総会屋なんてまだ居るんですね。総会屋とは、日本において、株式会社の株式を若干数保有し、株主としての権利行使を濫用することで脅しをかけ、会社等から不当に金品を収受、または要求する者や組織を指します。

会社法では、株主の権利の行使に関する利益の供与(会社法第120条)として規制されています。多分若い人は総会屋なんて馴染みがないでしょうね。

別の会社が絡む会社法違反事件で起訴されている総会屋に、議事の円滑な進行に協力する謝礼として、同社劇場の観劇券2枚(計4万円分)を供与した疑いだそうです。金額ショボいですけど。

同社は3/15に適時開示しており、その株主が総会屋との認識は全くなく、そもそも株主総会の円滑な進行を依頼した事実はないとしています。なんだかよく分からない事件ですね。

株式会社ビーブレイクシステムズ 監査役に払い過ぎちゃった件

株式会社ビーブレイクシステムズは9/24、「株主総会決議を超過する社外監査役報酬の支払いについて」を公表しました。ちょっと珍しい開示ですねぇ。上場企業でもこんなことが起こるんですね。思わず吹き出してしまいました。

ビーブレイクシステムズ

ビーブレイクシステムズはクラウドERP(クラウド技術を用いた統合型基幹業務パッケージ)の開発および販売を行うパッケージ事業が主力で、主に顧客が構築するシステムの受託開発やIT人材の派遣を行うシステムインテグレーション事業(SI事業)も手掛ける東証マザーズ上場企業です。

監査役の報酬

監査役の報酬等は、定款においてその額を定めていないときは、株主総会の普通決議によって決定されます(会社法387条1項、309条1項)。この「報酬等」には、月額報酬だけでなく、賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益すべてが含まれます。

ビーブレイクシステムズでは、定時株主総会において、「監査役の報酬額を年額2,000万円以内(うち社外監査役600万円以内)」という金額で承認されていたとのこと。今回問題となったのはこの「社外監査役600万円以内」という部分です。

期中に社内監査役1名が退任し、社外監査役1名が就任したことにより、2021年6月期について、社外監査役の報酬上限(600万円以内)を超過していたことが判明したということです。

以前、kuniが所属していた企業でも、取締役の報酬総額が総会で承認された額を超過したことがあって、大慌てしたことがありました。大笑いのお話ですが、中の人にとっては結構大変でして。臨時株主総会を開催しましたけどね。

未上場企業の場合は株主数も少なく、こういった対応が可能ですが。ビーブレイクシステムズは上場企業ですので、総会決議をやり直すって訳にもいかず。なんと上限超過部分について、社外監査役に対して返還請求するんだそうです。トホホな話ですね。

所在不明株主とは 新東工業の開示より

新東工業株式会社は9/8、「所在不明株主の株式買取に関するお知らせ」を公表しました。同日開催の取締役会において、所在不明株主の所有株式を同社が自己株式として買い取ることを決議したというお知らせです。

所在不明株主

所在不明株主の所有株式を買い取るということですから、まぁなんとなく同社がやろうとしていることは伝わってきます。が、物事にはちゃんと定義があるはず。ということで調べてみました。

所在不明株主とは、株主名簿に記録された住所または通知先に宛てて発した通知、または催告が5年以上継続して到達せず、かつ、継続して5年以上配当金を受領していない株主のことだそうです。

所在不明株主の株式売却制度

株主の意思に関係なくその株式を売却するわけですから、これにもやはりルールがあります。まず最初に、取締役会で所在不明株主の株式の処理方法(売却(競売・市場価格による売却・自社による買取)・競売・発行者による買受け等)を決議します。

新東工業の場合は、今年5/12に当該決議をして、「所在不明株主の株式売却に関するお知らせ」を公表していますね。

その後、売却処理に異議があれば異議申述できる期間(3ヶ月以上)が設けられます。当該期間が終了したのち、異議がなければ、再度取締役会で株式売却(同社から見ると同株式の買い取りですね)を決議します。これが冒頭で紹介した9/8の決議になります。

約4ヶ月を経過していることが分かりますね。こうして新東工業では所在不明株主の株式約17,000株を自社で買い取る(9/9の東証終値で)ということになりました。ちなみに、売却されることに気付かなかった株主は、売却代金について、今後10年間は新東工業へ支払請求することができるそうです。