不適切な行為と不正行為

3/31だったかな。日本フェンオールという会社が、「当社の一部製品に関する不正行為について」という開示を行いました。当ブログでも取り上げた件です。実はこの開示、最近あまり見ない、ちょっと珍しい開示だったんですよね。

日本フェンオールの件

なんでこの開示が珍しいかというと、同社の会社行為として行っていた型式承認時における認証不正について、「不正行為」と言い切っているところなんです。多くの企業がこういったケースでは「不適切な対応」だったり「不適切な行為」と表現するんですね。

神東塗料の件

同じく直近で認証不正に関する開示を行った神東塗料。タイトルは「当社製の一部製品に係る不適切行為に関するお知らせ(第5報)」となっています。製品の認証を得る際の会社としての不正行為ですから、両社のやったことはほぼ同じ行為です。

不適切とは

辞書で調べてみると、「不適切」とは、「その場の状況や話題となっている事柄に対する配慮を欠いていること。また、そのさま。」とあります。企業が行ったルールを逸脱した行為のことを「不適切な行為」と表現するのはおかしいわけです。ちなみに「不正」は、「正しくないこと。また、その行為や、そのさま。」です。

不正行為を行っていた企業がそれを世の中に公表する際、少しでもイメージを良くしようと「不適切」という表現をしたがるんですね。そういう意味で日本フェンオールの開示は珍しいですし、潔い。ちゃんと自分たちが行ったことがどういうことなのか、経営陣も含め、しっかり認識できているのではないかと感じた次第です。

共和薬品工業 業務停止命令

共和薬品工業(大阪市)は3/28、兵庫県から業務停止と業務改善を命じられたと発表しました。他にも同社の拠点がある大阪府や鳥取県においても、製造販売停止や業務改善命令を受けています。後発薬(ジェネリック医薬品)メーカーの不祥事が後を絶ちません。

共和薬品工業

日本において、後発医薬品を販売している企業は200社近くあるようで、国内売上高の1000億円以上は、沢井製薬、日医工の2社のみだそうです。500億円以上では、東和薬品、ニプロ、明治HD、三和化学研究所を加えて6社のみで、沢井製薬、日医工、東和薬品の3社は「ジェネリック御三家」と呼ばれているみたい。

つまり共和薬品工業はこの業界でのいわゆる大手ではないみたいですが、このところ続いている後発薬メーカーの不祥事を見るにつけ、気になる話題です。

不祥事

昨年には、小林化工や日医工で品質不正が相次いで発覚し、両社が業務停止命令を受けました。そして今回は共和薬品工業。

同社工場では、成分または分量が厚生労働省に届け出た製造販売承認書とは異なる薬を生産していたといいます。承認書に記載のない添加物を使ったり、製造記録を改ざん・捏造したりしていました。少なくとも10年前から不備が続いていた品目もあったようです。

こうやって一部の後発薬メーカーが信用を失い、その反動で沢井薬品や東和薬品など他社に注文が殺到してるんだとか。しかし、怖いのは後発薬メーカーにおける不祥事の更なるドミノ倒しです。収益構造等は似たようなもの、他の企業でも同じような不祥事がまだまだ出てくるかもしれません。

株式会社ハイパー 原価の付替えや架空売上も

2/14、「2021年12月期決算発表の延期及び特別調査委員会設置に関するお知らせ」を公表し、過去の不適切な売上処理について調査を進めているハイパー。3/31には有価証券報告書の提出期限延長を申請し、承認されています。

不正の概要

これまで、「決算発表に向けて準備を進めるなか、一部の取引において、不適切な売上処理が行われていた疑いがある」としか説明されておらず、詳細がまったく不明でしたが、延長申請のお知らせの開示の中で、少し不正の内容が見えてきました。

外注を伴う役務提供取引において、同社営業社員が過去から外注先への仕入れ債務の簿外処理や、別案件への原価の付替えによる売上原価の先送りなどを行っていたといいます。

さらに、外注先に対する簿外債務を精算するため、得意先から受け取る注文書を偽造することで架空の受注を計上して外注先に対する支払いを行い、検収書の偽造等による売り上げの架空計上を行っていた疑いがあることも判明したそうです。

原価の付替え、先送り、注文書や検収書の偽造による架空売上、、、。やはり予想通りかなりヤバいことになってきましたね。ただ、今回の開示においてもこれらの不正に関する金額等は一切説明されていません。

今後の予定

不正を働いていた同社営業社員の体調不良等により、予定していた頻度・時間でのヒアリングができていないとのこと。特別調査委員会の調査を完了させるためには、まだ相応の時間が必要としていて、4月下旬をめどに調査報告書を受け取る予定みたい。延長後の有価証券報告書の提出期限は5/2になりました。

東レ 樹脂製品の米UL認証取り消し

今年1/31、樹脂製品における第三者認証登録に関する不適切行為を公表していた東レ。 3/28には「当社樹脂製品における第三者認証登録の一部取り消しについて」を公表しました。認証登録取消日は2022年3月31日だそうです。

おさらい

ULが実施する認証試験で指定されたグレードと異なる、試験合格用のサンプルを作成し、提出していたこと。また、認証登録された品種の一部で、登録時の組成と異なるものを製造・販売していたことが発覚しました。これを受けて有識者調査委員会を設置して調査を開始しています。

認証取り消し

UL 認証登録が取消となった対象製品は、ABS 樹脂「トヨラック®」 45 品種、PLA 樹脂「エコディア®」 1 品種、LCP 樹脂「シベラス®」 6 品種 の合計52品種だそうです。家電や車部品などに使う樹脂製品で、燃えにくさを示す「難燃性」の認証に関する不正行為がありました。

東レの適時開示では詳細はここまでです。が、しかし、日本経済新聞の報道によると、東レが販売する樹脂製品約1600品種のうち412品種がUL認証を受けていたということです。で、117品種で不正行為があり、うち52品種が認証取り消しとなります。

さらに日経では、取り消しの理由は52品種のうち40品種が「認証登録手続きにおける不備」で、12品種が「難燃性能の不足」だった、としています。

東レは今のところ、不正があった樹脂製品に関して、出荷先から事故などの報告はないと説明しているんですが、これだけの数で不正を行っていたとすると、「それ以外は問題なしです」という調査結果が出てきてもなかなか信用できませんね。

ナカバヤシ 減免された課徴金で自己株式の取得?

ナカバヤシは3/14、「自己株式の取得及び自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の買付けに関するお知らせ」を公表しました。翌日には自己株式の取得完了のお知らせを出しています。

自己株式の取得

公表された取得の内容は、3/14の終値500 円で、280,000 株(上限)を買い付けるというもの。買付金額は総額 1億4,000万円(上限)となっています。翌日公表された結果では取得株数は274,400 株で、1億3,720万円の買い付けとなったようです。

ねんきん定期便談合

先日、3/3に公表された、ねんきん定期便談合について取り上げました。違反事業者は全部で26社。課徴金総額は 17億4,161万円という事件でしたね。課徴金納付命令対象事業者数は24社。ナカバヤシは3億1,071万円の課徴金を喰らってました。

実はこの3億1,071万円、課徴金減免制度が適用されていて、30%減額された金額なんですね。減額されていなければ4億4,387万円でした(本来の課徴金額ではナカバヤシがトップ)。1億3,316万円減額されていたということです。

株主へのお詫び?

あの事案から10日ほど経って公表されたのが、今回の自己株式の取得というニュースだったわけです。自己株式の取得にかかる金額が1億3,720万円。減免された課徴金の額が1億3,316万円。妙に金額が近いんですよね。

そもそも課徴金として国庫に納めるはずだったこの資金。談合という失態で株主に大きな迷惑をかけてしまったこともあり、この資金で自社株式を取得して株主価値を向上させ、お詫びしよう。そう考えたのかもしれませんね。いやいや、kuniの勝手な想像ですよ。