モルフォ(3653) 役員 インサイダー取引に関する課徴金命令を取り消し(その2)

今年1月に当ブログで取り上げた、モルフォ株式をめぐるインサイダー取引。金融庁の課徴金納付命令が、東京地裁により全面的に否定された件です。日本経済新聞でも取り上げられてましたね。判決が企業法務の専門家の注目を集めているんだそうです。

重要事実の発生

モルフォがデンソーとの業務提携を行うことについて決定したのがいつのタイミングだったか、が争点になっていて、日経では過去の二つの判例との比較をしていました。日本織物加工株事件と村上ファンド事件です。この二つの事件の判決では、いずれも実質的な決定時期をかなり早いタイミングで捉えています。

そのため、金融庁はモルフォのケースについても、守秘義務契約を締結し、そのことが経営陣に共有されたタイミングを、実質的な決定時期と判断したんですね。

ところが今回の地裁の判断は、「業務提携の決定は一般の投資家の投資判断に影響を及ぼす程度に具体的な内容を持つものでなければならない」としています。守秘義務契約の締結段階では、具体的な内容を持っておらず、重要事実は発生していないということです。

潮目が変わった

実はインサイダー取引規制における重要事実の決定時期については、以前から決定時期を早くとらえ過ぎているという批判が多かったんですよね。そのため法務関係者の多くが今回の判決を評価しているようです。

幅広に捉えられてしまう恐れがあるため、上場企業側も過剰規制に走る。上場企業のそういった過剰な反応に関しては、当の金融庁も見直すべきだとの方向性を示していました。国側は控訴しているようですが、kuniもこの判決は妥当だと思っています。

あと、この役員が「買付に関してあらかじめ会社に了解を得ていた」というのも、判決に影響してるかもしれません。会社としてはインサイダーには当たらないという判断をしているわけですからね。

朝日放送グループHD 朝日放送テレビ 従業員のインサイダー取引

朝日放送グループHD子会社の朝日放送テレビ株式会社の社員1名が、重要事実の公表前に社外に情報を提供するとともに、自らもインサイダー取引を行い、利益を得ていたことが分かりました。証券取引等監視委員会は情報受領者とあわせて2名に対する課徴金納付命令を発出するよう勧告しています。

インサイダー取引の概要

朝日放送グループHDの開示ではよく分かりませんが、同社の認定放送持株会社体制への移行という情報と、株式会社ディー・エル・イーの第3者割当増資引受による子会社化という2件の別々の内部者情報を巡る事件です。

「認定放送持株会社体制への移行」については、当該情報が公表されたのが平成29年2月8日。もう一方の「ディー・エル・イーの第3者割当増資引受による子会社化」については、情報が公表されたのが令和元年(平成31年)5月10日です。

つまり、約2年間の間に同じ従業員が、当時の朝日放送株式については知人に情報伝達して儲けさせ、ディー・エル・イー株式については知人のみならず、自分自身も儲けました。というお話なんですね。課徴金の額は、同社従業員が451万円、知人が305万円となっています。

開示された情報

ここまでのお話は監視委員会の報道発表をもとに書いています。当の朝日放送グループHDの1/15の開示ではここまでのことは分かりません。というか、開示情報の書きぶりでは、同社子会社の朝日放送テレビの従業員が、一度だけインサイダー取引規制違反をしたかのように見えますね。

明らかに別の重要事実ですし、その公表時期も全く違う事件なんですから、もう少し書きようがあるんじゃないかな。知人に儲けさせてもお咎めがなかったので次の機会では自分も、、、みたいな事件の悪質さ(再犯である事実)を隠したいという意図が感じさせる開示です。

三井住友ファイナンス&リース、ケネディクスにTOBだと? インサイダー

三井住友ファイナンス&リースは11/20、不動産投資ファンドのケネディクスを子会社化すると発表しました。TOB(株式公開買付)を通じて株式の過半を取得するということで、買収総額は1200億円弱となるそうです。ということらしいんですが、、、こりゃまずかろう。

チャート画像

この株価どう説明?

掲載したチャートは直近3カ月間のケネディクスの日足の株価動向です。ちょっと見にくいかもしれませんが、11/9に699円まで買われています。一旦下げた後19日に再び動き出し、TOBが公表された20日には前日比30円高で寄り付いた後655円まで買われました。この二日間で79円高です。

ケネディクスを通じてTOBが公表されたのは20日の16:45。20日の取引が終了してからですね。この急騰をどう説明できるのか。出来高も846万株と、前日の3倍くらいに膨らみました。

ちなみに、日本経済新聞は15:00ちょうどにTOBを報じています、これ電子版ですかね。TOBをかける三井住友ファイナンス&リース。友好的にそれを受け入れるケネディクス。取引終了時間前にはTOBの予定を知っていた日経。さて、どこからリークしましたかね?

インサイダー

証券取引等監視委員会の出番です。しかし、最近あまり仕事してない感じですからね。直近でインサイダー挙げたのはソフトマックス株式(3671)でしたか。勧告した課徴金の額はなんと27万円。トホホな事件です。

さぁて今回は大きなヤマですよ。655円までインサイダーで買ったヤツらが、750円で売れちゃうんですから。三井住友系はインサイダーの前科たくさんありますからね。監視委員会がどこまでやれるか、お手並み拝見とまいりましょう(ただ、調査の結果が分かるのは早くて来年でしょうけど)。

北川工業株式 TOBに関するインサイダー取引(その2)

昨日の続きです。北川工業に対するTOBに関するインサイダー取引が行われたとして、2人に対して課徴金納付命令を発出するよう、監視委員会が金融庁に勧告したというお話。TOBを仕掛けて北川工業を買収したのが日東工業でした。

情報伝達者の役員がセーフとなる法律

昨日も触れましたが、重要事実を伝達したとしても、「重要事実の公表前に売買をさせることにより他人に利益を得させる目的がなければ、違反ではない」という法令の解釈により、この役員は難を逃れたものと思われます。

インサイダー情報を伝達し、取引を推奨した者も金商法違反。この法律が導入されたのは、野村證券をはじめとした証券会社が、公募増資に係る情報を提供して売り推奨するという行為が問題視されたためです。なもんで、取引を推奨するという行為に軸足があるんですね。

しかし、今回のケースのように情報を伝達した者が役員であった場合はどうなんでしょう。儲けさせようとして取引を推奨したという証跡がなくとも、十分に処分に値する行為だと思いますね。監視委員会も悔しい思いをしてるでしょう。

課徴金払っても儲かってる?

今回課徴金が課されることになりそうな2人。課徴金の計算ルールのせいで、妙なことが起こっているかもしれません。課徴金の計算には公開買付等の実施に関する事実の公表がされた後2週間における最も高い価格を使用します。

この最も高い価格(3920円)で売却したと仮定して売却代金を計算。そこから買い付け代金を引いて残った金額が課徴金の額になります。最高値で売り抜けることは容易ではないので、課徴金払って損になる仕組みです。

ところが今回のケース、公開買付価格は3943円なんですね。今回の2人が市場で売却せず、公開買付に応募していれば、ひょっとしたら損してないかもしれません。

北川工業株式 TOBに関するインサイダー取引で課徴金納付命令の勧告

証券取引等監視委員会は9/11、北川工業に対するTOBに関してインサイダー取引が行われたとして、2人に対して課徴金納付命令を発出するよう金融庁に対して勧告を行いました。日東工業という会社が北川工業に対して実施した公開買付(TOB)を巡る取引です。

役員はセーフ

公開買付が公表されると多くの場合、株価は上昇します。そのため、公開買付を実施することを決定し、その旨を公表するまでの間にその情報を手に入れ、対象銘柄を買い付けることが出来れば、かなりの高確率で儲かるわけですね。今回は二人がお縄になりそうというお話。

一人は公開買付者である日東工業の役員から情報の伝達を受けた者(ある報道では愛知県の30代女性となっている)が235万円の課徴金。もう一人は日東工業と文書開示に係る契約を締結していた企業に勤める者から情報の伝達を受けた者、こちらも238万円の課徴金。

気になるのは、公開買付に関する情報の受領者がインサイダー取引を問われているにもかかわらず、公開買付者の役員が情報を伝達したことについては、法令違反に問われていないことです。

「重要事実の公表前に売買をさせることにより他人に利益を得させる」等の目的を有していなければ、日常会話の中で重要事実を話したとしても、基本的に規制対象とはならないものと考えられます。。。というのが金融庁の「情報伝達・取引推奨規制」に関する見解です。

当該役員が30代の女性に利益を得させることを目的に伝達・取引推奨した、、、かどうかについては立証しきれない。そういう判断なんでしょうね。それにしてもどういうご関係だったのか、気になります。

なぜかメディアが揃って間違えている件

あと一点気になるのが、多くのメディア(新聞)が日東工業株式でインサイダー取引、と伝えていることです。どこぞの間違えた記事を使いまわしてるだけでしょうが。30代女性、、、まで調べるんだったら、対象銘柄くらいは正しく伝えないと。