三井住友銀行 ファイアーウォール規制違反?(その3)

銀行系証券の切り札

大手独立系証券の野村、大和。これを追いかける日興、三菱、みずほ。追い掛ける3社はいずれも銀行系です。彼らが大手2社を超えていくために必須のアイテムが銀行連携だったはず。その切り札になる連携の最重要法規制であるファイアーウォール規制を、なぜこんなふうにド素人なやり口で犯してしまったのか。ここがとにかく分かりません。

みずほ、三菱に追い上げられる中、旧大手3社の一角だった日興としては、何が何でも野村への挑戦権は渡したくなかったのでしょう。銀行から降りてきた新社長が暴走した。そういうことなんでしょうかね。過去にあった日興証券のインサイダー事件も銀行から降りれきた執行役員によるものでしたからね。まぁ、とにかく銀行から来た証券マンはタチが悪いです。

銀行から証券に転じてきた人たちは、基本的に証券業をなめてるんですね。日本の金融を支えてきたという自負は良いんだけど、銀行と証券は全く別のモノ。アマチュアでしかないのに、証券を仕切れるぐらいに思っているみたいです。だから皆こういう失敗をしてしまいます。

顧客の損益という要素

前回の記事で、三井住友銀行が過去に犯した優越的地位の濫用と今回の違いを2つ指摘しました。じつはもう一つありそうなんです。三井住友銀行が犯した行為としての違いではなく、その行為が行われた環境の違いです。

今回の行為は2016年以降です。この辺りから、米国の堅調な相場に牽引され、日本の株式市場は大きく水準を切り上げてきました。今回三井住友がSMBC日興に顧客を不正に紹介し、買わせた商品がどういう商品だったのかはまだ分かりません。選択の記事を読む限り、一般的な株式の取引のようです。もしそうであれば、顧客はそれほど損してないはずです。というかむしろ回転売買とかしてなければ儲かってそうなマーケット環境でした。

彼らのこの頃の儲け頭の商品であった仕組債でも、エクイティ系の仕組債であれば損はしてないと思われます。前回社会問題になった際は、顧客が大きく損失を出しました。今回は顧客の損益という意味では、金融庁の判断に与えるインパクトはそれほど大きくなさそうなんですね。

もちろん、損してないからいいという問題ではないんですが、大損した顧客が多いと政治家やマスメディアが金融庁に圧力をかけてきます。その力は相応に影響力ありまして、金融庁も無視できないみたいです。

さぁて、金融庁はどう動きますかね。仲があまり良くなさそうな公正取引委員会との間での各種調整もあるでしょう。この後の展開、どうなっていくのか。金融庁の最終判断を待ちましょう。

三井住友銀行 ファイアーウォール規制違反?(その2)

「選択」という雑誌で報道されている三井住友銀行のファイアーウォール規制違反行為に関する第2弾。平成17年に優越的地位の濫用で公正取引委員会および金融庁から行政処分を受けた三井住友銀行が、今回またもや同じ優越的地位の濫用で処分を受けそうだというお話です。

今回は銀証連携で発生

前回と違うのは、今回は三井住友銀行の優越的な地位を利用して、SMBC日興証券が金融商品取引契約を締結していることと、金融庁の検査で行為が発見されたことです。前者については、証券界からあまりそのような話が聞こえてきません。証券側については「優越的地位の濫用について、意図して行為を行っているという認定がされていないのかもしれません。

銀行が優越的地位を濫用して、証券の商品を買い付けるようお膳立てしておき、のちに証券から連絡させて実際の取引をさせる。証券マンの方にはお膳立ての場面が見えているわけではないので、違反行為までは問えない。ただし、多くの取引の実態を検証すれば銀行の違法行為に関する疑義を持つことはできたのではないか?金融庁もこの辺りについて改善を求める程度ですかね。

金融庁の検査で発覚

問題はもう一つの、「金融庁が検査で発見したこと」の方です。平成18年に三井住友銀行は行政処分を受けたわけですが、それから間もなく、金商法のファイアーウォール規制が緩和されています。当時の国会では、「こんな事件が起きていて、舌の根の乾かぬうちに、ファイアーウォール規制の緩和とは一体どういうことだ」、と金融庁長官が野党議員から問い詰められたりしていました。

こうした世論を押し切って、金融庁は規制緩和を実行したわけです。さすがに当時の金融庁長官は、今では年収2億円といわれる(というか自分で自慢しているらしいですが)森長官ではありませんでしたけどね。とにかく、金融庁が頑張って規制緩和したら、また同じ三井住友銀行がやりやがった。そういう展開なわけですね。

金融庁はどう動くのか

ここまでの規制緩和の流れや三井住友銀行事件の歴史を踏まえ、金融庁はどういう判断を下すのでしょうか。せっかくメガバンクのガバナンスを信じて規制緩和してやったのに、裏切られた。よって極刑に処すんでしょうか。

それとも、メガバンクといえども、証券や信託との連携なしには、今後のビジネスモデルを考えることはできない。極刑に処して、連携ビジネスを抑え込んでしまうようなことにでもなると、揚げたばかりの「金融育成庁」の看板に傷がついてしまう。ここはグッと我慢して「トップとの議論」、「深度ある対話」で改善させていくのでしょうか。

三井住友銀行 ファイアーウォール規制違反?

「選択」という雑誌の2019年1月号に「三井住友銀が悪質金商法違反」という記事が掲載されました。ここで言っている金商法違反というのは、ファイアウォール規制違反のことで、中でも主に「優越的地位の濫用」という違反行為のようです。

違反行為が行われた経緯と行為の概要

2016年4月に、三井住友銀行副頭取だった人物がSMBC日興証券の社長に就任し、人材交流として証券から銀行の法人営業部隊にも営業員を積極的に出向させます。いわゆる銀証連携を強力に推進しようとしたわけです。証券マンが銀行員と一緒に法人回りをしながら、証券の商品を買わせたり、証券に口座を作らせたりしたというお話です。

その際問題になるのが、ファイアーウォール規制で、今回問題視されているのが優越的地位の濫用という違反行為です。銀行は顧客に融資をしていたり、これから融資しようとしているとき、顧客に対して優越的な関係にあります。お金を借りたい顧客に、その弱みに付け込んで顧客が必要としていない商品を買い付けさせる、といった行為を優越的地位の濫用といいます。

もともとは独占禁止法の定める不公正な取引方法であり、銀行が単独でこの行為を行った場合も違反となりますが、金商法が銀行と証券を分離するファイアーウォール規制の中に取り込みました。ということで、今回指摘されている行為は、銀行の優越的な地位を利用して、グループ会社の日興証券の商品を買わせたという整理になります。

三井住友銀行事件 金融機関の独占禁止法違反

実は平成17年に、公正取引委員会は三井住友銀行に対し、独占禁止法違反を理由として違反行為の排除措置を取るよう勧告を行っています。これを受け、平成18年に金融庁は三井住友銀行に対して行政処分を行っているんです。記憶されている方もいらっしゃると思いますが、優越的地位を利用して金利デリバティブ(金利スワップ)を売り付けていたあの事件です。

行政処分では、金利系デリバティブ商品の取り扱い6か月間の業務停止であったり、法人営業部の新設禁止、内部管理態勢の改善などの命令が出ています。国会でも議論になったりしていた記憶があります。にもかかわらず、なんでまた、こんな、同じようなことを?というのがkuniの率直な感想です。顧客本位の業務運営が求められ、それをいかに実現していくかを各金融機関が知恵を絞っているこの時代にですよ。理解不能です。

もう少し突っ込みどころがあるんですが、少し長くなりましたので、本日のところはこの辺にしておきます。続きは次回ということで。

TATERUの調査結果を受けて西京銀行は

TATURUの特別調査委員会が調査結果報告書を公表し、取締役等の処分が公表されましたが、同じ12/27に西京銀行も自行での調査結果を公表しています。第三者委員会や特別調査委員会ではなく、あくまで西京銀行自身による調査結果です。

何で同じ日に

西京銀行自身が行った調査結果なのに、なんでTATERUの調査結果が報告される日に合わせたのでしょうか。TATERUの調査過程で多数の改ざんが認められていて、それが公表されると当行にも飛び火してくる。そのタイミングで、当行には責任がないことを公表しよう。てな感じですかね。

なんかそう見えちゃいますよね。TATERUと比べれば調査対象件数も少ないはずで、ここまで引っ張る必要なかったんじゃないの、って思ってしまいます。公表した内容を見るとなおさらそう感じです。

プレスリリースの内容

プレスリリースにおける事実認定に関する部分を全文引用します。

(以下引用)TATERUの特別調査委員会の調査結果によれば、TATERUの従業員による資料の改ざんが疑われる事実があると認定されておりますが、当行の社内調査の結果では、当行行員が融資審査関連書類の改ざんその他の不適切な取扱いに対し関与したり、不審に思いつつ見逃し融資手続きを進めたりした事実は確認できませんでした。

 また、当行が融資を実行したTATERUのアパートについては、高い入居率があることを確認しており、TATERUが施工するアパート向け当行ローンについては現在、延滞はなく、これまでに貸し倒れ実績も発生しておりません。(引用以上)

内容の評価

もう少し簡潔に言うと、「当行行員が書類の改ざん等に関与したり、知りながら融資を行った事案はありませんでした」ということを言ってるわけですね。つまり、改ざんが行われたとされる350件のうちいくつかは西京銀行にもあるけど、うちの行員は関与していなかったし、その改ざんに気付くこともありませんでしたと。

関与していたかどうかをどのような調査方法で確認したのか、どういう客観的な証跡により、当行行員が気付く余地などないと評価したのか。この辺りに疑問が残ります。既に様々なところでTATERUと西京銀行の件は悪評がたっているわけですから、もう少し誠意を感じさせる調査結果を報告するべきだったのではないでしょうか。

金融庁が立ち入り検査を行うという報道がありましたが、あれってその後どうなったんですかね。今回のプレスではなんとも評価できません。当局検査の結果を待つしかなさそうです。

ACGAのコーポレートガバナンス ランキング 日本は7位

ACGA(アジア企業統治協会)がまとめた2018年のコーポレートガバナンスランキングでは、日本は7位だそうです。2年ごとにまとめるそうですので、前回は2016年。この時は4位ですから大きく順位を下げたことになります。

アジアのコーポレートガバナンス上位

1位はオーストラリア、2位香港、3位シンガポール、4位以降はマレーシア、台湾、タイと続いています。で、日本とインドが7位で、後ろには韓国と中国ですと。なんとも情けない結果ですよね。ACGAが評価する際の基準を詳細に公表しているわけではなさそうですが、いずれにしても残念すぎます。

日本に対する評価

このお話、日本経済新聞では12/14に報道されているんですが、調べてみるとロイターは12/6には報道してるんですよね。日本に対する評価として、「コーポレートガバナンス・コード」や「スチュワードシップ・コード」について触れているところの伝え方がかなり違ってます。

日経ではこれらを評価しているかのような書きぶりになっていますが、ロイターでは「厳しい規制改革よりもソフトローに焦点を当てることは、規制当局が少数株主の権利をめぐる問題に対処していないことを意味する」と、明らかに批判している書きぶりになっています。

2年間で多発した企業の不正

ロイターの方が正しく伝えているように見えますので、ロイターから引用します。ここ2年間で起きている日本企業の不正等を評価した結果だと思われますが、「社外取締役や監査委員会を通じた、取締役会レベルの監視強化による日本のガバナンス改善への取り組みは、見栄えはするものの、実際は多くの企業の取締役会ではほとんど変化はみられていない」という辛辣なモノになっています。

取締役会レベルでの監視の強化、に焦点が当てられていますが、日本の企業が抱える最大の課題ですね。取締役会レベルで監視する役回りは、社外取締役と監査役そして社外監査役です。このうち、社外取締役と社外監査役は、その会社のことをよく知りませんし、業界のこともよく分かっていないことが通常です。

加えて、監視される側は社外取締役や社外監査役に自身にとって不都合な情報を開示しようとしません。そうなると自ら進んで資料請求したり、納得できるまで事実関係を説明させるなどして、取締役会の円滑な運用を妨げるようなこともやっていく必要が出てくるわけです。

本気で務めるとなるとかなりしんどい仕事ですよね。ほとんどの会社が、そんな役割に見合う報酬を設定していないと思います。おそらくここが一番の問題です。監査役なんてもっとひどい状態ですよ。その辺りの実態をもっと社会で評価しなおす時が来たんじゃないでしょうか。