厚労省毎月勤労統計 役所の不適切調査

厚生労働省の毎月勤労統計に端を発した、統計に関する不適切調査は、総務省のとりまとめによると、56の基幹統計のうち23の基幹統計に誤りが見つかったという結果になりました。ただ、これはあくまで各省庁が自主点検したものを総務省が取りまとめただけです。厚労省のように後から訂正してくる省庁がまだ出てくるかもしれません。

企業の不適切検査 役所の不適切調査

上場企業の不適切な検査が次から次へと表面化したと思ったら、今度は役所です。統計作成時の「不適切調査」と報じられています。ゴロを合わせただけではなく、不適切な行為が行われてきた背景や原因についても、かなり似ているような気がします。もう少し詳細が分かってきたら、この辺りも調べてみたいと思います。

総務省が公表した基幹統計の点検結果を読んでみると、冒頭書いたように23の基幹統計に誤りがあったとしていますが、「毎月勤労統計のように、承認された計画や対外的な説明内容に照らして、実際の調査方法、復元推計の実施状況に問題のある事案はなかった。」とされています。行為としては悪質なものはなかったということのようです。

あくまで役所の統計

今回の厚労省の統計に関する不適切調査が自爆テロなのかどうかは、引き続き注意してみていきたいと思いますが、一連の不適切調査に関して、一橋大学の北村教授が良いお話をされていました。日経の「統計不信 識者に聞く」という記事です。

特別監察委員会の再調査に求めることは?という記者の質問に答えて、「不適切調査の本質は何だったのか可能な限り客観的な情報や証拠に基づいて公正に評価し、1回目以上に情報開示すべきだ。与野党で批判が高まっているが、過度に政治問題化すべきではない。国民経済の実態を正確に捉えるため、統計調査は本質として政治から中立であるべきだ。建設的な議論を進めてほしい」

通常国会が召集され、野党はこの国会で「統計に関する不適切調査問題」を最大の争点にしてくると思われます。2007年の「消えた年金」問題で第一次安倍政権を追及した時と同様の展開がありそうですね。

しかし、北村教授の言葉にもあるように、政治と役所の統計調査をチャンポンにしないよう注意が必要です。「消えた年金」のような、巧みな言葉が躍り始めるでしょうが、この問題は役所の怠慢であり、政治とは切り離すべきという基本を押さえておきたいところです。そのうえで厚生労働省の内部で責任の所在を明確にし、しっかり改善してもらいましょう。

厚生労働省 毎月勤労統計調査に関する 特別監察委員会

1/16 毎月勤労統計調査に関して、調査の中立性や客観性を明確にするため、計6人の外部委員で構成する第三者委員会としての特別監察委員会を設置し、調査を開始したはずでした。その後1/22にわずか7日間で調査報告書が公表されています。

課長補佐以下には厚労省職員だけで聞き取り調査

公表された報告書では、職員が不正を放置してきたことについて認定した一方で、組織的な隠ぺいは認められませんでした。わずか7日間で調査が完了してしまうところで既にどうよ、それって感じなんですが、そこに聞き取り調査を特別監察委員会ではなく、厚労省の職員だけでやっていたというお話。

さらに局長・課長級の職員への聞き取り調査には、監察委員があたったものの、やはり厚労省幹部が同席していたとのこと。なんだか笑うしかないですね。スルガ銀行やTATERUといった事業会社の第三者委員会も見てきましたが、この特別監察委員会、酷すぎです。

安倍政権打倒に向けた自爆テロ?

あまりにも突っ込みどころだらけのこの報告書、野党から突っ込んでもらうための報告書であり、大炎上することを目的とした報告書のように見えてなりません。あれほど頭の良い官僚たちの犯すミスとは思えません。と感じるのも実は、ある書籍を読んだ直後だからかもしれません。

上念 司著「官僚と新聞・テレビが伝えないじつは完全復活している日本経済」という本なんですが、著者は現代のテロリストにとって「フェイクニュースと自作自演の偽データがテロの武器である」と言っています。第一次安倍政権が倒れた原因の一つになった年金問題は、自治労の自爆テロだったとみているようです。森友学園や加計学園問題についても同様です。

そして、次に起きるのは2.26事件レベルの大規模なテロではないかと言っており、それにより安倍政権が倒れるのではないかと指摘しいます。たしかに今の日本で、銃や刀で暗殺するような革命はないでしょう。フェイクニュースと偽データで行政を混乱させる。そこを野党とマスコミが煽って、国民を扇動していくのかもしれません。

「官僚と新聞・テレビが伝えないじつは完全復活している日本経済」では、地上波のテレビと新聞の報道はデタラメばかり。としたうえで、ニュースの裏に隠された「日本経済」、「安倍政権」、「消費税増税」。「世界経済」について、筆者の見立てが書かれています。

政府と日銀のBSを連結してとらえれば、日本の財政再建に問題なしとする「統合政府論」についても肯定的に触れられていて、なかなか面白かったです。kuniはテレビと新聞のデタラメについて読みたくて買いました。お勧めです。統合政府論についてはまた別の機会に。

三菱自動車 パナソニック 技能実習認定取り消し

また、三菱自動車がやらかしました。っていうか、やらかしたことに対するペナルティが公表されたということです。1/26 日本経済新聞の記事です。技能実習生に本来させるべき(計画した)業務をやらせていなかったということで、今後5年間の技能実習生の受け入れを禁止するというもの。

何度やっても懲りない奴ら

三菱自動車のこの不正は去年夏頃にすでに報道されていましたね。日産自動車も同様に報道されています。燃費不正問題、検査不正問題、そして会長による不正行為。こういう企業がまだ生き残っているのが不思議です。

日産自動車はペナルティなしということでしょうか。去年6月の報道では、45人が計画と異なる作業をしていたとなっていました。厚生労働省のHPで確認してみましたが、認定取り消しの判断基準については良く分かりません。

同HPの報道発表資料「技能実習計画の認定取消の通知と改善命令を行いました」という資料なんですが、添付資料を見てぞっとしました。例えば三菱自動車の場合は別紙1が認定取消の内容となっているんですが、27名の技能実習生を例えば「認 1704005410」という認定番号で示しています。この記号が27人分ずらりと。

現代の奴隷制度と言われるのが分かるような気がします。実習生の個人を識別するために必要なのかもしれませんが、世間に公表する資料にそれ必要ですか?企業に通知する書面上で、実名で表示すれば良さそうなもんです。行政側にも外国人労働者を一個人として扱う姿勢が必要だと思います。

問われる企業のガバナンス

企業の頂点にいる者はどっさり稼ぐ。簿外でもいろいろ儲けちゃう。女性従業員、派遣社員、外国人労働者。時代とともにその矛先を変えながらですが、常に底辺に位置する従業員を搾取することで、一流と言われた企業が成り立ってきたわけです。「いい加減学びなさいよ」と言ってやりたいですね。

朝日新聞のニュースでは三菱自動車の首脳が「軽く考えてはいけない、非常に残念」と述べたとありますが、経営層の甘さ、軽さがにじみ出てます。外国人労働者を巡るトラブルこれから爆発的に増えそうです。ガバナンスのキモになっていくでしょう。

東京証券取引所の市場区分見直し

東証1部銘柄が多すぎとして、1部から2部へ降格となる企業が出てくるのでは、と市場再編に対する非難があるようですが、ガバナンスを切り口にどんどん降格させていったらどうでしょう。1部上場企業の経営層へのインパクトはデカいですよ。一部に生き残るために企業のガバナンスは向上するでしょうし、何より「一部上場企業は安心」と投資家に訴えることができます。もちろん、もともと2部の銘柄と区別できるようにね。kuniのお勧めです。

厚生労働省 毎月勤労統計 失敗の隠蔽

勤労統計の不適切調査

厚労省が所管する、賃金や労働時間の動向を示す毎月勤労統計が世間を騒がせています。本来とるべき方法とは違う方法で調査(全量調査するべきところを抽出調査していた)を継続していたというもので、なんとその期間は15年にも及んでいたようです。

加えて、この不適切な方法で調査を続けていた間、当該不適切な方法で調査してもよいという文章が、当時の「調査方法の手引き(マニュアルみたいなもの)」に堂々と書かれていたとか。つまり、楽な方法で不適切に調査しただけでなく、マニュアルの方も書き換えて、不適切ではないように偽装工作までしていたということです。

厚労省は昨年裁量労働に関するデータでも不適切な扱いがあり、メディから酷く叩かれていた時期がありました。問題ある統計が見つかって、咎められた。普通は他のデータは大丈夫なのか?と、横展開して調査を実施し、同様のミスや不正がないことを全力で確認するはず。厚労省の場合はそれができなかっただけでなく、勤労統計においては隠蔽工作までやっていたわけです。

膿を出し切ることの重要性

これまで当ブログで取り上げてきた上場企業の不正・不祥事においても、「あの時に十分調査して一掃しておいたら、ここまで酷い状況にはならなかったのに」と考えさせられる事例が少なくありませんでした。足もとで判明した事態を解決するだけでなく、他にも類似した行為が行われていないか、膿を出し切ることが重要です。

出し切ると言うと簡単なようですが、見えていないものを探す訳ですから、膨大な労力と時間を要します。それでも全社員が経営層の持つ危機感を共有して,その作業に当たることだけでも非常に有意義だと思います。これをやらなければ、従業員たちは経営層のその場限りの危機感を見切ってしまうことになるのです。

失敗の共有

優れた企業は失敗を見付けたら、それをすぐに組織で共有し、修正します。もちろん組織として発見できるように、その方法についても態勢(発見統制)を整備し、「失敗は咎められることなく会社に役立てられる」という企業風土も浸透させています。

前にも一度書いたことがありますが、マシュー・サイド著 「失敗の科学」という書籍がこの辺りに詳しいです。コンプライアンス業務に就いてらっしゃる読者には、是非読んでおいていただきたい一冊です。

スルガ銀行と金融庁のその後

1/14の日本経済新聞特集記事「地銀波乱(1)」。タイトルは「スルガ銀救った『預金支援』迫る銀行廃業時代」でした。「2018年秋、地方銀行を所管する金融庁銀行第2課は、主な地銀に預金協力を打診した。ある地銀幹部は、20年前の奉加帳方式が復活したのかと驚いた」とあります。

金融庁のスタンスには疑問

この記事では金融庁関係者の発言として「資金規模が3兆円を超える大きな地銀が破綻すれば、中小の地銀への連鎖は避けられない。新体制で再生するまで信用を補完した」と書かれていますが、避けられないっていうくだり、本当にそうでしょうか。

確かに、必要な情報をしっかり国民に伝えることなく破綻してしまうと、他の地銀への影響は少なくないと思われます。しかし、あれだけの悪いことをしてきた銀行です。その制裁として他に影響を与えない形での自主廃業といった終わらせ方はあったんじゃないでしょうかね。

資金規模が3兆円もある銀行が潰れたんじゃなく、あんな悪いことをした銀行だから潰れた。確かに地銀を取り巻く環境はよろしくないし、業績が悪化している地銀も少なくない。しかし、それらについては再編という方向性も示しながら、潰れるべき銀行が廃業しただけ、というシナリオは描けたと思います。

野党各党が金融庁の責任を追及

野党が金融庁の責任を追及し始めたようですね。もちろん、スルガ銀行を巡ってです。金融庁の苦情相談窓口に、スルガ銀行の悪行に関する苦情は2015年1月から寄せられていたそうですが、3年間にわたって検査等に着手することなく放置していたということのようです。

金融庁の中にも、スルガの経営実態に疑念を持って、検査した方が良いという意見はあったそうですが、スルガ銀行のビジネスモデルを称賛していた当時の森長官に配慮したため、結局何もできなかったということのようです。

投資用不動産向け融資に関するアンケート調査

昨年末辺りで金融庁が全国の金融機関に対して行ったアンケート調査。42項目で20ページほどのアンケートとなっていますが、一つの質問において、直近4年度にわたり融資の実行額や件数などなど、16個とか32個の実績データを記入させるようなつくりになっていて、さながら検査着手前の準備資料を作らされているようなものでした。この調査結果を見て、次のオンサイト検査対象銀行を決めようとするものと思われます。

この後の金融庁の対応

とまぁ、いろいろと書きましたが、よく読むと冒頭の日経の記事には2018年秋のこと、と書かれてますので、一連の騒動に対して行政処分を行い、改善報告書を提出させるまでの工程で取り付け騒ぎ等が起きないよう、つなぎで要請した預金と考えるのが順当なところでしょうか。

他の地銀についても調査したうえで、どこと統合させるかとかも考えているところですか。統合させた地銀も同じようなことやってたんじゃシャレにならないですからね。