著作権法改正 ダウンロード違法化 今度は文化庁が

ここまでの背景・経緯

文部科学省 文化庁は、海賊版サイトを巡る著作権法の改正に向けて、文化審議会著作権分科会を立ち上げ、議論を重ねてきていました。先月、その検討結果を踏まえて著作権分科会報告書が出されました。

そして2/22 自民党文部科学部会・知的財産戦略調査会合同会議なる会議体に、著作権分科会報告書の概要をまとめた資料を配布したわけですが、この資料が審議会の意見を無視しており、自民党の判断を誤らせかねない不正確な情報が提供されているとのこと。明治大学知的財産法政策研究所が同配布資料の検証レポートを発表していて、文化庁の姿勢を批判しています。

自民党の文部科学部会は先月上記会議を経て法改正を了承したものの、党の最高意思決定機関である総務会は、関係者への説明不足などを理由に了承先送りを決めています。これも異例のことらしいです。先ほどの研究所以外にも異論を唱える方が少なくありませんでしたからね。

明治大学知的財産法政策研究所の検証レポート

検証レポートの内容は、違法ダウンロードの対象拡大に対する審議会における委員の意見が加工されており、対象拡大への積極派が大多数のように見える資料が配布されていたというものです。

検証レポートは、「4人の慎重派委員の意見そのものを省略し、2人の慎重派委員の主張の重要部分を省略、慎重派の2名の意見の一部だけを切り取り積極派であるかのように誤誘導、積極派の人数を水増しするなどの処理を行っており、議論の正確な状況が伝えられていない」、と批判しています。

続けて、「無限定な対象拡大に積極的な意見は少数派であるにもかかわらず、これが多数派であったような誤解を誘っている。政策判断を行う上で、審議会における議論の状況を正確に把握すべき立場である与党に正確な情報が提供されていない点は、立法過程における極めて重大な問題をはらんでいる。」とも書いています。

文化庁のチェリーピッキング

レポートは他にも、配布資料で諸外国を引き合いに出して、ダウンロードを全面的に違法とすることが、国際的な潮流であると読めるような説明をしていることについても、比較対象国の選択がフェアでない。と言っており、文化省のチェリーピッキング※1であると批判しています。

行政機関が法律をある一定の方向へ修正(改正)しようとすることは珍しいことではありませんが、わざわざ専門家を招いて、審議会で議論してもらった結論をひっくり返してまで進めるのはいただけませんね。文化庁長官の宮田氏は生粋の芸術家のようですし、著作権に関する思い入れは強いんでしょう。今回のこのニュース、文化庁の不適切配布資料、みたいな感じで炎上しちゃうんでしょうか。

※1 数多くの事例の中から自らの論証に有利な事例のみを並べ立てることで、命題を論証しようとする論理上の誤謬、あるいは詭弁術

日本紙パルプ商事 TSUTAYA

2/23 日本経済新聞で日本紙パルプ商事の不祥事と、消費者庁によるTSUTAYAへの課徴金納付命令が報道されました。このところ政府の統計不正の話題が先行するもんですから、こうした上場企業の不正・不祥事に関しては取り扱い順位が低くなっているような気がします。

日本紙パルプ商事 子会社の野田バイオパワーJP

子会社の野田バイオがバイオマス発電所で発生する産業廃棄物を不適切に処理していたというものです。また、焼却灰に固化剤を混ぜて地盤改良材として販売もしていましたが、これに本来加えないはずのタイプの焼却灰を加えていたということのようです。

プレスリリースを読んでみると、「一部重金属等の土壌環境基準値超過」という項目もあり、「六価クロム」や「セレン」などといった物騒な重金属の基準値オーバーが記されていました。六価クロムは最大で基準値の4倍、セレンは3倍という数値が出ています。

記事では結構さらっと書かれてましたが、いけませんよこれ。本来加えないはずの種類の焼却灰を10~20%の割合で混ぜて販売していた、という記述もあり、故意にやっていたという感じです。この本来加えない種類の焼却灰は産業廃棄物のようです。

社内調査委員会を立ち上げて、4月末をめどに事実を明らかにするそうですが、第三者委員会にするべきじゃなかったのかなと思います。ちなみに、この社内調査委員会、委員長が社外取締役で、監査役と他2名の弁護士という態勢のようです。

TSUTAYA 課徴金納付命令

一方、こちらは消費者庁がTSUTAYAに課徴金1億1,753万円の納付命令を出したという件。DVDのレンタルや書籍販売のTSUTAYAが提供する3つのサービスにおいて、すべての作品が見放題であるかのような表現をしていたというものです。昨年の5/30に景品表示法に基づく措置命令が出されていた件ですね。

ネットとか見るとこのTSUTAYAの件についてはかなりの書き込みが出てきます。レオパレス21に負けないくらい出てきますね。あらためて今回の納付命令を読んでみましたが、「打消し表示」が一つのカギになっているようです。

『見放題』と大きく宣伝したうえで、同じページの最下部等で「よくある質問」と記載し、これをクリックすると初めて、『見放題ではない旨』が表示されるという手口です。この手口、最近結構他社の事例でも指摘されているようですね。スマホの画面等は小さいので、この手口が有効なんでしょうが、消費者庁もそこは良く分かっているみたいですよ。各種ディスクレーマーはできるだけ当該表示の傍に入れるようにした方が良さそうですね。

ソーシャルレンディング エーアイトラスト 監視委員会が再び勧告

2/22 証券取引等監視委員会はインターネット経由で融資を紹介するソーシャルレンディング業者のエーアイトラストを行政処分するよう金融庁に勧告しました。同社への処分勧告は昨年12月7日にも行われており、併せて建議も行われました。その後、12/14には金融庁から、すべての金融商品取引業務について1か月間の業務停止命令を含む行政処分が行われています。

最初に処分勧告を受けた時にも当ブログで取り上げました。「ソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト株式会社」「ソーシャルレンディング 金融庁は」の二つの記事も併せてお読みいただければ。。。

やはり溶け出していた資金

やっぱりこの会社おかしいですね。一度の立ち入り検査で2回も処分勧告食らう会社ってkuniも聞いたことありません。前回、当ブログで取り上げた時点では、集めたお金がどうなったのかについては全く分からない状況でしたが、今回はその辺りが少し解明されたようです。

取締役の山本幸雄氏が同社に紹介したファンド貸付先から、山本氏が実質的に支配する法人に、少なくとも15億8千万円が流出しているそうです。これを受けて同社のホームページでは、山本氏を解任したという役員異動のお知らせが出ています。また、「山本氏及び同氏が実質的に支配する法人に対する法的措置を検討する」とも書かれています。

勧告の内容

一つ目は、高速道路事業を貸付対象事業とするファンでにおいて、大手ゼネコンJVの名称を用いるなどして、あたかも国土交通省から発注を受けた事業の孫請けをしている業者へのレンディングに見せかけ、実はそうした実体のない貸付だったというもの。もう一つも同様に実体のないファンドであり、この二つについては「虚偽の表示」を認めています。

三つ目に、実態のないファンド、とまでは立証できなかったようですが、取得勧誘時の「30億円をボトムラインとして」という説明の仕方が、最低でも30億円の売り上げが予定されているかのような誤解を招くとして、「誤解を生ぜしめるべき表示」であると指摘されています。こちらは「虚偽の表示」と比較するとやや軽めの指摘です。

そして最後に、平成29年2月から30年11月までの募集総額52憶円のうち、少なくとも15億8千万円が流出していたという指摘です。態勢面では、事業実態や貸付先におけるファンド資金の使途等を把握するための管理態勢、および貸付実行後のモニタリング態勢について言及しています。

おまけ

以前この会社のHPには役員が紹介されていたと思うんですが、今は役員名簿が載ってません。さらに、今回解任された山本という取締役、就任が去年の10月なんですね。流出したお金を集めていたころはこの人取締役じゃないわけです。検査着手から取締役就任のタイミング、解任に至るまで、どうも良く分からないことが多すぎます。この取締役だけが働いた悪事ではなさそうです。なんだか大きな事件になりそうな予感がします。

不祥事対応での第三者委員会報告書と秘匿特権

皆さんは猫レンジのお話、ご存知でしょうか。米国でおばあさんが濡れた飼い猫を乾かそうと、電子レンジに入れてチンしてしまった。当然猫は死んでしまうんですが、おばあさんはレンジの取扱説明書にそのことが書かれていなかったとして、メーカーを訴え、勝訴したという都市伝説です。今では、それくらい米国が訴訟社会であるというたとえ話ですが、昔は本当にあった話のように伝えられてました。

2/11 日本経済新聞の記事「公表リスク悩む企業 不祥事対応での第三者委員会報告書」は、まさに訴訟社会である欧米と日本の違いを感じさせる記事です。

秘匿特権というのは、弁護士と依頼人のやり取りについては、裁判の証拠から外すことができるという権利で、日本にはない権利だそうです。米国における訴訟を準備せざるを得なくなっていた神戸製鋼は、秘匿特権を放棄したと見られかねないため、第三者委員会報告書の公表をあえてしなかったということのようです。

秘匿特権を放棄したとみなされた場合、当局調査や集団訴訟に対して、証拠をすべて開示せざるを得なくなるということですね。

日本の特殊性

一方で日本では、弁護士等で構成された中立の立場の第三者委員会が徹底的に調査し、結果を隠すことなく正直に公表する企業の姿勢を評価するお国柄。訴訟等で不利になる材料を提供することになるかもしれませんが、世論や社会を敵に回すよりは良いという判断があると思われます。

米国ではしばしば法外な(日本人から見て)賠償請求が認められるのを見聞きします。当局から受ける罰金なんかもそうですよね。日本では考えられない高い罰金を科せられ、その金額から、この会社は信用を無くしてもう駄目なんじゃないか、と思われる会社が結構その後も普通に存続します。

日本における賠償金(少額)と社会における信用の遺失(ダメージ大)=米国における賠償金(膨大)と社会における信用の遺失(小)、という関係が成り立ってるのかもしれませんね。日本では訴訟で負けてお金を払ったら決着とはなりませんが、米国では多額の金を払うので、それで決着してしまう文化があるのかもしれません。

第三者委員会の公正性と客観性

米国における訴訟との関係で、第三者委員会の調査結果を公表するかどうかという論点があることは理解しましたが、これも極端に突き詰めてしまうと、昔のオリンパスみたいに隠蔽に走ってしまうんじゃないかと心配になります。訴訟を控えてどこまで客観的な情報に蓋をするのか、そういう意味では同根ですよね。

米国等での訴訟を意識したとは到底思えない厚生労働省。第三者委員会の面談に幹部社員を同席させていたとか、という信じられないことが起きています。「第三者委員会の調査結果報告書を弁護士名で公表するかどうか」という話と、「第三者委員会の公正性と客観性を守ること」は別の話ですからね。

クロネコヤマト行政処分 過失と故意の違いについて

1/23 国土交通省はヤマトホームコンビニエンス株式会社に対して、行政処分および事業改善命令を行いました。この件については当ブログでも2回の連載で取り上げました。調査委員会が調査結果をまとめたのが8月の末でしたから、処分までに4か月を要しています。この間、国交省は何をしてたんでしょ。

引越サービスに関して不適切な請求

国交省の報道発表資料を見ると、この事件については「引越サービスに関して不適切な請求があったことに対して・・・」と、不適切という表現がされています。不適切検査や役所の不適切調査、ここ最近の日本は不適切だらけなわけです。

kuniがコンプラの仕事をしていた証券界は、営業員に対する行為規制が最も厳しい業界の一つで、やってはならない行為が法令や規則に山ほど定められています。また、何か事件が発生して顧客に迷惑をかけた際に、顧客の損失を埋め合わせるための手続きも複雑になっています。

大昔、証券会社の損失補てんが社会問題になった時代がありました。顧客にリスクを取って投資してもらう世界で、損失を補てんしていたんじゃ自己責任が問えませんし、誰もリスクなんか取りません。この時の経験により損失補てんが法律で禁止されました。そのため、何か事故が起きた場合も、その行為が損失補てんではなく、「証券会社に責任があるから顧客への適切な対応なんだ」ということをしっかり証明する必要があるんです。

そこで証券界では損失補てんが可能な、営業員や証券会社の行為を金商法の中で明確に定めています。不適切行為、法令違反、システム障害の3行為です。これら3類型のどれかに該当しているとき、初めて合法的に顧客の損失を埋め合わせることが可能になっています。

証券界における不適切行為(未確認売買、誤認勧誘、事務処理ミス)

証券界にもこのように不適切行為という行為が定められています。これには「未確認売買」、「誤認勧誘」、「事務処理ミス」の3種類があり、それぞれ「顧客の注文内容をしっかり確認しないまま取引を成立させた」、「顧客に事実を誤って認識させるような勧誘を行い、取引を成立させた」、「過失により事務処理を誤った」というもので、いずれも故意ではないが結果的に顧客に損失を与えた取引を指しています。

一方で、営業員または証券会社が意図して行った取引は不適切〇〇などとは言いません。法令に定められた「禁止行為」または「法令違反」です。これ以上の詳細については省略しますが、このように「不適切」という言葉と「法令違反」は明確に区別され、営業員等への処罰も全く違ってくるわけです。

過失と故意の違い 不適切の濫用

前置きが長くなりましたが、過失と故意について、もう少し意識した取り扱いが必要ではないでしょうか。「伝票を作成するときに間違えてしまって顧客から引越代金を多くもらってしまったこと」と、「このお客さんは気付かないだろうから多めに請求しようと意図して過大に貰ってしまうこと」を一緒にしてしまい、不適切な請求と呼ぶのは止めませんかということです。最近非常に気になるんですね。

不適切会計なんてのも最近よく聞くようになりました。シャープや東芝辺りからだったんじゃないかと思います。以前はしっかり粉飾決算と言い切ってました。新聞やテレビにとっては上得意の広告主だから、ソフトに見せたいのかもしれませんが、、、これもいただけません。「不適切」の濫用、止めましょう。