大和ハウス工業 中国の関連会社で不正行為

先日、2018年度の振り返りということで、大和ハウス工業の元営業所長が4000万円のキックバックを受けていた件について書きました。すると、書いた途端に別のニュース。4000万円のキックバックどころじゃありません。今回は円換算して約234憶円だそうです。

大連大和中盛房地産有限公司

プレスリリースによると、大和ハウスが中国現地企業の大連中盛集団有限公司との合弁により設立した大連大和中盛房地産有限公司が、今回の不正の舞台。大和ハウスにとっては持分法適用関連会社です。この約234億円全額が回収できなかった場合は、半分の約117億円を大和ハウスが損失計上することになるそうです。

不正行為の概要

この関連会社の経理担当者が、預金残高と帳簿に差異があることを発見、その翌日の3/13に社内で調査した結果として公表しています。なんと、合弁先から派遣されている取締役2名と出納担当者の計3名による不正の疑いがあるそうです。既に現地の捜査当局に業務上横領等の疑いで刑事告訴の手続きに入ったとしています。

ネットバンキングで現金が不正に引き出されたとのことで、現金の引き出しや送金が2015年以降複数回あったようです。大和ハウスは内部統制システムの見直しを進めるため、第三者委員会を設置する方針とのこと。

中国でのこの手の事件ってまともに解決できるんでしょうかね。これだけの金が動いていると、当局等の役人も軽く買収されちゃったりしてね。まぁ、昔の中国とは違って、国際問題になってしまいそうな、いい加減な対応はさすがにもうしないんでしょうけど。それでも、中国、韓国って鬼門ですよね。

ちなみに、この合弁会社、設立は2005年。読み方は「ダイレンダイワチュウセイボウチサンユウゲンコンス」です。意外にそのまま。

同社の情報開示対応

今回の件は事案発見後速やかに開示されており、いい感じなんですが。前回のキックバックの件が全く非開示のままというのが引っ掛かっていて、どうも素直にこのニュースも消化できないんですよね。

産経新聞によると、合弁先の建設会社がこの関連会社が開発した物件を無断で譲渡していたことが発覚し、昨年夏から両社の対立が深まっていたとも伝えています。ところがこの辺りの話はプレスリリースには出てきません。これって結構重要な情報じゃないですかね。

最後に、全然話が脱線しちゃうんですが、レオパレス21の問題を受け、「国土交通省が年間1千戸以上の共同住宅を供給している事業者を対象に、品質管理態勢に関する実態調査に乗り出す」と伝えられました。大和ハウス工業も大和リビングとかの関連会社でサブリースやってるみたいですし、調査の対象になると思われます。

キックバック 東邦システムサイエンス 大和ハウス

今年度も残りわずかとなってまいりました。期末の数字の総仕上げやら、来期計画の策定やら、サラリーマンには何かとバタバタする時期。お疲れ様です。 年度末ということで今年度の不正・不祥事を振り返っていましたら、ちょっと珍しい事例がありましたので、ご紹介します。

2件発生したキックバック

企業として架空の発注や水増しした発注を行い、その取引先からキックバックとして金銭を担当者が受け取っていたという類の不正です。今年度上場企業において2件発生していました(kuniが調べた限りでは)。東邦システムサイエンスという会社と、ダイワハウスです。いずれも企業の不正ではなく、役職員個人の犯罪ですね。

東邦システムサイエンス(4333)

元取締役の男が同社として総額約1億2,000万円の架空取引の発注を実行し、発注先の協力会社から発注金額の一部をキックバックとして受け取っていたという事件です。システム開発会社にはありがちな事件ですね。国税局の税務調査が発覚の端緒となったようです。個人の犯罪とはいうものの、会社の内部統制を整備し、監督すべき立場の取締役がとなると、会社としての不正・不祥事と言わざるを得ませんし、非常に悪質です。

社内調査委員会の調査結果によると、同取締役は約7年間にわたり、社内外の関係者と共謀の上、実行していたということ。この元取締役の部下である4名についても本件不正行為に関与していたことを認めています。

ちなみに、同社では内部通報制度については整備済みではあるものの、2017年度、2018年度上半期において、通報実績はゼロ。改善策の中では内部通報制度の実効性向上に努めることも書かれていました。内部監査の実効性向上についても同様に書かれています。

大和ハウス(1925)

こちらは元営業所長が、同社が手掛ける建設事業を巡って、取引先から約4,000万円のキックバックを得ていたというもの。東京国税局の税務調査を受けて、このキックバックが所得として認定され、所得隠しとして指摘されたんだそうです。

元所長がキックバックされた金銭、実は受け取っていたのは、妻が取締役を務めるシンガポールの会社で、コンサルティング名目で8,000万円を受領。これをキックバックした取引先企業の副社長と折半したということです。めちゃくちゃ、きな臭いです。

おまけにこの事件についてはダイワハウスは一切開示しておらず、関わりたくないような様子。当の元所長は同社から何のお咎めもなく退職金ももらって自主退職したとか。さらに、この事件にはあるキャバ嬢が関与していて、、、芸能ニュースみたいになってます。この事件はホント良く分かりません。

ソーシャルレンディング エーアイトラストに2回目の行政処分

何度か取り上げてきたエーアイトラスト、2月下旬に証券取引等監視委員会から行政処分の勧告が行われていましたが、3/8 金融庁(関東財務局)が2回目の行政処分を行いました。今回は第二種金融商品取引業の登録を取り消すという内容です。まぁ、予想された通りですね。

また、業務改善命令としては、顧客が出資した財産の運用・管理の状況等を精査して、顧客への説明を徹底することとか、出資した資金の顧客への返還に関する方針を策定して速やかに実施すること、とかが求められています。しかし、こういうのって履行されるんですかね。経営陣はまだ所在はっきりしてるんでしょうか。

ソーシャルレンディングってどうなんですかね

今でもこのソーシャルレンディングの世界って、アフィリエイトなんでしょうかねぇ、宣伝するというか煽るというか、そんなサイトがたくさん出てきます。各社の利回りランキングとかも掲載してるんですが、8%、10%とか、中には13%なんてのもあります。こうしたサイトに煽られて素人投資家が手を出していると思うと、、、。

この低金利で銀行は貸し出す先がなくて困ってます。地銀辺りはかなりリスクをとった先にも融資を拡大してきており、その積極性に警鐘を鳴らす向きもあります。そのような時代であるにもかかわらず、銀行から融資を得られない先がこのソーシャルレンディングの貸出先ですよね。投資家の皆さんはそういうことを考えたことあるんでしょうか。

さらに、10%の負債を抱えてもやっていけるということは、それだけ儲かるビジネスであるということです。それほど収益性の高いビジネスがあるとは考えにくいですし、そのビジネスに本当にずば抜けた収益性や将来性があるのなら、既存の金融機関が喜んで融資します。

その他の業者も

ネットで検索するとたくさん出てくるソーシャルレンディング業者。エーアイトラストの場合は経営者たちの経歴を見て、いかにもという感じでした。他の業者についても、既に行政処分を受けているみんなのクレジットだとか、maneoマーケットだとか、、、。なにやら一時期の悪徳FX業者の一斉摘発時期に似てきましたね。

証券取引等監視委員会と各地の財務局が検査に入ろうにも、なかなか全部を検査しきれません。一年、二年かかってしまうんじゃないでしょうか。悪徳業者はその辺りのことまで計算しているかもしれません。自分たちの順番が来る前に撤退、みたいな。

kuniはその他の業者まで全てを調べたわけではありません。中にはまともな融資先しか相手にしない、まともな業者もあるのかもしれません。それでも皆さん、是非慎重に投資してくださいね。それから、エーアイトラストに投資された皆さんの資金、できるだけたくさん戻ってくることを祈っております。

IHIでまた検査不正

3/9 日本経済新聞の記事です。IHIが3/8に記者会見を開き、航空機エンジン整備での検査不正を発表したとのこと。見つかった不正は2年間で211件。そのうち208件は必要な資格を持たない従業員が検査を行っていたようです。残り3件は規定と異なる手順で検査していたというもの。

3/5 日経でも報道

「IHIが民間航空会社から受託しているジェットエンジンの整備事業で不正が発覚し、国土交通省の立ち入り検査を受けていたことが4日、分かった。」 記者会見より前、この報道が先行しました。これを受けて同社が発表したウェブ上のお知らせがいけてません。

「本日の一部報道について」というタイトルで、「本日、当社の民間航空機エンジン整備事業に関する不適切な事象について、日本経済新聞朝刊などにおいて報道がなされましたが、これは当社が発表したものではありません」と知らせています。これに続けて、立ち入り検査で不適切な事象があったことが判明したことを認めてはいますが、書き出しの他人事のような台詞には違和感を覚えた方が多かったのではないでしょうか。今もそのまま掲載されています。

不正の常連

日経記事にも書かれているように、IHIは不正・不祥事の常連です。「本日の一部報道について」に見る開示の姿勢が、同社の体質、カルチャーを示しているような気がします。加えて最初の報道から3日経ってからの記者会見。こんなやり方だから新聞で取り上げる方にも力が入るというものです。

ちょっと脱線しますが、ホームページでの公表については是非KYBの姿勢を見ていただきたいです。ほとんどの会社が不正・不祥事に関するニュースやその後の更新情報を、プレスリリースのコーナーで言い訳程度に表示していますが、KYBは違います。トップページにほぼ全面にお詫び記事とともに更新ニュースを掲載しているんですね。本来のホームページのコンテンツはほとんど隠れてしまっています。

こんなところに会社の姿勢が表れていると思いますし、そのためかマスメディアのその後の追及も少ないように感じます。内部通報で発見対処できたことも含めてIHIとは非常に対照的です。

国内重工メーカーの優等生?

IHIはプラント建設や発電用原動機などの事業再編を進めており、「中核部門と非中核部門の線引きをはっきりさせている。国内重工メーカーの中では最も改革が進んでいる」と評価されていました。にもかかわらず、ガバナンスは付いてきてないんですね。

同社のグループビジョンでも、「航空エンジン事業において主導的地位を確保するとともに、宇宙開発事業においては推進系技術を中核として産業化を確立する」とあります。中核事業でこのありさま。そして、不正に対する残念な企業風土。昨年4月に内部通報があったにもかかわらずその好機を逃し、今回も初動が3日間遅れ、いやぁ、本当に残念な会社です。

765台が認定不適合 三菱電機のエレベーター

3/5 日本経済新聞の記事です。また、三菱電機のエレベーターで国の認定に適合していないブレーキアームが使用されていたとして、国土交通省が原因の究明と再発防止策の報告を求めたというニュースです。同社は今夏をめどに全てを認定適合品と交換するとしています。

国交省によると、三菱電機自身も適合しない材料を使用したブレーキアームに関して、再度強度計算をしており、必要な強度を有していることが確認されているとしてます。また、指定性能評価機関である「日本建築設備・昇降機センター」からも、このエレベーターについて安全性に問題はない旨の見解を得ているそうです。

エレベーター巻上機のブレーキアーム

ここまで読んでいただいた方には、かなり危険なお話のように見えたかもしれません。ただ、今回問題になっているブレーキというのは、巻上機の主たるブレーキではなく、各階にある扉が開いたまま動き出そうとした場合に自動でブレーキをかける。そのためだけのブレーキのようです。

おそらく通常は作動することがないブレーキなんでしょうね。資料上では「主たるブレーキと機械的に独立させた補助ブレーキを設ける」と書かれています。しかし、問題の本質は非常に危険なもので、主たるブレーキの方にも強度が足りないブレーキアームが使われていた可能性だってありそうです。

不適合は、エレベーター巻上機のブレーキアームを製造する鋳物メーカー(三菱電機の子会社)が生産システムに材料情報を登録する際に入力を誤ったことにより、強度の低い材料が使われてしまったとあります。三菱電機のチェックはどうやら効いていないようです。

戸開走行保護装置の義務化は平成21年9月から

戸開走行保護装置というのは、かご及び昇降路の全ての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降した場合に、自動的にかごを制止し、人が挟まれるのを防ぐ装置のことだそうです。建築基準法施行令の改正により、この装置が21年9月から義務付けられています。

一方で今回三菱電機が製造・設置したエレベーターで、この装置の認定仕様に適合しない765台のエレベーターは、平成21年10月から平成30年12月までの間に出荷されたエレベーターであるとのこと。この辺りのことについては、日経は報道していません。

ひょっとすると、法改正後に製造したエレベーター全部ということかもしれません。今回三菱電機が届け出たのは大臣認定番号で見て5種類のエレベーターのようですので、少なくともこの5種類のエレベーターは全滅ということですね。 

三菱電機では、昨年も別の子会社でゴム部品の検査データ不正が発覚しています。この事件を受けて、品質管理態勢の見直しを進める中でこの事案を自ら発見できたというところが、唯一救われる点です。