多角化の功罪

少し古いんですが、1/11 日本経済新聞の大機小機に掲載された記事のタイトルです。日本の企業と米国の企業、なかなか面白い目線で比較しています。kuniも以前からなんとなく思っていたことではあるんですが、上手く説明してくれています。

日本企業の長寿化

筆者は、「日本企業は株主の投資に応えるべく、事業の多角化により一時の繁栄にとどまることなく、継続的な存続を目指す」としています。一方で米国では「多角化で企業の存続を図ること、つまりリスキーな新規事業への投資よりも、株主への還元を優先すべき」と考えるとも。

また、この考え方は株主の思考によっているとも言っています。投資している企業がリスキーな新規事業に挑戦してくれなくても、その当該事業を手掛ける別の企業に乗り換えれば良いだけのことと言うんですね。たしかに、おっしゃる通りです。そのため多角化企業は米国では好まれないんだそうです。

日米投資家の違い

こうやって考えてくると、日本の企業が目指しているものと、投資家(株主)の目指すものとのギャップが気になります。例えば最近の個人投資家はどちらかというと米国的に、短期売買を好んでいるように見えます。日本企業を支えてきたのは、政策投資等で長期に保有し続けてくれる銀行等だったのかもしれません。彼らのような安定株主に報いるために多角化や企業の継続性が重視されてきたんでしょうね。

つまり、資金を提供してくれる銀行や持ち合い先の要請に応える形で、企業は継続性を重視し、そのために事業の多角化を進めてきた。ということ。ところが米国や世界の機関投資家からはそれが歓迎されず、外圧(これ死語か?)により持ち合いや銀行の政策投資を解消させる動きになっています。

ここでも日本の強さの根源が否定され、土台が切り崩されていってるようです。長期投資家が減少するという事象に企業の経営が合わせるなら、多角化は不要という結論になります。太く短くという米国流です。しかし、これは日本人に合ってるんでしょうかね。kuniは従来のスタイルの方があっているような気がします。

まとめ

投資家がいちいち投資先を変更することを心配することなく、企業が多角化や事業選択を適切に行うことで、長期にわたって継続的に儲けさせてくれる。このスタイルを維持していくためには、持ち合いや政策投資に代わる長期投資家を育成する必要があります。個人投資家にそれを期待するということでしょうね。

まとめ、と言いつつ、実はまとまっていません。銀行の政策投資、企業間の持ち合いを復活させる手もありだと思うんです。銀行の収益率は1%を切っています。一方で東証一部上場企業の配当利回りは2.48%にもなっています。カードローンやアパートローンで社会の信頼を裏切らなくても、政策投資で十分な収益率が維持できていたのではないか、とも考えられるわけです。