モルフォ 役員二度目のインサイダー取引違反否定

自社株でインサイダー取引を行ったとして、金融庁から課徴金納付命令を受けた同社元役員が、処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が24日、東京高裁でありました。裁判長は納付命令を取り消した一審判決を支持し、国側の控訴を棄却しました。

おさらい

デンソーとの業務提携という重要事実を巡るインサイダー取引。「モルフォのAI学習環境をデンソーが高度運転支援システム向けの画像認識開発に採用」という重要事実。2015年12月11日、この業務提携が公表されると、モルフォの株価は3日間ストップ高比例配分と暴騰しました。

この役員は同年の8/24と8/26に合計400株、1,595,000円でモルフォ株を買付けてるんですが、この時点でデンソーとの提携が実質的に決定されていたか(重要事実が発生していたか)どうかが争点になっていました。

二審の判決

課徴金納付命令を受けた同社元役員が処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決は、結果シロとなりました。15年8月上旬の時点では、デンソーとの交渉、検討などの作業は、モルフォにとって他社に対する営業活動と同じ程度と位置づけられていた」という見解です。

一審の判断を是認した、、、という結果ですが、kuniもこの見方で良いのではないかと思っています。M&Aや業務提携。いまどきの上場企業には様々な選択肢がその辺に転がっています。すべてをインサイダーと見られるとたまったものではありません。

前にも書きましたが、この役員が「買付に関してあらかじめ会社に了解を得ていた」というのは、今回の判決に関しても大きく影響してると思われます。

前田建設工業 役員によるインサイダー取引に課徴金(現インフロニア・ホールディングス)

証券取引等監視委員会は11/19、前田建設工業株式会社役員による内部者取引について検査し、法令違反の事実が認められたため、課徴金納付命令を発出するよう勧告を行いました。インフロニア・ホールディングス株式会社もこの事実を同日公表しています。

インフロニア・ホールディングス株式会社

インフロニア・ホールディングス株式会社は、準大手ゼネコンである前田建設や、前田道路、前田製作所の3社が共同株式移転の方法により、3社の完全親会社として設立(21年10月1日付)した持株会社です。同社が上場することで、前田建設、前田道路、前田製作所は上場廃止になっています。

前田建設の役員

前田道路を子会社化する際にはいろいろ揉めましたよね。インフロニア・ホールディングスが設立されるまでのプロセスは、前田建設が主導してきました。その前田建設の役員が今回のインサイダー取引の主役です。

監視委員会の公表によると、同社役員のインサイダー取引は計3回。まずは前田建設の増配と自己株取得の事実を公表前に知り、同社株を買い付けた行為。2019年2月の行為です。

二つ目は、前田建設工業が前田道路の株式を公開買付けすることについての決定を知りながら、公表直前に前田道路株式を買い付けた行為。2020年末から2021年1月にかけての行為です。

そして三つめが、前田建設工業、前田道路および前田製作所の共同持株会社設立(共同株式移転)による経営統合に関する事実を知りながら、その公表直前に前田道路株式を買い付けた行為。2021年2月の行為です。

要するに、インフロニア・ホールディングスが設立されるにあたり、内部者情報を知りえた場面全てでインサイダー取引で儲けていた役員。ということですね。課徴金の額は402万円と大したことはありませんが、行為そのものの悪質性はメチャデカいです。

バルミューダ株式 社外取締役がインサイダー取引 ジンズホールディングスCEO

バルミューダは11/18、「社外役員による社内規程違反に基づく社内処分に関するお知らせ」を公表しました。今年5月に社外取締役が、同社が定める売買承認期間以外のタイミングで同社株を買い付けたことに関する処分です。社外取締役は現ジンズホールディングスCEO。

取引の概要

開示では、「結果として内部者取引に該当するおそれのある当社株式の買付け取引を行うこととなり、社内規程に違反するに至りました。」と記されています。持って回った書きぶりでピンとこないのですが、、、。これ、明らかにインサイダー取引です。

バルミューダは5月13日午前11時ごろに、社外取締役に対し5月14~20日の同社株の売買期間を承認したそうです。で、その13日の午後に、同社は2021年12月期の連結業績予想の上方修正を発表しています。つまり開示を行った直後(インサイダー情報が存在しない空白期間)なら株式の売買をしていいよ、ということだったわけです。

が、しかし、社外取締役は13日の正午ごろに同社株を買い付けちゃったんですね。その日の夜中に同社に「誤って承認期間外に取引した」との連絡を入れているといいますが、しっかりインサイダー取引です。翌日には東京証券取引所や証券取引等監視委員会に事実関係を報告したそうですが。でもやっぱりアウトです。

ジンズホールディングスCEO

この買付け、「売買承認期間に関する錯誤によって行われたもの」であり、「悪意をもって行われたものではない」としていますが、この方、東証1部上場企業のジンズホールディングスCEOですよ。

社外とはいえ、取締役ですから、業績予想の上方修正に関する情報も当然取締役会で説明を受けているはず。で、公表前に買付け。にわかに信じられない事件です。さらに、同社はこの件をここまで公表していませんでした。

モダリス(4883) 元取締役が株式大量売却

モダリスは10/20、「当社主要株主の株式売却について」を公表しました。今年の春先、当ブログでも取り上げた、「大株主がロックアップ違反で株式を売却」という件があったため、念のため開示の内容を読んでみたら、やはり今回の件もただの売却ではなかったようです。

元取締役

株式を売却したのは、同社の元取締役で主要株主であるN⽒。共同創業者で社外取締役兼サイエンティフィックアドバイザーを務めていた東京大学の教授なんですね。今年3月の定時株主総会をもって退任されています。構造生物学の権威である科学者で、同社株式の14.79%を保有していた主要株主です。

違反行為

会社関係者でなくなった後1年以内の者も、会社関係者と同様にインサイダー取引規制の対象とされています。が、このN氏の株式売却、売却時にインサイダー情報を保有していない旨を証券会社へ伝えているようで、制度的には違反ではありません(もちろん保有していないことが事実だとして)。

問題は、モダリス社が退任後1年以内の役職員に求めている、売却可能期間と事前の確認という手続きが踏まれていなかったということです。当初は手続きを遵守して売却していたものの、途中から手続きをせず、結果的に9/27以降の売却が社内規定違反となったということです。

ロックアップ違反で懲りた?

同開示では、「取締役会で確認した⾃社株式売却に関する取り決めを反故にされたことは⼤変遺憾であり、極めて重要な問題であると考えたため本件を開⽰することとした」としています。ロックアップ違反で懲りたんでしょうかね。

万が一、監視委員会から目を付けられた場合、モダリス社の自社の立ち位置(当社として法令遵守が適切に実施されていたという)を明確にしておくという意味合いもありそうですね。

ジェイリース株 インサイダー取引事件の告発

証券取引等監視委員会は6/30、「ジェイリース株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について」を公表しました。このことを受けて、ジェイリース株式会社は7/1、「証券取引等監視委員会による発表について」を公表しています。

事件の概要

監視委員会の公表を受けて、ジェイリースとしては、「本件は当社株券に係る事案ではありますが、当社及び当社役職員による内部者取引への関与は一切なく、また嫌疑をかけられている事実もありません。」といいう事実を訴えているわけです。

確かにタイトルだけサラッと読むと、ジェイリース(もしくはその役職員等)が悪さをしたのか、、、って感じにも見えそうですね。お気の毒です。

事件は、ジェイリースと守秘義務契約を締結し、事業に関する検討をしていたJ・PROTECT株式会社の代表取締役が、知人に業務提携に関する情報を伝え、当該重要事実を公表する前に株券を購入したというもの。

利益を得させる目的をもって重要事実を伝達した代表取締役、重要事実を聞いて株式を買った知人、二人そろって金融商品取引法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で告発されたというものです。

遡ってみると

監視委員会の公表文では平成2年5月下旬としています。確かに業務提携が公表された5/25から株価はぶっ飛んでます。230円くらいの株価が5/28には444円まで。この知人さん、ジェイリース株式を9万株、約2270万円で買い付けたといいます。

買付け単価は250円くらい。1,700万円くらい儲けてますね。ここまで派手に買い付けて、バレないとでも思ってたのか。前にも書きましたが、インサイダー取引は絶対にバレるんです。