きらぼし銀行 4億6,000万円の不審送金「見逃し」疑惑

少し前になりますが、きらぼし銀行で、長野県内の会社社長が約4億6,000万円を送金した際、犯罪収益移転防止法などに基づく確認が不十分だった疑いがあり、金融庁が同行側から事情聴取したことが報道されました。

きらぼし銀行

きらぼし銀行は東京都民銀行、八千代銀行、新銀行東京が合併して誕生したきらぼし銀行を中核とする都市型地銀グループ。東京都、神奈川県北東部を主な営業エリアとし、中小企業と個人顧客をターゲットに総合金融サービスを提供する東証プライム上場企業です。

犯罪収益移転防止法などに基づく確認

社長は2か月弱の間に、会社資金を個人口座に移し、外国人名義を含む多数の口座に1回数百万円以上の単位で約80回送金し、犯罪収益移転防止法の関連指針などに抵触する可能性がありましたが、同行は送金目的などの確認を徹底しなかったということです。

同法は資金洗浄(マネー・ロンダリング)やテロ資金等が反社会的勢力に流れることを防止するため、金融機関等の取引時確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出の義務などの規制を定める法律です。異常な取引であることを立証する必要はなく、上記の確認や疑わしい取引ではないかと金融庁に報告するまでが求められています。

メガバンクでは送金依頼を拒否

なんとも情けない話ですが、この社長による送金、あるメガバンクではその異常性に疑問を持ち、途中から送金依頼を拒否していたそうです。しかし、きらぼし銀行では支店から本店に報告が上がったり、異常に気付いたりすることもないまま、約80回にわたって計約4億6,000万円を送っていました。送金先の口座の大半は、のちに捜査機関から「犯罪に使われた疑いがある」と認定されています。

内部管理部門に十分な人が割けないなど、いろいろ理由はあると思いますが、金融機関としての責務が果たせないなら、金融という事業を継続する資格はありません。

大黒屋 免税販売に関し約2億3千万円の消費税を追徴課税

中古ブランド品販売の大黒屋が東京国税局の税務調査を受け、2023年3月期までの2年間に約2億3千万円の消費税を追徴課税されていたことが報道されました。店舗の従業員が転売目的の外部業者に協力するなど、一部の行為は悪質だとして重加算税を課されたということです。

大黒屋

大黒屋は、バッグ、時計、宝飾品など中古ブランド品の買取と販売を中核とし、首都圏を中心に全国主要都市に店舗を展開するほか、インターネットを通じた商品の買取・販売も手掛ける東証スタンダード上場企業です。上場しているのは持株会社の大黒屋ホールディングスです。

追徴課税の概要

消費税法は原則として、来日6カ月未満の非居住者が購入した土産物や日用品などの免税を認めていますが、転売目的の購入などは課税対象となります。顧客がこうした要件を満たさない取引だったとして、追徴課税を受けるケースが相次いでいます。

大黒屋でも同様ですが、さらに一部の店舗では、中古ブランド品を国内で転売させる目的で買い手をSNSで募集していた外部業者に従業員が協力。連絡を取り合って買い手の来店タイミングを調整するなどし、中古ブランド品を免税価格で不正に購入させていたといいます。

こうなると不注意や不十分な手続きって話ではありません。悪意を持った不正行為です。大黒屋は「一部報道について」として開示を行い、昨年12月に公表済みの事案だと。不正を働いた従業員は退職済みだとも。ただ、この二つの開示では上記の不正行為については触れられていません。退職済みの従業員だから知ったことじゃない?

森永乳業 宮城県 給食の牛乳で体調不良600人超

宮城県内の小中学校で、4/25に出された牛乳を飲んだ複数の児童生徒が体調不良を訴えていることが報道されました。牛乳を提供したのは東北森永乳業(仙台市)。複数の給食センターから「児童生徒からいつもと違う味がするなどの訴えがあった」と申し出があったということです。

森永乳業

森永乳業は牛乳類、飲料、ヨーグルト、チーズ、アイスクリームなどの食品を製造販売する乳業大手。乳製品業界では僅差ながら売り上げトップで、雪印メグミルク、ヤクルト本社、明治HDがこれに続いていて、5位以下を大きく引き離しています(2021年~2022年のデータ)。

健康被害の状況

牛乳を提供したのは東北森永乳業(仙台市)で、この牛乳が提供されているのは県内12市町。このうち腹痛や嘔吐(おうと)などの体調不良が確認されたのは岩沼市、山元町、名取市、亘理町、角田市、多賀城市で、合計600人ほどの児童だそうです。既に保健所の立ち入り調査も始まっているようです。

こうした状況に対し森永乳業は4/26、「東北森永乳業仙台工場製造の学校給食用牛乳における風味差異に関するお申し出につきまして」を同社ホームページで公表しました。出荷時の検査、申し出のあった商品の検査、ともに結果(大腸菌群、生菌数、黄色ブドウ球菌エンテロトキシン、官能検査というすべての項目)は正常とのこと。

2000年に発生した雪印乳業の集団食中毒事件は確か病原性黄色ブドウ球菌が原因でした。今回のこの事件はいったい何が?

株式会社オカムラ食品工業 農産物漬物の不適正表示

少し前になりますが農林水産省は4/19、「株式会社オカムラ食品工業における農産物漬物の不適正表示に対する措置について」を公表しました。食品表示法の規定に基づく立入検査等を実施した結果、原材料等の産地等について、事実と異なる表示をするなど不適正な表示を行っていたということです。

株式会社オカムラ食品工業

オカムラ食品工業はサーモントラウトを国内外で養殖するほか、イクラや筋子をはじめとした水産加工品を製造販売する企業。青森県で国内初の大規模生食用サーモン養殖を開始、養殖から加工、販売まで一貫して手がける東証スタンダード上場企業(半年前に上場したばかり)です。

不適正表示

同社が製造・販売する農産物漬物(商品名「ねぶた音頭」)の原料原産地名について、原材料の大根に「中国産」を使用していたにもかかわらず、「国産」と事実と異なる表示をするなど、不適正な表示をし、一般消費者、ふるさと納税返礼品取扱事業者に販売したということです。

他にも、同じく原材料の数の子に原産地名「カナダ産」を表示すべきところ、これを表示していなかったというのも。全部で4点について不適切な表示として、農林水産省は食品表示法に基づき、表示の是正と併せて、原因の究明・分析の徹底、再発防止対策の実施等について指示を受けています。

タイミングの問題

以前、食品産地偽装が社会問題化したことがありましたが、今回のケースはほとんど話題になっていません。地方におけるふるさと納税返礼品の産地偽装の話題はあるようですが、今一つメディアも大きく取り上げませんね。特に足元では小林製薬の紅麹ばかりに世間の目が向いていたということも。

しかし、この農林水産省からの指導、オカムラ食品工業は同社ホームページで公表しているだけで、適時開示は行われていません。これはいかがなものかと思いますね。

江崎グリコ システム障害で「チルド食品」(冷蔵品)の出荷再停止

江崎グリコは4/22、「当社グループにおけるシステム障害について」を公表しました。基幹システムを切り替えた際に発生したシステム障害により、現在、一部の受発注及び出荷業務に影響が出ているということです。第一報は4/5に出ていたんですね。

江崎グリコ

江崎グリコは多くのロングセラー商品(「ポッキー」、「プリッツ」、「ビスコ」など)を持つ大手菓子メーカー。菓子、冷菓のほかに乳製品や食品原料なども展開。米国や中国、タイをはじめとする海外にも進出しています。もちろん東証プライム上場企業です。

障害の状況

洋生菓子「プッチンプリン」や乳飲料「カフェオーレ」のほか、果汁や清涼飲料といった冷蔵品を取り扱う全国の物流センターでシステム障害が起きているようです。常温や冷凍食品の出荷には問題は出てないみたい。5 月中旬の再開を目指して復旧作業に努めるとしています。

発生原因

このシステム障害、4 月 3 日(水)に、基幹システムを切り替えた際に発生した。と説明されています。開示では「基幹システムを切り替えた際」と説明されていましたが、のちの報道では、この基幹システムへの切り替えに340億円が投じられた、と説明されています。

ちなみに、この基幹システム刷新のプロジェクトを手掛けた主幹ベンダーは、デロイト トーマツ コンサルティングだそうで、プロジェクトは1年超も大幅に遅延していたそうです。1年超も遅延したうえでの本番、即障害発生、システム開発においては、あるあるなんですけどね。