金融庁職員、東証職員とその親族 東京地検特捜部が在宅起訴

東京地検特捜部は昨年12/25、インサイダー取引をしたとして金融商品取引法違反の罪で金融庁職員(裁判官で出向中)を在宅起訴、さらに別件で東証職員とその父親を在宅起訴しました。

金融庁職員

金融庁に出向していた裁判官の被告(32歳)は職務を通じて知ったTOBの未公開の情報をもとに、去年4月から9月にかけて自分名義で10の銘柄を、合わせて952万円分買い付けていたとのこと。数百万円の利益を得ていたといいます。

東証職員とその親族

東京証券取引所の「上場部」に所属していた社員(26歳)は、TOBに関する未公開の情報を父親(58歳)に不正に伝えていたとのこと。父親は、この情報をもとに3銘柄の株、合わせて1707万円分を買い付け、やはり数百万円の利益を得ていたということです。

インサイダー取引は必ずばれるよ

未公表の重要事実が公表され、株価が急騰(または急落)したケース。監視委員会は必ず当該銘柄の急騰直前の買い付け者(または急落直前の売り付け者)をリストアップします。もちろん証券会社の全面的な協力のもと。さらに、証券会社が把握している当該顧客の属性についても監視委員会に提出されるのです。

金融商品取引法に定められる法定刑は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はこれを併科です。インサイダー取引の番人であるはずのこいつら3名はもっと重い刑に処すべきですね(そうは出来ないけど)。

株式会社 Iーne インサイダー取引の疑いで社外取締役が辞任

株式会社 Iーneは11/29、「社外取締役による社内規程違反に関するお知らせ」と、「社外取締役の辞任に関するお知らせ」を公表しました。社内規程に基づく事前承認手続きを経ずに2024年11月6日に同社株式を売却していたということです。

株式会社Iーne

Iーneはヘアケア製品や美容家電などを開発し、通販サイトやドラッグストア、家電量販店などを通じて販売する東証プライム上場企業です。自社で製造拠点は有さず、製造は外部に委託するファブレスメーカーで、主力ブランドはシャンプー等のヘアケア製品を中心とする「BOTANIST(ボタニスト)」。

辞任の理由

社内規程に基づく事前承認手続きを経ずに2024年11月6日に同社株式を売却。この売却が社内規程で定める売買禁止期間中の売却取引だったということです。決算発表が近くなると、インサイダー取引を疑われかねないため、多くの会社が社内規程で売買禁止期間を設けています。

売却した11/6の同社株は終値で2,057円、その後11/8に決算発表しており、その翌日の株価は終値で1,880円となっています。明らかにこの後発表する決算内容が良くないことを知りながら売り抜けようとした。という見事なインサイダー取引ですね。ただ、同社的には、この事実を把握し、開示を行うとともに監視委員会へも報告しているようで、対応は見事です。

この社外取締役、結構有名な経営コンサルタントのようで、ファミリーマートやスマートニュースなどでも要職につかれています。過去にはマクドナルドでも。まぁ、全部辞任するしかないでしょうね。

インサイダー取引で課徴金納付命令の勧告 今度は弁護士が

証券取引等監視委員会は10/25、「株式会社アルファクス・フード・システムとの契約締結交渉者による取引推奨行為並びに同契約締結交渉者及び同社役員から情報伝達を受けた者4名による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について」を公表しました。

インサイダー取引

東京証券取引所のグロース市場に上場する山口県の「アルファクス・フード・システム」は去年6月に第三者割当の新株の発行を公表しましたが、都内の30代の男性弁護士ら4人がこの情報が公表される前に知人から情報を得て、それぞれこの会社の株を買い付けるインサイダー取引をしたということです。

さらに、新株の発行をめぐり交渉をしていた情報を伝えた知人についても、未公表の重要な情報を伝えるなどした金融商品取引法違反にあたるとしています。これら合計5名に対して証券取引等監視委員会は合計約1500万円の課徴金の納付を命じるよう金融庁に勧告しました。

誰が何を伝えてこういうことになったのかは、かなり複雑なので端折りましたが、ここで言いたかったのは5人の中に弁護士が含まれていること。このところのインサイダー取引で話題になってきたのが金融庁職員(出向中の裁判官)であり、東京証券取引所の職員でした。そして今度は弁護士。

どいつもこいつも、何でそんなこともわからないの?自身の立場をわきまえろや、ってやつらばかり。どうなってるのよこの国は。

野村證券 長期国債先物に係る相場操縦で課徴金納付命令の勧告

少し前になりますが、証券取引等監視委員会は9/25、「野村證券株式会社による長期国債先物に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の勧告について」を公表しました。今から3年前の大阪取引所に上場されていた長期国債先物に関する相場操縦です。野村証券に2176万円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告しました。

相場操縦

その手口は、大量の売り注文を出し、第三者の売り注文を誘引。価格が下落したのを受けて安値での買い注文を出して約定させ、売り注文を取り消すという手法。さらにこれと反対の取引を1日のうち交互に繰り返して相場を操作し、利益を得ていたということです。

金融商品取引法は、架空の売買や大量の注文を出すなどして意図的に株式や債券の価格を操る行為を「相場操縦」と位置づけ、公正な価格形成をゆがめるとして禁止しています。今回の件も相場操縦としては典型的な事件です。

国債の先物取引をめぐる金融機関による相場操縦が問題となったのは4例目だそう。うち2例については、シティグループ系の英国法人に1億3337万円。三菱UFJモルガン・スタンレー証券に2億1837万円の課徴金が課されました。

これらに比べると、業界最大手野村證券の2176万円は小さいですね。別件で調査している過程で見つけちゃったもの?この後デカい事案が出てくる? そんな感想を持ちました。

ミンカブ・ジ・インフォノイド株式でインサイダー取引 課徴金納付命令の勧告

証券取引等監視委員会は9/13、「株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド役員からの情報受領者による内部者取引に対する課徴金納付命令の勧告について」を公表しました。これを受けて同社も、「証券取引等監視委員会の公表事案について」を公表しています。

ミンカブ・ジ・インフォノイド

ミンカブ・ジ・インフォノイドは、ライブドアブログなどインターネットメディアを運営するメディア事業と、金融機関向け情報系ソリューションサービスを提供するソリューション事業を展開する企業。株式や投資信託など金融系情報・分析サービスも提供する東証グロース上場企業です。

事案の概要

ミンカブ・ジ・インフォノイドの役員であった者から、同人がその職務に関し知った、「LINE株式会社によって新たに設立される会社の全株式を取得し、同社をミンカブの完全子会社とする」という重要事実の伝達を受けた知人が、当該重要事実の公表前に、ミンカブ株式合計1200株を、買付価額合計約234万円で買い付けたというもの。このインサイダー取引に対し、金融商品取引法に基づき納付を命じられる課徴金の額は35万円です。

一方、ミンカブ・ジ・インフォノイドは公表文の中で、「当社及び当社役職員による法令違反の事実はございません」としていますが、株式等の情報・分析サービスを提供する企業の役員が、知人に上記のような情報を伝えていたことについては、同社はもっと深く反省すべきところです。役員の処分はどうなったんでしょう。

監視委員会は、「情報伝達行為・取引推奨行為の禁止」にまでは該当せず、という判断をしたようですが、この役員は違反行為を問われるべきだったと思います。