スーパーコンピューター 「京」 シャットダウン 「富岳へ」

8/30 理化学研究所は神戸市の拠点で、スーパーコンピューター「京」をシャットダウンしました。2012年から7年間稼働し、その役目を終えました。お疲れさまです。「京」は近く解体が始まり、同じ場所に後継機の「富岳(ふがく)」が構築される予定です。

「京」のいろいろ

開発中の2009年11月には、民主党政権下の事業仕分けで、「なぜ世界一を目指すのか、なんで2位ではダメなのか」と蓮舫議員に追及されていた、あのスーパーコンピューターですね。世界一には間違いなく意味があると思いますが、開発費1100億円、もう少しコストダウンできないものかとも思います。

スパコンの「京」は、単純な計算速度のランキングであるTOP500で当初世界1位になりましたが、その後はベスト5くらいの実力。引退直前のランキングでは20位まで順位を下げていました。ところが(ココが大事)、複雑なデータ処理の速度を表すGraph500というランキングでは9期連続で1位を獲得。今年6月時点でも1位を獲得しています。

ハードウェア

意外と知られていないのがハードウェア。kuniも今回調べて初めて知りました。全体で864のラックで構成されているそうで、全部でCPUは88,128個だそうです。一つ一つのCPUの性能は一般的なサーバーのCPUと大きく違わないみたいですね。OSはLinuxです。

で、圧巻はこの864ラック全体で1.5トンの重さだそうで、これを収める部屋は60m×50mで3000㎡の柱のない空間だそうです。オリンピックの競泳会場くらいの感じですかね。kuniも仕事の関係でデータセンター見に行ったりしますが、一部屋でこれほどデカいところは見たことありません。

後継機 富岳

2014年から開発はスタートしていて、やはり「京」と同じく富士通との開発になります。完成すれば「京」の100倍以上の計算速度と言われてます。理化学研究所のHPでは「富岳」の工事の進捗状況を公開していました。「富岳」を水で冷却するための配管工事や、電力を供給するための高圧ケーブルの敷設工事が行われていて、順調に進んでいるようです。再び、世界一になりましょう。

フィルターバブル 閉じこもるインターネット

日本経済新聞の「中外時評」で、「フィルターバブル」という言葉を見付けました。記事の内容はこの言葉と直接関係しないので省略しますが、kuniは残念ながら、「フィルターバブル」という言葉を知りませんでした。

イーライ・パリサー

「フィルターバブル」という言葉を最初に使ったのが、このインターネット活動家、イーライ・パリサーという人だそうです。2011年に「閉じこもるインターネット」という本を出版しています。

彼はこの本で「グーグルなどの検索サイトが、ユーザーの個人情報の分析によって、検索結果に個人の趣向を反映させるパーソナライズド検索を導入したことで、ネットがフィルターを掛けられた社会になった」と指摘しています。

要するにユーザーの気に入ったモノばかりを見せられることになるということです。逆に、自分の趣味、嗜好に合わない情報に触れる機会が極端に減少します。以前検索した商品の広告が出てくる程度なら良いんですが。究極には、自分と意見の合う人や情報ばかりと接触し続け、違う意見を持った人との意見交換といった重要な機会なくなってしまうといったことも。

見たくない現実、聞き入れ難い意見

リアルの世界では学校や会社といった場所で、見たくない現実も、聞きたくない違う意見と出くわします。こうしたコミュニティから締め出された人たちにはより深刻ですよね。いわゆる引きこもり。引きこもって、ネットの中にだけに住んでいると、このフィルターバブルに包まれてしまい、自身の偏見や思い込みを解消してくれる機会がありません。この状況がどういう結果を生むかは想像できると思います。

DuckDuckGo(ダックダックゴー)

グーグルでも設定を変更すれば、個人情報や履歴を利用しないようにできます。また、DuckDuckGo(ダックダックゴー)という、利用者のプライバシーの保護と利用履歴等を記録保存しないことを運営方針(売り)とする検索エンジンもあるようです。TOPページには「あなたを追跡しない検索エンジン」とあります。検索の場面に合わせて、kuniも使ってみようと思います。皆さんがご利用になる場合は、自己責任でお願いしますね。

サイバー攻撃のリスク一元管理 NRIセキュアテクノロジーズ

8/20 日本経済新聞の記事、「野村総合研究所(NRI)傘下の情報セキュリティー企業、NRIセキュアテクノロジーズは、情報セキュリティーに関するリスク管理をサプライチェーン全体で一元化できるサービスを始めた。」とのこと。

セキュリティ対策実行支援プラットフォーム Secure SketCH

このセキュリティ対策実行支援プラットフォーム自体は以前から提供されているサービスで、今回、これをさらに進化させたということのようです。企業の国内・海外拠点やグループ会社、さらに外部委託先等のサプライチェーンまでを範囲に含めた情報セキュリティ対策の状況を評価し、継続的に一元管理ができる「GROUPSプラン」の提供を開始したということです。

とても目の付け所が良いですね。大企業はそれなりのセキュリティ対策をとっていたとしても、その子会社や外部委託先ともなると、実際のところはお寒いものです。サイバー攻撃はその企業に繋がってさえいれば、最もセキュリティの甘い入り口(の会社を踏み台にして)から攻めるだけのことですしね。

大企業では経営陣が自社のことでさえ、なかなかセキュリティ対策に危機感を持ってくれないところ、子会社や関連会社のことなどほぼ考えちゃいません。そんな経営には、「この子会社Aや関連会社Bを踏み台にされたら、御社の基幹システムは簡単に乗っ取られますよ・・・」みたいなセキュリティ対策状況評価書を突き付けてあげないとだめでしょう。

子会社、関連会社の救世主に

大企業が実装するセキュリティ対策。その子会社や関連会社がまったく同じレベルの対策を取るのか、、、。かなりの重装備となりそのコストが収益を圧迫します(これってコンプライアンス態勢とよく似てます)。この問題も実は大きくて、、、これから結構話題になるんじゃないかと思います。

NRIセキュアテクノロジーズは、野村総合研究所(NRI)の100%子会社で2000年に設立された会社です。日本のICTを代表する会社であり、コンサルティング会社でもあるNRIの子会社、経営者に気付きを与えるところまででも大仕事。期待できそうですね。

キャッシュレス決済の利用率 20代が最も低い?

8/14 日本経済新聞の連載記事「ゼロ金利世代は今(2)」で、「キャッシュレス決済を利用していると答えた20代の割合は全世代で最も低い49.5%と、全体平均から9%も低かった」という調査結果を伝えていました。インターネット接続事業者大手のビッグローブが3月に実施した調査結果だそうです。

キャッシュレスに関する意識調査

ビッグローブのプレスリリースを見てきました。というのも、この調査結果に違和感を覚えたからです。20代から60代までの各世代の男女200人、合計1000人を調査対象としています。で、予想通り「インターネットを利用する方のうち、スマホを所有する人」を対象に「インターネット調査」で行っています。

結果は60代が一番利用率が高く(70.5%)、若くなるほど利用率が下がっていき、20代が最低という結果です。皆さんはこの結果をどう感じられたでしょうか。

デジタルリテラシー効果

調査対象者が問題です。スマホを使いこなし、ネットで回答できることを前提条件としていることから、調査対象者のデジタルリテラシーが相応に高いことが伺えます。20代の若者はほとんどの人が対象者になりうるわけですが、60代になるとスマホ・ネット操作ができる人の割合は小さくなると思われます。

つまり、20代はフィルターが掛かっていないが、60代はデジタルリテラシーの高い母集団になっている可能性が高いということ。選ばれし60代であるがゆえに、キャッシュレスに関する意識も高めの人たちから回答を得ているということではないでしょうか。

あくまでkuniが立てた仮説です。決してビッグローブは悪くありません。調査の対象者や方法を開示しているので、結果を見る人はkuniのようにいろいろと考えることが可能です。しかし、日経の記事はいかがなもんでしょう。20代は現金派が多いという記事に誘導するため、この調査結果だけを使ってます。今回のこの指摘が的を射ているかどうかは分かりませんが、新聞を読む際にはこういうところも気を付けたいですね。

2025年の崖 DX(デジタルトランスフォーメーション )

8/14 日本経済新聞で「デジタル社会を創る IT利用「負の循環」に終止符を」という社説がありました。グローバル化や少子高齢化が進むなか、社会の生産性を高めて付加価値を上げるにはデジタル技術の活用が不可欠としたうえで、それを妨げている現状を訴えています。

設備投資の中核に

社説にも書かれていたように、日本のIT関連投資は停滞してきました。ピークだった1997年から2割の減少だそうです。加えて、「そのIT投資の8割を古いシステムの運用や保守に使用しているのが実態」lという専門家の指摘もありました。いやぁ、これは耳の痛い話です。大企業の多くがそういう状況なんですね。

投資総額が少ないうえに、そのほとんどを古いシステムに使っているとなれば、米国や中国に置いていかれるのも当然ですわな。2025年にはこの構造が行き詰り、経済損失が膨らむとの指摘があるとしていましたが、社説ではこれ以上の深掘りはありませんでした。

2025年の崖 問題

「2025年の崖」、、、実はこれ、2018年9月に経済産業省が公表した「DXレポート」で指摘され、かなり話題になったお話なんです。DXは、デジタルトランスフォーメーション と読みます。で、このレポートでは、現状の課題を克服できなければ、「2025年以降、1年あたり最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある」と指摘しているんです。社説はこれを言いたかったんでしょう。

このレポートでは、DXとは新たなデジタル技術を活用して、新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変すること、と説明されています。一方この社説では、DXという用語はあえて使わず、デジタル社会という言葉で説明していますね。

このレポートが言っている克服しなければならない課題というのが、老朽化、肥大化、複雑化、ブラックボックス化してしまったレガシーシステムを放置していることです。そのためシステムの運行や保守に莫大なコストを費やすことになっているんですね。システム障害も増加します。加えて、このレガシーシステムの存在がDXの妨げにもなっているというわけです。

このような既存システムの刷新需要、かなり大きなものになりそうです。さらにシステムが刷新された後には新しいビジネスが生まれやすくなりますし、企業の経営改革も進むと思われます。米中には大きく引き離され、追い詰められた結果ではあるものの、ここから日本が再生する好機と考えるべきでしょう。