メガバンク 新卒採用減 米国債で巨額損失

4/2付の日本経済新聞、金融経済面は賑やかでしたね。三菱UFJ銀行の新卒採用45%減。検証、みずほ巨額損失(下)、三菱UFJ系証券2社合併。この日の日経は新元号「令和」関係に多くの紙面を割き、お祝いムードでしたから、金融界の惨状が目立ちました。

三菱UFJ銀行 新卒採用45%減

2020年春の新卒採用数を530人へということで、前年比45%減らすことを決めたとのこと。みずほや三井住友は既に今年度から先行して採用を減らしているので、三菱はちょっと遅れた感じですか。

一方で、新卒予定の大学生の就職志望先ランキングの方でも、3メガバンクは順位を大幅に下げています。採用は抑制しつつ、どう優秀な人材を確保するかが課題になるとか、質の高いデジタル人材にシフトするみたいなことも書かれてましたが、それはやっぱり人気のあるころにやっておかないとね。

あの志望先順位ではそれもかなわないでしょう。結局金融って、会社は違えど、やってること、志向すること、みんな一緒なんです。今までもそうだったし、たぶんこれからもそうでしょう。これくらいの巨大な産業がIT人材を本格的に求め始める。金融界が動くとデカいですからね。こうやってIT人材バブルは膨らんでいきます。

みずほ巨額損失(下)

こちらの記事も刺激的でした。メディアも含めて、ある程度好意的に見てきたみずほの巨額損失の計上ですが、この記事では同時に行う米国債の含み損の処理1500億円にフォーカスしています。

みずほに限らず、銀行は短期で資金を調達して米国債で運用しているんですが、そのドル資金の調達コストが運用利回りを上回る、逆ザヤの状況が続いています。昨年末辺りから逆転し、今のところ解消しそうにない。となると、このまま運用を続けていても損失の垂れ流しとなるわけです。

そこで、みずほはこの運用ポジションを解消してしまうという決断をしたということなんですね。ところが、その経緯について、「みずほは決断できぬままでいたが、金融庁は早期の損切りを水面下で促し続けてきた」とか、「新社長になり、新しい中期経営計画を作る前は絶好のタイミングとみて畳みかけた」などと伝えています。要するに、行政が主導した外債の損切りだったということのようです。

しかしまぁ、このストーリーって、、、やっぱり金融庁がリークしてるんですかね。メガバンクももちろんそうなんですが、地銀も外債でやられてる構図は全く一緒だと思われます。みずほがこんなふうに追い込まれたということは、、次は我が行、、、そんなインパクトはあったでしょうね。

投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果について

個人が投資用不動産を取得するために、銀行等が行う融資に関するアンケート調査の結果を金融庁が公表しました。ここでいう投資用不動産は、アパート、マンション、シェアハウス等と定義されています。昨年秋から銀行や信金に対して行ってきたアンケート調査ですね。

銀行の融資に関する姿勢

「一棟建(土地・建物)向け融資のリスク分析」というアンケート結果では、融資の規模、収益への影響度などの指標で、1行だけが突き抜けた回答になっています。まさに、他行の追随を許さないほど際立っているんですが、これって、やっぱりスルガ銀行なんでしょうか。

「紹介業者の業務にかかる適切性の検証」では、紹介業者の不適切な行為に関して、これをチェックするという着意がなかったことがうかがえます。昨年の4月以降はこれが改善し、一定程度のチェックが聞き始めていることも認められるようです。

「融資の審査に関する結果」では、顧客が給与所得者の場合に、給与明細等の書類の原本を必ず確認する銀行は25%にとどまっており、原本またはコピーで確認すると回答した銀行が83%となっています。預金通帳等、財産の状況を示す書類についても、必ず原本を確認すると回答した銀行はわずか18%です。

そしてこれら顧客の財産や収入を示す資料を、紹介業者経由で入手する金融機関が多数となっていて、紹介業者(例えばTATERUみたいな)が書類を偽装したりすることについてのチェックが効いていない状況ということになります。

今後の方向性

アンケート結果の資料の最終ページには、「今後の方向性」というタイトルで、金融機関に求められる対応が書かれています。
・ 紹介業者・サブリース業者・管理業者の業務の適切性の検証による取引方針の明定
・ 物件の売買価格の妥当性検証
・ 融資全期間にわたる収支シミュレーション
・ 顧客の知識や経験等の属性把握と必要なリスク説明の徹底
・ これまでの融資残について顧客保護やリスク管理の在り方の適切性を点検
ざっとこんな感じでしょうか。いろいろと求められてます。これだけ色々求められ、これを徹底していくと、銀行にとっても旨味のある商売じゃなくなるでしょうね。

最初にルール無視の違反行為で大儲けする業者あり。そういう輩が見付かると、一気にルールの引き締めが行われ、それ以降は規制でコストが増加し、ビジネスとしての魅力も希薄化する。規制だらけの金融の世界ではよく見る光景です。

融資実行額は減速

今回のアンケート結果、だいたい想像通りの結果になっています。しかし、投資用不動産への融資残高は膨らんでいってますが、融資の実行額は29年3月期をピークに激減してきています。今期も上期の引き延ばしで計算すると前期比で約20%の減少、ピーク時との比較では30%の減少というところでしょうか。悪質な紹介業者、サブリース業者が駆逐されていってると良いのですが。

タカタ元社員に課徴金 監視委が勧告 インサイダー取引

3/2 日本経済新聞で、証券取引等監視委員会が経営破綻したエアバッグ大手タカタの元社員9人がインサイダー取引に関わったとして、元社員に計773万円の課徴金を納付させるよう金融庁に勧告したことを伝えています。

記事では、「①事業の譲渡」という重要事実と、「②民事再生手続き開始の申し立て」という重要事実をチャンポンに書いているので非常に分かりにくかったんじゃないでしょうか。ここで少し整理しておきましょう。

重要事実①:キー・セイフティ・システムズ社への事業譲渡

平成29年6月26日にタカタはキー・セイフティ・システムズ社への事業譲渡という重要事実を公表します。それより前、業務執行を決定する機関が事業を譲渡することを決定したことを知りながら、5/11~6/6の間に6名が株式を売り抜けています。日経はこちらの重要事実である「事業譲渡」のケースを初めてだと書いてるわけですね。

重要事実②:民事再生手続開始の申し立て

同じ6月26日にタカタは民事再生手続開始の申し立てという重要事実を公表します。それより前、業務執行を決定する機関が事業を譲渡することを決定したことを知りながら、5/19~6/13の間に3名が株式を売り抜けています。このように合わせて9名の社員が重要事実を会社が公表する前に売り抜けたわけです。

課徴金の額の計算方法

9名はいずれも株価が400円~500円の間で売却しています。その後株価は下げ続け、公表日の6/26には160円まで下げました。そして公表後は2営業日で125円下げ35円になっています。課徴金の計算は、この公表後の2週間の最安値15円を基準に計算されています。

482円で4,100株を売却した社員の場合は
(482円×4,100株)-(15円×4,100株)=1,914,700円
と計算され、1万円未満の端数を切り捨てて、191万円が課徴金として課されています。

要するに、本来重要事実を知り得てから2週間以内に、最も下手な売り方をしたのと同じことになりますね。

インサイダー取引は他人事じゃない

インサイダー取引なんて言うと他人事のように思ってらっしゃる方が多いと思います。そんな悪いことしないよと。しかし、この事例はどこのサラリーマンにでも起こり得る状況です。この9名が一生懸命会社のために働いてきた社員であったとしたら、彼らも被害者です。

会社に勧められて持ち株会でコツコツためてきたのに、ある日突然無価値になるかもしれない。おまけに職も失うことになるかもしれない。200万円くらいの価値があるうちに売れれば。。。この極限状態でこういう誘惑に勝てなかったんですね。いや、法令違反になり課徴金が、、、なんてこと全く知らなかった人もいたかもしれません。

課徴金制度について(金商法、景品表示法、独占禁止法)

先日、TSUTAYAに対する課徴金納付命令について記事にしました。同社の動画配信サービス等に関する宣伝が、景品表示法違反にあたるとして、消費者庁が命令を出したというものです。kuniは証券会社におりましたので、金融商品取引法における課徴金には馴染みがあるものの、その他の法律に関しては詳しくありません。ということで少し整理してみました。

金融商品取引法(金商法)金融庁

金商法における課徴金制度は、証券市場の公正性や透明性を確保するため、証券市場への信頼を害する違法行為に対して、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す制度として2005年4月から導入されました。

制度の対象となるのは、不公正取引(インサイダー取引や相場操縦、風説の流布など)、有価証券報告書の不提出や虚偽記載、大量保有報告書の不提出や虚偽記載といった違反行為です。実態としてはインサイダー取引に対する命令が圧倒的に多いですね。

証券取引等監視委員会が調査を行い、課徴金の対象となる法令違反があると認めた場合、金融庁へ勧告を行います。その後金融庁長官から課徴金納付命令が出されるという手続きになります。なお、金融庁長官が課徴金納付命令を出すケースとしては、他に公認会計士法に基づくものもあります(今回は省略します)。

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)消費者庁

2013年度に、ホテル・レストラン等で、メニュー表示とは異なる食材を使用した料理を提供していた食品偽装等が社会問題になりました。このような一連の表示問題を受け、不当表示等の適正化に向けた体制の強化や違反行為の抑止を目的として、2014年に景品表示法が改正され、課徴金制度は同法が施行された2016年4月から導入されています。意外に最近のことだったんですね。

制度の対象となるのは、食品に限らず、あらゆる商品やサービスについて、実際より著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)と、実際より著しく有利であると誤認される表示(有利誤認表示)をする行為です。冒頭紹介したTSUTAYAが最新の事例ですね。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)公正取引委員会

法律の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることです。カルテル、入札談合等の違反行為を防止する目的で設けられています。公正取引委員会は、事業者等が課徴金の対象となる独占禁止法違反行為を行っていた場合、当該違反事業者等に対して、課徴金を国庫に納付することを命じます。独占禁止法における課徴金制度は歴史があり、その導入は1977年なんだそうです。

課徴金の対象となるのは、不当な取引制限(カルテル、談合)、排除型私的独占、支配型私的独占、共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用があります。今話題になっている、ネット通販の大手に対する調査は、まさにこの優越的地位の濫用に当たるかどうかの調査ですね。

この独占禁止法にかかる課徴金については、自主申告により課徴金が減免されるという、課徴金減免制度が設けられています。自主申告した申請順位ごとに減免率が定められています。

ソーシャルレンディング エーアイトラスト 監視委員会が再び勧告

2/22 証券取引等監視委員会はインターネット経由で融資を紹介するソーシャルレンディング業者のエーアイトラストを行政処分するよう金融庁に勧告しました。同社への処分勧告は昨年12月7日にも行われており、併せて建議も行われました。その後、12/14には金融庁から、すべての金融商品取引業務について1か月間の業務停止命令を含む行政処分が行われています。

最初に処分勧告を受けた時にも当ブログで取り上げました。「ソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト株式会社」「ソーシャルレンディング 金融庁は」の二つの記事も併せてお読みいただければ。。。

やはり溶け出していた資金

やっぱりこの会社おかしいですね。一度の立ち入り検査で2回も処分勧告食らう会社ってkuniも聞いたことありません。前回、当ブログで取り上げた時点では、集めたお金がどうなったのかについては全く分からない状況でしたが、今回はその辺りが少し解明されたようです。

取締役の山本幸雄氏が同社に紹介したファンド貸付先から、山本氏が実質的に支配する法人に、少なくとも15億8千万円が流出しているそうです。これを受けて同社のホームページでは、山本氏を解任したという役員異動のお知らせが出ています。また、「山本氏及び同氏が実質的に支配する法人に対する法的措置を検討する」とも書かれています。

勧告の内容

一つ目は、高速道路事業を貸付対象事業とするファンでにおいて、大手ゼネコンJVの名称を用いるなどして、あたかも国土交通省から発注を受けた事業の孫請けをしている業者へのレンディングに見せかけ、実はそうした実体のない貸付だったというもの。もう一つも同様に実体のないファンドであり、この二つについては「虚偽の表示」を認めています。

三つ目に、実態のないファンド、とまでは立証できなかったようですが、取得勧誘時の「30億円をボトムラインとして」という説明の仕方が、最低でも30億円の売り上げが予定されているかのような誤解を招くとして、「誤解を生ぜしめるべき表示」であると指摘されています。こちらは「虚偽の表示」と比較するとやや軽めの指摘です。

そして最後に、平成29年2月から30年11月までの募集総額52憶円のうち、少なくとも15億8千万円が流出していたという指摘です。態勢面では、事業実態や貸付先におけるファンド資金の使途等を把握するための管理態勢、および貸付実行後のモニタリング態勢について言及しています。

おまけ

以前この会社のHPには役員が紹介されていたと思うんですが、今は役員名簿が載ってません。さらに、今回解任された山本という取締役、就任が去年の10月なんですね。流出したお金を集めていたころはこの人取締役じゃないわけです。検査着手から取締役就任のタイミング、解任に至るまで、どうも良く分からないことが多すぎます。この取締役だけが働いた悪事ではなさそうです。なんだか大きな事件になりそうな予感がします。