ジェイリース株 インサイダー取引事件の告発

証券取引等監視委員会は6/30、「ジェイリース株式会社株券に係る内部者取引事件の告発について」を公表しました。このことを受けて、ジェイリース株式会社は7/1、「証券取引等監視委員会による発表について」を公表しています。

事件の概要

監視委員会の公表を受けて、ジェイリースとしては、「本件は当社株券に係る事案ではありますが、当社及び当社役職員による内部者取引への関与は一切なく、また嫌疑をかけられている事実もありません。」といいう事実を訴えているわけです。

確かにタイトルだけサラッと読むと、ジェイリース(もしくはその役職員等)が悪さをしたのか、、、って感じにも見えそうですね。お気の毒です。

事件は、ジェイリースと守秘義務契約を締結し、事業に関する検討をしていたJ・PROTECT株式会社の代表取締役が、知人に業務提携に関する情報を伝え、当該重要事実を公表する前に株券を購入したというもの。

利益を得させる目的をもって重要事実を伝達した代表取締役、重要事実を聞いて株式を買った知人、二人そろって金融商品取引法違反(内部者取引、情報伝達)の嫌疑で告発されたというものです。

遡ってみると

監視委員会の公表文では平成2年5月下旬としています。確かに業務提携が公表された5/25から株価はぶっ飛んでます。230円くらいの株価が5/28には444円まで。この知人さん、ジェイリース株式を9万株、約2270万円で買い付けたといいます。

買付け単価は250円くらい。1,700万円くらい儲けてますね。ここまで派手に買い付けて、バレないとでも思ってたのか。前にも書きましたが、インサイダー取引は絶対にバレるんです。

アイシン精機 子会社従業員のインサイダー取引

証券取引等監視委員会は1/29、アイシン精機子会社従業員のインサイダー取引について、課徴金納付命令を発出するよう、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して勧告しました。この子会社がアイシン精機に吸収合併されるという重要事実を知りながらの取引です。

法令違反の事実関係

課徴金納付命令対象者は、アイシン精機の子会社であるアイシンAWの社員であるが、その職務に関し、アイシンAWの役員甲がアイシン精機との合併にかかる基本合意契約の締結の交渉に関し知り、その後、同社の社員乙が職務上知った。

アイシン精機の業務執行を決定する機関がアイシンAWと合併を行うことについての決定をした旨の重要事実を、乙から伝達を受けて知りながら、上記重要事実が公表された令和元年10月31日午後1時頃より前の、同日午後0時30分頃、自己の計算において、アイシン精機株式合計200株を買付価額合計76万円で買い付けたものである。

なんでこんなバカなことを

上記法令違反の事実関係は、監視委員会の説明をほぼそのまま掲載してみました。合併という重要事実が公表されるわずか30分前に買い注文を出しています。こそっとトイレかどこかでスマホから発注したんですかね。インサイダー取引規制のことを知らなかったんでしょうか。

自社や関係会社の内部情報に基づくインサイダー取引、100%バレますからね。取引所は監視委員会から言われたままに証券会社の手口情報を提供しますし、証券会社はその手口(買い注文や売り注文)の顧客情報をすべて提供します。

76万円で買い付けて課徴金15万円。微々たるものですが、アイシン精機は「同従業員に対する社内調査を進めたうえで、厳正な処分を行いました。」と発表しています。おそらく懲戒解雇でしょう。皆さんも気を付けてくださいね。インサイダー取引は絶対割に合いませんよ。

モルフォ(3653) 役員のインサイダー取引 課徴金命令を取り消し

デンソーとの業務提携に絡みインサイダー取引を行ったとして、2018年に金融庁から133万円の課徴金納付命令を受けたマザーズ上場企業「モルフォ」の役員が、国に処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は1/26、請求を認め、納付命令を取り消しました。

インサイダー取引事件の概要

デンソーとの業務提携という重要事実を巡るインサイダー取引なんですが、当時のプレスリリースを見ると、「モルフォのAI学習環境をデンソーが高度運転支援システム向けの画像認識開発に採用」となっています。確かにインパクトのありそうな提携内容です。

2015年12月11日、この業務提携が公表されると、モルフォの株価は3日間ストップ高比例配分と暴騰。公表当日の株価4,115円が4営業日目には7,320円まで買われています。この役員は8/24と8/26に合計400株、1,595,000円でモルフォ株を買付けてるんですね。

この8月26日の時点でデンソーとの提携が実質的に決定されていたか(重要事実が発生していたか)どうかが争点になったわけです。。。で、結果はセーフということに。

ハッピーエンド?

課徴金納付命令の取り消し、日本経済新聞でも記事にしてるんですが、これを読む限り一件落着といった感じ。ところがこのモルフォのインサイダー取引、実は役員1人と社員9人が課徴金納付命令を受けてます。役員が上記のように8月に買付け、、、これはセーフ判定。

ところが残りの社員9人については、9月中旬以降の買付け、で多分アウトのままです。うち、7人は持株会への加入や拠出金の増額で課徴金食らってます。持株会は基本的には内部者取引規制の適用除外ですが、重要事実を知りながら持株会に新規入会したり、持株会への拠出金を増加したりすることは、適用除外の対象となりません。これは覚えておきましょう。

しかし、AIを開発する企業の従業員が金に目がくらんで善悪の判断を誤るとは。困ったもんです。

グローム・ホールディングス(8938) 課徴金納付命令

グロームHDは9/11、有価証券報告書等の虚偽記載について、金融庁から4395万円の課徴金納付命令を受けたことを公表しました。この日、ナイス株式会社(2400万円)、アルファクス・フード・システム(3577万円)、フリージア・マクロス(1200万円)も同様に課徴金納付命令を受けています。

子会社における架空取引

4社に対して課徴金納付命令が出たんですが、他の3社については別途当ブログでも取り上げてきましたので、今日はグロームHDについて。

グロームHDは今年2/4、同社の元子会社であるロジコムリアルエステートにおいて、過去の決算で不適切な取引行為が行われていた可能性があると公表。併せて社内調査委員会を設置しました。外部からの指摘により判明したそうですが、、、おそらく監視委員会でしょうね。

4/22、社内調査委員会から調査報告書を受領し、その内容及び再発防止策等を公表します。同社連結子会社ロジコムリアルエステートにおいて、架空の売上や外注委託料等が計上されていたというもの。代表取締役ともう一名の取締役が主導したとして解任されています。

架空取引等は子会社で行われており、同社がこれに関与した事実は認められなかったようですが、子会社の会計処理を連結決算において取り込むわけですから、結果的に同社の有価証報告書等が虚偽の記載になってしまったというお話です。

インサイダー取引も

調べていて初めて気が付いたんですが、グロームHD、ロジコムと名乗っていた2018年11月に、インサイダー取引で代表取締役社長等が起訴されてますね。第三者割当増資や他社との業務提携の情報を知りながら、公表前に同社株を買っていたという事件でした。頻繁に社名変更する会社、要注意です。

FXプライムbyGMOに対する行政処分の勧告 GMOフィナンシャルHD(7177)

証券取引等監視委員会は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づき、FXプライムbyGMOに行政処分を行うよう勧告しました。著しく事実に相違する表示のある広告をする行為が行われていたということです。

法令違反の概要

同社が提供する店頭外国為替保証金取引の取引ツールに係るシステムは、成行注文の場合、顧客が発注した時点から約定処理がなされる時点までの間に為替相場の変動が生じた場合、発注時点の価格と実際の約定価格との価格差(スリッページ)の発生を排除できない仕様となっているそうです。

このことを取締役や法務コンプライアンス部長等は認識しており、顧客からスリッページが発生しているとの情報も寄せられていたようです。そしてさらに、同社が調査を依頼した外部の調査会社であるA社の調査結果においても、実際には当社システムにおいてスリッページが複数回発生していたことが確認されていたとのこと。

にもかかわらず、ウェブ広告等の中に、「スリッページなし(0%)、A社調べ」という、著しく事実に相違する記事を掲載していたというものです。この行為は、金融商品取引業の実績に関する事項について、著しく事実に相違する表示であり、金融商品取引法第37条第2項に違反する行為です。

ちょっと勘違い?

今回の行政処分の勧告について、同社の親会社であるGMOフィナンシャルホールディングス(7177)は、8/4、「当社連結子会社(FXプライムbyGMO)に対する行政処分の勧告について」を開示し、顧客や株主に対する謝罪を行っています。

その中でこんな一文が。「「FXプライムbyGMO」は、証券取引等監視委員会より、著しく事実に相違する表示のある広告をする行為が認められたとして、金融庁設置法第20条第1項の規定に基づく勧告を受けました。」。

監視委員会の勧告は、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して行うものですので、同社が勧告を受けたわけではないんですね。ここはちょっと勘違いかと。