二酸化炭素排出 「実質ゼロ」目標

週末の日本経済新聞で「二酸化炭素排出 「実質ゼロ」目標に」という記事が掲載されました。政府の有識者会議は、日本から出る温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を今世紀後半の2070年ごろまでに「実質ゼロ」とする新たな目標案をまとめた。とのことで、その記事の中で紹介されていた技術の一つが、CO2を回収して都市ガスの主成分であるメタンにする技術です。

CO2を回収 メタンを生成

産業界から排出されるCO2と水素(これは再生可能エネルギーを利用して生産される電力により水を分解して生成)を反応(メタン化反応)させて、メタンを得るという化学反応になるらしいのですが、少々専門的になりますね。昔習った化学式では、CO2+4H2→CH4+2H2O となるようです。

二酸化炭素に水素を加えることでメタンと水を生成。メタンは電力を生むための発電燃料になり、発電で発生した二酸化炭素はまた水素を加えてメタンに、、、という循環ができるわけです。メタンは都市ガスの主成分ということですし、同じ燃料としては水素よりも扱いやすそうなところもメリットかもしれません。

技術的には既に確立しているようで、2014年に日立造船が水素と二酸化炭素から純度99%のメタンを作り出す技術開発に成功したと発表した。というニュースも報じられてました。

太陽エネルギーで燃料を作る人工光合成

二つ目の技術がこれ。昭和シェル石油が2016年末、ガス拡散電極を利用し、常温常圧下で水と二酸化炭素(CO2)と太陽光のエネルギーだけで、メタンとエチレンを合成することに成功したと発表しています。これも人工光合成技術の1つで、常温常圧下で太陽光のエネルギーのみで炭化水素などの有用な物質を生成できたのは「世界初」(同社)だそうです。

この昭和シェル石油の研究における炭化水素への太陽光エネルギー変換効率は0.71%。実際の植物が光合成により水と空気中のCO2からデンプンなどの炭水化物を生成する効率は一般的に0.1~2.5%程度とされていて、同社の成果は「自然界の植物の光合成と同レベル」だとのこと。

人工光合成は太陽光とCO2、水を用いて燃料や資源などの有用な物質を作り出す技術。というのがもう少し一般的な定義らしいです。再生可能エネルギー(太陽光)を利用し、なおかつCO2を削減しながら、有用物質を生み出せる技術として注目されており、研究開発が進んでいるようです。

政府の有識者会議が打ち出す「二酸化炭素排出 「実質ゼロ」目標」。かなり強気だなぁと思いましたが、それなりの裏付けはありそうです。期待したいですね。

クジラの死骸から40キロ分のビニール袋

CNNがショッキングなニュースを配信しています。フィリピンの海岸に打ち上げられた、アカボウクジラの死骸の胃袋の中から、約40キロのビニール袋が見付かったそうです。十分なエサが摂取できなくなり、脱水と飢えのために死んだと見られています。

アカボウクジラ

アカボウクジラは和名で、顔が人間の赤ん坊に似ていることに由来するそうです。成体の体調は7メートル弱、日本でも駿河湾に生息地があるほか、大西洋、太平洋、インド洋などに広く生息しているとのこと。クジラの中でも最も深く潜水する種類の一つで、137分間潜水したとか、2992メートルの深さまで潜ったりしたことが測定されていて、哺乳類の潜水記録なんだとか。。。

去年の11月には、インドネシアの海岸に打ち上げられたマッコウクジラから、6キロのプラスチックごみが、、、というニュースもありました。また、そのニュースの中では数か月前にも、8キロのプラスチックごみが出てきたクジラが居たとも書かれています。今回の40キロというのは衝撃的ですね。

プラスチックストローとウミガメ

プラスチックストローがプラごみ廃止運動の対象というか、シンボルになった原因として、ウミガメの鼻に刺さったストローの写真がネットで拡散したためだった、というお話を以前書きました。記事はこちら。今回は拡散するような写真はなさそうですが、40キロのビニール袋が出てきた、というテキストだけでも、そういう意味でのインパクトはありそうです。

CNNの原文では 40 kilograms of plastic bags ということで、プラスチックバッグと表現されていますが、日本語でいうところのビニール袋のことのようです。スーパーのレジ袋がとりあえずまた話題になりそうですね。

主要新聞の対応

CNNがこのニュースを伝えた翌日までのところ、グーグルで検索しても主要新聞はこのニュースを取り上げていないようです。これはどうしてなんでしょうね。ネットのニュースとしては多くのサイトが取り上げているんですが、新聞はなぜか反応していません。

昨年末に日本政府が国際捕鯨委員会を脱退し、商業捕鯨を再開することを決定したというニュースがありました。kuniとしては、非常に違和感のある決定だったんですが、このことと、なんか関係あるんでしょうかね。ちなみに、昨年11月のインドネシアの件は新聞でも報道されています。

また話が脱線してしまいそうですので元に戻しましょう。フィリピンやインドネシアで見つかったクジラのお話でしたが、外国の出来事ということでは済まされません。高い倫理観を持つ日本人としてどう向き合っていくのか。また、高い技術力を持つ日本として何ができるのか、貢献できるのか、真剣に考えていきたいですよね。

再生可能エネルギー バイオマス

先週末の日本経済新聞に、東京電力とイーレックスという会社が再生可能エネルギーの電力を中心に販売する新会社を共同で設立するという記事がありました。ここでの再生可能エネルギーによる発電はバイオマス発電のことのようです。ということで今回はバイオマス発電を取り上げました。

何度か書きましたが、政府は昨年改定したエネルギー基本計画で、再生エネを将来の主力電源にすると明記しました。総発電量に占める再生エネの比率を現在の16%から22%~24%へ引き上げる計画になっています。

バイオマスはカーボンニュートラル

バイオマスという言葉は何となく知っていたものの、実際にどうやって発電するのかまでは分かりませんでした。調べてみると、直接燃焼方式、熱分解ガス化方式、生物化学的ガス化方式と、大きく3種類があるそうです。つまり、結局のところは燃料を燃やして電力を得るわけですね。じゃぁ、二酸化炭素は発生するじゃん。ってことになるわけですが、バイオマス発電については、カーボンニュートラルという考え方をするそうです。

カーボンニュートラルというのは、「バイオマスは燃焼すると当然二酸化炭素を排出しますが、もともとその二酸化炭素は植物などが成長する過程で、大気中から吸収したモノであり、トータルとして二酸化炭素の量は変化しない(増加しない)」という考え方なんだそうです。ん?分かったような、、、いまいち納得できないような、、、。

一方で、再生可能エネの太陽光発電や風力発電などが気象等に左右され、発電量が計算し難いのに対し、1日24時間の連続運転できる点がバイオマス発電の強みとのこと。うまく組み合わせることが重要になりそうですね。

イーレックスのバイオマス

イーレックスのバイオマス発電はパーム椰子の種からパーム油を搾油した後のヤシ殻を燃料にするんだそうです。屋外保存できる燃料として今注目されているとか。現在、ヤシ殻を燃料とする国内最大級のバイオマス発電所を運営していて、今後も6発電所を計画しているようです。

東京電力は水力発電

記事に戻りますが、一方の東京電力は水力発電により作られた電力を拠出すると書かれています。新会社としては、ESGへ積極的に取り組む企業向けに、再生可能エネにより発電された電力を売り込もうというお話です。

東京電力は国内に164ヶ所も水力発電を運営しているそうです。kuni的にはこの水力発電も気になっています。大規模な水力発電所の建設候補地は既になくなってしまったと言われていますが、ダムを造らない小水力発電なんてのもあるらしいです。この辺りのお話もまた別の機会に。

洋上風力発電 石炭火力に代わる切り札

新法が成立し、政府の補助制度などの後押しもあり、だんだん洋上風力発電の周辺がにぎやかになってきました。遠浅の海が少ないなど、課題もあるものの、脱石炭を促す世界の潮流に乗ってきたって感じですね。海外企業も含め、関連事業への新規参入の話題も増加してきています。

国内の洋上風力発電 総事業費2兆円

3/13 の日本経済新聞記事のタイトルです。みずほ銀行の試算によると、国内で計画される洋上風力発電の総事業費が2兆円に達するとのこと。新法の成立や国の補助制度といった礎もさることながら、環境に配慮する「ESG投資」におけるあらゆる業界からの評価も大きく前進させた感じです。

みずほ銀行が試算というのも不思議に感じた方もあったでしょうか。銀行にとってもESGは他人事ではありません。石炭火力発電関係への融資がやり玉にあがるご時世です。銀行としてもESGにおいて高い評価を得られる融資を拡大したいわけですね。で、銀行がそれを試算していると。

記事の最後のところで、「洋上風力発電は事業規模が大きく、複数の金融機関がプロジェクトファイナンスで資金を出す。アセス手続き前の案件も含め、10件は3メガバンクが主幹事として融資を検討しているとみられ、みずほはこのうち5件に助言している」とあります。大規模な太陽光発電の事業においても、メガバンクによる同じ形態の融資が見られました。

世界の電力 石炭火力重荷

同じ日の日経にはこういうタイトルの記事と、「日本、地方で依存度高く」という記事も掲載されています。石炭火力発電は二酸化炭素排出抑制のための追加の環境対策費用により高コスト化しており、特に規制が強い欧州では採算が悪化しているという記事です。

また、後者の記事は、日本では地方電力ほど石炭火力への依存度が高く、今後これが高コスト化していくだろうというものです。最も石炭火力への依存が高いのは沖縄電力だそうで、最も低い東京電力の5倍になってます。自然という観光資源が生命線の沖縄。その沖縄が最も依存度が高いというのは皮肉ですね。

ESGの潮流はもう止められないでしょう。日本においても新たな環境規制が導入される(導入せざるを得なくなる)のはほぼ間違いないでしょうし、再生エネへの転換は待ったなしの状況です。

記事の最後では、中部電力の社長さんの「資源の少ない日本で石炭火力は重要な電源」という発言も掲載されていました。電気事業連合会の会長さんという立場もあり、各方面への配慮が滲む発言なんでしょうが、ちょっと不用意な発言ですね。ESGの魔女狩りはもう始まってますよ。

新素材 CNF(セルロースナノファイバー) 環境負荷軽減

2/24 日本経済新聞に「新素材 CNF 用途拡大」という記事で、植物由来の新素材である「セルロースナノファイバー」が紹介されていました。

CNFはナノメートルのレベルで細かく切断した木の繊維を、高速で衝突させ一体化させた素材と説明されていて、樹脂などの素材と組み合わせて使うことで、鉄よりも軽く、強度は5倍、耐衝撃性・耐熱性にも優れるとしています。既にカーボンとか存在しているので、今更鉄と比較してもしょうがないような気もしますが。

経済産業省が1兆円市場を期待する新素材

食べられる特性を生かして、そばや食パンなどに添加することで、もっちりした触感が生まれる、なんて用途もあるみたいです。他にも化粧品やアパレル、建築業界での用途を紹介していました。CNFの製造には、製紙会社の製造設備が使えるため、製紙各社が開発を競っているようです。

経済産業省はかなり強気の見通しを持っているようで、30年に関連市場を1兆円規模に育てる構想を掲げているとのこと。

注目度が高い理由

日経ではほとんど触れていませんでしたが、CNFが注目度が高い理由は、環境負荷の軽減に効くからということのようです。CNFは木材などから採れる、天然由来の材料であり、計画的に植林を行うことを前提に考えると、再生産が可能であり、枯渇の心配がないというわけです。

最近流行りの言い方をすれば「持続可能性がある」というやつですね。SDGsでいうサスティナブルです。持続可能性が高い素材は、いずれそうでない素材にとって代わることでしょうし、既に環境意識の高い企業はそのような動きを取り始めているようです。欧州ではガラス繊維強化樹脂(FRP)の使用を規制する動きがあるそうです。

経済産業省が1兆円と言っているのも、日本だけのことですし。世界の市場となるともっと期待できるはずです。CNFに関しては世界的権威のある研究者も日本に二人いるそうですし、実用化に向けた技術開発についても、日本が最も進んでいるらしいです。

現在商品化という点で最も期待されているのは樹脂の補強材としての用途で、製品としては構造材になるそうです。環境規制の追い風を受けて自動車の部品での実用化が市場としては最も期待されているとのこと。他に環境省のプロジェクトとして、家電製品や建設資材のプロジェクトもあるようです。

CNFは環境時代の追い風を受けた、カーボンと並ぶ重要な次世代材料とみられています。CNFには多彩な性能があり、かつ、未発見の性能もまだまだあるのではないかと言われているようです。とても将来が楽しみな素材ですね。