拡大してきた魚介類の陸上養殖

8/16付けの日本経済新聞に、拡大しつつある魚介類の陸上養殖について伝える記事がありました。「漁獲競争が激化し、水産資源の枯渇が懸念される中、食料確保と環境保護の両面から『陸で育つ魚』に熱視線が集まる」、という触れ込みです。

紹介されていた企業と魚種

日経がまとめていた主な陸上養殖事業(上場企業のみ)は次のようなもの。マルハニチロ(サクラマス、アトランティックサーモン)、ニッスイ(マサバ、バナメイエビ)、JR西日本(マサバ、ヒラメ、トラフグ)、関西電力(バナメイエビ)、安藤建設(トラフグ)、ゼネラル・オイスター(カキ)といったところ。子会社での参入という意味では、三菱商事や三井物産の名前もありました。

最大の魅力は

陸上養殖の最大の魅力は、天然物や海上養殖において課題となる寄生虫リスクを低減できることでしょう。食中毒の防止などで付加価値を高めることが可能です。アニサキスの問題でサバはなかなか生でいただくことができなくなりました。前にも書いたけど、酢でしめても効果なし。

生ガキにあたるのも怖いですよね。ノロウィルスや腸炎ビブリオ、貝毒を含むカキを生で食べることで発生する食中毒です。そうしたウイルスや細菌を含む海水(や、食物連鎖)から切り離された陸上養殖は非常に魅力的です。

地方自治体にとっても

昨年夏に2ヶ月ほど田舎に帰省していたんですが、まぁそこら中に耕作放棄地やらがあふれていて、これだけの土地があったら陸上養殖の誘致ありじゃないか、と思いました。空き家や耕作放棄地に悩む地方自治体にとっても非常に付加価値の高い事業だと思います。

「地球無風化」 風力発電はどうなる?

11/21付けの日本経済新聞に、「『地球無風化』、電力確保に難題」という記事がありました。異常気象の一種に「渇風」なるものもあるらしいです。欧州では2021年夏に風がほとんど吹かず、平均風速がこの数十年で最低になった国もあったそう。これ、ちょっとシャレになりません。

地球無風化

地球上の風は北極および南極と熱帯地域の気温差によって引き起こされるんだそうです。気温差が大きいほど風力は強まりますが、最近の北極では赤道直下より温暖化が進行し、両地域の気温差が縮まっているため、ジェット気流(偏西風)が弱まっているといいます。

実際のところ、欧州の北西部や中央に位置する国々では、年間平均風速が統計を取り始めた1979年以降最も、あるいは2番目に低くなっているようです。もちろんこうしたデータをもってすぐに、気候変動によって長期的に風速が落ちるという「地球無風化」であるとは断言できないようですが。

風力発電

脱炭素の実現には欠かせない存在となりつつある風力発電ですが、あたりまえに風が吹かなければ電力を作ることはできません。今のところ問題提起されているのは欧州だけのようですが、日本でも同じことが起こらないとは言えませんよね。偏西風の変化による異常気象は既に現れています。

地球無風化、ここに来てやっと洋上風力発電に本腰を入れようとしている日本にとっても、非常に悩ましい問題です。今後長期にわたって再生可能エネルギーを確保するには、風力発電に偏ることなく、電力源の多様化を図っていかなければならない・・・ということでしょうか。

肥料高騰 下水汚泥からリンを回収

神戸市や松山市、福岡市、佐賀市などで、自治体の下水処理場で発生する下水汚泥を肥料に再生し、地元の生産者に供給する取り組みが広がっています。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに肥料価格が高騰するなか、下水汚泥の資源化が注目を集めているようです。

リン

佐賀市の事例などを読んでみると、コストを1/100に抑えられるみたいな報告もあるみたいです。肥料に用いるリンはほぼ全量を輸入に頼っているようで、このリンを下水汚泥から回収するということらしいです。全国の下水汚泥には、国内農業に使われる2割分にあたる約5.1万トンのリンが含まれているんだとか。

官民共同で

こうした動きを受け、農林水産省と国土交通省は10/17、下水処理の過程で発生する汚泥の肥料への利用拡大に向けた官民検討会を立ち上げました。中国やロシアからの輸入が滞り、足元で肥料の原料は価格が急騰中。下水汚泥から肥料の原料となるリンを回収する技術支援策などを協議し、年内メドに方向性を示す予定だそうです。

リンはほぼ全量を海外からの輸入に頼り、そのうち7割超が中国産なんだそう。そのため肥料価格の高騰を受け、農産物の価格が大幅に上昇しています。家計へのインパクトも非常に大きく、今後ロシアや中国との貿易を断ち切っていくためにも、この下水汚泥からリンを回収するというプロジェクトは非常に有用だと思われます。

このように、リンを含む下水汚泥は資源としてかなりのポテンシャルがあるものの、「下水汚泥に有害成分が含まれているのでは」という疑念も付きまといますよね。このイメージを払拭していくことも課題です。国産肥料をどこまで育てられるのか、注目です。

カーボンファーミング カバークロップ とな?

9/11付けの日本経済新聞に、「EUが炭素貯留で法制化 農業、脱炭素の主戦場に」という記事がありました。これまで食糧供給を優先し、農業は温暖化ガスの排出削減の対象外としてきましたが、農業についても踏み込むことになったというお話です。

カーボンファーミング

カーボンファーミングとは、炭素貯留農業のことだそうで、そこで得たカーボンクレジット(削減量)を市場で売却できるようにするそうです。売却収入が得られることで、農家にとっては脱炭素を進めるインセンティブ(動機付け)になるというもの。

カバークロップ

カバークロップとは、被覆作物のことで、もともとは土壌浸食を防ぎ土壌中に有機物を加えて土壌改良に役立つ作物のことらしい。カーボンファーミングを進めるうえでの一つの方法のようで、カバークロップを植えることで炭素を土壌中に貯留できるんだそう。

農業のことは分からん

日経の記事の概要自体は冒頭に書いたように非常に分かりやすいものなんですが、記事中に出てくる用語に専門用語が多すぎるのです。カーボンファーミング、カバークロップのほかにも、不耕起栽培だの、畝間だの。畝間なんて読み方も分かりませんでした。ちなみに(うねま)と読みます。

食糧供給優先で温暖化ガスの排出削減の対象外だった農業にまで法制化の波が。記事は欧州連合(EU)の話題でしたが、米国でも既にバイデン政権が取り組みを始めているとのこと。カーボンファーミング、間違いなく日本でも話題になってきそうですね。

デジタル・プロダクト・パスポート DPP とは

デジタル・プロダクト・パスポートという言葉に初めてお目にかかりました。全デジタル製品に割り当てる旅券、という意味で、欧州連合(EU)が27年にも導入し、内外企業に取得を義務づけるんだそうです。21世紀の欧州で、モノにパスポートが必要になるってことのようです。

デジタル・プロダクト・パスポート

パスポート(冊子というよりQRコード的なもの)を持たない製品はEU域内に入れなくなる?。どうやら脱炭素と循環型経済でEUが先行しようとするための施策のようです。製品がどこで採掘された原料を使い、どこで最終製品にされたか。その間、製品はどう運ばれ、二酸化炭素(CO2)を合計どれだけ出したか。

こんなこともパスポート上で電子的に把握できるようにするんですね。このようなデータをもとに、欧州の環境基準に達せず、認証機関のお墨付きが得られなければ、EU域内企業にも海外企業にも販売許可を与えないという仕組みだそう。ワクチンを〇回接種した証明がないと、入国できない、、、みたいなルールですね。

そんなもん、どれだけ正確さを証明できるんでしょう。って疑問が起きますが、モノをネットにつなぐ情報機器や技術は多数存在し、改ざんを許さないブロックチェーン(分散型台帳)技術、データを流通させる域内プラットフォームももう確立ずみだといいます。あとは制度の詳細を詰め、EU各国の合意を取り付ける作業に絞られつつあるといいます。

日本の意識

この手の話題に触れるたび、欧州は環境問題に本気なんだなぁ、と感じさせられます。それに比べると日本の意識というのは、、、。とりあえず世界中が叫んでるから、姿勢だけは正しましょうとか、取り組む姿勢だけは見せましょう、みたいなのが多いですよね。

コスト削減、に関しては日本も先端を入っているように見えますが、こういうことにももう少しシビアに取り組まないとなぁ。そんな感じがします。