また郵政? ゆうちょ銀行に公正取引委員会の実態調査

10/19付け日本経済新聞に「キャッシュレス決済、手数料設定を調査へ 公取委」という記事がありました。キャッシュレス決済の実態調査、調査対象に想定するのは、主に金融機関。というソフトな書きぶりでしかありませんが、おそらく調査対象の筆頭はゆうちょ銀行だと思われます。

優越的地位の濫用

ゆうちょ銀行自身が2019年5月8日に開始したスマホ決済サービス「ゆうちょPay」。これにあわせてか、他の金融機関とは大きくかけ離れた、法外な手数料を要求し始めた。という話がありました。

スマホ決済サービスを利用する場合、利用者はクレジットカードや銀行口座を登録し、チャージ(入金)してから利用するケースが一般的です。銀行がスマホ決済事業者に請求する手数料は各行で異なりますが、1回当たりのチャージで数十円程度といわれています。

この手数料、ゆうちょ銀行はチャージ金額の1%を要求してきたというんですね。チャージする金額にもよるんでしょうが、他の銀行の数倍のレベルだそうです。

市場の価格とかけ離れた著しく高い料金を一方的に設定しているとか、不当に取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定している、といった点が争点でしょうか。ゆうちょ銀行の市場におけるシェアを考えると、事業者が取引先を変更できる可能性が低く、優越的地位が認められる可能性がありそうです。

一周回ってまたゆうちょ銀行

バタつく郵政、元はと言えばゆうちょ銀行の高齢者への不適切な投資信託販売でケチがつきました。そしてかんぽ生命の保険の不適切販売。さらにこれらの問題に対する経営陣の間抜けな対応で一気に大炎上中です。

一周回って今度はゆうちょ銀行の優越的地位の濫用。公取委から排除措置命令とか出ちゃうんでしょうか。これまたマスメディアを賑わせそうですね。メガバンクは大丈夫かな?彼らもゆうちょ銀行と同じ立場ですし、API接続の手数料についても調査するみたいです。さて、何が出てきますやら。

野村證券 山陰合同銀行(その2) 証券仲介プラットフォーマー

山陰両県に広く強固な顧客基盤を有する山陰合同銀行グループと、金融商品取引業務に関する豊富なノウハウや商品ラインナップを有する野村證券とが相互の強みを活かし、地域経済の活性化や高齢化の進展とともに、人生100年時代への備えや次世代への資産承継など、多様化するお客様のニーズに応えるべく、全く新しい証券ビジネスモデルを構築するため本提携に至りました。(両社プレスリリースより引用)

証券仲介プラットフォーマー

以前この提携を取り上げましたが、今日はもう少し深掘りしてみたいと思います。このビジネスモデルの強みは、以下のような感じです。
① 山陰合銀、ごうぎん証券は証券システムが不要となる
② 山陰合銀、ごうぎん証券は野村のノウハウを得てコンサル機能が強化される
③ 野村は顧客対応を合銀グループに任せ、店舗を廃止し要員配置を最小化できる

冒頭で引用したように、プレスリリースではこの新しいビジネスモデルについて「全く新しい証券ビジネスモデル」とかなり強気でアピールしていますが、会見ではややトーンダウンした感じに聞こえました。今のところ最強の証券仲介プラットフォームだと思われますが、一方で少し気になることも。

①の強み、つまり合銀やごうぎん証券がこの提携で捨てることになる証券システムのことなんです。地銀や地銀の証券子会社は通常独自に証券システムを構築することはありません。証券業務用に作られ、多くの証券会社等が利用しているシステムに便乗する形でシステム導入するんです。

中堅証券や地銀等で最も多く利用されているのがSTARⅣという証券システム。その数は50社以上と言われています。で、、、このSTARⅣというシステムを提供して稼いでいるのがNRIという会社。そう、野村総合研究所なんですね。今でも野村ホールディングスが筆頭株主です。

野村證券 vs NRI

合銀グループがSTARⅣを使っているかどうかは確認できていませんが、野村證券が今後もこのビジネスモデルを拡大していくと、NRIをはじめとした証券システム会社の事業領域が一社ずつ消えていくことになるわけです。これって悩ましいですよね。野村の会見でいまいち強気の発言がなかったのはこのせい?、、、とkuniは勝手に推測しています。

毎月分配型投信が人気回復? 地銀における顧客本位の業務運営(2)

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)は、その後も残高が増え続けているようで、9/26時点で8185億円となっています。日経の記事で紹介されていた8月末時点から500億円の増加ですね。

9月は中間期末、各金融機関は何とか収益が欲しい場面です。また、この商品は販売する金融機関が非常に多く、証券会社が37社、銀行が58行となっていて、各社とも困ったときにはもってこいなんですね。

ネットで検索してみると

この「商品名」と「投資信託販売ランキング」で検索してみました。出てきた金融商品取引業者のホームページで、投資信託の8月の販売ランキングを見てみるとやはり想像していた通りの現実がありました。

まず、最も嫌な予感があったスルガ銀行。やはりピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)が販売金額ランキングトップになっています。前月比横ばいの表示になっているので、7月もトップだったということでしょう。他にも日経で紹介されていた純資産残高9位のラサール・グローバルREITファンドが3位に入っています。何も変わってないですね、この銀行。

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)が販売金額ランキング上位になっている地銀は、十六銀行(1位)、山形銀行(2位)、北海道銀行(1位)、足利銀行(2位)、大分銀行(2位)、福岡銀行(1位)などが出てきました。ちなみに、山形銀行と大分銀行は7月販売分が1位のようです。

あくまで、検索結果で上位表示された銀行を見てきただけで、チェックした地銀の半分以上がこんな具合でした。メガバンクや証券会社ではこういう状況はみられません。金融庁の毎月分配型投信への批判のトーンがダウンしたこと、逆に稼げない銀行には金融庁からキツイ指導が入るという危機感が増してきたこと。。。

こんな状況で、なりふり構わず、収益第一で走らされてるんでしょうね。経営者たちは気付いてるんだろうか。

毎月分配型投信が人気回復? 地銀における顧客本位の業務運営

少し前になりますが日本経済新聞に「投信、毎月分配型が人気回復 実力を見極めるには?」という記事がありました。毎月分配型投信は5月から4カ月連続で純資産が増加しており、8月末の投資信託の純資産残高上位10本のうち8本が毎月分配型とのこと。

毎月分配型投信には需要がある?

金融庁の強力な指導の下、大きく残高が減少していった毎月分配型投信でしたが、ここへきて復活してきたようです。高齢者にとって毎月収入があるというのは魅力であり、顧客ニーズはある。営業員たちは必ずそう言うんですね。確かにそういうキャッシュフローの金融商品に対するニーズはあるでしょう。

ただし、それはあくまで毎月分配金が受け取れることに対するニースであって、その原資が何に投資されているかとか、高い手数料とかに対して十分な理解を得たうえでのものかどうかが重要です。多くの場合、これらについて高齢者は営業員任せで理解していません。

今でも元本を取り崩して分配(いわゆるタコ足)していることを理解していない顧客もいるのではないかと思います。顧客のニーズではなく営業員のニーズであることが多いんですね。

ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)

8月末時点での純資産残高1位は、ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)で、7657億円。6~8月の3か月間で1078億円の増加となっています。この商品なんかも、先ほどの注意点が理解されているとは思えない商品です。

販売時手数料は3.24%(税込み)で、信託報酬等が1.8%程度の商品です。要するにこの投信を購入して1年間運用した時点で、顧客が支払う手数料等は5%に及びます。この低金利の時代に5%ですよ。販売した業者には手数料と、信託報酬の半分程度が入ってきますので、1000万円販売したら約40万円の収益、、、とまぁ、非常においしい商品なんです。(販売手数料は販売業者により差異があります)

このように、顧客本位とは言えない投信販売がまた復活し始めたのでしょうか。長くなりましたので、、、続きは明日。

口座維持手数料の導入を検討 三井住友信託銀行

産経新聞の取材に対し、三井住友信託銀行の橋本社長が「口座維持手数料」の導入を検討する考えを明らかにした。というニュースがありました。

口座維持手数料

構造改革によるビジネスモデルの再構築が求められている銀行。構造改革の柱の一つと考えられているのが、この口座維持手数料の導入です。銀行の収益拡大に加え、収益の安定化をもたらすというメリットがあります。

とはいうものの、預金者にとって銀行は無手数料で預金を預かってくれると思ってますし、口座維持手数料なる言葉も知らない人が多いと思われます。導入した銀行から他行への預け替えや、複数の銀行口座を持つ預金者のメイン口座への集約といった動きが予想されます。銀行間の競争の構図が大きく変化しそうです。

まぁ、そんなことも当然考えられるわけで、以前から何度も検討はしてみたものの、実現できずにいる。というのが銀行の本音かと思います。最初にやるところは勇気いりますね。

米国の事情

この口座維持手数料、米国では結構スタンダードな手数料のようです。2017年度の口座維持手数料収益は、351億ドルに達し、非金利収入の約15%を占めています。kuniが読んだレポートでは、ウェルズ・ファーゴでは金利のつかない口座で月額10ドル、金利のつく口座で月額15ドルの口座維持手数料を徴求している。とありました。それぞれ預金残高が1500ドル、10000ドル以上あれば免除という条件は付いています。

また、すべての銀行が徴求しているわけではないらしく、おもに中小規模の銀行では口座維持手数料がかからないことが多いとも。

メガバンクから導入してみたら

日本でもメガバンクから導入してみたらどうでしょう。メガバンクと付き合う必要のない顧客は地銀や信金なんかに流れるでしょう。米国でも大手はブランド力もあり導入しているけど、中小は導入していないみたいな構図に見えますしね。同じような構造にしてみたらどうでしょうね。

「適当なこと言いやがって」って銀行の人に怒られそうです。けど、やってみなきゃ分からんよね。今回調べて、初めて知りましたが、SMBC信託銀行では月額2000円の口座維持手数料を取ってますね。ソシエテジェネラルやらシティバンクを統合してきた名残でしょうか。