静岡銀行 高卒採用27年ぶりに再開

1/28付け日本経済新聞の記事です。27年ぶりの高卒採用だそうです。静岡県の高校を卒業し、大学の夜間コースまたは通信制大学に進学することが条件。進学に要する受験料や学費は同行が全額負担するんだそうです。この動き非常に興味あります。

学費全額負担

高卒採用自体は金融機関では珍しくないんだそうですが、学費等を全額負担するというのは極めて異例とのこと。いや、そりゃそうでしょう。kuniが知る金融機関では高卒採用なんかまったくやってませんよ。そのくらい企業側は高校生に興味を持ってきませんでした。

日本の貧困、格差社会、そんな言葉をよく聞きますよね。経済的な理由で大学進学をあきらめる、能力のある高校生は決して少なくないでしょう。そんな学生にチャンスを与えようという施策です。と、kuniは受け止めましたが、みなさんはどうでしょう?経済的に厳しい学生の将来を担保に、青田買い・・・みたいな捉え方した人もいますかね。どっちが正しいという話でもありませんが。

スポーツ選手なども

日経の紙面ではカットされてましたが、高卒のほかにも、アマチュアスポーツ選手や音楽などの活動に携わる人材も正社員として採用するんだそうです。企業がスポーツ選手を、、、というとすぐに社会人チームを作って、、、みたいに考えがちです。しかし、考えてみれば自社でチームを持つ必要はないわけです。

チームで宣伝する。が目的だったんですね。ではなくて、何かに打ち込む若者を支援してあげて、自社で働いてもらう。が目的になっています。現役を退いた後も働けるというのは、アマスポーツには非常にありがたい話です。人は集まってくるんじゃないかな。

静岡銀行って全くご縁がなかったんですが、頭柔らかいですね。私の知ってる銀行員たちは決してこんな発想しないです。まぁ、だからこそ地銀トップクラスなんでしょう。そのへんにある社会課題を自行の戦略にしっかり結び付け、かつ自行の課題も解決する動きですね。

日本郵政 増田社長 就任記者会見

1/9 6日に就任した郵政グループ3社長の記者会見が行われました。日本郵政の増田氏、日本郵便の衣川氏、かんぽ生命保険の千田氏のお三方です。日本経済新聞では「郵政3社長の会見要旨」として掲載、これを読みました。

増田社長の会見は良い感じ

3社長の会見要旨としていますが、実際にはほとんどが増田社長の発言ですね。会見そのものも彼がほとんど喋ってたんでしょうか。増田社長の発言、これがなかなか良い感じです。

ただ、「政府保有株の売却の時間軸を明示することはできない」などときっぱり言われちゃって、株式をさっさと売ってしまいたい政府関係者にはがっかりな内容だったかもしれませんが。

発言の要旨のまとめ

「再発防止策を講じて一歩一歩、信頼を回復していく。会社にとって悪いニュースこそすぐ共有し、どう克服するかを考える。総務省からの情報漏洩問題はしかるべき調査をすべく準備を進めている」

しばらくは前向きな成長ストーリーを投資家に示せないのか、という記者の質問に対して

「いま業務停止命令を受けている当社グループが投資家に夢を語ることはかえって信頼を失う。最大の危機的状況の時は、投資家も市場もまずは足元を見ろという声が多数だと思う。」

ステークホルダーが気にしている情報漏洩問題や、まだ表面化していない営業姿勢の問題についてもしっかりと取り組む姿勢を表明してます。既に漏洩先の上級副社長さんは辞任されてますし、経営陣の刷新でうやむやにしてしまいがちなところ、偉いです。

今のガバナンス、コンプライアンス態勢が危機的な状況であり、これを建て直すまでは事業の成長を語るなんぞありえない。そのことをしっかり認識されているからこその発言ですね。外部から招聘した増田社長、なかなか期待できそうです。

ただ、「言うは易く行うは難し」、、、なんです。巨大な組織の態勢建て直しというのは。頑張っていただきたいものです。

郵政グループ3社長 引責辞任へ 後任候補 増田寛也氏

かんぽ生命保険の不適切販売問題を受け、日本郵政、かんぽ生命、日本郵便の3社長が辞任するようですね。予想どおりというか、経営者として初動を誤り、この手の不正・不祥事が発生した際、最も避けるべき展開になったというしかありません。

増田寛也氏

郵政の長門社長の後任には、元総務相で、郵政民営化委員長も経験し、郵政事業に詳しい増田寛也氏を充てる方向で調整に入ったと伝えました。総務省つながりがあるような人をまたなんで?と思いましたが、そうでもないみたいですね。

総務大臣を経験したのは、2007年9月から2008年9月の1年間だけみたいです。もともとは建設省に入省された方で、退官後に岩手県知事に当選。知事を3期務めています。県知事時代の最高支持率は78%におよび、同じ時期の都道府県知事では最も支持率の高かった知事だったようです。

千田哲也氏

かんぽ生命の植平社長の後任には、旧郵政省出身の千田哲也副社長で調整する方向と、日経は伝えていましたが、、、これがちょっと引っ掛かりますね。前総務次官が行政処分情報を漏えいした事件で、旧郵政省つながりの上級副社長が批判されました。

菅官房長官も「日本郵政の取締役に総務相OBが就任するのは行政の中立性、公平性の確保の観点から適切でない」と発言されてました。高市氏もそう発言してましたし、他にもそういう意見は少なくなかったと思います。

千田氏は総務省ではなく前身の郵政省ですが、約20年間郵政省の官僚です。現在、代表執行役副社長でもあり、いわゆる持ち上がりになります。郵政発足時からいる人材は登用できるということらしいですが、よく分からない理屈です。最後に聞こえてきた日本郵便の衣川和秀氏も含めて、この方々は適任とは思えませんね。

今年も一年間、ご愛読いただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。では皆さま、よいお年をお迎えください。

都留信用組合に対する行政処分(その2)

支店長の不正を公表後、読売新聞が他の支店における不正の情報をつかみます。6/5、読売の取材攻勢に対して明確に否定する専務理事。ところが、この取材を契機に役員ミーティングが開催され、翌々日の6/7に3支店、3案件についても公表されることになりました。

案件の把握時期

この不祥事3件、社として概要を把握したタイミングは2018年8月、2019年3月、同年3月、といった具合で、元支店長事案を公表する時点では、既に詳細までを把握していながら、当局への報告もせず、公表もしていなかったということです。

当局報告を行わなかった理由

この組合では、コンプライアンス担当理事である前専務が、当局への届け出を行うかどうかの裁量を持っていたようで、3件の不祥事とも前専務へ情報集約が行われ、損害の補てんが行われていることなどを考慮し、報告は不要との判断に至っている、と報告書は推定しています。また、専務以外の者が報告不要という結論に関して、何らかの意見をした形跡もないとしています。

報告書では、「不祥事を表面化させないという強い隠ぺい体質があるとまでは認められない」としています。が、これはあくまで決定プロセスにおける状況を描写しただけのこと。結果的にはレピュテーショナル・リスクを回避するための隠蔽行動そのものです。

報告書ではこうした体質を「不祥事は内密かつ穏便に処理するという不祥事対応に関する『事勿れ主義』の発想」などと表現していました。

不祥事3件についてはガバナンスの問題

この3件の不祥事については、これを発生させてしまったことに対してよりも、当局へ報告せず、公表もしなかったことへの批判が大きいようです。コンプライアンス担当役員の判断に対して何のけん制も効かない理事会や監事のガバナンスの問題ということですね(株式会社では取締役会と監査役に相当します)。

財務局の行政処分の命令では、2番目でこのことが指摘されています。「理事会及び監事による経営監視・牽制が適切に機能する経営管理態勢の確立」。

都留信用組合に対する行政処分 特別調査委員会調査結果も

12/23 関東財務局は都留信用組合に対して、健全かつ適切な業務運営を確保するための業務改善計画の提出・実行を命じました。提出期限は令和2年1月31日。同日、都留信用組合は、「不祥事件に関する特別調査委員会調査結果」を公表しています。

不祥事件の概要

今回不祥事の概要を振り返りましょう。今年、5/29、支店長(50代男性)が顧客から1億9,500万円を着服していたことが公表されました。その後、6/7になって3支店3名の職員が顧客のお金を着服していたと公表します。そして6/14、特別調査委員会の設置が公表されています。

元支店長事案

現役支店長時代に着服が見付かっているわけで、元・・・とは書きたくないんですが、報告書でこう書かれているので、元支店長事案とします。この事案、なんと1994年から不正が始まっています。なんと25年間にわたり、不正行為がバレずに続いたんですね。

最初の不正行為は親族の定期積金を無断解約し、その後も掛金を毎月着服するところから始まります。取引先とのゴルフや飲食のためだといいます。その親族の定期積金の満期が近付くと、親密な取引先から500万円を借り入れて返済。その後この借入の返済のために、別の顧客の定期預金を無断で解約。

この時、着服したお金の返済を目論んで行った株式投資(信用取引)で失敗し、不正の連鎖に完全にはまってしまいます。得意先担当(ヒラ)の彼は、こうしたことを繰り返しながら、支店長にまで昇格し、支店長として勤めた3支店でも不正を継続。最後に顧客からの問い合わせで、今年4月に発覚しています。

なぜこれほど長期間発覚しなかったか

「なぜこれだけ長期間不正がバレなかったのか」という疑問がわきます。7回の転勤では前任者と後任者の間で引き継ぎがあるはず。また、次長や支店長に昇格する際には、それなりのチェックもあるでしょうにね。この辺りの詳細の考察は報告書に任せるとして、一点だけ気になったことがあります。

「エリア人口の減少に対応するため、営業力強化が行われ、その一環として本部の管理部門が縮小されている。そのため、ビジネスモデルに応じた不正や事故が発生するリスクに見合う内部管理態勢となっていない。」という報告書の警告です。

何とか黒字にするために、収益を増やすために、内部管理部門を縮小。地銀や信金も全く同じ状況でしょう。地域金融機関における不正リスク、実は足もとでかなり大きくなっているのかもしれません。

3支店3名の不正については次回にでも。