三井住友アセットマネジメント 三菱UFJ国際投信 直販に

2/5 日本経済新聞に「投信、個人に直接販売 若者開拓へ購入手数料ゼロ」という記事が掲載されました。三井住友アセットマネジメント、三菱UFJ国際投信が自社が運用するテーマ型投信を手数料ゼロで顧客に直接販売するという内容です。

運用会社による顧客への直接販売(直販)

これまでネットを通じて投信の直販を行うのは独立系の運用会社ぐらい。もともと銀行や証券会社の子会社として設立され、その銀行や証券会社に投資信託商品を提供してきた銀行系、証券系運用会社は直販に踏み切れませんでした。

銀行や証券会社の営業力で販売してきてもらった(残高を積み上げてもらった)経緯がありますので、彼らの営業体に脅威となるノーロード投信(販売手数料が無料の投信)を直販することは避けたかったわけです。忖度してきたんですね。

三井住友アセットマネジメントは銀行系では珍しく、4年前から直販を行ってきた運用会社です。ただし、三井住友銀行やSMBC日興証券が販売している主力商品の中には三井住友アセットマネジメントの商品はそれほどないようです。だからこそ踏み切れたのかもしれません。

一方の三菱UFJ国際投信はインデックス型を中心に直販を開始するようです。インデックス型投信については、銀行も証券会社もネットチャネルで販売手数料ゼロの商品扱ってますので、今のところそれほどニュース性はなさそうです。

証券系投資信託運用会社が追随するか

「投資信託の保有期間が短すぎる」、「毎月分配型投信はいかがなものか」、「販売手数料が高すぎる」。ここ数年金融庁が求めてきた投信に関する改革の主なものです。顧客本位の業務運営ですね。三井住友アセットマネジメントが直販に関して小さいながらも風穴を開けていったとして、問題は今後証券系運用会社がこれに追随するかどうかです。

証券会社が対面で販売して3%の手数料をいただく。一方で類似した投信を、系列運用会社がネットで手数料無料で直販する。たぶん、なさそうな気がします。それでも、ネット直販は若年層向けのチャネルとして、証券対面はシニア富裕層向けという棲み分けはあるかもしれません。

若年層は自身で調べてネットで、、、手数料なし。シニア富裕層は証券会社営業員が投資環境やら商品選定までを総合的にサポートしていくので、手数料はいただきます。という棲み分けですね。

日本製品のアジア輸出加速

2/5 日本経済新聞トップで「日本製 アジア輸出加速」という記事が掲載されました。この手の話は当ブログでも2回取り上げており、これからの日本経済をけん引することになると思っています。過去の関連記事はこちら。「化粧品輸出 5,000億円超へ 日本経済復興のカギ」、「日本の食品輸出が絶好調らしい

インバウンド消費と帰国後のネット買付け

アジアの人たちによるインバウンド消費(いわゆる訪日外国人旅行者の日本での消費のこと)に加え、帰国後もその商品をリピートしてくれているという現象。この日経記事では、定番の化粧品に加えて、その他の日用品、食品が紹介されています。食品輸出が政府目標として掲げる19年の1兆円突破が視野に入ってきたのも、やはりこの購買パターンの影響ありだと思います。

製造業の国内回帰

もう一つの話題が製造業の国内回帰です。資生堂やユニ・チャーム、ライオンなどが国内に工場を建設中とのことですが、なんと国内での工場建設は、ユニ・チャームが26年ぶり、ライオンは52年ぶりだそうです。

kuniが就職した当時からこれまでの約30年間、日本企業はアジアに工場を移し、アジアの安い労働力により自社製品を製造し、主に欧米に販売してきました。そしてこの時代を通じてアジアの賃金は上昇し、国の経済力も向上してきたわけです。今度はアジアが生産拠点ではなく一大消費地になってきます。

そして工場が日本に戻ってきた。しかし、これって素直に喜べない部分もあります。アジアで建設するよりも、国内工場のコストの方が割安になってきたということ。日本の地価や従業員の賃金など、失われた20年の間に、アジアの中で相対的には埋没してしまったという面も否定できません。

国内回帰の波及効果

一方でポジティブに考えるべき明るいお話も。何十年ぶりに国内に工場を建設するということがどういう変化をもたらすかについても考えておく必要があります。昔と違って高度に自動化が進み、省人化が進んだ工場でしょうから、爆発的な雇用を生むことはないでしょう。それでも確実にその地域に雇用やその他サービスの機会が生まれます。

工場に導入される産業機械にしても、輸出規制や為替の変動なんかを気にすることなく生産・納入できます。また、新たな物流も生まれるでしょうし、工場誘致による町興しのようなことも起きるでしょう。人口減少や高齢化が進む地方にとっては魅力あるお話ですね。地域金融機関も一息入れられるかもしれません。

越境ECによる輸出

輸出という概念も大きく変わろうとしているのかもしれません。越境ECにより直接消費者に届けられる。物流は専門業者に任せて、商品の品質だけで勝負できるようになっていくでしょう。現地に進出して様々なコストを負担する必要もありません。もちろんアジアの国々のそれぞれで、守るべきルールとかはあるでしょうけどね。

中国の爆買いにつづくキーワードは、アジアを相手とする越境ECかもしれません。従来、輸出産業と言えば自動車や電気製品というのが相場でしたが、化粧品や食品、日用品が輸出産業の花形、なんて時代が来るかもです。

止まらない新聞発行部数の減少

新聞発行部数の減少が止まらないようです。最も多かった1997年5,376万部から減少しはじめ、直近は14年間連続の減少で、昨年は3,990万部。ピークから25.8%の減少だそうです。ちなみに1年前から222万部の減少だとか。

インターネットで提供される無料情報

もうずいぶん前から、新聞はいずれ姿を消すと言われ続けてきましたが、今のところ全国紙と言われる大手の新聞社は生き残っています。言うまでもなくインターネットの普及とそこでの無料情報の提供が新聞を不要にさせてきました。

昔は一家に必ず一紙というのが当たり前でしたが、ネット等で情報を自由に得られる若年層が新聞離れを起こしているんでしょうね。kuniの家でも、kuniが日経電子版。その他3人の家族は新聞とは無縁の生活をしています。特段困った様子もなく、子供たちはネットやSNSで十分情報を収集できているようです。

ネットとの競合が主要因なのは間違いないところでしょうが、ネットを通じて提供される無料の情報と新聞が提供する有料の情報に大差がなかった、ということも見逃せないところです。記事の多くは別の情報会社等から買い付けたモノであり、どの新聞も同じ記事。そりゃ金払って読みません。

おまけに、ことあるごとに与党の攻撃などにみられる偏向した報道姿勢や、事実を曲げて自分たちや広告主に都合の良い情報発信など、非常に見苦しいものがあります。さすがに消費者も理解してきたわけです。まさに自業自得というヤツです。

読売新聞が値上げ

今年の1月から読売新聞が25年ぶりに値上げしました。現在の東京における定期購読料金を朝刊のみで比較してみると、日本経済新聞:4,000円、読売新聞:3,400円、毎日、朝日新聞:3,093円、産経新聞:3,034円、東京新聞:2,623円となっています。

もっと横並びかと思ってましたが、意外に価格違いますね。読売が1月から値上げしましたが、毎日と朝日は読売が値上げでどれくらい購読者が減少するか、見極めようとしているらしいですね。けど、意外に減ってないらしいので、近々この2社も値上げしてくるでしょう。

いずれにしても、そろそろ6紙も必要ない時代が来るでしょう。25年ぶりの値上げ、つまりもうヤバイところに来てるってことですね。まずは特色がない読売、毎日、朝日の中から、どこかが抜けていくんでしょうか。

偏向報道の最右翼と言われる朝日新聞。最初に逝きそうなのはここですかね。慰安婦問題しかりですが、あそこまで叩かれ続けているのによくここまで生き残っているなというのが正直なところです。ところで朝日ってまだ押し紙ってやってるよね。そうか、販売店が勝手にやってるってことか。

コンプライアンス(その3) 日本証券業協会が定める内部管理責任者

1線におけるリスク発見・管理機能

日本証券業協会は自主規制規則として、「協会員の内部管理責任者等に関する規則」を定め、その第13条で「協会員は支店や営業所単位ごとに内部管理業務の管理職者を内部管理責任者に任命し配置しなければならない」としています。

また、第15条では「内部管理責任者は、自ら金商法その他の法令諸規則等を遵守するとともに、自らが内部管理責任者として任命された営業単位における営業活動が金商法その他の法令諸規則等に準拠し、適正に遂行されているかどうか常時監査する等適切な内部管理を行わなければならない。」としています。

証券界ではこの規則により、支店や営業所といった業務執行部門の中に異質な存在を配置することを従来から求めてきたのです。顧客の大切なお金を扱う業務でありながら、昔から不祥事が絶えなかった業界でしたので、3線ディフェンス的な発想が早くから持ち込まれていた、とみることも可能です。

さらに、第10条では「協会員は、支店や営業所に、当該営業単位の長を営業責任者に任命し、配置しなければならない。」とし、第12条で「営業責任者は、自ら金商法その他の法令諸規則等を遵守するとともに、自らが営業責任者として任命された営業単位に所属する役員又は従業員に対し、金商法その他の法令諸規則等を遵守する営業姿勢を徹底させ、投資勧誘等の営業活動、顧客管理が適正に行われるよう、指導、監督しなければならない。」としています。

1線におけるリスク管理、指導監督といった機能を営業責任者に求めていて、ここにも3線ディフェンスの機能が取り込まれています。リスクオーナーといった言葉はありませんが、支店長や営業所長が内部統制におけるまず第一の責任者であることを明示しています。kuniは、証券界はかなり先進的なリスク管理態勢を持っているのではないかと思っています。

営業責任者 内部管理責任者

このように先進的な内部管理システムを構築してきた証券界ですが、それでもやっぱりいろいろなことが起きてしまいます。まず、支店長が求められている責務を果たせないケース。支店長は当然業務執行の責任者でもあり、「収益を上げる」という役割と「内部管理を徹底する」という相反する役割を兼務することになります。

この支店長の微妙な立ち位置が収益の方に触れてしまったとき、問題が発生します。営業責任者という立場にはコンプライアンス上の脆弱性が潜んでいることを前提としておくべきで、そのために内部管理に専念する内部管理責任者を別途配置していると考えるべきでしょう。

余談ですが、会社の経営層においても同じような景色があって、取締役全員が執行役員を兼務している会社の経営陣についても似たようなことが起きているんじゃないかと思います。ここにもやはり独立取締役等が求められるわけですね。

遠隔操作と直接配置の決定的な違い

内部管理責任者という異質な存在を営業の現場に配置すること。これをルール化している業界って他にもあるんでしょうかね。これはかなり良いシステムではないかとkuniは思っていて、他の業界も検討してみたらどうかと思っています。

上場企業の不祥事においても、品質検査を行う部署が不正をしても、専門性や閉塞性のため、他の組織からはそれが発見できない。そのため何年にもわたって不正が続いてしまう。こんな状況をたくさん見ました。そう、外からでは見えてこないことが沢山あるわけです。支店や工場といった、本社から離れた組織の場合はさらに見えにくくなります。

だからこそ、直接現場組織の中に配置する意味があるわけです。本社からの遠隔操作ではなく、現場組織への直接配置の方が決定的に機能が高いと言えます。

コンプライアンス(その2) 3線ディフェンス

3線ディフェンスという態勢

コンプライアンス領域の拡大に合わせて、リスクベースでコンプライアンス業務をチューニングしていくことについて前回書きました。その際に触れておくべきと思われるのが新しい態勢、3線ディフェンス(Three-line defense)です。

2008年のリーマンショックによる世界的な金融危機の反省を踏まえて、主要国の金融監督当局は、国際的な巨大金融機関について、普通の金融機関よりも厳しい規制を課すことになりました。その時に提唱された新しいコンプライアンス態勢が3線ディフェンスです。全世界で30程度の巨大金融機関に対して求められたこの態勢ですが、今では多くの企業でその態勢が取り入れられています。

3線それぞれの役割

第1線は業務執行部門、いわゆるフロントのことで、日々の業務の中でリスクの特定を行い、必要な統制を行います。リスクオーナーとしてリスクを前線でコントロールする役割です。1線の中にコンプライアンスの推進を役割とする部署、いわゆる「1.5線」とも呼ばれる機能部署を置くケースもあります。

第2線はリスク管理部門やコンプライアンス部門のことで、業務執行部門とは独立した立場で、リスクおよびその(1線における)管理状況を監視します。また、適切な助言を行い指導する立場でもあります。

そして、第3線は内部監査部門で、業務執行部門、リスク管理部門等から独立した立場から、それぞれにおけるリスクの管理状況および監視・指導の状況を最終的に確認し、取締役会等に報告。リスク管理機能、内部統制システムの合理的な保証を与えるという役割になります。

1線の新たな役割 異質な存在の重要性 

それぞれの役割についてみてきましたが、ある程度のサイズの会社であれば、2線と3線に相当する部署と機能については既に備えていると思います。従来の態勢と最も大きく違うのが1線でしょう。業務を執行するだけでなく、そこで発生するリスクを的確にとらえ、自らリスクをコントロールすることが求められます。

つまり、ここに新たな組織であったり、人員が必要になるわけです。業務を強力に推進しようとする集団の中に、基本的な指向性は一緒であるものの、リスクを見出しコントロールしようとする、周囲とは異質な存在を置くわけです。このことにより2つのメリットが生まれます。

一つ目は、その業務を推進することで発生するであろう将来のリスクをより的確に見極めることができるという点です。特に支店や工場といった本社とは物理的にも離れた組織ではこのメリットは顕著です。

二つ目は、リスク管理やコンプライアンス管理の立場から、支店長や工場長に適切な助言を行えることです。ずいぶんきれいな書き方になってしまいましたが、現実には異質な存在とトップの間でかなりの衝突も起きます。現場に放り込まれた異質な存在がその異質性を維持することはとてつもなく大変なことです。本社2線からの強力な支援が重要になります。

スルガ銀行に見る異質な存在

銀行は一部で証券仲介業を行うため、日本証券業協会の規則が適用され、支店に内部管理責任者を置くことが求められます。この内部管理責任者こそが現場における異質な存在であり、暴走しそうな支店長等に対して、コンプライアンス上の適切な助言や牽制を行う役割を担う人です。

しかしながら、スルガ銀行ではその異質性が担保されることなく、全員が同じ方向を向いてしまったわけです。本社における2線や3線が機能不全を起こしてしまっており、支援のない状況でしたから、当然1線でのけん制も効かなかったと思われます。結果的に内部通報制度すら機能しませんでした。