新素材 CNF(セルロースナノファイバー) 環境負荷軽減

2/24 日本経済新聞に「新素材 CNF 用途拡大」という記事で、植物由来の新素材である「セルロースナノファイバー」が紹介されていました。

CNFはナノメートルのレベルで細かく切断した木の繊維を、高速で衝突させ一体化させた素材と説明されていて、樹脂などの素材と組み合わせて使うことで、鉄よりも軽く、強度は5倍、耐衝撃性・耐熱性にも優れるとしています。既にカーボンとか存在しているので、今更鉄と比較してもしょうがないような気もしますが。

経済産業省が1兆円市場を期待する新素材

食べられる特性を生かして、そばや食パンなどに添加することで、もっちりした触感が生まれる、なんて用途もあるみたいです。他にも化粧品やアパレル、建築業界での用途を紹介していました。CNFの製造には、製紙会社の製造設備が使えるため、製紙各社が開発を競っているようです。

経済産業省はかなり強気の見通しを持っているようで、30年に関連市場を1兆円規模に育てる構想を掲げているとのこと。

注目度が高い理由

日経ではほとんど触れていませんでしたが、CNFが注目度が高い理由は、環境負荷の軽減に効くからということのようです。CNFは木材などから採れる、天然由来の材料であり、計画的に植林を行うことを前提に考えると、再生産が可能であり、枯渇の心配がないというわけです。

最近流行りの言い方をすれば「持続可能性がある」というやつですね。SDGsでいうサスティナブルです。持続可能性が高い素材は、いずれそうでない素材にとって代わることでしょうし、既に環境意識の高い企業はそのような動きを取り始めているようです。欧州ではガラス繊維強化樹脂(FRP)の使用を規制する動きがあるそうです。

経済産業省が1兆円と言っているのも、日本だけのことですし。世界の市場となるともっと期待できるはずです。CNFに関しては世界的権威のある研究者も日本に二人いるそうですし、実用化に向けた技術開発についても、日本が最も進んでいるらしいです。

現在商品化という点で最も期待されているのは樹脂の補強材としての用途で、製品としては構造材になるそうです。環境規制の追い風を受けて自動車の部品での実用化が市場としては最も期待されているとのこと。他に環境省のプロジェクトとして、家電製品や建設資材のプロジェクトもあるようです。

CNFは環境時代の追い風を受けた、カーボンと並ぶ重要な次世代材料とみられています。CNFには多彩な性能があり、かつ、未発見の性能もまだまだあるのではないかと言われているようです。とても将来が楽しみな素材ですね。

日本紙パルプ商事 TSUTAYA

2/23 日本経済新聞で日本紙パルプ商事の不祥事と、消費者庁によるTSUTAYAへの課徴金納付命令が報道されました。このところ政府の統計不正の話題が先行するもんですから、こうした上場企業の不正・不祥事に関しては取り扱い順位が低くなっているような気がします。

日本紙パルプ商事 子会社の野田バイオパワーJP

子会社の野田バイオがバイオマス発電所で発生する産業廃棄物を不適切に処理していたというものです。また、焼却灰に固化剤を混ぜて地盤改良材として販売もしていましたが、これに本来加えないはずのタイプの焼却灰を加えていたということのようです。

プレスリリースを読んでみると、「一部重金属等の土壌環境基準値超過」という項目もあり、「六価クロム」や「セレン」などといった物騒な重金属の基準値オーバーが記されていました。六価クロムは最大で基準値の4倍、セレンは3倍という数値が出ています。

記事では結構さらっと書かれてましたが、いけませんよこれ。本来加えないはずの種類の焼却灰を10~20%の割合で混ぜて販売していた、という記述もあり、故意にやっていたという感じです。この本来加えない種類の焼却灰は産業廃棄物のようです。

社内調査委員会を立ち上げて、4月末をめどに事実を明らかにするそうですが、第三者委員会にするべきじゃなかったのかなと思います。ちなみに、この社内調査委員会、委員長が社外取締役で、監査役と他2名の弁護士という態勢のようです。

TSUTAYA 課徴金納付命令

一方、こちらは消費者庁がTSUTAYAに課徴金1億1,753万円の納付命令を出したという件。DVDのレンタルや書籍販売のTSUTAYAが提供する3つのサービスにおいて、すべての作品が見放題であるかのような表現をしていたというものです。昨年の5/30に景品表示法に基づく措置命令が出されていた件ですね。

ネットとか見るとこのTSUTAYAの件についてはかなりの書き込みが出てきます。レオパレス21に負けないくらい出てきますね。あらためて今回の納付命令を読んでみましたが、「打消し表示」が一つのカギになっているようです。

『見放題』と大きく宣伝したうえで、同じページの最下部等で「よくある質問」と記載し、これをクリックすると初めて、『見放題ではない旨』が表示されるという手口です。この手口、最近結構他社の事例でも指摘されているようですね。スマホの画面等は小さいので、この手口が有効なんでしょうが、消費者庁もそこは良く分かっているみたいですよ。各種ディスクレーマーはできるだけ当該表示の傍に入れるようにした方が良さそうですね。

TSR(トータル・シェアホルダー・リターン) 株主総利回り 

企業内容等開示府令の改正

昨年11/2 企業内容等の開示に関する内閣府令の改正案が公表され、パブリックコメントにかけられました。そして、今年1/31 パブリックコメントの結果等が公表され、同日付で交付・施行されています。

今回の改正内容は大きく3つ。有価証券報告書等の記載事項で、「財務情報および記述情報の充実」、「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」、「情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組」となっています。

このうち「建設的な対話の促進に向けた情報の提供」に関しては、役員の報酬について記載すべきことを新たに定めており、タイトルのTSR=株主総利回り についてもこの文脈の中で記載が義務付けられました。

TSR 株主総利回り

TSR=「株主総利回り」とは、株式投資により得られた収益(配当とキャピタルゲイン)を投資額(株価)で割った比率 のことです。配当までも計算に入れることで、株主が得られたすべての利益を計算することになります。

株主総利回りを開示し、役員報酬と対比して見せる(評価指標として情報提供する)ことにより、役員報酬が妥当であるかどうか、株主と建設的な対話を実現しようということのようです。

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループでの検討結果

法改正に先立って、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループで検討が行われ、その報告に基づいて改正案が作られています。ワーキングの報告では、「英国では過去10年間の株主総利回りの推移が、米国ではグラフ表示も併せて株主総利回りの記載が義務付けられている」ことを引き合いに、日本でも記載させるべきとしていました。

ところが、パブリックコメントではややトーンダウンしているような感じでしたね。役員報酬と対比させ、評価指標として情報提供するのが目的だったはずなのに、最終的に記載場所は「主要な経営指標等の推移」に落ち着いてます。この点については、パブリックコメントの中で指摘されている方がいらっしゃいました。

欧米での実態

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの報告から、欧米の実態について抜粋しておきます。まず英国では、全取締役の過去2年の個別の報酬内容の一覧が開示されており、、過去10年間のCEOの報酬額と、同期間の株主総利回りの推移が対比できるよう開示されているそうです。

米国では、CEO、CFOおよび報酬額上位3位までのエグゼクティブオフィサーの報酬について、過去3年間の個別の報酬内容の一覧が開示されているほか、全取締役の個別報酬についても開示されています。また、株主総利回りについても、その推移を示すグラフの開示も求められているそうです。

ということのようです。今回は個別役員ごとの報酬開示までは踏み込みませんでしたが、いずれすべて開示することになるんでしょうね。

ソーシャルレンディング エーアイトラスト 監視委員会が再び勧告

2/22 証券取引等監視委員会はインターネット経由で融資を紹介するソーシャルレンディング業者のエーアイトラストを行政処分するよう金融庁に勧告しました。同社への処分勧告は昨年12月7日にも行われており、併せて建議も行われました。その後、12/14には金融庁から、すべての金融商品取引業務について1か月間の業務停止命令を含む行政処分が行われています。

最初に処分勧告を受けた時にも当ブログで取り上げました。「ソーシャルレンディング業者のエーアイトラスト株式会社」「ソーシャルレンディング 金融庁は」の二つの記事も併せてお読みいただければ。。。

やはり溶け出していた資金

やっぱりこの会社おかしいですね。一度の立ち入り検査で2回も処分勧告食らう会社ってkuniも聞いたことありません。前回、当ブログで取り上げた時点では、集めたお金がどうなったのかについては全く分からない状況でしたが、今回はその辺りが少し解明されたようです。

取締役の山本幸雄氏が同社に紹介したファンド貸付先から、山本氏が実質的に支配する法人に、少なくとも15億8千万円が流出しているそうです。これを受けて同社のホームページでは、山本氏を解任したという役員異動のお知らせが出ています。また、「山本氏及び同氏が実質的に支配する法人に対する法的措置を検討する」とも書かれています。

勧告の内容

一つ目は、高速道路事業を貸付対象事業とするファンでにおいて、大手ゼネコンJVの名称を用いるなどして、あたかも国土交通省から発注を受けた事業の孫請けをしている業者へのレンディングに見せかけ、実はそうした実体のない貸付だったというもの。もう一つも同様に実体のないファンドであり、この二つについては「虚偽の表示」を認めています。

三つ目に、実態のないファンド、とまでは立証できなかったようですが、取得勧誘時の「30億円をボトムラインとして」という説明の仕方が、最低でも30億円の売り上げが予定されているかのような誤解を招くとして、「誤解を生ぜしめるべき表示」であると指摘されています。こちらは「虚偽の表示」と比較するとやや軽めの指摘です。

そして最後に、平成29年2月から30年11月までの募集総額52憶円のうち、少なくとも15億8千万円が流出していたという指摘です。態勢面では、事業実態や貸付先におけるファンド資金の使途等を把握するための管理態勢、および貸付実行後のモニタリング態勢について言及しています。

おまけ

以前この会社のHPには役員が紹介されていたと思うんですが、今は役員名簿が載ってません。さらに、今回解任された山本という取締役、就任が去年の10月なんですね。流出したお金を集めていたころはこの人取締役じゃないわけです。検査着手から取締役就任のタイミング、解任に至るまで、どうも良く分からないことが多すぎます。この取締役だけが働いた悪事ではなさそうです。なんだか大きな事件になりそうな予感がします。

キャッシュレス決済の持つ可能性

GAFAのビジネスモデル

米国の巨人たち、いわゆるプラットフォーマーが迷走し始めています。ECサイトの購買履歴やSNSの個人の情報を利用した彼らのビジネスモデルが行き詰ってきているということのようです。最も大きな要因は、個人の情報を無料で手に入れ続けてきたことと、世界各国から価値ある情報を吸い上げておいて、各国への見返り(要するに納税)がないことです。

ネットを利用した、あまりにも画期的かつ斬新なビジネスモデルであったが故、上記の要因に気づいていなかった人や国家が今頃になって寄ってたかってケチをつけているわけですね。

ネットとリアルの規模感

経済産業省の電子商取引に関する市場調査によると、2017年の国内電子商取引は16.5兆円だそうです。EC化率は5.8%ということですから、全体では284兆円になります。ということは、残りの94.2%、267兆円がリアル世界での商取引ということになります。

GAFA等が牛耳っているデータは、実はこの16.5兆円の日本であり、267兆円の日本は手付かずということですね。日本政府が目指しているように、このうち40%がキャッシュレス決済になるとすると、約107兆円規模の購買履歴等の個人データ市場が手に入るということになります。キャッシュレス決済を制する企業はGAFAの6.5倍のデータを手にするわけです。

こう考えていくと、日本におけるキャッシュレス決済って魅力的です。ソフトバンクグループが100憶円キャンペーンで仕掛けるのも理解できるというものです。

最初に創造する米国と後から改良して稼ぐ日本

自動車や家電製品を創造したのは紛れもなく米国でした。それでも日本は後から追い付き、高い技術力で改良を重ね、世界一のブランドになったわけです。今はちょっと残念なことになってますが。。。

この辺りは多くの説明は不要でしょう。ネットの世界で想像されたプラットフォームをリアルの世界で再現しようとしている今の日本って、何だか自動車や家電業界の黎明期に似てきたような気がするのはkuniだけでしょうか。

改良されたリアル世界での仕掛け

ネットの世界でGAFAがやってきたことはもう十分に研究されています。これをリアル世界で実現していく。追い掛ける側にはメリットもたくさんあります。消費者も既にそのビジネスモデルを理解していますし、ポイント還元という形でちゃんと対価も払っています。そして情報銀行も並行して整備される、情報の管理態勢は確立することでしょう。

今GAFAが苦しんでいる課題をあらかじめきちっと抑えながら、リアル世界のプラットフォームを構築できるわけです。「みずほFGが地銀60行と組んでスマホ決済に参入」というニュースがありましたが、銀行というお堅いイメージで情報銀行を兼営できることは一つの強みですね。