投資用不動産 値下がり

3/17 日本経済新聞に「投資用不動産 苦渋の圧縮」という記事が掲載されました。不動産業界で、アパートやマンションなど投資用物件の在庫を圧縮する動きが拡大し始めているとのこと。まさにサブリースショックによる不動産の値下がりが始まったわけです。

逆回転が始まった

今回記事になったのは、投資用不動産を主に扱う不動産業者ということなんでしょうか、6社の投資用不動産の在庫状況を伝えています。サムティ、ムゲンエステート、アルデプロ、ADワークス、TATERU、スターマイカといった企業が在庫の圧縮に動いているということです。

スルガ銀行やTATERUの不正で業界の実態が明るみに出て、レオパレス21の建築不正で大炎上。そして今回も金融庁が監視・牽制を強化したことで銀行の融資が大きく絞られました。これが止めを刺したという恰好です。1990年に当時の大蔵省が行った総量規制と同じ構図ですね。

1990年に始まったバブルの崩壊では、大蔵省の予想をはるかに超える急激な景気後退(いわゆるバブル崩壊)を日本経済にもたらし、不動産価格は急落、銀行の不良債権に繋がり、その後の「失われた20年」を日本に繋がるといった悪循環のトリガーになりました。

不動産バブルは崩壊するのか

結論から言うと、今回の投資用不動産の値下がりが、不動産全体に波及する可能性は低いと思います。1980年代の不動産は何もかもが値上がりし、不動産としての収益率で説明できない水準まで上昇していました。ただひたすら、値上がりするから誰もが買いたがる。裏では銀行の信用創造が無限に拡大していく。そんな世界だったんですね。今の若い人は知らないと思いますが、当時、山手線の内側の土地売却代金でアメリカ全土が買える計算になるほどの値上がりだったんです。

今回起きていることは、投資用不動産(アパートやマンション)、中でも特にサブリースという枠組みに取り込まれた対象物件だけが異常な価格に吊り上げられ、枠組みを形成する業者が大儲けし、当該案件のオーナーだけが食い物にされた。そんな構図だと思っています。おまけにこの枠組み、本来入ってこないはずの投資家が大勢取り込まれましたしね。

この枠組みにおける不動産オーナーはリピーターが非常に多いと言います。そのため銀行による信用創造、レバレッジがかなり効いており、逆回転し始めるとそれなりの勢いになる可能性がありそうですが、その他の不動産ではそれほどではないと思います。もちろん、都内の高層マンションなど、ちょっとやり過ぎじゃないのって物件は既に多いですけどね。

今回は投資用不動産の値下がりについてでしたが、もう一つ怖いのが海外からの不動産投資の状況ですね。こちらについてもまた機会があれば考えてみたいと思います。

ニュージーランド クライストチャーチ 銃乱射事件

3/15 ニュージーランドのクライストチャーチで銃乱射事件がありました。2ヶ所のモスク(イスラム教の礼拝所)が襲われ、50人が死亡。48人が病院で手当てを受けているそうです。警察は4人を逮捕したという当初の報道でしたが、後に単独犯ということに訂正されてます。亡くなられた方のご冥福をお祈りします。

クライストチャーチ

この地名を聞いてまず思い出すのが、2011年2月に発生した地震です。この地震で語学学校が入居していたビルが倒壊し、日本人留学生が28人も亡くなりました。この時が初めてなんですね、kuniがこの街のことを知ったのは。気候も治安もよくて、きれいな街ということで、旅行者や留学生が多いと。

そして、その3週間後に東日本大震災が起きます。地図で見るとニュージーランドって、北海道から東北地方にかけての形に似てるんですよね。で、クライストチャーチは震源近くの三陸沖辺りに位置します。当時、こんなことを考えた記憶があります。

脱線してしまいますが、2016年にもニュージーランドで地震が起き、その2か月後に熊本地震が起きていて、その関連性を指摘しているブログがありました。偶然の一致でしょうが、何だか気持ち悪いです。

犯行の動機とか

犯人はヘルメットに付けた小型カメラで殺害場面を録画し、フェイスブックのライブ機能で中継していたそうです。フェイスブックはすぐに削除したものの、この動画はまだ拡散しているとか。今のところ犯人の動機としては、イスラムに対する嫌悪や反移民、白人至上主義などという推測がされています。

この中で、反移民という動機が個人的には気になっています。このところ、いろんな意味で世界を動かす原因になっています。トランプ大統領が作ろうとしているメキシコ国境の壁の問題。この問題で政府内は混乱し、行政機関が停止するという状況が起きています。また、EUでも折に触れ問題になりますし、特に英国に関しては移民問題に端を発したEU離脱問題に発展しています。

日本でも現実味を帯びてきた移民問題

これらの問題を巡って世界の金融市場がかなり振り回されていることは、皆さんも感じてらっしゃると思います。この反移民という感情、私たちの日本でも今後クローズアップされるんじゃないかと思っています。外国人労働者の受け入れ解禁のタイミングに合わせるかのような、日韓関係の急速な悪化。気になりますよね。

独自の文化を持つ国の国民ほど、他国からの移民が築く新しい文化の受け入れに苦労すると思われます。日本はまさにそういう国のような気がしますし、今回のニュージーランドの事件は他人事とは思えないわけです。

大和ハウス工業 中国の関連会社で不正行為

先日、2018年度の振り返りということで、大和ハウス工業の元営業所長が4000万円のキックバックを受けていた件について書きました。すると、書いた途端に別のニュース。4000万円のキックバックどころじゃありません。今回は円換算して約234憶円だそうです。

大連大和中盛房地産有限公司

プレスリリースによると、大和ハウスが中国現地企業の大連中盛集団有限公司との合弁により設立した大連大和中盛房地産有限公司が、今回の不正の舞台。大和ハウスにとっては持分法適用関連会社です。この約234億円全額が回収できなかった場合は、半分の約117億円を大和ハウスが損失計上することになるそうです。

不正行為の概要

この関連会社の経理担当者が、預金残高と帳簿に差異があることを発見、その翌日の3/13に社内で調査した結果として公表しています。なんと、合弁先から派遣されている取締役2名と出納担当者の計3名による不正の疑いがあるそうです。既に現地の捜査当局に業務上横領等の疑いで刑事告訴の手続きに入ったとしています。

ネットバンキングで現金が不正に引き出されたとのことで、現金の引き出しや送金が2015年以降複数回あったようです。大和ハウスは内部統制システムの見直しを進めるため、第三者委員会を設置する方針とのこと。

中国でのこの手の事件ってまともに解決できるんでしょうかね。これだけの金が動いていると、当局等の役人も軽く買収されちゃったりしてね。まぁ、昔の中国とは違って、国際問題になってしまいそうな、いい加減な対応はさすがにもうしないんでしょうけど。それでも、中国、韓国って鬼門ですよね。

ちなみに、この合弁会社、設立は2005年。読み方は「ダイレンダイワチュウセイボウチサンユウゲンコンス」です。意外にそのまま。

同社の情報開示対応

今回の件は事案発見後速やかに開示されており、いい感じなんですが。前回のキックバックの件が全く非開示のままというのが引っ掛かっていて、どうも素直にこのニュースも消化できないんですよね。

産経新聞によると、合弁先の建設会社がこの関連会社が開発した物件を無断で譲渡していたことが発覚し、昨年夏から両社の対立が深まっていたとも伝えています。ところがこの辺りの話はプレスリリースには出てきません。これって結構重要な情報じゃないですかね。

最後に、全然話が脱線しちゃうんですが、レオパレス21の問題を受け、「国土交通省が年間1千戸以上の共同住宅を供給している事業者を対象に、品質管理態勢に関する実態調査に乗り出す」と伝えられました。大和ハウス工業も大和リビングとかの関連会社でサブリースやってるみたいですし、調査の対象になると思われます。

日本の食品輸出 ホタテ

以前「日本の食品輸出が絶好調らしい」というタイトルで記事を書きました。昨年の輸出額が9,000憶円に達し、2019年には1兆円が達成できそうというお話。その際にいろいろと統計を読んだのですが、かなり意外に感じたのがこのホタテの輸出額でした。その後忘れていたんですが、3/14付の日本経済新聞に、北海道佐呂間漁協のホタテ漁に関する記事が掲載されていて、これを読んで納得したわけです。

農林水産物 品目別輸出額でトップ

「2018年の農林水産物・食品輸出額(速報値)品目別」でみると、ホタテの輸出金額は477憶円で前年比3.1%の増加となっています。水産物の中で見ると、ホタテに続いて真珠が346憶円、鯖が267憶円となっていて、それぞれ7%増、22%増となってますね。鯖は国内のスーパーで鯖缶が品薄といったニュースがありました。輸出もかなりの勢いで伸びています。

記事ではサロマ湖で行われるホタテ漁を中心に紹介し、漁協組合員の平均貯蓄額やら、野球選手並みの平均年収といったの景気の良い話が書かれています。イカダの場所とか、稚貝をつるす高さの調節について言及されているので、おそらくこれは養殖なんでしょうね。生産効率で世界最高峰とも書かれています。彼らの商品は台湾の高級百貨店向けで、干し貝柱として輸出。商品の差別化で成功しているようです。

輸出先は中国が1位だけど

ホタテの輸出先(2017年のデータ)を見ると、中国向けが圧倒的に多くて、238億円になっています。台湾向けは33憶円ですね。意外に多いのがアメリカで58憶円。ここのところ減少しているんですが、2015年までは100億円以上を輸出しています。

JETRO(日本貿易振興機構)で調べてみると、中国へ輸出された冷凍のホタテの多くは、殻をむいて加工された後に米国に輸出されているんだそうです。その分日本からの直接輸出が減少しているということでしょうか。

ホタテの栄養成分

ついでに北海道漁連のホームページも見てきました。もの凄い栄養成分です。ホタテの貝柱に含まれるたんぱく質は100グラム当たり17.9グラム。牛肉や豚肉に匹敵しますし、鶏もも肉を上回るそうです。お肉の場合は部位により違ってきますし、脂身の多さでたんぱく質は変化しますが、たぶん貝柱はそういう変化はなさそうですね。脂質がほぼなしというのも良いです。筋肉付けるためにはなかなか良い食材のようですよ。

貝柱以外の部分まで含めると、タウリン、亜鉛、ビタミンB12が含まれているそうです。高タンパク質かつ低脂肪で、ヘルシーな食材、日本でもブレイクするかもしれませんね。ということで、今晩はホタテのひもでも買って帰って、熱燗にしますか。

洋上風力発電 石炭火力に代わる切り札

新法が成立し、政府の補助制度などの後押しもあり、だんだん洋上風力発電の周辺がにぎやかになってきました。遠浅の海が少ないなど、課題もあるものの、脱石炭を促す世界の潮流に乗ってきたって感じですね。海外企業も含め、関連事業への新規参入の話題も増加してきています。

国内の洋上風力発電 総事業費2兆円

3/13 の日本経済新聞記事のタイトルです。みずほ銀行の試算によると、国内で計画される洋上風力発電の総事業費が2兆円に達するとのこと。新法の成立や国の補助制度といった礎もさることながら、環境に配慮する「ESG投資」におけるあらゆる業界からの評価も大きく前進させた感じです。

みずほ銀行が試算というのも不思議に感じた方もあったでしょうか。銀行にとってもESGは他人事ではありません。石炭火力発電関係への融資がやり玉にあがるご時世です。銀行としてもESGにおいて高い評価を得られる融資を拡大したいわけですね。で、銀行がそれを試算していると。

記事の最後のところで、「洋上風力発電は事業規模が大きく、複数の金融機関がプロジェクトファイナンスで資金を出す。アセス手続き前の案件も含め、10件は3メガバンクが主幹事として融資を検討しているとみられ、みずほはこのうち5件に助言している」とあります。大規模な太陽光発電の事業においても、メガバンクによる同じ形態の融資が見られました。

世界の電力 石炭火力重荷

同じ日の日経にはこういうタイトルの記事と、「日本、地方で依存度高く」という記事も掲載されています。石炭火力発電は二酸化炭素排出抑制のための追加の環境対策費用により高コスト化しており、特に規制が強い欧州では採算が悪化しているという記事です。

また、後者の記事は、日本では地方電力ほど石炭火力への依存度が高く、今後これが高コスト化していくだろうというものです。最も石炭火力への依存が高いのは沖縄電力だそうで、最も低い東京電力の5倍になってます。自然という観光資源が生命線の沖縄。その沖縄が最も依存度が高いというのは皮肉ですね。

ESGの潮流はもう止められないでしょう。日本においても新たな環境規制が導入される(導入せざるを得なくなる)のはほぼ間違いないでしょうし、再生エネへの転換は待ったなしの状況です。

記事の最後では、中部電力の社長さんの「資源の少ない日本で石炭火力は重要な電源」という発言も掲載されていました。電気事業連合会の会長さんという立場もあり、各方面への配慮が滲む発言なんでしょうが、ちょっと不用意な発言ですね。ESGの魔女狩りはもう始まってますよ。