野村證券 構造改革 縮小・撤退

国内証券トップの野村証券が構造改革策を発表しました。3年間で1,400憶円のコストを削減し、経営資源の選択と集中を行うとのこと。地銀、メガバンクを飲み込んできた構造不況の波がとうとう証券界まで達したのか、というちょっとショッキングな日本経済新聞の記事です。

株式市場が最悪期を抜けた2014年頃、大和が一気に営業所を拡充するなどの強気の店舗展開を見せました。これに続いて、日興、野村も久しぶりに新店を出していたと思います。当時強気の出店は、準大手以下にも波及していましたが、あれから僅か5年弱でこの野村の動向。他社もこれに続くのか見ものです。

強気の出店攻勢から弱気の撤退へ。昔から何度も見てきた光景ですが、これまでは基本的にマーケットの変動に応じたものでした。相場が良くなると強気出店。相場が低迷すると撤退。新規出店しても、その支店が採算とれるようになるには相応の時間が必要で、撤退するときは新規に出店した支店から閉鎖していきます。証券会社らしいでしょ、損切りは早めに、、、みたいな。

店舗2割減と営業スタイルの変更

欧州のトレーディング事業や米国のハイイールド債トレーディングからの撤退、コーポレート部門のシンプル化、については正解だと思います。が、やはりこの会社の場合は国内の支店営業がどうなるのかが注目されます。2割、約30店舗以上を統廃合し、営業員6,900人のうち3,300人の配置を変えると日経は伝えていました。

実際に野村がインベスターデーで使用した資料も読んでみましたが、従来はその境界線が曖昧だった、法人等、富裕層、マスアフルエントを担当する組織を、明確に分離しようとしている(このため配置換えが起きる)ようです。そのうえで法人・事業オーナーや富裕層における資産収益率を拡大するという、まぁ、どこの会社でも同じようにトライしていて、なかなか実現しない目標に取り組むみたいです。目新しさはありませんでした。

営業の現場はどう受け止めるのか

これまで最強の営業部隊といわれていた支店営業ですが、顧客本位の業務運営に舵を切ったとたんに、やはり収益力は低迷しました。さらに3年間で5人もの警察逮捕者を出してしまった野村。どこかがおかしくなってきています。

今回の支店の統廃合や組織再編、カニバリを起こしかねないネットの強化などなど、経営のメッセージは営業の現場にどんなふうに伝わるんでしょうね。場合によってはリテール空中分解みたいな状況もあるかもしれません。一番しんどい想いで頑張ってる人たちに、どう真剣に向き合ってやれるか、、、だと思いますよ。

りそな銀行 レオパレス21

選択という情報誌の4月号に、りそな銀行の記事が掲載されています。2003年に公的資金の注入により、実質国有化されたりそな銀行。その3兆円の公的資金を2015年にやっと完済したわけですが、そこに今度はレオパレス21がらみの投資用不動産関連融資の問題が浮上しているというお話です。「公的資金再注入の危機」などという物騒なサブタイトルも。

スルガ銀行との比較

スルガ銀行は不動産業者とつるんで、融資の条件となる預金残高等の改ざんにより、不正融資をしていました。このことが明るみに出ることでスルガ銀行は制裁を受け、また採算が取れない無理な貸し付けにより、オーナーが返済不能に陥ってしまうという構図でした。不動産業者も銀行も悪事を働いていたということです。

一方でりそな銀行の場合は、今のところこうした不正は確認されてなさそうです。レオパレス21の施工不良問題が泥沼化したことで、レオパレス21関連の投資用不動産に貸し付けた資金が大量に不良債権化するのでは、という構図のようです。

施工不良の解消のための改築費用や、入居者の引越費用などにより、レオパレス21の業績は相応に悪化するでしょうし、入居率が大幅に低下してくると彼らのようなサブリース業者は「オーナーへの支払い>実際の家賃収入」という状況になり、毎月一定の資金がキャッシュアウトしていきます。それでレオパレス21はアウトに、という見立てですね。

レオパレス21オーナーへの融資残高

一方で、オーナーはと言うと、入居率が下がっても一定期間は家賃保証がありますが、いずれ条件が改定されて、家賃収入が低下。「借入の返済額>家賃収入」となってくるあたりから、返済不能に。銀行にとっては不良債権化するわけです。

りそな銀行のレオパレス21関連の投資用不動産向け融資残高は、記事では8,000億円~1兆円と推測して、これが不良債権化した場合に、りそなに何が起きるかということを書いています。まぁ、確かにこの想定通りだと、かなり危ないことになってきますね。

世間的にもアパートローンの出し手としては、かなり有名な銀行でした。スルガ銀行、西京銀行、そしてりそな銀行。ありえない話でもなさそうです。いずれにしても何度か書いてきたように、サブリースショックが現実のものになりつつあることは間違いなさそうです。

三菱UFJ銀行 指定金融機関 辞退

このニュース自体は今年2/25に流れていたものです。地方自治体の公金収納や支払い事務などを受託する指定金融機関。三菱UFJ銀行が、芦屋市や宝塚市、明石市、伊丹市、池田市、所沢市など、10市程度の地方公共団体の指定金融機関を、辞退することになったというお話。

三菱が口火を切った

その昔、指定金融機関になることは、多額の公金預金の受入れや縁故債の引受などのメリットがあり、銀行同士が結構競い合ってた記憶があります。その見返りとして、銀行は窓口収納業務など各種手数料を無料化または大幅割引してきました。今ではそのメリットもなくなり、全くコストに見合わない業務となってしまったため、いただくべきコストをちゃんと払ってくれという交渉が始まっていたんですね。

しかしながら、ここに出てきた10市はいずれもその交渉を受け入れなかったということです。ちなみに、芦屋市の場合は、年間7万200円だった費用を、1500万円というレベルに引き上げる交渉だったそうです。これだけ見ると吹っ掛けてる感じですが、実際にかかっているコストであり、妥当な要求なんです。

10市はいずれも、三菱UFJ銀行が輪番制で指定金融機関を務めていた先のようで、三菱が口火を切った形です。そのため、他の銀行も地公体との交渉がしやすくなったようで、10市の中には、三菱と一緒に輪番を組んでいたもう一つの銀行が交渉を続け、手数料等の増額に成功した事例も出てきたとか。

銀行が好調だったころの慣行

時代が変わって、銀行も国や地公体にコスト割れのサービスを続けていくことができなくなりました。三菱と言えば3年ほど前、国債の入札に参加する際の特別な資格である「国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)」を返上したという出来事もありました。この辺りから、既に三菱はコストに関してかなり敏感に対応していたように感じます。結果的に、御上よりもステークホルダーを志向し始めている。そんなふうにも言えるかもしれませんね。

昔の慣行にメスを入れ、地方の指定金融機関の座は地方金融機関に返すことになっても構わないという判断。これをきっかけに銀行界が当然の要求をし始めるといった新しい潮流を作ろう。そんな狙いもあったのかもしれません。

三菱UFJモルガンスタンレー証券

最後に脱線。昨年、三菱UFJモルガンスタンレー証券が国債特別資格を停止される、というニュースがありましたが、こちらは国債先物取引で相場操縦をしてしまったことに対する処分でした。上記の話とは違います。。。実は2004年に、当局検査において検査忌避で業務停止命令を受けたUFJ銀行(当時)も、同じ資格取り消しを受けてます。三菱UFJグループ、この資格とは因縁があるようで。

メガバンク 新卒採用減 米国債で巨額損失

4/2付の日本経済新聞、金融経済面は賑やかでしたね。三菱UFJ銀行の新卒採用45%減。検証、みずほ巨額損失(下)、三菱UFJ系証券2社合併。この日の日経は新元号「令和」関係に多くの紙面を割き、お祝いムードでしたから、金融界の惨状が目立ちました。

三菱UFJ銀行 新卒採用45%減

2020年春の新卒採用数を530人へということで、前年比45%減らすことを決めたとのこと。みずほや三井住友は既に今年度から先行して採用を減らしているので、三菱はちょっと遅れた感じですか。

一方で、新卒予定の大学生の就職志望先ランキングの方でも、3メガバンクは順位を大幅に下げています。採用は抑制しつつ、どう優秀な人材を確保するかが課題になるとか、質の高いデジタル人材にシフトするみたいなことも書かれてましたが、それはやっぱり人気のあるころにやっておかないとね。

あの志望先順位ではそれもかなわないでしょう。結局金融って、会社は違えど、やってること、志向すること、みんな一緒なんです。今までもそうだったし、たぶんこれからもそうでしょう。これくらいの巨大な産業がIT人材を本格的に求め始める。金融界が動くとデカいですからね。こうやってIT人材バブルは膨らんでいきます。

みずほ巨額損失(下)

こちらの記事も刺激的でした。メディアも含めて、ある程度好意的に見てきたみずほの巨額損失の計上ですが、この記事では同時に行う米国債の含み損の処理1500億円にフォーカスしています。

みずほに限らず、銀行は短期で資金を調達して米国債で運用しているんですが、そのドル資金の調達コストが運用利回りを上回る、逆ザヤの状況が続いています。昨年末辺りから逆転し、今のところ解消しそうにない。となると、このまま運用を続けていても損失の垂れ流しとなるわけです。

そこで、みずほはこの運用ポジションを解消してしまうという決断をしたということなんですね。ところが、その経緯について、「みずほは決断できぬままでいたが、金融庁は早期の損切りを水面下で促し続けてきた」とか、「新社長になり、新しい中期経営計画を作る前は絶好のタイミングとみて畳みかけた」などと伝えています。要するに、行政が主導した外債の損切りだったということのようです。

しかしまぁ、このストーリーって、、、やっぱり金融庁がリークしてるんですかね。メガバンクももちろんそうなんですが、地銀も外債でやられてる構図は全く一緒だと思われます。みずほがこんなふうに追い込まれたということは、、次は我が行、、、そんなインパクトはあったでしょうね。

二酸化炭素排出 「実質ゼロ」目標

週末の日本経済新聞で「二酸化炭素排出 「実質ゼロ」目標に」という記事が掲載されました。政府の有識者会議は、日本から出る温暖化ガスの二酸化炭素(CO2)を今世紀後半の2070年ごろまでに「実質ゼロ」とする新たな目標案をまとめた。とのことで、その記事の中で紹介されていた技術の一つが、CO2を回収して都市ガスの主成分であるメタンにする技術です。

CO2を回収 メタンを生成

産業界から排出されるCO2と水素(これは再生可能エネルギーを利用して生産される電力により水を分解して生成)を反応(メタン化反応)させて、メタンを得るという化学反応になるらしいのですが、少々専門的になりますね。昔習った化学式では、CO2+4H2→CH4+2H2O となるようです。

二酸化炭素に水素を加えることでメタンと水を生成。メタンは電力を生むための発電燃料になり、発電で発生した二酸化炭素はまた水素を加えてメタンに、、、という循環ができるわけです。メタンは都市ガスの主成分ということですし、同じ燃料としては水素よりも扱いやすそうなところもメリットかもしれません。

技術的には既に確立しているようで、2014年に日立造船が水素と二酸化炭素から純度99%のメタンを作り出す技術開発に成功したと発表した。というニュースも報じられてました。

太陽エネルギーで燃料を作る人工光合成

二つ目の技術がこれ。昭和シェル石油が2016年末、ガス拡散電極を利用し、常温常圧下で水と二酸化炭素(CO2)と太陽光のエネルギーだけで、メタンとエチレンを合成することに成功したと発表しています。これも人工光合成技術の1つで、常温常圧下で太陽光のエネルギーのみで炭化水素などの有用な物質を生成できたのは「世界初」(同社)だそうです。

この昭和シェル石油の研究における炭化水素への太陽光エネルギー変換効率は0.71%。実際の植物が光合成により水と空気中のCO2からデンプンなどの炭水化物を生成する効率は一般的に0.1~2.5%程度とされていて、同社の成果は「自然界の植物の光合成と同レベル」だとのこと。

人工光合成は太陽光とCO2、水を用いて燃料や資源などの有用な物質を作り出す技術。というのがもう少し一般的な定義らしいです。再生可能エネルギー(太陽光)を利用し、なおかつCO2を削減しながら、有用物質を生み出せる技術として注目されており、研究開発が進んでいるようです。

政府の有識者会議が打ち出す「二酸化炭素排出 「実質ゼロ」目標」。かなり強気だなぁと思いましたが、それなりの裏付けはありそうです。期待したいですね。