顧客本位の業務運営と金融商品販売ルールの規制緩和(その2)

昨日はここ最近行われてきた金融商品取引業者に対する2つの規制、「契約締結前交付書面」と「高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン」について書きました。そして今日は3つ目の規制である「顧客本位の業務運営」です。この原則は非常にインパクト大でした。

顧客本位の業務運営

最も大きな変化をもたらした規制(と呼ぶべきではないかもしれませんが)が「顧客本位の業務運営」です。当初は「フィデューシャリー・デューティー(FD)」という言葉で導入され、業界としてうまく消化できずに、かなり混乱しました。

行為規制(ルール)として細かく明文化されるのではなく、あるべき姿、考え方だけが示されて、それを実現するための勧誘や販売、アフターフォローなどの具体的な対応方法は自分たちで考えなさい、、、って感じですから。

フィデューシャリー・デューティーは、後に顧客本位の業務運営と呼ばれるようになります。業界全体で顧客本位の業務運営を考え、対応していく過程で、最も大きな変化が現れたのが投資信託の保有期間の長期化でしょう。短期の売却・乗換が顧客のためにならない。顧客にとっての運用コストが当たり前に意識されるようになりました。やっとのことですが。

次に起きた同様の変化が、投資信託の各種手数料の低下です。当初買い付け時の手数料もそうですし、毎年ファンドから差し引かれる信託報酬にも低下の波が及んできています。そして、さらに今では株式売買における委託手数料にまで、無料化が進み始めています。

すべては資産運用を拡大するため

こうして振り返ってみると、顧客本位の業務運営という根本的な考え方(プリンシプル)が業界に浸透してきたおかげで、ルールベースの「契約締結前交付書面」や「高齢者ルール」という過去の2つの規制を緩和できる余地が生まれてきたように思われます。

どの規制も資産運用を日本で定着させることが、最終目的だったわけですから、業界として正しい方向へ進んでいく限り、過去に作られた細かな行為規制は次第に緩和されていくんでしょう。

顧客本位の業務運営と金融商品販売ルールの規制緩和

このところ金融商品販売に係る各種規制の見直しが始まっています。契約締結前交付書面の交付方法の見直しや、高齢者への金融商品販売ルールの見直しなどです。ここ10年ほどを振り返ると、金融商品取引業者から見て、重要な規制が3つ設けられました。

契約締結前交付書面

契約締結前交付書面は、金融商品を勧誘する際に、あらかじめ、または同時に交付しなければならない書面です。証券取引法あらため金融商品取引法が施行される際の目玉の規制でした。書面の記載内容から、記載時の活字の大きさに至るまで、細かく規制されました。

この書面の交付漏れを防止するため、金融商品取引業者は毎年一回、主要な書面を書面集という形にして、全顧客へ一斉送付するという方法を取りました。法施行当時は、各社が一斉に書面集を作成するため、書面に適した紙や、印刷会社のラインが不足するなんてこともありましたね。懐かしいです。

書面の改定があるごとに交付時期が各社ずれてきたので、今では各社の交付時期がバラバラになっています。規制が求める説明を事細かく文字にしたため、出来上がった書面は、「こんなのいったい誰が読むの?」っていう書面になってます。

一番の目玉のはずが、一番問題ある規制になってしまったというのが実感です。送り付けられる顧客もたまったものではありません。この契約締結前交付書面の交付方法についても見直しが行われるようです。できれば書面の内容についても見直しを進めてもらいたいところです。

高齢顧客への勧誘による販売に係るガイドライン

この規制もインパクト大きかったですね。高齢者を75歳以上とし、80歳以上を超高齢者として、ほぼ一律に勧誘前の手続きや、受注方法、約定通知の仕方からモニタリングに至るまで、ガイドラインが設けられました。法令や規則ではないものの、監督指針にも同じものが取り込まれたため、実質的にはルール化されたようなものです。

この高齢者勧誘ルールについても今月上旬、金融庁が見直しを進めようとしていることが報じられています。人生100年時代に、最後の25年間が一律に規制されるのは確かに変な話。「年齢」が一律に資産運用のハードルになっている現状を改めるのは、とてもいいことだと思います。長くなってしまったので今日はここまで。続きは明日。

農林水産物輸出、1兆円に届かず

少し前になりますが、農林水産省が「2019年の農林水産物・食品の輸出実績」を公表していました。輸出額は9,121億円、前年比0.6%の増加にとどまりました。農産物は3.8%増ですが、林産物、水産物がそれぞれ-1.4%、-5.2%となっています。国別でみると、輸出先1位は香港、2位が中国、3位が米国です。

7年連続で過去最高を更新

政府の目標の1兆円には届きませんでしたが、それでも7年連続で過去最高を更新です。年後半から、香港でのデモが本格化したことが大きく影響しましたね。2,000億円以上輸出する国が3.7%減です。さらには日韓関係が悪化して日本産品の不買運動の影響で韓国向けも21%減少しています。

ここで問題です。輸出先ベスト3の国における最も多く輸出した輸出品目(産品)はなんでしょう?これがなかなかイメージできない産品なんですね。

おもな輸出品目

香港の1位は、真珠です。そして中国における1位は、ホタテ貝です。そしてなんと米国における1位は、ブリなんですね。アメリカ人がブリを食べる姿、想像つかないんですが、日本の脂ののった養殖ブリ、大人気なんだそうです。

輸出品目別にみてみると、ブリは45.4%増と大きく伸びています。計算してみると7割ほどは米国向けですね。あと大きく伸ばしてきてるのが牛肉、いわゆる和牛というヤツですね。20%増加しています。

一方で大きく減少したのが、「さば」で22.8%の減。サバは漁獲量が減ったところに、日本国内でのサバ缶人気が影響したんでしょう。以前書いた越前田村屋の焼き鯖ずし、食べたくなってきた。

とまぁ、19年は少し残念な結果でしたが、20年も1兆円目指しましょう。年初から新型コロナウィルスで大苦戦でしょうが、関係者の皆さん頑張ってください。

愚者の鏡 日本経済新聞

昨日の日本経済新聞の1面トップ記事。「外出自粛、消費にブレーキ 新型肺炎で大阪など人出急減」です。もういい加減に新型肺炎卒業してくれんかな。1面にはもう一つ、「陰性の乗客、下船ほぼ完了」というのもあって、両記事で紙面の半分が新型肺炎関係です。

いつまで煽り続けるんでしょう

感染拡大を防止するため、政府が不要不急の外出や集会等への参加を控えるよう要請してるわけです。人出が減るの、当たり前でしょうに。それをまあ、携帯電話の位置情報から大阪・梅田が15%減、京都が14%減、東京が6%減、横浜が10%減などと騒ぎ立ててます。

年明け早々大騒ぎしたイランの様子、、、最近見聞きしないと思いませんか。アジアは新型肺炎で大変そうだから、イラク国民もおとなしくしてくれてるんですか。なわけないでしょう。日本のメディアが一番みんなが読んでくれそうな下らん話ばかり書いてるから、大事な情報が入らなくなってるだけです。

愚者の鏡

世の中には常識があり相応にリスクコントロールできる人が2割、そうでない、何もかもに振り回されてリスクコントロールできない人が8割いる。そんな感じでしょうか。メディアは当然8割の人たちが読んでくれる記事を書くわけですね。日経にしてもこれは同じ事です。

それでも2割の人たちの中にも日経を毎日読む人たちがいるのは何故でしょう。それは新聞が愚者の鏡だからなんです。8割の人たちがどう感じてどういう行動を起こしそうか、が見えてくる貴重な情報源だからです。特に市場関係者はそういう読み方をします。それゆえ日経の相場観は当たりません。

マーケットでは8割の損する人たちがとても重要なんですね。2割の相場巧者が儲けて売るためには、その場面で強気で買ってくれる人たちが必要ですから。。。と、ちょっと頭にきて、、、書き過ぎました。今日の投稿は読んだらすぐに忘れてください。

ネットワンシステムズ 新たに発覚した原価付替取引

2/13に公表された、「特別調査委員会の中間報告書受領及び公表に関するお知らせ」では、調査期間を1カ月延長し、3/12を目途に最終報告書を受領する旨の説明がありました。その中では、調査の過程で、「原価付替取引」が存在することが発覚したため、、、という話もありました。

原価付替取引(ゲンカツケカエトリヒキ)

今では全部で9社が関与したといわれ、注目を集めていますので、ついつい架空循環取引の方に目が向いてしまいますが、新たに原価付替取引も発覚したようです。公表文の中では次のような表現になってました。

「特別調査委員会による調査の過程で、本不正行為に類似する不正(原価付替取引)が存在することが発覚し、当該不正の疑いに係る会社との平成20年以降の直接取引を対象として追加調査を実施することが必要になったことから・・・」

原価 付け替え

原価とは、商品を提供するために必要とした費用といっていいでしょうか。かなり雑な説明ですが。材料費に加え、労務費や光熱費などすべての費用を足し込んだものです。例えば、売上げ1000万円のシステム開発に800万円の原価が計上されていれば、200万円の利益ということになります。

逆に800万円の売上しかないのに、原価が1000万円かかってしまうと、200万円の赤字ということになります。この時、会計上原価として認識していた1000万円のうち、300万円分を他のプロジェクトに掛かった費用として不正に計上すると、100万円の利益が出せるわけです。この行為を原価の付け替えと言います。

昨年6月に電気興業(6706)という会社が、この原価付替取引の発生に関する調査結果を公表していました。コンプライアンス意識の欠如や原価計上ルールの不徹底など、発生原因が分析されていましたが、最も大きな原因は「赤字案件を発生させないというプレッシャー」でした。

赤字案件を戒める過度な手続き(経営への赤字上申書など)がプレッシャーとなり、原価の付け替えという不正の動機になっています。おそらくネットワンでも同じ状況があるんでしょう。ここでも見積書の案件名の書き換えなど、協力している業者が出てきそうですね。