プラコー クレアホールディングス 臨時株主総会におけるクオカードの進呈は違法か?

先日取り上げたプラコーの臨時株主総会。そしてクレアHDの臨時株主総会においても、委任状による議決権行使の謝礼として進呈されるクオカードが、争点の一つとなっています。プラコーでは、裁判所は法令違反や著しい不公正であるとは判断しませんでした。

プラコー

同社の監査役がフクジュによる2000円分のクオカードの提供が法令違反又は著しく不公正であるとして、臨時株主総会の開催禁止の仮処分の申し立てをしました。地裁、高裁、最高裁と判断を仰ぎましたが、かないませんでした。で、臨時株主総会で株主に負けたと。

クレアHD

こちらはクレア側が先に動いて臨時株主総会の招集を決定したのち、株主側(セノーテキャピタル)自らが臨時株主総会を招集することを求めて申立てを行うという展開。しかし、これは11/4に却下されています(11/5付け高裁に不服申し立て)。

この過程でセノーテキャピタルは、クレアが株主にアンケートに協力してもらうことを条件にクオカードを進呈するなどしていることに対し、クオカードの進呈を差し止める仮処分の申し立てをしているようです。こちらは経営陣が提供するクオカードが不公正だといっています。

両社の事例、経営側と株主側という視点では全く逆のパターンに見えますが、臨時株主総会招集者という視点で見ると同じで、招集通知の発送という手続きにおいて先手を取った側がクオカードを駆使している、、、といえるかもしれません。

クオカード 判例では

2007年6月開催のモリテックス株主総会では、招集通知において「有効に議決権を行使した株主に500円分のクオカードを贈呈」して、取締役の選任を決議していました。しかし、同年12月の裁判で東京地裁は、モリテックスの会社側提案にかかる取締役の選任決議を取り消しています。クオカードの贈呈を法令違反としたわけです。

少し長くなったので続きは明日にでも。

日本瓦斯(ニチガス) LPガスのプラットフォーマー

ニチガスは11/2、「2021年3月期の資本政策に関しまして」という適時開示をしていました。今期配当を55円増配して125円とすること、35億円の自己株式を取得すること、既に取得している自己株式157万株を消却すること。を決議したというお知らせでした。

ニチガスのDX

ニチガスはLPガス販売大手。関東一円で172万件を超える顧客にエネルギーを供給している会社です。同時に開示されている第2四半期決算短信をみても、業績は極めて好調です。クリーンエネルギーとして注目されるLPガスですが、同社で目を引くのは注力しているDXです。

20年度だけで100億円超をDXに投じて、ガスボンベの新たな配送システムを構築しているとのこと。配送するボンベにはICタグを装着し、顧客宅には無線通信機器を設置。これにより、ガスの使用量をリアルタイムにデータとして取得。

新システムでこのデータを分析することで、ボンベの交換タイミングを把握するほか、AIが配送員に対して最適な配送ルートを提示するようです。このシステムを全国に1万8000社あるというLPガス会社に外販し、同社は業界プラットフォーマーになるというシナリオです。

ガスの使用データ

配送の効率化にとどまらず、プラットフォーム上のガス会社間での会社の枠を超えた配送員の融通やボンベの共同配送なども可能になっていきます。そしてさらに、同社が集めるガスの使用データは、在宅の有無や料理の時間帯など、利用者の生活実態を把握できるとのこと。

無人検針による検針数値をデータとして収集。このビッグデータを活かして、ニチガスは今後ガス小売業者や顧客に対してどういったサービスを提供していくのでしょう。エネルギーインフラ業者とは思えない、伸びしろを感じさせる企業ですね。

ニチガス株式は昨日の終値が4,975円。配当利回りも2.5%あります。5000円割れであれば、投資対象としても面白そうです。

株式会社アマナ(amana) 架空売上 特別調査委員会を設置

株式会社アマナは11/4、同社の連結子会社において不適切な会計処理が行われていたことが判明したとして、特別調査委員会を設置して調査を開始することを公表しました。2020年12月期第3四半期の決算作業の過程で見付かったようです。

アマナデザイン

架空売上が行われていたのは連結子会社のアマナデザインという会社。ただし、今年7月にアマナ本体に吸収合併され、解散しています。同社の役職者による2019年度売上高の架空計上があったとのこと。今のところ判明しているのは1件、3,500万円だそうです。

また、この架空売上の調査の過程で、同じ役職者による売上高及び外注原価の期間帰属の誤りも見付かっているようです。

2018年にも

今のところ分かっていることは以上なんですが、このアマナ、2018年にも社内調査委員会を設置する騒ぎを起こしてますね。この時の舞台は中国上海の子会社です。発生したのは不適切な会計処理ですね。

一部の従業員と合意の上で、「給与の一部を従業員が個人で立て替えた会社費用の精算の名目」で支給することによって、従業員個人の納税額を少なくしていた。とか、フリーランスへの役務報酬の支払いを証憑なしでかつ、源泉徴収せずに支払っていた、というものです。

amana

全然知らない会社でしたが、アマナは広告ビジュアル制作業界では最大手だとか。名前の由来は2500年前の日本の古代の言葉で「エネルギーの概念」を意味しているんだそうです。

二度あることは三度ある、、、なんていいます。ネットワンシステムズはまさにその流れをいってます。アマナも今回の事案で二度目。三度目が起きないよう徹底した調査を行っていただきたいものです。

前田建設 前田道路のTOBを振り返る

コロナの影響で資金調達に走る企業が増えています。先週末にもJALの公募増資による1680億円の調達の話題がありました。このニュースを見てある出来事を思い出しました。今年春の出来事、前田建設による前田道路への敵対的TOBのお話です。

何とも残念な

このTOBに関しては下に出ている関連記事をお読みいただくとして、なぜこの件を思い出したかというと、なんであのタイミングで特別配当を出し、内部留保を535億円も吐き出してしまったんだっけ、、、という疑問が湧いたからなんです。

前田道路が採った捨て身の焦土作戦だとか、戦術の問題はさておき、新型コロナの影響で今では上場企業の多くが運転資金の確保に走り回っているわけです。なんとも残念なタイミングだったんだなぁ、と。

前田建設によるTOBが成立したのは3月12日でした。その日の夜中、米国ニューヨークではダウ工業株平均がブラックマンデー以来の急落に襲われます。前日比2,352ドル安の21,200ドル。下げ幅では史上最大の下げでした。翌日東京市場も一時1,800円を超える下げ。

コロナショックを読み違え

TOBを決めた当時、コロナショックで経済がここまで冷え込んでしまい、企業が生き残るために一番重要なのは「キャッシュ」という時代が来るとは、両社ともに読めてなかったでしょうね。

先日、三洋化成と日本触媒も経営統合中止を発表していました。こちらは円満に進んでいた話ではありますが、やはりコロナの影響を中止の原因としてあげていました。前田建設と前田道路の件も、あと1ヶ月、2か月、タイミングが遅かったらどうなってたでしょう。

前田道路株式、TOBで取得された価格は3,950円。11月6日終値は1,816円です。キャッシュは大量に流出するわ、取得した株は半値以下に落ち込むわ。ん~、何とも残念な結果です。

SBIの地銀連合構想 野村證券と大和証券

ちょっと古い話題ですが、10/24、SBIホールディングスが群馬県を地盤とする東和銀行と資本提携することが日経で伝えられました。SBIが進める地銀連合構想で5行目の出資です。その翌営業日の10/26、金融審議会での銀行・証券の垣根問題に関する議論が日経で紹介されていました。

ファイアウォール(FW)規制の緩和

金融審議会市場制度WGで議論されているのは、銀行と証券が顧客情報を共有することを制限するルールの緩和について。この日紹介されていたのはM&Aを例にした法人顧客のケースでしたが、個人についても概ね同じような展開で、野村、大和が緩和反対。メガバンク等が賛成という構図。

この日のニュースでも海外の顧客だけを規制の対象外とする、という玉虫色の結論。野村證券を筆頭に、大和証券など6社が入る「資本市場の健全な発展を考える会」というのがあるんですね。銀行が証券の世界になだれ込む、、というか、銀行系証券が銀行の顧客を囲い込むことに対して抵抗を続けているわけです。

SBIの地銀連合構想

上位の銀行と上位の証券がFW規制の緩和でもめているところ、スルスルと抜け出してきているのがSBIですね。菅首相や金融庁とも、地銀再編という目的が一致していることもあり、地銀連合構想、ことのほか順調に進んでいます。

SBIにとっては、地銀が抱える地域の重要顧客へのアクセス権が得られるという大きなメリットがあります。この後も着実に銀行顧客を囲い込んでいくでしょう。

「選択」11月号では、SBIが紹介して地銀に融資させているとして、THEグローバル社に対する融資の危険性に触れていましたが、まぁそれくらいのことはやるでしょう。北尾氏は生き馬の目を抜くと言われていたころの株屋の、数少ない生き残りですから。

金融審における野村、大和の記事とSBIの日経記事。ほぼ同時に出てきた記事なんですが、両陣営の勢いの差を感じさせられる記事でした。