希望退職者募集が止まらない

株式市場はまだまだ堅調ですが、上場企業による希望退職者の募集は収まる気配がありません。今日で1月も終わりですが、2021年に入ってここまでのところ、希望退職者の募集を開示した企業はTDnet上で既に4社確認できます。

1月の開示

今月、早期・希望退職者の募集に関する開示を行ったのは合計11社でした。うち、募集の公表が4社で、募集結果の公表が7社です。募集結果を公表した企業とその応募人員数は、次のような感じです。

放電精密加工研究所(30名)、ムーンバット(43名)、アツギ(75名)、文教堂HD(25名)、セガサミーHD(729名)、NOK(246名)、マクセルHD(309名) ※NOKは連結子会社分です。

一方で、今月募集を公表した企業と募集人員数は次の通り。

かんなん丸(80名程度)、ヴィア・HD(約50人)、三陽商会(150人程度)、IMAGICA GROUP(グループで100名程度)

2020年は

東京商工リサーチによると、2020年に早期・希望退職者を募集した上場企業は判明しているだけで93社に上ったそうです。この数字、リーマンショック直後の2009年の191社に次ぐ高水準とのこと。募集人数は合計で1万8635人となっていて、こちらも2009年に次ぐ数字に。

昨年の希望退職募集者数上位は日立金属(1030名)、レオパレス21(1000名)、コカ・コーラボトラーズジャパンHD(900名)など。実際の応募結果ではファミリーマートの1025名(募集は800名)というのもありましたね。

冒頭で2021年の募集開示企業を紹介しましたが、東京商工リサーチによると、2021年に募集を開始する上場企業は1月21日時点で、すでに22社判明しているとのこと。前年同期(11件)の2倍増のペースで推移していて、募集人数は判明分で3490人だそうです。

日立金属 特別調査委員会 調査報告書

日立金属は1/28、品質不正に関し、特別調査委員会の調査報告書を公表しました。不正製品を納入した先は、計1747社にのぼっています。このうち事業撤退などの理由で連絡が取れない44社を除き、すべての顧客に納入実績があることについて連絡済みだそうです。

ここまでを振り返って

いやぁ、長かったですね。委員会の設置は昨年の4/27。そこから今年の1/25までですから、調査期間なんと9か月間です。お疲れ様です。

2020年1月に安来工場において製造する特殊鋼について、品質に係る不適切行為が行われている旨の情報提供を受けたというのがとっかかりでしたが、これってやはり内部通報ということのようです。今回は「情報提供」ではなく、「投書」と表現されています。

2015年に始まり、世を騒がせた上場企業による検査不正事案の嵐。そんな中でも不正をしっかり握りつぶしてきた日立金属。報告書では経営幹部や本社部門などが不正を認識していて続けさせている状況では、現場が不正を問題視することが困難だったと分析しています。

全編ヤラセに見えてきた

じゃぁ、なぜこの時期に「投書」が登場するんでしょう。なんかもうこの辺りからヤラセみたいな感じがしてきました。何度も不正行為に関して気付きがあり、何度も不正行為の公表のチャンスがあったにも関わらず、、、日立が日立金属を売却することを決めると途端に表沙汰に。。。

再発防止策の中に「内部通報制度の強化」というのがあるんですが、これが日立製作所コンプライアンス部に通報する仕組みというのも、、意味ありげ。良い値で売れるまでは日立が監視するのか。

売却を決定したから不正を精査、膿を出し切り、身綺麗になってから売却。このこと自体に別に異を唱えるものではありません。問題はそれまでの間、社会や顧客を裏切り続けていることです。これが日立製作所のやり方なんでしょうか。ここから売却手続きを加速するんでしたね。

ディー・エヌ・エー【DeNA】(2432) 従業員の不正行為

株式会社ディー・エヌ・エーは1/21、同社元従業員が、関連会社の株式会社DeNA SOMPO Mobilityから受託しているカーシェアサービス「Anyca」のカスタマーサポート業務において、顧客の個人情報を不正に使用したことが判明したと公表しました。

Anyca(エニカ)

Anyca(エニカ)とは、DeNA SOMPO Mobilityが運営するカーシェアアプリの名称のようです。自身がクルマを使わない時にシェアしたい「オーナー」と、必要なときに好みのクルマを使いたい「ドライバー」をマッチングするカーシェアサービス、らしいです。

マイカーをシェアしたいオーナーねぇ。シェアすることで当然収入があるんだろうけど、愛車を他人に貸すという感覚、kuniには理解できません。やっぱ頭が古いんでしょうね。

元従業員

例によって元従業員となっていますが、この記事タイトルでは従業員としています。2021年1月19日付けで懲戒解雇処分を行っており、法的措置も検討していくそうです。で、不正行為を行ったのが、2021年1月11日から1月15日。ほら、従業員です。

行為の概要と開示

この従業員が従事していたのが、DeNA SOMPO Mobilityから受託しているカーシェアサービス「Anyca」のカスタマーサポート業務。そこで顧客の個人情報8名分を不正に持ち出し、カードローンを申し込んでいたといいます。オーナー側の顧客でしょうね。乗ってる車で金融資産もある程度推定できそうです。

消費者金融事業者から身に覚えのない申込み確認の連絡が顧客に入り、不正行為が発覚。幸い不正使用された情報では最終的な登録までは至っておらず、顧客に対して金銭的な被害が発生したという事実は現時点では確認されていないとのこと。

ということで、大事には至らずということなんですが、同社はこの不正行為について、同社ホームページでお詫びしているだけです。TDnetでの開示はなし。よくあるパターンですね、いかがなものでしょう。調査委員会等が設置される気配もありません。

モルフォ(3653) 役員のインサイダー取引 課徴金命令を取り消し

デンソーとの業務提携に絡みインサイダー取引を行ったとして、2018年に金融庁から133万円の課徴金納付命令を受けたマザーズ上場企業「モルフォ」の役員が、国に処分の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は1/26、請求を認め、納付命令を取り消しました。

インサイダー取引事件の概要

デンソーとの業務提携という重要事実を巡るインサイダー取引なんですが、当時のプレスリリースを見ると、「モルフォのAI学習環境をデンソーが高度運転支援システム向けの画像認識開発に採用」となっています。確かにインパクトのありそうな提携内容です。

2015年12月11日、この業務提携が公表されると、モルフォの株価は3日間ストップ高比例配分と暴騰。公表当日の株価4,115円が4営業日目には7,320円まで買われています。この役員は8/24と8/26に合計400株、1,595,000円でモルフォ株を買付けてるんですね。

この8月26日の時点でデンソーとの提携が実質的に決定されていたか(重要事実が発生していたか)どうかが争点になったわけです。。。で、結果はセーフということに。

ハッピーエンド?

課徴金納付命令の取り消し、日本経済新聞でも記事にしてるんですが、これを読む限り一件落着といった感じ。ところがこのモルフォのインサイダー取引、実は役員1人と社員9人が課徴金納付命令を受けてます。役員が上記のように8月に買付け、、、これはセーフ判定。

ところが残りの社員9人については、9月中旬以降の買付け、で多分アウトのままです。うち、7人は持株会への加入や拠出金の増額で課徴金食らってます。持株会は基本的には内部者取引規制の適用除外ですが、重要事実を知りながら持株会に新規入会したり、持株会への拠出金を増加したりすることは、適用除外の対象となりません。これは覚えておきましょう。

しかし、AIを開発する企業の従業員が金に目がくらんで善悪の判断を誤るとは。困ったもんです。

COTA(コタ:4923) 監査役の不正行為

コタ株式会社は1/26、同社監査役が複数年度にわたり、会社の資金約5,670千円を私的に流用していたことが社内調査において発覚したと公表しました。発覚を受け同監査役に確認したところ、事実である旨を認め2021年1月25日付で監査役を辞任したとのこと。

監査役の不正行為って?

金額自体はそれほど大きなものではありませんが、監査役の不正行為というのは珍しいですね。もちろん、結果的に監査役の不法行為が問われるケースは少なくありません。いわゆる善管注意義務違反などですね。まず取締役の責任が問われ、それを看過したことに対する監査役の責任を問う、というのが定番じゃないでしょうか。

行為の概要

2011年6月から2021年1月の約9年半にわたり、会社の資金約567万円を監査役が不正に支出し、監査役が私的な旅費等に当該資金を流用していたということです。なるほど、そういうことなんですね。

この監査役、2010年6月に常勤監査役に就任していますから、就任2年目から不正を行っていたようです。現地に足を運ばない「カラ出張」を繰り返し、旅費交通費名目で会社の資金を詐取していたということですね。

新型コロナウイルスが感染拡大している状況下にもかかわらず、「セミナー名目」の出張申請が多いことに関係者が疑問を持ち発覚したそうです。

会社法第388条

会社法第388条は、監査役がその職務の執行について監査役設置会社に対して必要な費用を請求をしたときは、会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該監査役の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。。。と定めています。

これを悪用したんですね。9年半で567万円。年間60万円ほどですから、会社も気付かなかったんでしょう。第3四半期決算の業績に、監査役に関係する旅費交通費及び退職慰労引当金繰入額等を合算した約3442万円の戻し入れを行うそうで、、、思わぬところでコロナ効果ですか。それにしても監査役が、、、情けない。