不祥事等により決算発表を延期した企業のその後 ダイワボウホールディングス ネットワンシステムズ など

ベクトル(6058)、ネットワンシステムズ(7518)、小倉クラッチ(6408)、ダイワボウホールディングス(3107)、三菱マテリアル(5711)。不祥事が発覚したことにより決算発表を延期し、四半期報告書の期限と戦っている企業の現状確認など、、、。

ベクトル

子会社における売り上げの期間帰属の適正性に疑義があるとして決算発表を延期したベクトル。同社は2021年2月期第2四半期報告書の提出期限の延長を申請、承認された提出期限は11/13(金曜日)でした。何とか期限ぎりぎりで間に合わせてきましたので、監理銘柄(確認中)に指定されることもなく、、、。社内調査委員会の調査報告書も開示されました。

ネットワンシステムズ

昨年末の架空循環取引に続き、従業員による資金流用が発覚したネットワンシステムズ。10/26に2021年3月期第2四半期決算発表の延期を公表しましたが、11/16の期限に間に合うんでしょうか。11/13時点では四半期報告書の提出期限の延長を申請したという開示はされていません。

小倉クラッチ

11/11、2021年3月期第2四半期決算発表を延期することを公表しました。在外子会社で棚卸資産の過大計上や従業員による横領などが発覚していましたから、当然でしょう。11/16までに四半期報告書提出は難しそうですが、11/13時点では四半期報告書の提出期限の延長を申請したという開示はされていません。

ダイワボウホールディングス

子会社での循環取引等が発覚したダイワボウホールディングス。決算発表延期を公表した後、11/13には四半期報告書の提出期限延長を申請し、同日のうちに承認されたことを公表しました。延期後の提出期限は12/16です。

三菱マテリアル

米国の連結子会社における経営幹部による利益相反取引が問題となった三菱マテリアル。同社も決算発表を延期し、その後11/13には四半期報告書の提出期限延長を申請し、同日のうちに承認されたことを公表しました。こちらも延期後の提出期限は12/16です。

東京ドーム 株主総会検査役の選任の申立て

東京ドームは11/10、オアシス・マネジメントの請求で開催する臨時株主総会について「臨時株主総会開催及び株主提案に対する当社取締役会の意見に関するお知らせ」を公表。翌11日には、「当社による株主総会検査役の選任の申立てに関するお知らせ」を公表しました。

総会検査役

臨時株主総会の開催において、よく目にする総会検査役。会社側と株主との間でプロキシーファイトが想定されるようなケースで選任されています。が、総会検査役という制度、なんとなく知ったつもりではいるものの、意外に理解されていないのでは、、、ということで調べてみました。

会社法第306条第1項(株主総会の招集手続等に関する検査役の選任)にその定めがあります。簡単に言うと「会社および総株主の議決権の1%以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集手続および決議方法を調査させるため、株主総会に先立ち、裁判所に対し、総会検査役の選任を申し立てることができる」というものです。

ポイントは申し立ては会社だけでなく、株主側も可能というところ。今年6月の日邦産業の定時株主総会では、同社とフリージア・マクロスの両者が申し立てて、総会検査役が選任されてました(両社の申し立てに応じて1名を選任)。

役割など

プロキシーファイトが想定される株主総会の場合、後日、株主総会決議取消訴訟や決議不存在確認訴訟等が提起され、決議の有効性が争われることがあります。そのような事態に備えるため、株主総会の開催前に検査役の選任を裁判所に申し立てるんですね。

検査役を選任することで、違法または不当な手続が行われることを防ぎ、後日の紛争を未然に防止することができます。また、後日紛争が生じた場合には、検査役による報告書を証拠資料とすることができる、という効果が期待できるというわけです。

不正指令電磁的記録に関する罪 マルウエア販売した男逮捕

11/4愛知県警は、パソコンに感染して遠隔操作するマルウエアをダークウェブで販売したとして、千葉県在住の自称フリーカメラマン(21歳)を逮捕したと発表しました。逮捕容疑は不正指令電磁的記録保管・提供だそうです。いわゆる不正指令電磁的記録に関する罪です。

事件の概要

容疑者はマルウエアの一つである「Dark Comet」を自身のハードディスクに保管したうえ、ダークウェブ(闇サイト)掲示板サイトで購入者を募り、販売したといいます。このDark Cometは、感染したパソコンを遠隔操作で不正に操作し、データ閲覧やパソコンのカメラを起動させる機能を持っています。

Dark Cometをどう入手したかは分かってないようですが、このマルウエアの販売で約90万円の利益を得ていたとのこと。朝日新聞では1ファイル3万円で販売、、、と伝えていましたから、30人くらい買った奴がいるということでしょうか。

中学生だって

この事件で思い出したのが、2017年6月に起きた、大阪府内の男子中学生がランサムウエアを作成した容疑で逮捕されたという事件です。なんといっても容疑者が14歳というのがショッキングでした。この時の容疑も不正指令電磁的記録作成・保管でした。ちなみに2015年にも17歳の少年がランサムウエアを作っていたという事件がありましたね。

不正指令電磁的記録に関する罪

何でこう難しい名前にするんでしょうね。簡単に言うと、コンピュータ・ウイルスに関する罪ということ。先ほどの2件の容疑に書いたように、「作成」、「提供」、「供用」、「取得」、「保管」の行為に対して罰せられる法律です。2011年7月に施行されました。

今回逮捕された自称カメラマンの男は、「保管」と「提供」の容疑で、14歳の少年の場合は「作成」と「保管」の罪で逮捕ということです。

プラコー クレアホールディングス 臨時株主総会におけるクオカードの進呈は違法か?(その2)

2007年の判例。モリテックス株主総会における株主に対するクオカードの贈呈は、「株式会社は何人に対しても、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしてはならない」とする利益供与の禁止(会社法第120条第1項)に抵触していると判断されました。

当時はサプライズ

従来は、株主による議決権の行使を促進するための粗品の進呈については、適法との考え方が多数派だったようです。より多数の株主が総会に参加する、意思表示することを促進する効果が期待でき、株主全体の利益に資するからという考え方です。

そのため、当時はサプライズだったようです。裁判所が示した判断は、利益供与は許されないという原則を確認したうえで、次の3要件を満たす場合は例外として許容されるという考え方です。

例外的に許容

① その利益が株主の権利行使に影響を及ぼす恐れのない正当な理由に基づいている
② その額が社会通念上許容される範囲のもの
③ 利益供与により会社の財産的基礎に影響を与えるものではない

クオカードの額は2000円とか3000円が相場のようですので、②③については大丈夫そうです。問題は①。会社側提案と株主提案が競合する場合(通常はそうですよね)、開催者側は自身の提案を支持してほしいわけですから、①を巡って利益供与に該当するかどうかが判断されます。

モリテックスの場合は、クオカードの贈呈を表明したハガキに「重要」と記載して、「是非とも、会社提案にご賛同の上、議決権を行使していただきたく・・・」などと記載していたことでアウト判定になったらしいです。「クレアHDがアンケートと称して」贈呈するのは、この辺りを考慮しているのかと。

基本的には利益供与という判断になりそうな構造のように思えます。プラコーもクレアも、一旦総会で決議されたとしても、後にこの伝家の宝刀でバッサリということもありそうです。

プラコー クレアホールディングス 臨時株主総会におけるクオカードの進呈は違法か?

先日取り上げたプラコーの臨時株主総会。そしてクレアHDの臨時株主総会においても、委任状による議決権行使の謝礼として進呈されるクオカードが、争点の一つとなっています。プラコーでは、裁判所は法令違反や著しい不公正であるとは判断しませんでした。

プラコー

同社の監査役がフクジュによる2000円分のクオカードの提供が法令違反又は著しく不公正であるとして、臨時株主総会の開催禁止の仮処分の申し立てをしました。地裁、高裁、最高裁と判断を仰ぎましたが、かないませんでした。で、臨時株主総会で株主に負けたと。

クレアHD

こちらはクレア側が先に動いて臨時株主総会の招集を決定したのち、株主側(セノーテキャピタル)自らが臨時株主総会を招集することを求めて申立てを行うという展開。しかし、これは11/4に却下されています(11/5付け高裁に不服申し立て)。

この過程でセノーテキャピタルは、クレアが株主にアンケートに協力してもらうことを条件にクオカードを進呈するなどしていることに対し、クオカードの進呈を差し止める仮処分の申し立てをしているようです。こちらは経営陣が提供するクオカードが不公正だといっています。

両社の事例、経営側と株主側という視点では全く逆のパターンに見えますが、臨時株主総会招集者という視点で見ると同じで、招集通知の発送という手続きにおいて先手を取った側がクオカードを駆使している、、、といえるかもしれません。

クオカード 判例では

2007年6月開催のモリテックス株主総会では、招集通知において「有効に議決権を行使した株主に500円分のクオカードを贈呈」して、取締役の選任を決議していました。しかし、同年12月の裁判で東京地裁は、モリテックスの会社側提案にかかる取締役の選任決議を取り消しています。クオカードの贈呈を法令違反としたわけです。

少し長くなったので続きは明日にでも。