リテール証券 手数料等ゼロ化の行き着くところ

ネット証券の株式委託手数料の無料化が始まったと思ったら、その流れがすぐさま投資信託の販売手数料や信託報酬にも飛び火。株式手数料をゼロにして、信用取引の金利で食っていくんだろ、、、と思っていると、野村が信用金利まで0.5%に下げてきました。なんでもかんでも引き下げ、ゼロ化の様相です。

最後の砦、資産運用アドバイス

もう顧客の注文を執行する業務(ブローカレッジ)では収益は上がりませんね。ただ、引き続きこうした商品へのニーズは残りますし、資産運用新興国の日本ではむしろ今後盛り上がっていくはず。プロによる資産運用アドバイスは最後の砦になるんでしょう。

金融財政事情2月17日号で、日本資産運用基盤グループの大原社長が資産運用アドバイス事業について、次のように書かれていました。「顧客とアドバイザーとの個別の関係性に基づく体験価値が大きいため、コモディティ化に対する耐性があり、事業利潤が比較的残りやすいという特徴がある」。なるほど、おっしゃる通りですね。

手数料ゼロの奔流(3)

3/4付の日本経済新聞では、連載3回目のコラム「迫真」「手数料ゼロの奔流」で、米国における顧客とRIA(投資顧問型独立アドバイザー)との関係性について紹介していました。

ある顧客の言葉として、「アドバイザーというより、友達よ」、「転職に伴う年金の移行に苦戦した時も、自分の母親の看病で大変なのに私の家まで来てくれた。ずっとついて行こうと思ったわ」というのが紹介されていました。ようするにこういうことなんですね、顧客とアドバイザーの個別の関係性に基づく体験価値って。

米国のRIAは売買手数料は取らず、預かり資産残高の1%程度を報酬として受け取るそうですが、このスタイルは超低金利の今の日本で受け入れられるんでしょうか。実はここが一番の鬼門のような気がします。安全性を重視した運用だと、この1%がなかなか稼げない国ですからね。報酬体系についてはひと工夫必要な気がします。

スピンオフ普及の条件 コシダカHD カーブスHD

昨日はコシダカHDからスピンオフしたカーブスHDのお話を書きました。ダラダラと長くなってしまい、本題に入る前に終わってしまいました。今日は、期待されるスピンオフが普及するために必要なものについて考えてみます。簡単に答えが出るとも思えないのですが、、。

スピンオフ後の株価

コシダカHDとカーブスHDの例で考えてみましょう。コシダカHDはカーブスHD株式を自社の株主に割り当てます(分配します)。つまりカーブスHD株式というIPO(新規公開株)を株主は手に入れるわけですね。そしてその株式が公開後、値上がりすれば株主は万々歳。

ということですが、株主が喜ぶだけではスピンオフが普及するとは思えません。一方のコシダカHDの株価はどうでしょう。カーブスHDを切り出してしまいました。で、切り出されたカーブスHDが株価を上げていくとなると、コシダカHDの株価は低迷する可能性もあります。こんなことではそもそもコシダカHDの経営者はカーブスHDを手放さないでしょう。

とまぁ、こう考えてくると、スピンオフ後のコシダカHDの株価も上昇しなければ経営判断としてスピンオフはなさそうです。スピンオフ実施後の残した本業に資源を集中し、再度成長を加速させられるという戦略が必要ということですね。

子会社・事業の売却

ここで気になるのが、日立等がスピンオフではなく事業や子会社の売却に動いていることです。売却ですから現金が入ってきます。スピンオフの方は現金は入ってきません。普通に考えると現金が入ってくる「売却」を選択しそうなものです。

これを株主の視点で考えると、売却はその時点での価値を現金化して会社のもの(株主のもの)にする行為ですし、スピンオフはその時点での価値を株式として株主に渡し、その後の果実は株主の判断に委ねる行為でしょうか。よほど株主の方を向いているというか、受託者責任を意識する会社の選択でしょうね。

前田道路が株主に対して特別配当を実施したのに通じるような考え方かもしれません。こういう株主を強く意識するガバナンスが、日本にも芽生え始めてきたのでしょうか。コングロマリットディスカウントの解消にしても、株主利益の最大化に通じるわけで、同じ感覚だと思われます。株主利益を最優先に考える経営こそが、スピンオフ普及の条件なのかもしれません。

新制度下で初のスピンオフ上場 カーブスHD コシダカHD

親会社と資本関係のない独立した会社にする、スピンオフという仕組みを使った初の新規上場が行われました。親会社はコシダカHD。独立して上場にこぎつけたのがカーブスHDです。2017年に税制改正が行われ、スピンオフ税制が導入されましたが、カーブスHDはこの新税制で誕生した第1号案件です。

初値は公開価格割れ

残念ながら初値は670円。公開価格を80円下回りました。新規公開株の初値割れは12銘柄ぶりとのこと。しかし、上場日の環境が悪すぎましたね。マーケット全体がどこまで下げるやら、、、という環境に加え、新型コロナウィルスの感染がスポーツクラブ経由で、なんて話題もあるくらいですし。あっ、カーブスHDはフィットネス事業を手掛ける会社です。

日経ではスピンオフ前のコシダカHDの時価総額が1173億円、スピンオフ後の両社の時価総額が、コシダカHDが454億円、カーブスHDが576億円と伝えています。143億円目減りしてますね。ただ、時価総額の比較時点で日経平均は1000円下落してますから、、まだなんとも。

さらに翌日にはカーブスHDは100円高となっており、時価総額は660億円を回復してきています。コシダカHDの方は少し下げてますが。とにかく相場が荒れていますので、目先の動きは気にせず、もう少し様子を見てみましょう。

スピンオフのすすめ

スピンオフは子会社や特定の事業を本体と資本関係のない独立した会社にする会社分割の手法。経営判断が早くなるでしょうし、経営資源を自社に集中できるのも魅力です。ソフトバンクがよく言われる、コングロマリットディスカウントの解消にも効果あり。

多角化を進めてきた日本企業は様々な事業を抱え、このことが各事業の競争力を阻害してきたという一面があります。日立や東芝が今まさに取り組んでいるように、政府としても事業再編を促しているという背景があるんですね。今回のカーブスHDの事例が成功すると、スピンオフによる事業再編が脚光を浴びる可能性がある。。。ということで注目です。

兜町の風雲児 中江滋樹がひっそり死んでいた

兜町の風雲児と呼ばれた投資ジャーナル元会長、中江滋樹氏がひっそり亡くなっていました。2/20、葛飾区の自宅アパートの火災で、焼け跡から変わり果てた姿で見付かったそうです。kuniが証券界に入った年の前年には詐欺容疑で逮捕されていましたが、それまでの勢いは凄かったんです。

加藤あきら 中江滋樹

2016年12月、これまた兜町の風雲児と呼ばれた仕手筋、整備グループの元代表、加藤あきら氏が亡くなっています。75歳だったそうです。そして中江氏もあっけない最期を迎えたんですね。66歳だそうです。

投資(というより投機)に対する考え方が違っていたような気がしますが、二人とも日本の投資顧問業のはしりですね。そして二人ともバブルが弾けるところまでの美味しい時代を謳歌した後、ひっそり消えていきました。一時はおそらく何百億というお金を動かしていた、ある意味日本の市場の中心にいた人たちですが、最期は本当にあっけないものです。

同じ日、野村證券は

バブルが弾け、金融商品取引法が施行され、証券取引等監視委員会も番人として機能する現在の市場では、彼らのような需給と資金力に頼った仕手戦はもう成り立ちません。本来あるべき資産運用の時代の到来に合わせるかのように、彼らが亡くなっていくのはまさに時代の交代を表しているようで・・・。

中江滋樹氏が亡くなった第一報(警視庁の公表日)は2月25日でした。同じ日、野村證券は国内で初めて、信託報酬を0%とする投資信託を設定することを発表しています。とうとう野村が動いたと言われる、これも資産運用の時代到来を象徴する出来事です。非常に対照的なニュースを同じ日に見せられ、複雑な気持ちでした。

※ 仕手筋(してすじ)とは
人為的に作った相場で大きな利益を得ることを目的に、巨額の投資資金で大量に投機的な売買を行う人やグループのことを指します。また、仕手筋が投機の対象にした銘柄を仕手株と言います。仕手というのは能に由来する言葉です。

前田道路 NIPPOと資本提携 前田建設のTOB

前田建設工業から敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられている前田道路。従来の2020年3月期計画の6倍に相当する535億円の特別配当実施のニュースが今月21日。さらに、今度は27日、同業のNIPPOと資本・業務提携の協議を始めると発表しました。

NIPPOとの提携

最初にこのニュースを見た時、「またずいぶんふざけたことやるもんだなぁ」というのが第一印象でした。当ブログでも過去に取り上げました、道路舗装用アスファルト合材カルテルの仲間同士です。

アスファルト合材の価格を不正に引き上げるカルテルを結んでいた9社。公正取引委員会は、独占禁止法違反(不当な取引制限)で、過去最高となる総額399億円の課徴金納付を命じましたが、その道路舗装大手9社のうちの1社が前田道路。そしてもう1社がNIPPOです。NIPPOはカルテルには加わっていましたが、違反を自己申告したようで、処分は免除されています。

業界1位のNIPPOと2位の前田道路の提携ですので、独占禁止法に抵触する可能性に言及しているメディアが多いようですが、公正取引委員会はどう判断するんでしょうか。わずか半年ほど前に処分したばかりですからね。この「カルテル組んでた2社が」という感情的なものもあるでしょうし。

前田道路の言い分

とまぁ、良いイメージのない前田道路だったんですが、同社のTOBに対する反対意見表明のお知らせや、特別配当のお知らせの中での主張は、至極真っ当なものですね。

前田建設は前田道路が抱える内部留保を狙って子会社化を企んでいるが、内部留保は株主全員の利益であり、前田建設だけに提供されるものではない。よって当該内部留保を特別配当と言いう形で株主全員に還元する。そんな感じです。

特別配当は前田建設にも支払われるわけですから、これはこれで前田建設にとっても良い話かもしれません。ということですが、このまま手打ちになるかというと、、、まだ続きがありそうです。