国土交通省 スズキに再発防止勧告  スイフト リコールも

少し前になりますが、6/7 国土交通省はスズキにおける一連の完成検査に係る不正事案に対し、再発防止に関し必要な措置を講ずべきことを勧告しました。また、特に重大な事案については、道路運送車両法違反(完成検査の一部未実施)による過料適用のため、静岡地方裁判所に通知を行っています。

過料 科料 罰金

過料(かりょう)は国や地方公共団体が、行政上の軽い禁令を犯した者(企業)に科する制裁のための金銭罰のことです。これに対して、科料(かりょう)、罰金は犯罪に科する刑罰になります。過料と科料は、おなじ「かりょう」と読みますので、過料を「あやまちりょう」、科料を「とがりょう」と呼んで区別することがあるそうです。

ついでですが、科料と罰金の違いは、科料が1000円以上1万円未満、罰金が1万円以上と決まっているようです。こうしてみると、スズキの行為はこれらの中で一番軽い扱いに見えてきますが、実際には過料の適用を求めた自動車は655台で、1台当たりの上限は30万円とのこと。この計算通り上限で決定した場合2億円近くになるそうです。

勧告の内容

かなり厳しい内容になっています。平成28年の燃費不正問題の際や、29年の他社の燃費不正問題の際も、自社の同種事案を把握するに至らなかったことをあげ、「コンプライアンス意識の低さ、自浄能力の欠如」と表現し、さらに、「不正の報告をしても取り上げてもらえない、かえって不利益を被るだろうと職員に思わせた不健全な組織風土等の結果である」とバッサリ。

さらに「経営層はこのことを、自らが招いた、会社の在り方に関わる容易には改善できない根深い問題であることを認識する必要がある」とも言っています。不正等が行われる企業におけるガバナンスの欠如について語る際、必要なキーワード(コンプライアンス意識、自浄能力、現場と乖離した経営という組織風土、経営層の責任)が全てそろっている感じです。

中でも特筆すべきこと、kuniが最も重要と考えるのが現場と経営層の乖離です。勧告では「不適切事案や不正事案を報告したとしても取り上げてもらえないだろう、かえって不利益を被るだろうと現場職員に思わせた不健全な組織風土」と表現されています。

要するに現場が経営層を信用していないということです。この関係が改善されなければ、トップがいくらコンプラを指示してもダメです。研修しようが教育を徹底しようが、現場は経営層が本気で取り組んでるとは思いませんからね。経営層が本気で取り組み、現場の声を真摯に聞く姿を見せ続けていくしかありません。

5万台リコール

さらに、6/13 スイフト計5万台(2016年12月~19年1月生産)をリコールすると国交省に届け出ました。制御プログラムが不適切なため、後部ドアを強く閉めた際、エアバッグが誤作動する恐れがあるとのこと。。。踏んだり蹴ったりですな。

RS(リストリクテッド・ストック) 譲渡制限付き株式報酬

6/13付け日本経済新聞、「変わる総会(3)役員報酬業績連動型の導入進む」という記事の中で紹介されていました。RS(リストリクテッド・ストック) 譲渡制限付き株式報酬を役員報酬として導入する企業が増加しているという内容です。記事では、トヨタや京セラが今月開催される株主総会で謀ろうとしていることを伝えてました。

役員への報酬制度については、コーポレートガバナンス・コードが「客観性・透明性ある手続きで報酬制度を設計し具体的に決定する」ことを求めています。譲渡制限付き株式報酬を導入する企業の多くが、「自社の企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとなること」や「株主価値を共有できること」を導入の理由として表明しています。

ストック・オプションとの違い

kuniが若い頃は、役員報酬や従業員へのインセンティブという意味では、ストック・オプションが幅を利かせてました。なにせデリバティブ全盛期ですからね。全盛期=マーケットの絶頂期でもあったわけで、ストック・オプションで大儲けしたという先例の話はよく聞いたものの、国内ではあまり儲かった人はいないんじゃないでしょうか。

ストック・オプションは株価が権利行使価格を上回った場合だけ、経済的な価値があります。株価が下がってしまうと、価値がゼロなんですね。株価が恒常的に上昇する場面では非常に魅力があるんですが、最近のマーケットのように先が読めない時代には向きませんし、インセンティブにもならないことも考えられるのです。

これに対して、譲渡制限付き株式報酬は、割り当てられるのはあくまで普通株式ですので、報酬としていただいた後に株価が下げようが、その時点での 時価×数量 の経済価値があるわけです。もちろん譲渡制限が外れた時点で、株価が上がっている方が儲かりますし、儲けたいから役員は企業価値を向上させるべく、頑張るわけです。

時代を反映した選択

役員報酬の客観性や透明性がますます求められるという時代。とはいえ、株式市場(特に自社の株価)が右肩上がりで上昇するかどうか自信が持てない時代。そんな時代を反映した選択かと思われます。

おまけです。「譲渡制限付き株式報酬」でググってみたところ、自己株式の処分に関するお知らせがたくさん出てきます。自己株式を役員に割り当てるということですね。スキームの説明を読んでみると、どこの会社も、「譲渡制限期間中は野村證券株式会社に開設した専用口座で管理される」と書かれています。野村さんこういうところは強いですね。

SBI証券 地銀との共同店舗拡大

6/12付の日刊工業新聞の記事です。SBI証券はいわゆるネット証券で、持ち株会社であるSBIホールディングスは東証一部上場会社です。そのSBI証券が、地域金融機関との共同店舗を拡大させ、対面営業でもその影響力を増してきているという記事ですね。

地域金融機関との関係

SBI証券は、清水銀行を皮切りに、34の金融機関と金融商品の仲介で提携しています。これに加えて、グループ会社を通じて共同店舗の運営も拡大中とのこと。記事では紹介されてませんでしたが、このグループ会社というのはSBIマネープラザという会社です。

ホームページで見てみると、直近では三重銀行、東和銀行、などと共同店舗を開設しているようですし、山形銀行との提携のニュースも出ています。このほかにも19年度中に店舗展開で10機関前後と協力するようです。地方創世の観点からも注目ですし、地域金融機関にとっては救世主ですよね。

先日IFA(独立系金融アドバイザー)について書きましたが、このSBIマネープラザでも社員IFAの募集をやっているようです。金融機関での経験を持つ人材を3,000人程度まで拡大するらしいです。3,000人というと、準大手証券を確実に超えてきますね。恐るべし。。。

今一番元気の良い証券会社

ネット証券からスタートして、グループ会社で対面営業も地域金融機関と組んで拡大、という独自のスタイルです。多くの証券会社では対面営業からスタートして、ネットに進出しましたから、全く逆ですね。そしてほとんどの店舗は地域金融機関持ちなんでしょうから、コストはかかってないんでしょう。

一昨年の夏頃でしたでしょうか、日経の記事で「SBI証券の口座数が390万口座で、証券2位の大和証券を抜いた」というニュースを見ました。今年3月には463万口座と公表してますから、1位の野村證券(534万口座)も完全に射程に入ってきました。いやいや、素晴らしいです。

本体 SBIホールディングス

SBIホールディングスのホームページもついでにチェック。いつの間にこんなに多角化してたんだ、っていうくらい凄いことになってます。SBI証券を核に、住信SBIネット銀行、生保、損保、FX、ソーシャルレンディング、EC決済事業、フィンテック関連事業、アセットマネジメントなどなど。とても書ききれないグループ企業群です。

数えてみると全部で50社も出てきます。なんと、バイオ関連事業までやっていて、健康食品から医薬品の研究開発までやってます。いやぁ、北尾さん、、、参りました。

おまけですけど、社外取締役に、竹中平蔵、五味廣文なんていうネームもありましたよ。

東急電鉄のATM キャッシュアウト・サービス

東急電鉄が切符の券売機で銀行預貯金を引き出せるサービスを、5/8から開始しました。提携する銀行は横浜銀行とゆうちょ銀行で、スマホ決済アプリを券売機にかざすことで、現金を引き出すことができるという優れものです。引き出せるのは1万円、2万円、3万円の3種類で、一日の引出限度額は3万円だそうです。ただ、手数料108円はかかるみたいです(6月中はサービス期間で無料)。

発想がユニーク

去年でしたかね、このサービスを開始するというニュースが流れていたのは。予定通りこの春からスタートできました。これは正直ユニークな発想だし、感心したのを覚えています。実はこのキャッシュアウト・サービス、東急の社内起業家育成制度の第3号案件として生まれてきたものなんだそうです。

他にも、第1号案件として「会員制サテライトシェアオフィス事業NewWork」、第2号案件「翻訳・ローカライズ事業YaQcel」、第4号案件「街メディア事業ROADCAST」なんてのがサービスを開始しているとか。時間があったらこれらのサービスも調べてみたいですね。

ユニークに加えて合理的

このキャッシュアウト・サービスは、いくつか非常に合理的な一面を持っています。券売機は本来お金を飲み込んで、切符を吐き出す機械ですよね。だから機械の中にはひたすらお金が溜まっていきます。すると東急としてはこのお金を売上金として回収し、銀行に見持ち込む必要(回収・運搬など)があるわけです。できることならこのお金を払い出してしまえば、この手間(コスト)が削減できるわけです。合理的です。

そもそも駅の券売機って皆さん使ってます?SuicaやPASMOの普及で、券売機って滅多に使うことなくなったんじゃないでしょうか。つまり、機械のメンテや設置スペースといった固定費に対するコストパフォーマンスはどんどん低下してきているということ。そこで券売機にATMの機能を持たせて、固定費を回収できると。これまた合理的です。

キャッシュレス化が進んでくると、手持ちの現金はどうしても減ってしまいがちです。出先で急に現金が必要になったり、知らない街に出かけるときにどこにATMが、、、。なんてケースでも乗っている電車の行先駅で引き出せるという安心感はいいですよね。駅はやはり生活における中心です。またまた合理的です。

kuniが使う電鉄会社でも導入してほしいです。提携銀行が拡大し、かつSuicaやPASMOでキャッシュアウト・サービスが実現されたら、なお良いのですが。

みずほFG 副業解禁 メガバンク初

日経ビジネスで「みずほFGの副業解禁」が取り上げられていました。坂井社長へのインタビュー記事です。このニュース、最初は共同通信のインタビューで伝えられたんでしたよね。みずほFGのホームページでも触れていないようですし、今のところ社長の発言にとどまっている様子です。

副業のメリット

厚生労働省が示している「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によると、労働者側のメリットとして、以下の4点をあげています。
①離職せず別の仕事に就くことで、スキルや経験を得られ、キャリアを形成できる
②本業の所得を活かしてやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求できる
③所得が増加する
④本業を続けつつリスクを抑えて将来の起業・転職に向けた準備ができる

また、企業側のメリットとしても以下の4点が

①労働者が社内では得られない知識・スキルを得ることができる
②労働者の自律性・自主性を促すことができる
③優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する
④労働者が社外の知識、情報、人脈を入れることによる事業機会の拡大

みずほFGの狙い

みずほFGが副業を容認する狙いとして、坂井社長は「一人ひとりの働く動機がすごく変わっており、終身雇用を前提とした今の人事制度は限界がある。みずほを卒業した後も、みずほで働いたキャリアが生きる仕組みを作ることが大事」と答えています。

難しいですね。この回答のどこの部分に重きを置いているんでしょう。終身雇用を廃止し、みずほを去ってもらう人にはその準備をしてもらう、、、という読み方もできますよね。回答の前半部分が人事という制度の課題で、後半部分は従業員という人の課題に変わっています。前半と後半の間に、他にもいろいろとお話があったのかもしれません。

日経ビジネスでは、「銀行業界で多くの人材が成長著しいIT企業やベンチャー企業に流れていることを懸念している。こうした流出を食い止め、グループとして人材を囲い込むための苦肉の策ではないか」という見方をしていました。先に紹介した厚生労働省の企業側のメリット③「人材流出の防止」ですね。

2018年9月の統計

昨年9月時点でリクルートキャリアが行った企業調査(回答社数2271社)によると、副業を推進している会社は3.6%、容認している会社が25.2%だそうで、禁止している会社は71.2%となっています。副業を認めている会社が約3割あるというのは意外でした(kuniはもっと少ないと思ってました)。

どうもこの副業ってやつ、ピンと来ないんですよね。企業側にとって本当にそんな効果があるんだろうかというのが正直なところです。労働者側のメリットは①~④、いずれも納得できるところがあるんですが。。。労働者側にメリットがあるということは、従業員の満足度も向上する。そうなることで企業側も優秀な人材を確保できるし、失わないで済む。こういうシナリオなんでしょうけどね。

その労働者にとって、副業がどこまで行っても副業なのか。どこからか途中で本業になってしまう(つまり転職)のか。この辺りを読み違えると、結構劇薬になったりするのかもしれません。