大和ハウス、不適切物件4000棟に倍増 ずさんな管理露呈

6/19付け日本経済新聞の記事です。国の認定を取得していない基礎を使った賃貸アパートや戸建て住宅が、新たに1900棟見つかったと公表したことを伝えています。不適切物件は従来の公表数から倍増し、3955棟になったとしています。業界大手のずさんな管理態勢に対しかなり批判的に書いてますね。

細かいんだけど

と、ここまでは日経の記事なんですが、大和ハウス工業が6/18付けで公表している「対象物件数の訂正について」というプレスリリースを読むと、4/12に公表した際の不適合対象物件数が1878棟、そして今回新たに追加したのが1885棟。ということで合計3763棟にしかならないんだけど、、、。3955棟って、どういう計算で出てきたのか。

ただ、記事の指摘通り「ずさんな管理」に間違いはなく、おっしゃる通りだと思います。前回公表時のミスについて、こんなふうに説明しています。「前回公表時に使用した『お客様物件管理システム』より不適合の対象物件を抽出する際、データ抽出の設定方法に不備があり、対象物件に漏れていた物件があることが判明しました」

ということで、今回は対象期間内に供給した全25万棟の図面を確認し、該当の有無を精査したんだそうです。こんな重要なデータなんですから、普通最初からこういう作業をやって、正確なデータであることの確認をしてから公表しますよね。こんなところにもずさんな対応というか、顧客に対する誠意を欠くカルチャーが表れています。

なお、4/12に公表した1878棟については、第三者機関による構造安全性能が全物件で確保されていることを確認したとしています。とりあえず、オーナー、居住者は一安心ですね。

中国子会社での不正、そしてもう一つの件も

この件も以前当ブログで取り上げましたが、同じ日に中国の件も第三者委員会の報告書が公表されています。80ページに及ぶ報告書で、用語の説明だけでも3ページ。さらに、個人のプライバシーに配慮したとかで、秘匿化処理(黒塗りやら、関与した者をu氏、y氏などと、、、)がされているため、非常に読み難いんです。申し訳ないけど、途中で断念しました。すみません。一応、大和ハウス工業本体の役職員の本件不正への関与は認められなかったようです。

大和ハウス工業の闇、あともう一つ残ってますよね。元営業所長が納入業者から4000万円の裏金をとっていた件。退職金ももらって自主退職されたとか。この件もこの際ちゃんと公表するべきでは?

「顧客本位の業務運営に関する原則」の定着に向けた取組み

ちょっと懐かしいタイトルです。一昨年の3月に金融庁が公表した『「顧客本位の業務運営に関する原則」の定着に向けた取組み』を、久し振りに読み直してみました。当時はというと、フィデューシャリー・デューティー、顧客本位の業務運営を自社に定着させる取り組みに、金融各社が追われていたころです。

定着に向けた4つの取組み

① 金融事業者の取組みの「見える化」
② 当局によるモニタリング
③ 顧客の主体的な行動の促進
④ 顧客の主体的な行動を補う仕組み

という、4つの取り組むべき課題が最終ページに出てきます。先日「IFA(独立系金融アドバイザー)」という記事を2回にわたり書きましたが、金融庁はこうした従来の証券会社や銀行といった金融商品の販売会社等とは独立した立場でアドバイスをする者を、増やしたいんですね。④の課題の中でその辺りを書いています。

顧客の主体的な行動を補う仕組み

この課題の中で、「顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化」をあげていて、「販売会社等とは独立した立場でアドバイスする者などに対する顧客のニーズに適切に対応できるよう、必要な環境を整備する」としています。要するにIFAのような、従来の金融機関とは独立した立場で、顧客に寄り添うアドバイザーが新たに登場できるような環境を造っていくぞ、と言ってるわけです。

実は同じ課題の中でもう一つ言っていることがあります。「第三者的な主体による金融事業者の業務運営の評価」です。「客観性、中立性、透明性が確保される形での、民間の自主的な取り組みを引き続き促進」と説明しています。

各金融事業者の取組みを横断的に分析・評価する事業者が登場してくることを、期待し、促進しようとしているわけです、、、。が、この第三者的な金融事業者の評価機関みたいな存在については、まだ確立されてないみたいですね。kuniが知らないだけかもしれませんが。

その後開催された金融審議会「市場ワーキンググループ」の議論の中にも、この部分だけは出てきてなかったように思います。モーニングスターみたいな、投信や投信運用会社を評価をする機関はありますが、金融機関(販売業者)を評価するというのは、まだ見たことないです。(ちなみに、モーニングスターはSBI傘下なので、第三者かどうかはビミョーですが)。

金融庁が外郭団体として財団なんか作っちゃったりして、天下り先兼第三者評価機関みたいなことになって行くのかな。なんて気もしますが。

漫画の拾い読み マンガアプリ 「マワシヨミジャンプ」 集英社

先週の日本経済新聞コラム「ヒットのクスリ」で、集英社が1月から始めているマンガアプリ「マワシヨミジャンプ」について書かれていました。スマホの位置情報を利用したアプリを開くと、実際の居場所の地図上に、電子マンガのタイトルが配置され、タップするとそのまま無料で読めるというサービスです。マンガは週刊少年ジャンプのバックナンバーや、そこで連載していた作品、現在も連載している作品が対象で、300作品、700冊に及ぶとのこと。

これはハマりそう

もちろん、こうやって地図上で拾えるのは1回につき1冊で、全巻を読めるわけではありません。コミックス1巻分を読み終え、続きを読みたければ電子書籍を買う必要がある。という戦略ですね。美容院などの待合室で時間つぶしに読んだ漫画が気に入って、全巻読む破目に陥ってしまった経験って、皆さんもあるんじゃないでしょうか。これはハマってしまいそうです。

ただ、集英社が着目したのは「電車あるある」だとのことです。最近でこそ少なくなってきましたが、かつてはよく電車の網棚にマンガ雑誌が置きっ放しになっていた。「その読み捨てられた漫画をたまたま手にして、気に入ったとき」をスマホアプリで再現したということです。よくこんな発想ができるもんです。センスかなりいけてますよね。

集英社によると、拾われた回数は250万回で、読まれた作品はもちろん電子書籍の販売につながったといいます。ちなみに、『マワシヨミジャンプ』は、週刊少年ジャンプの創刊50周年を記念して開催された、「ジャンプアプリ開発コンテスト」の第1期入賞企画だそうです。

人気作品もたくさん

ついでに調べてみましたが、「ONE PIECE」、「NARUTO-ナルト-」、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、「HUNTER×HUNTER」など、人気コミックスもラインアップされているようです。

ほかにも、アプリ上で拾った漫画には「マワシヨミ帳」という機能があり、読者は「マワシヨミ帳」にコメントを記帳し、次に拾ったユーザーと感想などを共有できるようになっているようです。ん~、この機能については、ちょっとkuniにはよく分かりませんが、、、。

漫画って、それを愛好するに至るきっかけがあると思うんですが、さっきの美容院の話と一緒で、偶然の出会いっていうのもありますよね。これって実は重要だと思います。今の時代はネットでユーザーの好みを分析してターゲティング広告を押し付けられるじゃないですか。そういうのではなく、偶然、たまたまの出会いだからこそ、今までの自分では到底発想できなかった、新たな嗜好にたどり着くことができるわけです。

投信手数料?、一段と低下 個人の資産形成に追い風

6/16付け日本経済新聞の記事です。実は記事のタイトルはもっと長くて、「投信手数料、一段と低下 個人の資産形成に追い風 日本、初の0.1%割れ 米国、料率マイナス」と続きます。本当に最近は見出しが長すぎます。

投信手数料?

この記事の気になるところは、用語を正しく使わないことです。「投信手数料」って、なんでしょう。記事は投資信託の運用手数料のことを指して、投信手数料と呼んでいるようですが、普通こういう使い方はしないと思います。事実、記事の中では「運用手数料」という表現が使われていて、「投信手数料」という言葉は本文では一度も使われていません。

整理しておくと、投資信託を買い付ける際に販売会社(証券会社や銀行)に支払う手数料のことを「購入時手数料」といいます。販売する業者たちはこれを販売手数料などという言い方をすることが多いんですが、目論見書ではあくまで「購入時手数料」と書かれています。

一方で、運用会社に対して、投資信託の運用に対する報酬として、運用資産から間接的に支払われる費用のことを、運用管理費用(信託報酬)と言います。販売する業者たちは「信託報酬」という用語を多用しますかね。他にも、費用としては監査報酬だとか、信託財産留保額などありますが、ここでは触れません。

話を戻しますが、記事が言うところの運用手数料とは、おそらくこの運用管理費用(信託報酬)を指しているのだと思われます。「運用期間が長期になればなるほど運用手数料が収益に与える影響は大きくなる」と説明していますので、おそらくそういうことでしょう。

販売・運用手数料

記事は一貫して信託報酬の低下を伝えているのですが、最後の段落でなぜか「販売・運用手数料」なる言葉が使われています。記事では「日本でも投信の販売・運用手数料に収益を頼ってきた準大手・中堅証券が19年3月期決算に相次ぎ赤字・減益になるなど逆風が吹いている」と展開し、最後には「日本ではこれまで証券会社や銀行は、手数料が高めの投信を積極的に販売する傾向があった」という批判になっていきます。

最後は、いつのまにか購入時手数料が高いという話になっているわけですね。海外で信託報酬の低下が進んでいる、という記事が日本の購入時手数料(販売手数料)が高すぎるという話に・・・。おまけに信託報酬は0.1%のレベルで伝えておきながら、2%、3%の購入時手数料(販売手数料)の話に結び付けて、、、、いったい何を伝えたかったんでしょう。

社外取締役 知らぬが仏?

コーポレートガバナンス・コードをはじめ、いろいろなところでその必要性や機能、役割を期待されている社外取締役ですが、当ブログでもたびたび書いてきたように、現実にはなかなか機能していないというのが実態です。この6/14の日本経済新聞でもそういった一面を取り上げています。

情報が共有されなければただのよそ者、門外漢

社外取締役には弁護士や大学教授、元官僚や、他の業態の経営者などが多く選任されています。それぞれに高い専門性を有しているのでしょうが、会社の様々な情報がインプットされないと、期待されている機能は発揮できません。当然のことですね。

このことに加えて、記事では社外取締役が(不正等の)情報を知り得たかどうかで責任の重さが変わるという、日本特有の事情を問題視しています。事例としてスルガ銀行の件をあげています。情報を知り得たかどうか、、、整理してみると、

①情報を全く知らなかった
②情報を知る機会はあったが、積極的に調査せず、共有には至らなかった
③情報は共有されていたが、それに対する特別な行動を起こさなかった。

こんな感じでしょうか。①には積極的に調査しようとしたが拒まれ、知るに至らなかった。も含んでいると思ってください。最近の不正・不祥事の事例に関する第三者委員会の報告書等を読んでも、③のケースはほとんどありません。あったとしても②のケースまででしょうか。③は当然善管注意義務違反が問われるでしょうし、②のケースでも「機会の程度」によるでしょうが、同違反が問われることがあると思われます。

そのため、記事のタイトル「知らぬが仏」なんてことになるんですね。中途半端に知ることとなるくらいなら、いっそ何も知らない方がありがたいと。しかし、これじゃ社外取締役を置く意味がありません。

機会の程度

②について、「機会の程度」と書きました。実はここが重要だと思います。「明らかに他行と違い、利益率が突出している」、「この事業セグメントでこの利益率は高すぎる」といった情報はあるわけです。ただそれを異常と感じることができるかどうかです。スルガ銀行のケースなど、金融関係者はみんなおかしいと思っていましたが、弁護士や元IT企業役員の社外取締役には気付き(機会)にならなかったということですね(かなり良心的な解釈してますが)。

この記事、専門家のコメントも織り交ぜ、良い記事だと思います。ただ、一つだけ残念なのは、スルガ銀行の件がひと段落してから書くんだ。ということ。誰に配慮したんだか知らないけど、もっと事件が衆目を集めている最中に書くべきでした。