ガバナンス 最も優先して対応すべきリスク

デロイトトーマツさんのホームページで、「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査(2018年版)」という調査結果資料が公表されています。2018年10月~11月にかけて、日本の上場企業約3,500社に郵送でアンケートを実施し、430社から有効な回答を得た結果だそうです。

最優先リスクは自然災害のリスク

日本国内で優先して着手が必要と考えられているリスクは「地震・風水害等、災害の発生」で、41.9%(前年は35.9%)となっています。昨年は大阪北部地震に西日本豪雨、北海道地震など、数々の自然災害がありましたからね。

特に、大阪では台風の影響で関空が機能停止し、北海道ではブラックアウト、社会インフラがマヒすることで企業活動が甚大な被害を受けることを体験しました。あんなことが自社の周辺で発生したら、、、と身構える企業の感覚よく分かります。

2位以下については以下の通りです。自然災害同様、最近の世相をよく表しています。
① 地震・風水害等、災害の発生(41.9%←35.9%)
② 人材流出、人材獲得の困難による人材不足(28.3%←23.6%)
③ 法令順守違反(24.6%←29.3%)
④ 製品/サービスの品質チェック体制の不備(20.5%←18.7%)
⑤ 情報漏えい(19.1%←21.6%)

2位の「人材不足」についても、前年の23.6%から28.3%へと上昇しています。4位の「品質チェック体制の不備」、ここでは全産業を対象としているためあまり目立ちませんが、製造業だけで見るとやはり大きく上昇していました。

クライシス経験企業が答えた成功要因

このアンケートでは、クライシスを経験した企業に、対処が上手くいった要因を聞いていますが、一番多い回答は「トップのリーダーシップ、トップダウンでの迅速な意思決定がなされたから」となっています。これもなるほど、って感じです。

危機管理を担当する部署でどれだけBCPとか作っていても、いざと言うときに重要なのはトップの判断ですよね。トップがどこまで腹をくくれるか、これ一番重要です。どの程度までの損失を覚悟するかで復旧対策のターゲットは決まります。トップが決められないとどうにも動けませんし、損失をとにかく出したくない、なんて発想しかできないトップは結果的に対処ステージを長引かせてしまいます。

一方で、クライシスを経験したことのない企業に、「対処を成功させるための要因は何か」との問いもあるんですが、トップのリーダーシップは3位にとどまっています。意外にトップには期待してないみたいですね。このアンケート、海外子会社に関する質問等もありますので、気になる方はデロイトトーマツさんのHPへ。念のため、kuniはデロイトトーマツさんとは関係ありません。

インフラ輸出、風力で挽回へ 政府戦略見直し、貿易保険で優遇

2/15 日本経済新聞の夕刊にこんな記事が出ていました。記事では、「政府は風力発電などの再生エネルギー分野をインフラ輸出の重点分野とする方針だ。優遇する貿易保険を新設し、金融機関が風力発電などの輸出計画に融資しやすい環境を整える。」と伝えています。

経協インフラ戦略会議

経協インフラ戦略会議において、従来の原子力発電に代わって、洋上風力発電をはじめとした再生エネルギーなどについて、「経営参画も含めた取り組みを積極化する」と明記するようです。

経協インフラ戦略会議とは、安倍晋三政権の成長戦略を支えるために設置された組織の一つで、海外との経済協力やインフラ輸出、資源獲得の3分野を統合的に議論する会議体です。会議は官房長官が議長を務め、副総理兼財務相、総務相、外務相、経済産業相、国土交通相、経済再生担当相のほか、必要に応じて関係者が出席するとされています。

2013年3月に初会合が開かれ、安倍首相は、「企業の海外展開を支援し、最先端のインフラシステム輸出を後押しすることは、3本の矢の一つである成長戦略の重要な柱」と強調。経済協力、インフラ輸出を考えるうえで、
① アジアを中心とする新興国の成長を取り込み、日本経済の活性化につなげること
② 日本の優れた技術を世界に提供し、人々の暮らしを豊かにすること
③ 政府として、海外の現場で働く邦人の安全を最優先に確保すること
の3点が重要であるとの考えを示しています。

政府が動き出した

東芝や三菱重工が原子力から撤退し、つい先日は日立の英国での原発計画が凍結されたことを受けての判断のようですが、正解だと思います。当ブログでも再生エネルギーの重要性については何度か取り上げてきました。ただ、今回の判断はインフラ輸出としての国の支援ということ。国内での再生エネルギーの推進策ではありません。

とはいうものの、国内で実績のない技術が海外で通用するわけもなく、当然国内での実績は積み上がっていくと思われます。太陽光発電は電力の買取単価の魅力で一気にブレイクしましたが、洋上風力発電や地熱発電といった大きな投資を要する設備が拡大するためには、買取単価だけでは難しそうです。政府の後押し、次の施策に期待しましょう。

もう一つのインフラ 日本の高速固定通信

2/16 朝刊トップでは、「日本の光通信速度、先進国23位に転落」という記事がありました。日本の光回線など、高速固定通信の速度が低下しているということ。回線がそのままで、足もと一気に通信量が増えているわけですから、そうなりますよね。これも心配です。言うまでもなく、次の最重要インフラとなる5Gについても、遅い回線の影響を受けてしまいます。これに対しても国の支援など、適切な関与を期待したいところです。

ご当地発電 地熱発電 洋上風力発電

先月末の日本経済新聞に「地熱発電、22年ぶり稼働 岩手・松尾八幡平 官民でノウハウ」という記事がありました。そして2/14には「洋上風力発電、日本で始動」という記事が出ています。洋上風力発電については以前当ブログでも取り上げました。

再生可能エネルギーへの取り組みが拡大してきたようです。原子力を失った日本だからこその選択肢であり、高度な技術を必要とする選択であるからこそ、日本が本気で取り組むべき課題。kuniはそう考えています。

地熱発電

国内における中規模以上の地熱発電としては、22年ぶりの稼働だそうです。1990年代までは建設が相次いでいたらしいのですが、国の予算が原子力発電に振り向けられたことで、その後は開発が進まず、技術の伝承もままならない状況らしいです。地熱発電に関しては、ほぼ仕切り直しという感じですね。

それでもこの地熱発電、日本の地熱資源量は米国とインドネシアに次ぐ世界第3位だそうです。現状では資源量の2%程度しか利用されていないとのこと。フルに活用できるようになれば、今の50倍の電力を供給できるようになるということです。

今現在の地熱発電が供給する電力は55万キロワット程度。これに対して政府は30年までに150万キロワットの供給を目指しているそうですから、3倍に引き上げることになります。ただ、日本が保有する資源量をフルに活用できれば、55万キロワットの50倍、つまり2,750万キロワットが供給できる計算になるわけです。

となると、日本の電力供給量の20%近くをカバーすることができるということになりますね。素晴らしいです。まぁ、机上の空論というヤツですが、日本はとにかく資源に苦労してきた国家です。資源を巡って戦争まで仕掛けてきました。世界第3位の資源、活かさない手はありません。

洋上風力発電

こちらの記事では、「オリックスが千葉県銚子市沖で17万世帯分の消費電力に相当する20万キロワットの発電設備を建設する方向で調査を始めた」と伝えています。また、海外で実績のあるエーオン社(ドイツ)や、世界最大手のアーステッド(デンマーク)が日本の電力会社と組んで参入しようとしていることも。他に、国内組では丸紅や三菱重工も参入しそうですね。面白くなってきました。

こんなふうに見ていくと、千葉県や秋田県では洋上風力発電、大分や岩手では地熱発電みたいな感じでご当地発電みたいなことになるかもしれませんね。こうした発電資源を持っている地域に人が移住していくなんてのもありかもしれません。地方にしてみれば過疎化対策にもなるんじゃないかと。

おまけ 不動産投資にESG

同じ日の日経にこんな記事もありました。国土交通省が不動産投資にもESGの考え方を取り込むように促すというもの。こんなふうにESGの波がいたるところへ押し寄せてきています。石炭火力による発電に対する風当たりはますます強くなっていくでしょう。再生エネルギーを利用した発電設備の拡充、待ったなしです。

荷物積み下ろしパワードスーツ 日本航空が導入

2/13 日本経済新聞の記事です。日本航空が空港で手荷物や貨物を積み下ろす作業用に、パワーアシストスーツを導入したというニュース。着用型ロボットを手がけるATOUN(アトウン、奈良市)という会社のパワーアシストスーツだそうです。

ATOUNという会社

タイトルのパワードスーツはちょっと言い過ぎだけど、こういうの興味わきません?ちょっと古いですけど、映画エイリアンで主人公がパワードスーツを着てエイリアンと戦うシーンがありました。こういうロボットなら作れるかもしれないな、と思ったものです。

で、ATOUNという会社について調べてみました。松下電器産業(現パナソニック)の社内ベンチャー制度「パナソニック・スピンアップ・ファンド」で2003年に設立されたんだそうです。当初の社名はアクティブリンク。2017年に社名変更してATOUNになってます。「あ」と「うん」で、あうんの呼吸で動くロボットを目指すということからつけられた社名らしいです。

資本金は4億7200万円、パナソニックが69.8%、三井物産が29.9%の株主となってますね。本社が奈良市で、支社が福井県越前市(昔の武生)ってのがまたシブいじゃないですか。

ATOUN MODEL Y

今回報道されたのは MODEL Y という商品のようで、「腰の動きをセンサーがとらえ、パワフルなモーターの力で重量物をもったときにかかる腰部への負担を軽減する着るロボット」と説明されていました。彼らは「POWERED WEAR」と呼んでますね。

なるほど。人間の筋力を大幅に増幅させる機械ではなく、腰にかかる力を別の部位に分散させ、腰を痛めたりしないように守ってくれるというのが主目的のようです。エイリアンとは戦えなさそうだな。HPでは計4種類の製品が紹介されています。ちなみに、この MODEL Y の価格は60万円~70万円だそうです。

そして、ありました。プロトタイプ。大型パワードスーツ コードネーム NIO 。現在開発中の、ヒトの能力を拡張する重作業パワードスーツ。人間が包まれるような恰好で、エイリアンに出てきたヤツに似ています。動画も紹介されていまして、なんと、日産のテレビCMに出演していたんですね。

将来性ありそうです

今回は日本航空の地上業務で紹介されたわけですが、作業を続けていると腰が痛くなってしまうような業務。介護の現場だとか、おそらくそういう職場にかなりのニーズがありそうです。日本航空では MODEL Y を使用しながら、一緒に開発にも加わるみたいです。非常に楽しみな取り組みですね。まさに、日本における少子高齢化、人口の減少全てに役立ちそうなテクノロジーです。

IR (Integrated Resort) 統合型リゾート

金融財政事情の最新号で「大穴候補が巻き返し、三つの座を巡るIR椅子取り合戦」という記事がありました。勉強不足ですねぇ、IRの意味がすぐには分かりませんでした。証券の世界でIRと言うときは investor relations であり、「企業が株主や投資家に対して、財務状況など投資の判断に必要な情報を提供する活動全般」を指すんですが。

IR(統合型リゾート)

ここでいうIRは統合型リゾートのことでして、法律上は「特定複合観光施設」というのが正確な名称のようです。法律の名称も「特定複合観光施設区域整備法」となっています。昨年末に、全国9か所で行われた同法に関する説明会で使用した資料が、分かりやすく書かれています。

当該資料によると、IR(統合型リゾート)とは、
① 「観光振興に寄与する諸施設」と「カジノ施設」が一体となっている施設群
② カジノの収益により、大規模な投資を伴う施設の採算性を担保
③ 民間事業者の投資による、集客及び収益を通じた観光地域振興
④ 民間事業者の投資による、新たな財政への貢献
と、冒頭でこんなふうに説明されています。

施設群の内訳としては、カジノ、ホテル、レストラン(ショッピングモール)、エンターテイメント施設(劇場、水族館等)、MICE(国際会議場、国際展示場)が紹介されており、これらを一体的に整備・運用するとしています。

そして、「我が国におけるIR導入に関する根本原則」を「我が国におけるIRの導入は、単なるカジノ解禁ではなく、また、IR事業を認めるだけのものではなく、世界の人々を惹きつけるような我が国の魅力を高め、大人も子供も楽しめる新たな観光資源を創造するものでなければならない」と謳っています。何だかずいぶんと美しくなりましたね。

認定区域整備計画は上限3

特定複合観光施設の区域整備は3か所までと法律で定められています。三つの座というのがこのことですね。現状では、大阪市と苫小牧市が候補地としてリードしているようですが、他にも北海道留寿都村、和歌山、名古屋、静岡県牧之原、といった自治体が名乗りを上げているそうです。で、なんといっても東京が本命とか。

今のところ具体的な話は出てないようですが、そもそも石原都知事の「お台場カジノ構想」で始まったようなもの。今は様子を見ていますが、東京がド本命というのが、この記事の見立てでした。

おまけ

この特定複合観光施設区域整備法には妙に3がたくさん出てきます。指定する地域が3か所、事業者免許の有効期間3年、日本人の入場規制は7日間で3日、入場料は3,000円など。また、カジノ事業者の儲けは、国庫と自治体それぞれに15%の納付を義務付けてますから、合計30%ですね。