携帯値下げ攻防 菅 義偉 内閣官房長官

先日から日本経済新聞の連載で「携帯値下げ攻防」というコラムをやってます。菅官房長官が今年8月に札幌で「4割程度下げる余地がある」と発言したところから始まり、官邸と携帯大手との攻防が続いています。その辺りの密着取材的な特集なんですね。

菅 義偉という政治家

菅 義偉(すが よしひで)氏は秋田県湯沢市出身の政治家です。高校卒業後東京に出て、いったん就職したものの、大学を卒業。横浜市会議員を経て神奈川2区から衆議院議員という経歴らしいです。安倍内閣では官房長官として毎日のように記者会見しているだけに、認知度は相当高いと思います。官房長官在籍6年弱は史上最長だそうです。

会見では落ち着いたしゃべり方で、自身を飾らない、お世辞にも話がうまいともいえない、政治家らしくない政治家。というのがkuniの印象でした。ところが今回の携帯値下げに関してはかなり強気の様子で、当初反発していた携帯キャリア大手も今では意気消沈といった感じです。過去の政策を見てもこの方なかなか頑張ってますし、評価すべき政治家だと思います。

ソフトバンク 孫 正義

政府主導の値下げ方針に対しては、まずドコモが2~4割の値下げを表明。その後ソフトバンクも格安ブランドのワイモバイルの値下げを発表しました。孫社長は「官邸の意向をくんだのか」という記者の質問に対して「はい、そうです」と答えています。KDDIが追い詰められた感じですね。

携帯キャリアとして根こそぎ儲ける時代はもう終わり、と孫社長は割り切ってるんでしょうね。おまけに12月には子会社のソフトバンクを公開させて、ソフトバンクグループとしても新しい事業に向けた資金回収ができてしまいます。この人もやっぱり凄い人ですね。

携帯キャリアの世界と金融

このような駆け引きが展開されているわけですが、そこでは楽天の新規参入が大きな原動力となっています。3社で独占してきた業界に楽天が参入することで業界秩序が崩される。その自然な価格破壊の流れに政治がうまく乗っかった。後押しすることで国民にうまくアピールできている。という見方が正解なのかもしれません。

とまぁ、他の業界の動向を見るにつけ、金融の世界は動きが緩慢だなぁ、と思ったりするわけですね。他の業界と違って規制が多いこともあり、既存の金融という枠組みを通してみると緩慢に見えてしまいます。もちろん、各論で見ると様々なスタートアップが仕掛けてきているわけですが。そういう意味でも LINE Financial と みずほ銀行が LINE Bank 設立というニュースは今後に期待したいですね。何が起きるんでしょう。

日立化成 調査報告書に見る内部通報制度

デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーが行った調査によると、上場企業の9割以上が内部通報制度を設けているにもかかわらず、半数以上の企業で内部通報の平均利用件数が年0~5回にとどまっていた、という統計もあるらしいです。日立御三家と呼ばれるような会社でも不正が長年にわたり行われていたわけですが、やはり同社でも内部通報制度は機能していませんでした。

日立化成の内部通報制度

その全く機能していなかった内部通報制度について、報告書ではインタビューへの回答として次のようなものを載せています。「匿名性の担保に不安があり、通報した場合に不利益を被らないか不安だった」、「内部通報はハラスメント等のためのものだと思っていた」。

報告書のまとめとして、「制度内容についての周知が十分でなかったこともあり、その運用において、現場の従業員から内部通報制度に対する十分な信頼を得ることができず、その結果、各不適切行為が内部通報により経営陣にエスカレーションされることはなく、是正につなげられることもなかった」と書いています。教科書のような指摘ですね。

内部通報制度の運用の改善

こうした実態に対する制度の改善提案の内容はかなり平凡な内容でした。「制度に対する社長のコミットメントを前面に打ち出し、現場の従業員の内部通報制度に対する信頼度を向上させるための施策を継続的に講じるべきである」。

一方で、制度の改善とは別の切り口で、特別調査委員会が実施したアンケート調査を推奨しています。実はこれが新しい試みというか、kuniにとっては斬新でした。全文引用します。

「内部通報を待つだけでなく、当委員会が行ったアンケート調査のように、会社から積極的に問いを発して従業員が答えやすい状況を作ったり、現場の悩みや課題を聞き出したりすることから始め、丁寧に是正につなげていくことで、経営陣の取り組みに対する従業員の信頼度を向上させていくことも一案である」

内部通報制度を周知するなどのプロセスの重要性

ここからはkuniの意見ですが、制度の内容を周知するとか、経営の本気度をアピールすることなど、メッセージを発信し続けること自体にも大きな意味があると思います。みなさんがちょっと不適切な行為をまさにやろうとしている、という状況だったら、こうしたメッセージを見たり聞いたりするとどう感じるでしょう。

自分の周りに自分の不適切な行為を経営にエスカレーションしてしまいそうな人が、どんどん増えていくような感覚にはならないでしょうか。つまり、こういう制度があるんだよというメッセージが繰り返し流されるだけでも、一定の牽制効果、相互監視の緊張感が生まれるということです。そこら中に監視カメラが付いている場所では犯罪が起きにくいのと一緒ですね。

日本取引所CEO処分 内規違反

またまた証券取引所の不始末です。清田瞭(きよた あきら)氏は日本取引所グループの最高経営責任者であり、3年前までは東京証券取引所の社長でもあった人物。で、もともとは大和証券の副社長までやられた人で、現在も大和証券グループ本社の名誉会長なのかな?

日本取引所グループの内規に違反

上場インフラファンドの取引で同社の内規に違反したと発表。なんとこのCEOの取引、投資金額は約1億5000万円。2つのインフラファンドへの投資で、分配金を含め約2000万円の利益を得たが、全額を日本赤十字社に寄付するんだそうな。

このCEO、インサイダー取引に関しては非常に厳しい管理を要求されている証券会社出身であり、現在はこうした上場商品に関する開示情報を一手に握っている、胴元である取引所のトップですよ。普通に考えればウォールの中にいる人物です。こんな取引ありえないでしょ。証券界ではウォールの中の人たちは証券取引全てを禁止されるものです。

「内規ではETFは認められているが、インフラファンドは認められていない」と説明しているみたいですが、これは内規ではなく、法令で定められていることです。平成26年からインサイダー取引規制の対象商品である特定有価証券等になったはず。REITと同じですね。内規だから大したことではない、ということではありません。常に自らを正当化しようとするこのバイアス。気に入りませんね。

やっぱり大和証券が注文受注したの?

インサイダー取引を疑われても仕方がない取引ですが、やっぱりこの取引注文を受注したのは大和証券さんですかね?取引所の役員ともなれば、内部者に準じた取り扱いはしているものと思われますが、大和さんの受注には問題はなかったんですかね。しれーっと別の証券会社に発注していたら、これはこれで面白いんですが。

反対売買して利益をどこかに寄付、社内処分したのでこれでおしまい?監視委員会はこの件どう見てるんでしょう。インサイダー情報がなかったかどうか、受注した証券会社の受注態勢に問題はなかったのか。一応、特別調査課あたりで調べておいた方が良いのでは?

一連の不始末をメモ

今年2月には、上場を許していた欠陥商品VIXインバースで、投資家が大きな被害を受けました。また、10月には東証システム障害で半日から一日、主に大手証券から注文が取り次げなくなりました。そして今回のCEOによるインサイダー取引もどきの発生。やっぱりこの会社おかしくなってきてると思いますよ。

日立化成が調査報告書を公表

日産自動車カルロス・ゴーン氏のニュース、やはり凄いことになってますね。ルノー、三菱自動車まではまぁ当然のことながら、フランス政府までを含めた国際問題に発展しそうな勢いです。こうした加熱する日産報道に隠れて、11月22日、日立化成が特別調査委員会の調査報告書を公表し、併せて役員の処分等についても発表しています。

441ページの調査報告書から見えてくるもの

30年以上にわたり不正が行われ、不正発覚後も不正を継続したり、隠蔽したりと、やりたい放題。データ改ざん等の不正は全7事業所で行われ、不正の対象製品は全127製品中42製品。出荷先は2,000社を超えるとか。今回公表された不正が行われていた期間や、事業所ごとの不正の状況は酷すぎます。関与した従業員数も加味するとスルガ銀行級と言えるんじゃないでしょうか。

2008年に不正を発見した際のことを報告書では2008年問題と名付けています。その際、製品の品質に問題があったことを発見しながらも、顧客にその事実を伝えようとしなかったことが、その後に大きな影響を与えたようです。「顧客から苦情等が来ていないから、顧客には迷惑をかけていない」という発想で済ませてるんですね。

昨年以来、企業の不正・不祥事が多発しましたが、そうした他の企業が、納入先顧客の開示や、製品の交換といった顧客対応を優先しているのを見て、やっと自分たちの誠意のなさに気が付き始め、経営に報告が上がることになったのではないかと感じました。

何かとタイミングの良過ぎる日立化成

日立化成経営陣が最初に不正の報告を受けたのは、6月13日だそうです。しかしながら6月19日の株主総会では報告せず、総会が終了した後に有価証券報告書で開示しています。この開示の在り方についてはどうなんだかなぁって感じですし、不正の公表に伴う世間からの批判をできるだけ受けないようにという意図も感じてしまいます。

そして今回の特別調査委員会の報告書公表と役員の処分。通常であればもっと大騒ぎになっていそうなもんですが、ほとんどのメディアがゴーン氏を追いかけてるんでしょう。紙面等での取り扱いが非常に少なかったですね。なんか日立化成タイミング良過ぎなんですよね。ニュースにするにも鉛蓄電池や粉末冶金製品なんかより、数十億円の所得隠し(有価証券報告書への未記載)の方がバリューがあるってことでしょうけど。

kuniもまだ報告書全部読めてないんですが、内部通報に関しては面白いお話がありました。次回はこれを取り上げようと思います。

三菱UFJ マネロン疑惑

先週末のことでしたが、MUFGがマネロン防止のルールを破ったとして、処分を求めるニューヨーク州金融サービス局との間で訴訟になったという報道がありました。同局は国際的な制裁対象となっている企業や個人との取引を避けるための内部チェックを、MUFGが意図的に無視していたとしているそうです。昨年から検察当局の捜査を受けていたともいわれています。北朝鮮がらみのようですね。

開示の必要はなかったのか

少し気になることがあります。米当局の捜査を受けていること、もしくは訴訟を起こされていることに関して、何ら開示がされていないことです。当局の捜査中ということで、情報の開示が禁止されていたのでしょうか。米国でのこの手のお話、数百億円といったレベルの制裁金が課されることも珍しくないだけに、気になるところです。

一方で株価対策といわれている増配を公表

加えて、そうしたことが起きている最中に増配を発表していて、それが下げ続ける株価対策ではないかとも言われていることです。この対策が功を奏したかどうかは別の問題ですが、この対策で株価が反発したのちに、当の訴訟に敗訴、業績下方修正で株価は急落。なんてことになったら、というようなことは考えなかったんでしょうかね。

こんな風に考えていくと、いろいろと引っかかるところが多いニュースなわけです。この訴訟自体は、米国に進出する銀行には税金やらショバ代みたいなもの、といった冷めた見方もあるかもしれません。しかし、投資家にとっては優しいお話ではありません。

海外への融資を強化してきたメガバンク

メガバンク3行は揃って海外部門を強化することで収益を確保してきました。地銀は生き残りをかけて、アパートローンやカードローンに積極展開してきました。その結果、融資の審査等が緩んでしまい、あちこちで問題が発生しています。メガバンクにしても同様で、同じような誘惑があったと思われます。

融資の審査もマネロンのチェックも、地銀のように甘くなっていなかったでしょうか。積極展開するところ、成長するところにガバナンスの盲点があります。今回は三菱のニュースですが、三井住友、みずほも対岸の火事ではなさそうです。

また、一部の報道機関しか取り上げていなかったり、ニュースに具体性がいまいちないことや続報も入ってこないなど、何やら不自然なニュースでもあります。ひょっとすると、また司法取引の成立で妙な幕引きだったり、ライバル行への飛び火なんてのもあるかもしれませんね。