給与のデジタルマネー払い

10/25日付け日本経済新聞の記事です。労働基準法が定める給与の支払方法において、例外的に認めている銀行振込に加える形で、銀行口座を経由することなくカードやスマホアプリなどに送金できるようにするらしいです。

デジタルマネー払いで銀行はどうなる?

記事の中ではこの点について触れていませんが、当然この疑問がわいてきます。これまで銀行は、給与振込口座を持っていれば、その口座の入出金状況を把握することが出来ました。皆さんの通帳には毎月給与という項目で入金が記帳されてますよね。出費についても同様です。

この情報を蓄積し分析することで、顧客の生活の様子がかなり詳細に分かるはずですし、その分析結果に基づき、顧客に適切な与信を行ったり出来るわけです。

このところ話題になっている情報銀行の構想にしても、銀行がこの情報を握っているというアドバンテージが前提になっていると思います。かなり重要な情報がなくなるということになります。

記事の中で「現金払いなども従業員が選択できること、カードや決済アプリに給料を入金する仕組みで入金された給与をATMなどで月1回以上、手数料なしで現金が引き出せること」が条件とされています。また、価格変動の激しい仮想通貨は対象に含まないとも。

ここで言っているATMというのは銀行店舗のATMではなく、コンビニATM等のことだと思われます。オリガミやLINE、ヤフーといった資金移動業者に対してデジタルマネーで給与が支払われ、キャッシュレス決済を後押しするが、コンビニATMで月1回以上、無手数料で現金が引き出せることを条件とする。こんな感じでしょうか。これらの業者にとって、それほど高いハードルではなさそうですね。

銀行の口座 必要なくなる?

デジタルマネーによる給与支払いが増加していくと、オリガミやLINE、ヤフーといった非銀行系に個人の資金移動の情報が集まりそうだ。ここまでは想像できるのですが、公共料金の引き落としの機能ってどうなるんでしょうね。kuni個人としては、勝手に引き落としてくれる機能こそ、銀行口座の一番ありがたい機能なんです。

スマホアプリで何でも出来る時代になってきましたし、家計簿アプリ等も充実してきてるようです。あとは、非銀行系の業者が自動引落の機能まで提供してくれるなら、本当に銀行口座要らなくなるかも。マジで給与はスマホで受け取りっていう人増えるかもしれませんね。

金融機関における個人不正 最近の傾向

このところ上場企業による組織不正・ 不祥事が毎日のように報道されており、 当ブログでも取り上げる機会が増えてきています。 今日は企業ぐるみの不正ではなく、 金融機関で発生する個人の不正について書いてみます。

企業不正・不祥事と個人不正の違い

企業の不正・不祥事はその発覚に伴い、 第三者委員会などによる調査結果が詳細に公表されますが、 個人不正(個人行為)についてはその事実だけが公表(報道) されることはあっても、 詳細について公表されることは稀です。 これが最も大きな違いでしょうか。

そのため、金融機関においても、 他社で発生した事象の情報を入手することが難しく、調査・ 検証できるサンプルが限られ、 発生原因や未然防止への対応について考える際に情報が不足しがち です。

個人不正の傾向

kuniの場合は、情報不足を補うため、 同業他社との情報交換なども積極的にやってました。個人不正、 特にその中でも顧客のお金に手を付ける、 または会社のお金に手を付けるといった、いわゆる詐取・ 横領などの重度の不正で見られる傾向は以下の通りです。

  1. 不正を行った行為者の年齢は40歳前後が多い
  2. 収益環境が悪化するなどし、 営業員個人への数字のプレッシャーが過大
  3. 高齢の顧客との間で発生
  4. 行為者の生活の乱れ、酒やギャンブルなど遊興費が引き金
  5. 営業成績が芳しくない社員が多い

こんな感じでしょうか。 40歳前後という年齢は、住宅ローンを抱え、 子供の教育費がかさむ世代と一致しており、 ある程度の権限も持つようになる年齢ということで発生しやすいよ うです。数字のプレッシャーというのは説明不要でしょう。 高齢者との間で発生する傾向があるのも分かるような気がしますよ ね。そして酒やギャンブルについては、 これは証券会社特有なのでしょうか。実に多いんですよ。

最近の個人不正の新たな傾向

最近出てきた傾向としては、「20代社員の不正の増加」があげられます。 加えて、営業成績が良い社員でも発生し始めています。 承認欲求というやつでしょうか、SNSなんかでいう「いいね」 を欲しがる欲求みたいなもののような気がします。 デキる社員として認められていたい、 デキない奴と思われたくない、 自分が数字を達成できないことでみんなに迷惑かけたくない、といったことが原因となっているケースもありました。

また、働き方改革により残業時間が減少し、 手取り給与が減少してきていることも原因の一つになりつつあるよ うです。加えて、大学を卒業したばかりで、奨学金の返済もあり、 かなり窮屈な資金繰りとなっていることが背景にあるケースもあり ました。

そしてkuniが発生原因の一つとして感じてきたのは、 金融機関に勤めているにも関わらず、 現金を取り扱ったことがないという実体です。 kuniが営業をやっている頃は、顧客から入金のために3, 000万円、現金で鞄に入れて支店まで持ち帰る、 なんてことが普通にありました。

しかし、最近ではこうした恐い経験はすることもなく、 ほぼ全て振り込みです。現金の束を見ること持ち歩くことは滅多にありません。 すると顧客のお金もデジタルに画面に表示されるだけ、 紙に印字されているだけで、 お金としての重みがなくなってくるんですね。だから、 お金を扱うにも緊張もすることなく、慎重さにも欠ける。 一種のゲーム感覚なんだと思います。

不正に限った話ではありません。 命の次に大切なお金を預けてくれる大切な顧客、 という感覚も次第に失われていっているような気がします。

管理職が気を付けるべきこと

若年層の価値観はおじさんたちとは違うということ。 これにつきます。 おじさんたちの常識は通用しないことを大前提にすることです。 育った環境も違いますし、時代も違っています。 良くできる社員だから大丈夫、でもないんです。 こんな落とし穴に落ちてしまわないためにも、彼らの価値観、 考え方を理解した接し方に変えていかなければなりません。

変わり始めた銀行 北國銀行

金融財政事情に「変わり始めた銀行経営」という特集が組まれており、北國銀行の成功モデルが紹介されていました。これこそ攻めのガバナンスでしょう。

北國銀行のここまでの取り組み

様々な業種の企業が北國銀行のビジネスモデル変革を学ぶために、視察に訪れているそうです。記事で紹介されている同行がここまで打ってきた各種施策は以下のようなもの。

  1. 自前主義にこだわり自社でシステム開発
  2. 清掃は外部委託せず、支店も本部も行員が行う
  3. キャッシュレス化の推進により全店の金庫廃止
  4. ペーパーレス化によりシュレッダーも基本廃止
  5. 支店長室の撤廃と支店長車の廃止、役員車も削減
  6. アクワイアリング事業への本体参入
  7. 本体でのリース事業強化
  8. コンサルティングサービスの有料化

などが紹介されています。特殊な施策というのは決して多くはありませんが、出来そうで、実はなかなか実現できないことを断行してきています。

注目すべきはその発想

1.のシステムについては、金融機関の本質がシステムであることを認識した上での決断であり、「システムのアウトソースは自分で考えることを放棄すること」と言ってます。kuniもその通りだと思います。

2.の支店や社内の清掃を行員にやらせるというのは凄い。これは経営や支店長の特権も一緒に廃止するといった、経営自身が身を切ることなしに実現しない施策です。組合納得させるのにどんな苦労があったんでしょうね。

このような施策の背景にある彼らの発想として、以下のようなことも紹介されてました。

  • 物件費のコスト削減は徹底するが、行員のモチベーションを維持するため、人件費には手を付けない
  • 社内で新しい事業を検討するとき、他行がやっているか否かは議論しない
  • コンサルティング業務を進める上で、役員が最高のコンサルタントでなければならない
  • フラットな組織作りのためには、支店長室はコミュニケーションの壁でしかない

行員の人件費には手を付けないってのがしびれますね。普通はここから手を付けて、最も大事な人という資源を失っていくんですが、地銀の中にもこういう銀行が出てきてるんですね。

経営層自ら特権を返上し、本気で取り組む姿勢を見せなければ、こういう改革は進みません。経営層が既得権の上でふんぞり返ったまま、コンサルティング会社が考えたような格好良いフレーズだけで社員は動かないということです。

初めての証券投資 発注その2

発注編の続きです。

  1. (顧客コードまたは口座番号)顧客名
  2. (銘柄コード)銘柄名
  3. 売り買いの別
  4. 価格
  5. 数量

【取り上げている注文例】

日立 3400円で2,000株の買い注文

4.価格(成行と指値)

成行(なりゆき)と指値(さしね)の2種類をまず覚えましょう。成行は価格を選ばず注文を発注し、取引所に届いた時点で最も安い売り注文の価格で約定する取引です。また、発注する時間が取引時間意外であれば、その後取引が始まった時の価格で約定します。間違いなく買えますが、取引時間中の売り注文が少ないときなど、予想以上に高い価格で約定してしまうことがあるのがデメリットです。

一方で、指値は買い付けたい価格の上限を指定する発注の仕方です。日立の株価が3,390円の時、3,400円(これが指値)で発注するとします。これは「3,400円を上限で買うよ」という意味になります。取引所に注文が届いた時点で最も安い売り注文が3,390円で出ていれば、3,390円で約定します。

また、日立の株価が3,420円の時、同じ注文を出した場合、すぐには買えません。この場合、価格が3,400円になり、他の誰かが3,400円以下の(または成行の)売り注文を出してきて買い注文とぶつかったとき、初めて約定します。つまり、デメリットは場合によっては買えないこともあるということです。

実は他にも「寄付(よりつき)」であるとか「引け(ひけ)」、「逆指値(ぎゃくさしね)」などといった価格の設定方法がありますが、初めての証券投資レベルでは必要ないと思いますので割愛します。

5.数量を間違えないために

その1で書いたように営業員とのコミュニケーション上は「にせんかぶ」を「ふたせんかぶ」と言ってあげるくらいしか思いつかないんですが、ここではもっと重要なことを。

例として使っている注文が買えると約定金額はいくらになるでしょう。3,400×2,000 で680万円になりますね。顧客が実は100万円のお金しか用意できない場合は200株の買い注文を出すはずですが、誤って2,000株で発注してしまうことが少なくないんです。68万円の買い物の予定が、680万円に化けてしまいます。電話でのやり取りといえども契約は成立しています。680万円をの債務者になるわけです。

10月から取引所での売買単位が100株単位に変更されましたが、こういったことも間違いの原因になります。数量の間違いは顧客にとって非常に苦痛を伴いますので気を付けましょう。注文を伝えた後に、「この買い注文の概算約定金額はいくらくらいになるかしら」と必ず聞いてください。「概算金額は680万円ほどです」とおしえてくれますので、そこで間違いに気が付くはずです。

6.番外編

ほとんどの証券会社では、営業員と顧客の通話を録音しています、注文内容が相違した場合もこの録音をもとに正しい注文内容を見付けて是正することになります。皆さんも約定の結果に納得できないことがあった場合は、録音内容を聞かせてほしいと申し出るのが良いかもしれません。

しかし、そんなことにならないように、ここで書いたことに留意していただき、注文を出してくださいね。ここで書いたようなやりとりを証券マンは絶対嫌がりません。しっかりしたお客さんだなと、あり難がられるくらいです。

初めての証券投資 発注その1

発注と受注

今回は実際に証券会社に注文を出す場面での注意点など。顧客(あなた)が証券会社に注文を出すことを発注といいます。これに対して証券会社は注文を受けるわけですので、受注といいます。同じ行為ですが主体が変わることで表現が変わるんですね。ちなみに第三者が同じ事を指して言う場合、受発注などと言います。

発注時の注意事項

証券会社とのやり取りで一番トラブルが多いのが、この発注の場面です。顧客が発注する際に最も重要なのが正確な注文内容を伝えることです。その際、必要な条件を4要素などといいますが、kuniの経験から5要素あげておきます。株式の場合で説明します。

  1. (顧客コードまたは口座番号)顧客名
  2. (銘柄コード)銘柄名
  3. 売り買いの別
  4. 価格
  5. 数量

これを必ず正確に伝えます。例えば山田太郎さんが日立の株を3,400円で1,000株買いたい場合の伝え方は、「山田太郎の口座で日立を3,400円で2,000株の買い」という具合です。証券マンは必ず同じ注文内容を復唱してきますので、証券マンが認識した注文内容に間違いがないか、良く確かめてください。

「山田太郎さんで日立を3,400円で1,000株の買いでよろしいでしょうか」と聞いてきます。2,000株のところを1,000株と間違って復唱しています。「ふたせんかぶだよ」と訂正します。「2000」と「1000」はよく間違いが起こるので、「にせんかぶ」より「ふたせんかぶ」の方が確実に伝わりますね。

1.顧客名を確実に伝えるために

証券会社では同姓同名の顧客をたくさん抱えています。他にも、漢字は違うけど同じ読みの人もいますし、音だけでは聞き違えてしまうこともよくあります。こうしたトラブルを避けるため、顧客コードまたは口座番号(同じ7桁程度の数字ですが、証券会社によって呼び方が違うようです)を一緒に伝えるのが一番正確に伝わります。

2.銘柄を間違えられないために

これも昔から変わらず多いミスですが、銘柄が間違って伝わらないような工夫も必要です。やはり銘柄コードを一緒に伝えましょう。日本精工と日本製鋼所といった具合に非常に良く似た銘柄名や、略称で呼ぶとまったく音が同じ銘柄が存在します。

先ほどの例でいうと「銘柄コード6501の日立」と言ってあげると間違えることはないでしょう。銘柄コードは四季報や会社情報で調べることが可能です。※1

3.売りと買いを間違えられないために

顧客は相場観を駆使していろいろと考えた末に、買うことを決断して、発注しようとしています。しかし、証券マンはその辺りの事情は知りません。

顧客にとっては買いに決まってるだろうという場面でも、売りで伝わってしまうことがあるんです。意外に多いんですよ。もちろん保有していない銘柄を買おうとして売られることはありません(ない株は売れませんから)けどね。

工夫の仕方としては、「山田太郎の口座で買い注文。日立を3,400円で2,000株の買い」と伝えることで、売り買いの区別がはっきりします。

※1 四季報は東洋経済社が年に4回発行する季刊誌です、デジタル版もあります。会社情報は日本経済新聞社が提供していますが、今では冊子はなくなってデジタル版のみになってるようです。

四季報久し振りに見てみたら2,060円になってました。株式市場は高値の半分やっと越えた程度ですが、四季報はあの当時の2倍の値段になってます。長くなってきたので続きはその2で。