水素閣僚会議(H2EM2019) FCV1000万台へ

9/23の日本経済新聞の記事『燃料電池車など「1000万台に」』より。水素の利用拡大をめざす主要国などが集まり、25日に水素閣僚会議(H2EM2019)を都内で開催するとのこと。今回は2回目の開催。経済産業相が議長声明として、水素燃料電池を使った車両や航空機を計1千万台に増やす目標を掲げるようです。

FCV(燃料電池自動車) 世界で1万台→1000万台

燃料電池自動車(FCV)は世界で現在約1万台にとどまっていますが、これを10年間で1000万台まで拡大しようという試み。燃料を供給する水素ステーションを10年間で1万カ所にする目標も掲げています。

FCVは車内で水素と酸素を化学反応させて作り出した電気を使って、モーターで走ります。FCVもEVも電気で走る自動車という点では同じですが、一般的にEVが構造上簡単な一方、FCVは水素から電気を発電するために構造が複雑になり、技術力も必要になります。

ちなみに、記事でも紹介されていたトヨタのFCV量産車ですが、名前は「MIRAI(ミライ)」。お値段の方はなんと723万円です。水素ステーションが現在100カ所しかないことや、車両の高価格もあってなかなか普及しません。2014年からの累計販売台数も5000台程度だそうです。

水素ステーション

水素ステーションの1基当たりの建設コスト、こちらも半端なく、4億~5億円だそうです。国内の水素ステーション数は計画中も含めて100カ所にとどまります。EVの急速充電器が7000カ所以上あるのに対してその差は大きいですね。

ボトルネックになっている水素ステーションの整備。昨年3月、トヨタなど11社が新会社「日本水素ステーションネットワーク(JHyM:ジェイハイム)」を設立しています。国の後押しも受けながら、FCV普及に向けた水素ステーション整備を加速しているところです。

この11社。自動車メーカー3社以外には、豊田通商(8015)や岩谷産業(8088)などの名前もあります。株式投資先としても期待できそうですね。

燃料電池自動車(FCV) 燃料電池のお話

水素・燃料電池戦略協議会(経済産業省)が、水素技術の普及に向けた技術戦略を議論し、研究開発における重点3分野をまとめた。と日経が伝えていました。3つの重点分野とは、燃料電池、水素ステーションや水素の輸送技術、そして水素製造に必要な水電解技術です。

燃料電池の仕組み

この記事を読んでいて、いまさらながら燃料電池の仕組みって?という疑問が。最近都内でも燃料電池バスをたまに見かけるようになりました。ということで今日は燃料電池の仕組みを。

小学校で水の電気分解の実験はやりましたか?水に電気を通すと、水素と酸素の泡が出てくる。アレです。燃料電池の仕組みはその逆で、水素と酸素を反応させて、電気を取り出すわけです。なぜか、燃料電池という名前なもんですから、電池をイメージしてしまいますが、実際は発電機です。水素発電ですね。

この燃料電池の特徴は、発電効率が非常に高いこと、地球温暖化ガスや大気汚染物質を排出しないこと、水素という資源が豊富なこと、エンジンやタービンに比べ極めて低騒音なこと、があげられます。

克服するべき課題

冒頭で紹介した水素・燃料電池戦略協議会が定めた3つの重点分野こそ、今後克服しなければならない課題です。まずは水素をどうやって輸送し供給するか。自動車用であれば水素ステーションが一定程度普及しなければなりません。公共交通機関から導入が始まっているのは、この供給の問題が解決しやすかったからでしょう。

また、水素をどうやって効率的に製造するかというのも課題です。ここで注目されるのは、地方で再製エネ発電で作られた電気を利用して、水を電気分解して水素を製造。その水素を消費地に輸送して燃料電池で発電という方法です。水素をエネルギーの輸送、貯蔵媒体として使うということです。

そして、3つめが燃料電池に使用されるプラチナの代替材。高価なプラチナ以外の素材を使った燃料電池の開発も課題です。どうでしょう、マフラーから水蒸気だけを吐き出しながら、静かに走る燃料電池自動車。その姿をイメージできるようになったでしょうか。