ROESG ROEとESG

8/12付け日本経済新聞に「ESG×収益力で欧米先行 人材・投資呼び込む 企業の持続性重視へ新指標」という記事が掲載されました。企業の収益力を示す指標ROEとESGへの取り組み度合いを掛け合わせたような新指標(ROESG)ということです。今日はROEとESGのおさらいをしておきます。

ROE

ROEとは「Return On Equity」の略称で、日本語では自己資本利益率、または株主資本利益率と言います。企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合を示し、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利潤を上げられたのかを見る指標です。

ROEが高いほど自己資本を効率よく使い、利益を上げて能力の高い経営がなされているという評価になります。逆に、ROEがあまりにも低い企業は、資金をうまく使えていないわけですから、経営が下手という評価になり、会社の存在価値も疑われてしまいます。

企業は、自己資本(株主資本)と他人資本(負債)を投下して事業を行い、そこから得られた収益の中から、他人資本には利子を支払い、自己資本には配当を行います。そのうえで残った利益、内部留保の蓄積分である利益剰余金も自己資本に含まれます。

自己資本利益率は古くから投資指標としてありましたが、日本で注目されるようになったのはここ10年くらいではないでしょうか。その間指標が注目されるにつれ、日本の上場企業のROEは上昇し、直近のデータで7%台くらいです。しかし、欧米と比べるとまだまだという水準なんですね。

ESG

ROEに関しては上場企業の開示データで簡単に計算できるんですが、ESGスコアに関しては公式のデータというものがありません。っていうか、そもそも企業の開示に関するルールもいまだ整備中というところですね。そのため、記事で紹介された算出方法でも、「ESGスコアは、アラベスク、サステイナリティクス、FTSE、MSCI、ロベコのESG評価機関5社の2019年3月末時点の評価を用いた。」とあります。

公式のデータがないと書きましたが、6月の日経の報道にこんな記事もありました。「日本経済新聞社グループのQUICKは、ドイツのESG評価会社、アラベスクと提携した。アラベスクが日次で算出する世界の上場企業のESGの点数を機関投資家や金融機関、事業法人に提供する。8月からQUICKの専用端末でも提供する。」

QUICKというのは証券会社には必ず置いてある株価等を照会する端末です。おそらく今月から証券会社では、アラベスクのESGスコアが照会できるようになるんですね。

再生エネ電力 選べる時代  みんな電力 積水ハウス

2/19 日刊工業新聞の記事です。皆さんは再生エネルギーによって発電された電気を選べるとしたら、再生エネ電力を使用しますか?なんて、いきなりの質問でしたが、個人の場合はこの話題にそれほど反応はまだないですよね。今より割安になるなら、、、って感じでしょう。

みんな電力

「みんな電力」という会社がこの記事で紹介されていました。世の中には頭のいい人たちがいるもんですね。どこの発電所で何をエネルギー源(再生エネ)に発電された電力かが分かる。その中から発電所を指定して使用することができるんだそうです。

みんな電力さんのホームページで確認したところ、現在、60か所くらいの発電所が紹介されてました。ここでいう発電所はかなり本格的な水力発電から、10キロワット程度の家庭用に少し毛が生えた程度のものまでいろいろあります。

「顔の見える電力」というのがこの会社のウリで、電力の生産者がわかり、そのストーリーを感じることができる、世界でも類例のない電力小売りサービス。と謳っています。

ESG投資を呼び込む

冒頭の質問に対する答え、上場企業あたりになるとかなり事情が変わってきます。そうなんです。ESGに対する取り組みが自社への評価につながってしまう上場企業等は、この再生エネ電力使用するはずです。おまけに、再生エネ電力を使用したことの証明までしてくれるとなると、まさに渡りに船ですよね。

みんな電力さんの取締役の話も交えながら、「お金を払った先が再生エネ由来の電気と言えることが重要」であり、「被災地の風力発電所から電気を買った」というストーリーを外部に伝えることができ、社会的な評価も高まると伝えています。これ以上説明は不要でしょう。

そんなことで、既に丸井グループやTBSホールディングスなどが同社の顧客だそうです。現在の株主にも、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、横浜キャピタルといったメガバンク等が並んでいます。資本金6億3,420万円ということですから、そろそろ上場準備に入っているものと思います。楽しみな会社です。

積水ハウスオーナー電気

同じ記事の中で、こちらは外販はしていないようですが、積水ハウスの話題もありました。同社の建築した住宅の太陽光発電。FITによる売電が終了する家庭から同社が電力を買い取るサービス名とのこと。いわゆるFIT終了の19年問題というヤツの解決事例ですね。

同社製の住宅に搭載済みの太陽光パネルは、年7億キロワット時を発電するとのこと。このうち2~3割を買い取れば、同社が使用する全事業の電力が再生エネ化できるんだそうです。今のところ積水ハウスには、事業として取り組む意向はなさそうですが、大手住宅メーカーって再生エネ電力小売り事業の核になって行くかもしれませんね。

三井住友トラスト 責任銀行原則を支持 日本の辛い立場

1/22付け日本経済新聞の記事から。銀行に社会的責任を果たすよう求める「責任銀行原則」に、日本の銀行としては初めて支持を表明しました。

責任投資原則

最初にこうした動きが現れたのは「責任投資原則」でした。似てますが、「銀行」と「投資」のところが違います。責任投資原則は2006年に国連が公表したもので、略称PRIと表示されることもあります。責任投資原則は資産運用において、ESG(環境、社会、ガバナンス)問題に配慮することにより、社会的責任を果たして行こうという基本精神に賛同を求めたものです。つまり、まずは機関投資家を巻き込んだということです。

日本版スチュワードシップ・コードというのもありますが、長期的視点に立ち、投資において社会的責任を果たして行こうとするところは似ていますね。ただし、責任投資原則の方がESG問題により重きを置いた原則となっていて、6つの原則、35の行動が示されています。

責任銀行原則

そして今回三井住友トラストが支持を表明したのが、責任銀行原則です。こちらは略称PRB、今年の9月に発効予定ということで、昨年11月末にドラフト版が公表されていたところです。世界を代表する28の銀行が創設機関として責任銀行原則を公表しましたが、この中に日本の銀行の姿はありませんでした。

ここでカギになっているのが、日本がESGのうちの「E」、環境問題において苦しい立場に立たされていることなんです。震災で福島を失い、その後も次々とその他の原発を失った日本はいま、石炭火力発電に頼っています。そう、最も二酸化炭素排出量が多い発電方法に逆戻りしてしまっているんですね。

そのため、世界中の投資家や銀行が石炭火力への投資や融資を控える中、日本のメガバンクは同じような明確な行動がとれなくなっているんだと思います。メガバンクの辛い立場は十分理解できます。そしてここまで、日本の銀行からは責任銀行原則を支持できていなかったということです。

いま求められる国策

辛い立場に置かれていることは皆で理解したとしても、そこで思考停止しているわけにもいきません。震災で日本に起こったことを世界も一定程度理解してくれると思いますが、だからこそ、ここから何ができるかを前向きに考える姿を示していく必要があると思うわけです。

石炭10:原油7.5:天然ガス5.5 。何だかお分かりでしょうか。同じエネルギーを得るために燃焼させた場合に排出される二酸化炭素の量です。石炭火力がやり玉にあがりますが、石油や天然ガスもそれなりに排出されるんですね。石炭火力の二酸化炭素排出量を減らすテクノロジーの開発、国策として推しませんか。

また、以前当ブログで取り上げた洋上発電のような、再生可能エネルギーへの取り組みも重要です。もっともっと国策としてスピードを上げていくべきです。原子力発電の再開についても、もう一度しっかり議論する必要があります。野党の皆さんも与党の足を引っ張るための原発論ではなく、真剣に日本の未来を考えてほしいものです。

TOYOTAとパナソニックの電気自動車向けバッテリーの合弁会社設立が話題になっていますが、バッテリー作ったら電気も一緒に付いてくるわけではありません。このバッテリーに充電するための電力を新たに作らなければなりません。どう考えても今の日本の電力事情では、電気自動車を走らせる電力は供給できそうにないです。国民ももう一度しっかり考え、国策として強力に新しい電力供給体制を推進していくべきだとkuniは思います。