金融庁 トヨタモビリティ東京に対し保険業法に基づく業務改善命令

日本経済新聞によると金融庁は、トヨタ自動車の直営販売会社のトヨタモビリティ東京と、中古車販売大手のグッドスピードに対し、適切なガバナンス体制の構築、再発防止策の検討を求めるべく、保険業法に基づく業務改善命令を近く出す方針を固めたとのこと。

トヨタモビリティ東京

トヨタモビリティ東京は資本金181億円、従業員7,700人、東京都内で約200店舗を展開し、自動車保険に加えて生命保険も取り扱うトヨタの完全子会社です。同社ではレクサス高輪における不正車検(2021年)や板金塗装修理費の過大請求(2020年)などが発覚していました。要するにビッグモーターと何ら変わらない不正を行ってきたわけです。

業務改善命令

中古車販売大手の旧ビッグモーターの保険金不正請求など、損害保険業界の一連の不祥事を受け、金融庁は新車販売会社も含めて立ち入り検査を実施してきました。立ち入り検査の結果、特定の保険商品への加入を条件に、自動車や関連サービスを値引く違反行為などがあったようです。

さらに、損保会社に対して保険金を不正に請求する事案が確認された(どのような手口だったのかは今のところ不明)ほか、重要事項の説明を怠るなどの違反行為もあったということです。いやいや、マジでビッグモーターそのまま。自動車販売業や修理業、業界丸ごと腐ってますね。今後日産自動車やホンダとかも出てきそう。

イオン銀行 金融庁の業務改善命令を受け社長を解職

イオンフィナンシャルサービスは1/14、「代表取締役及び取締役の異動(辞任及び選定)に関するお知らせ」を公表しました。子会社のイオン銀行が金融庁から業務改善命令を受けたことに伴う異動ですね。イオン銀行でも社長を同日付で解任したと発表しています。

イオンフィナンシャルサービス

イオンフィナンシャルサービスは、クレジットカードや割賦販売あっせん、融資(カードキャッシング、各種ローン)、銀行業、保険事業など幅広い金融サービスを国内、アジアで展開するイオン系の総合金融グループ。東証プライム上場企業です。

異動の内容

マネロン・テロ資金供与対策に係る不適切な業務運営が指摘され、業務改善命令を受けたイオン銀行。その責任を問われイオン銀行の社長を解任。新社長には親会社のイオンフィナンシャルサービス取締役が就任。さらに親会社の社長も解職され、現会長が社長を兼任することに。

金融庁OBやないの

命令を受けるに至った問題点は多岐にわたっていますが、ザックリいうと、金融界が10年から15年前に金融庁に怒られながら対応してきた課題をいまだに放置したままでした。みたいな状況です。経営陣の責任が問われて然りですね。

ただ、ちょっと気になるのが、新態勢を構築するために親会社の社長に返り咲いた会長さんって、金融庁OBなのね。っていうか、いわゆる天下りです。そんな方が経営陣のど真ん中に居ながら、こんな事態起こしたのかよ、って感じ。まぁ金融庁としては、対外的には金融庁と深い関係を持つ人材を充てることにより、態勢の再構築を行わせるため、みたいな説明するんだろうけど。相変わらず身内には甘いんだな。

SBI SBIソーシャルレンディング 自主的な廃業

SBIホールディングスは5/24、「当社子会社のSBIソーシャルレンディングの今後の事業運営について」を公表しました。当面の間、新規募集を停止し、再発防止策の整備等を進めるとしていましたが、同事業からの撤退ということになりました。

金融庁

この開示に先立ち、日本経済新聞の5/22付け記事では、「金融庁がSBIホールディングス子会社のSBIソーシャルレンディングに業務停止命令を出す方針を固めた。」というのがありました。

太陽光発電事業者が手掛ける完成の見込みの薄い開発案件に融資。資金使途が投資家に説明した内容と異なる虚偽の表示にあたるとして、金融商品取引法の違反に該当する行為だというのが調査委員会の見立てでした。

金融庁はSBIソーシャルレンディングに対して報告徴求命令を出していたようで、その内容を精査しながら処分内容の検討を進めていたようです。記事では、金商法への重大な違反行為があったとして業務停止命令に踏み切る。としていました。

自主的廃業

この記事が伝えられた二日後の5/24、業務停止命令を受ける前に、自主的廃業という判断に。潔いですね。SBIという会社、金融庁との距離感を測るのがとても上手です。

今回のケース、貸出先の精査が不十分だったのかもしれませんが、「結果的に投資家を裏切ることになった場合でも、虚偽の表示に該当する」、という業界にとっての厳しい違反事例を提供することになりました。金融庁も満足してるでしょうね。投資家は保護されましたし、業者にはよい牽制になったでしょう。

自主的廃業が伝わった5/24、SBIホールディングスの株価は2703円(-74円)でした。今さら売られる材料でもないと思いますけどね。

野村證券に業務改善命令

またまた野村です。金融庁は野村証券と野村ホールディングスに金融商品取引法に基づく業務改善命令を出す方針を固めたという報道です。東京証券取引所の市場区分見直しに関する情報を一部の投資家に漏えいした問題についての金融庁の判断ですね。野村証券に対する行政処分は2012年のインサイダー問題以来だそうですが、ここのところ不祥事だらけで常連さんのイメージです。

大崎貞和フェロー

情報を流したのは野村総合研究所の大崎貞和フェローという人物。東証が設置した市場区分に関して議論する有識者懇談会のメンバーです。この「市場構造の在り方等に関する懇談会」での議論・情報を野村証券のストラテジストや機関投資家を顧客に持つ営業員に伝えていたというお話。

この事件は3月下旬に発行されたFACTAという雑誌が報道していました。この情報が機関投資家に対して、野村証券のビジネスとして提供されていることから、会社ぐるみの対応ではないかとも言われています。大崎氏はこの報道を受けて政府の国会同意人事案から外されたりしてますね。

漏えいした情報

実際に機関投資家等に提供された情報というのが、「東証は一部上場・降格基準を250億円にしたい意向」というものらしいです。当時、降格基準は時価総額500億円ではないかとの観測がありました。そのため500億円未満だからとして売られていた銘柄は、買戻しが入るかも、、、みたいな感じで情報提供されているらしいです。

これって情報漏えいではなく、立派に積極的な情報提供ですよね。金融庁はインサイダー取引には当たらないとしているようですが、一連の行為は相当酷いです。ただ、一方で、「野村は主幹事企業の一部上場という地位を守るために、意図的に情報を流して議論を潰したのではないか」なんていう見立てまであるようです。

コンプライアンスの鬼門 プロフェッショナル

今回の業務改善命令、主役は政府が頼りにするほどの有識者。いわゆるプロフェッショナルはコンプラ的には非常に扱いにくい存在です。高度な専門性を有するが故、企業は非常に高い報酬で報います。高収入の彼らは一般的な社員とは別という感覚を持ちやすく、そのため会社のルールを守らない傾向が強いんですね。また、この手の輩は短期間で企業を退職し、別の企業に転職していく傾向もあり、会社に対するロイヤリティも低くなりがちという事情もあるような気がします。

終身雇用や年功制が廃止される方向に進んでいますが、一方で会社を次から次へと渡り歩く専門性の高い社員達に対して、コンプライアンスをいかにして徹底していくか。これは意外に大きくて、新しい課題だと思います。

新生銀行ですか スルガ銀行救済

5/13 夕方、日本経済新聞電子版が「スルガ銀、新生銀と資本・業務提携へ 不適切融資1兆円規模」というニュースを伝えています。【イブニングスクープ】とかいう見出しもあって、日経のスクープなのかと思ってググってみたら、あちこちで報道されてました。なんだ、それ。今朝の日経ではどんなふうに出るんでしょうね。

見付けたニュースの中ではダイヤモンドオンラインが一番詳しかったような気がします。「スルガ銀の支援先選定、ノジマとSBIの一騎打ちに金融庁が「待った」で混迷」というタイトルです。読んだ通りなんですが、ノジマとSBIが最有力で進んできたものの、最終段階になって、金融システムの安定を気にした金融庁が銀行による支援にこだわりを見せ始めたということだそうです。

りそなはないよね

当初、りそなホールディングスと優先的に交渉を進めていたようですが、りそな側が資本提携まで踏み込まず、あくまで業務提携にこだわったようです。っていうか、りそな自身のレオパレス問題。施工不良地獄に陥っている賃貸アパート大手、レオパレス21向けの融資の多さを考えると、もう一つ問題児を抱え込むなんてのはないでしょう。という感じです。

ノジマはありかも

金融庁のこだわりは分からないでもないんですが、まったく別業界のノジマは面白いかもと思いました。ダイヤモンドの記事では「ノジマは17年に富士通から買収、個人向けインターネット接続事業を手掛けるニフティのほか、携帯電話販売の大手代理店ITXなどを傘下に抱えている。こうした企業群とスルガ銀行を有機的につなげることで、先進的なフィンテック事業を手掛ける銀行に生まれ変わらせるという戦略を提案しているもようだ。」とあります。

銀行以外の業種からどんどん参入してくる時代なんですから、銀行以外の会社がスルガを再建してみるのも良いですよね。別に今までと同じ銀行に再生したってしょうがないんですから。そんな銀行もう生き残れませんし。まったく新しい銀行として生まれ変わらせるんだったら、ノジマ、面白そうです。

5/15 スルガ銀行の決算発表だそうで

日経の記事にはさりげなく「スルガ銀、新生銀は15日にも提携を発表する。」というふうに書いています。ダイヤモンドの記事によると、スルガ銀行の決算発表が5/15ということらしく、このタイミングで公表するだろうということのようですね。ちなみにダイヤモンドは新生銀行に決まりとは言ってなくて、「スルガ銀行は5月15日に決算発表を控えている。それまでに支援先を決定し、新たな再建への道を描くことができるのか。時間は残されていない。」というコメントで記事を終わらせています。