日野自動車 22年3月期の連結最終損益は847億円の赤字

日野自動車は4/27、「繰延税金資産の取崩し、通期連結業績予想と実績値の差異、剰余金の配当に関するお知らせ」を公表しました。同時に同期の決算短信も公表しています。やはりかなりのインパクトが出てきましたね。

おさらい

エンジン性能の認証不正が発覚。型式指定の取り消し処分に伴い、日野自動車は不正のあったトラック・バスの4車種の一部で生産と出荷が停止に追い込まれました。台数ベースで同社の国内販売の約3割にあたる大型トラックが、全てが販売できない状況だそうです。

決算数値など

発表した22年3月期の連結最終損益は847億円の赤字で、同社にとって過去最大の赤字となっています。不正に伴う特別損失の影響が大きく、リコール(回収・無償修理)や税制優遇を受けた分の追加納付の費用で400億円、北米工場の稼働停止に伴う販売店や部品会社への補償費用として273億円を計上しています。

同日開いた記者会見で社長は、「不正行為のあった車種の出荷再開が見通せない」と発言。燃費の改ざんに伴う購入者への補填費用の負担も大きいようで、あるアナリストの試算によると、今期負担が470億円に上るとも。税金の追加納付やリコール費用をあわせると、国内の不正関連で1820億円の負担が生じるなどとも指摘しています。

株価の方は

決算発表を受けて同社の株価は大きな動きなし。決算を見越して直近安値近辺の636円まで売られていたためだと思われます。さてさて今後どうなりますやら。3/11に設置された特別調査委員会の調査結果もこれからですね。

東レ 有識者調査委員会の調査報告書を公表

東レは4/12、「有識者調査委員会による調査報告書の受領および今後の対応について」を公表しました。ABS 樹脂やエンプラにおける米国UL認証登録に関する不正行為を公表し、ここまで有識者調査委員会で調査を行ってきました。その調査結果ですね。

結果の概要

家電や車部品などに使う樹脂製品の一部について、燃えにくさを示す「難燃性」の認証を米国の第三者機関「アンダーライターズ・ラボラトリーズ(UL)」から受ける際に、指定された品質等級と異なるサンプルをつくって提出するなどの不正行為がありました。

東レ製品の462品種がUL認証を受けていましたが、そのうち122品種で不正行為が認められたようです。不正行為があった樹脂の1つであるABS樹脂では、30年以上前から現場が不正を認識していたと指摘しています。

2017年8月頃に当時の経営層の一部にUL認証において不正行為があるとの報告がなされたものの、見過ごされてきたそうです。報告書では経営による隠蔽行為も否定できるものではないと指摘しています。

再発防止

同委員会の再発防止に向けた提言の中に、「経営陣が本気度を示す行動を強化・継続すること」というのがあります。これ、かなり重要だと思います。改善のための施策を従業員に強いるだけでは会社は良くなりません。

同委員会の提言を引用しておきます。「経営陣は常にコンプライアンスの重要性について発信するとともに、自己のコンプライアンスにおける責任・使命を宣言。」これがガバナンスの一丁目一番地、というヤツです。ちなみに、「一丁目一番地」って、おじさんビジネス用語らしいっす。

日野自動車以外は不正なし?

日本経済新聞は4/9、「日野自以外『不正なし』  トラック・バス6社、調査結果を報告」と報じました。国土交通省は国内で型式指定を取得しているトラックとバスの生産や販売、輸入を手がける7社に対し、日野自と同様の不正がなかったか調査と報告を求めていたということです。

6社は不正なし

報告を求められていた7社のうち、いすゞと三菱ふそうのほか、UDトラックス、トヨタ自動車、日産自動車、ヒョンデモビリティジャパンの6社については、自社の排ガス評価試験などで不正は見つからなかったとのこと。

ただ、1社だけ、スカニアジャパンは報告を提出したうえで、「国交省の公表前の回答は控える。調査には全面的に協力している」と述べ、詳細を明らかにしなかったそうです。なにやら気になる対応を見せてますね。スカニアは北欧スウェーデンを本部とする世界的なトラック、バス、産業用エンジンメーカーです。

国交省による報告命令の内容が分からないので何とも言えませんが、「日野自動車と同様の不正がなかったか」という質問だとかなり調査報告の対象範囲が限られますよね。日野と似てはいるが同じではない不正については、報告が上がってこない可能性もありそうです。

とりあえず不正なしは朗報

とまぁ、詮索してしまうわけですが、業界にとってはとりあえず朗報。いすゞ自動車株式は4日ぶりに反発して、この記事を書いている時点で1500円台を回復しています。しかし、この業界で「次」が出てこないのって、かなりレアなことですよね。個人的にはまだまだ信用していません。

神東塗料 認証不正(その4)

神東塗料は4/4、「当社製の一部製品に係る不適切行為に関するお知らせ(第5報)」を公表しました。認証不正に係る同社塗料製品の規格適合や水質の安全性への影響について、確認のための試験を、公益社団法人日本水道協会と進めています。

おさらい

同社で製造する水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料について、日本水道協会の認証規格や取引先との協定に関し、認証不正等が発覚。同不正が確認された対象製品についての出荷を停止していました。全国の水道管更新という公共工事に大きな影響を与えていた一件ですね。今年1/12に公表されました。

安全性確認

第1報から約3ヶ月、3/22第4報以降は安全性の確認完了の報告が開示されています。第4報では合計22製品の出荷再開が報告されており、第5報では合計24製品の安全性が確認され、これら水道用資機材の出荷自粛が解除されたとしています。同社塗料全ての型式で出荷自粛が解除されたということです。

これで止まっていた公共工事がやっと全面的に再開されるということなんですが、1/14から始まった特別調査委員会の調査結果は、途中経過も含めて未だにまったく公表されていません。

少なくとも2か月以上水道管更新工事を止めてしまったこの認証不正。しっかりとした調査結果が求められると同時に、経営の責任についても厳格な追及がされる必要がありますね。同社の2022年3月期の決算発表は5/16の予定だそうです。おそらくそこまでには調査結果が公表されると思われます。

日本フェンオール 認証不正 特別調査委員会も

日本フェンオールは3/31、「当社の一部製品に関する不正行為について」を公表しました。同社の火災報知設備における定温式スポット型感知器や中継器において、型式承認時に承認された部品とは異なる部品を一部用いて製造していたということです。

日本フェンオール

日本フェンオールは、熱をコントロールする「熱制御」を基礎技術として、火災警報器や火災消火システムなどの防災設備を手掛ける企業。防消火事業を主力とし、産業用防災向けを得意とする東証2部上場企業です。

不正の概要

2013年9月から2020年10月までの間に、同社で製造した火災報知設備における定温式スポット型感知器や中継器について、型式承認時に承認された部品とは異なる部品を一部用いて製造していました。

さらに、当該事実が発覚することを防ぐために、型式適合検定受検時に不正の手段を用いて型式適合検定に合格していたことが判明したということです。ちなみに、これらの製品は家庭用消防機器ではなく、一般家庭への設置はないとのことです。

まぁ、例によって、なんですが、同社は「当社では規格省令に一部不適合があるものの、現時点では機能喪失もなく、万一今後トラブル表示が発生した場合でも、適切な監視対応を行うことでご使用いただけると判断しております。」と表明。

不思議な開示

この開示、特別調査委員会の調査結果を受けたものなんですね。不正発覚時の開示はなかったということのようです。なもんですから、発生原因やら再発防止策、特別損失の計上、役員報酬の減額など、すべてセットで開示されてます。

ちょっと、やり方、雑ですね。去年だったかな、同じ業界のホーチキでも不祥事が表面化していました。消防法絡みの業界、闇が多そうです。