ESGの「S」 (その2) ステークホルダー資本主義

5/3付け日本経済新聞の記事で、「コロナと資本主義 私はこう見る 企業は社会と生きる存在」というのがありました。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、企業と社会の関わり方が改めて問われている。企業が社会を含めた幅広い利害関係者に対して責任を持つ「ステークホルダー資本主義」にシフトすべきだ、、、というご意見です。

社会への貢献

あらためてESGの「S」について、考えさせられますね。「ダボス会議」を開催する世界経済フォーラム(WEF)の創設者であるクラウス・シュワブ会長のご意見として紹介されていました。新型コロナウィルスと戦う全人類に大きく響く考え方だと思います。

当ブログでも2週間ほど前に同様の話を取り上げました。採算度外視してでも、今社会が必要としているモノを製造する企業。これ、ステークホルダーに対して大きく訴えますよね。既に日本企業においてもステークホルダーを意識した動きは見られています。

株主だけを意識したと思われるような増配や、自社株買いの継続。さらには経営層に高額すぎる報酬を支払ったりすること、、、このような企業の判断は既にタブー視されていると、企業側も気付き始めています。個人も企業も、今社会のために何ができるのか、考えるときですね。

日本企業に期待

いたずらにROEを高めてこなかった日本企業。世界に誇る内部留保を、今こそ社会のために活かしてほしいものです。社会に貢献しつつ、もちろん企業が儲かるならなお素晴らしいことです。

アイリスオーヤマは来月から国内でマスク生産を開始します。それも素材から国産にこだわって。日本国内の生産設備導入により、6千万枚/月という新たなマスク生産計画を発表していましたが、さらに踏み込んで、1億5千万枚/月に増強することも発表しています。

動きに乏しいメガバンク。社会貢献で新たに参入しようとする企業と、設備を提供できる企業をマッチングさせ、ファイナンスを提供するといったこと、できるんじゃないの、、、って思うんですけどね。

ESGの「S」

ESGについて語られるとき、去年まではもっぱら環境問題や企業統治、つまり「E」と「G」の話題が中心でした。ところが年が明け、新型コロナウィルスの感染が拡大するのに合わせ、「S」が一気に目立つようになってきました。社会への貢献が企業の価値を大きく左右しそうです。

疫病という課題

コロナ対策は、解決しなければならない社会の課題として、人々に明確に意識されています。買いたくても手に入らないマスクや消毒液、絶対的に不足するといわれる人工呼吸器。これらの課題に対して、採算度外視で生産に参入する企業。それも全くの異業種からの参入も少なくありません。

今、本当にみんなが困っている時だけに、こうした企業の名前は消費者や投資家にしっかりアピールできるはずです。最初にマスク生産を公表したのがシャープでしたね。ヤフーは全国の自治体に感染を抑え込むためのデータソリューションを無料で提供しています。ソニーは人工呼吸器の生産協力が伝えられました。

コロナ感染軽症者の受け入れを真っ先に表明したアパホテルもそうでしたね。SNSでもその表明を称賛する声がたくさん。先日当ブログで取り上げたジャパンマテリアルも。事業で貢献するわけではありませんが、会社を支えてくれている地元の消費に貢献するという施策でした。SHIFTの危険手当なんかもそう。危機下で従業員をどう扱うか、、、こういうところもしっかり見られてます。

今は儲けるときじゃない 

おそらくこれら異業種からの参入は、事業として儲けるための参入ではなく、あくまで社会貢献としての決断だと思われます。足元の自社の業績が目に見えて悪化していくなか、こうした決断ができるという企業のガバナンス、これは凄いことです。多くの企業の経営は自社社員からコロナ感染者が出るんじゃないかと戦々恐々としているばかりでしょう。

相場の世界もそうですが、みんなが恐怖に慄き、一斉に逃げ出していくような場面で、ほかの連中にはできそうにない行動を決断する。これ、大事です。「S」で評価されるこうした企業、必ず報われると思います。