関西電力 旧経営陣を提訴

関西電力幹部らの金品受領問題を巡り、関電は岩根前社長ら旧経営陣を相手取り、損害賠償を求めて提訴する方針を固めたと伝えられました。監査役会が設置した取締役責任調査委員会が善管注意義務違反を認定した旧経営陣5人を提訴するようです。

ここまでの流れ

3/30 関電は取締役責任調査委員会を設置しました。「金品等受領した問題に関して、個人株主から提訴請求を受けたこと等を踏まえて、取締役がその職務執行につき善管注意義務違反等により同社に対する損害賠償責任を負うか否か等について、法的な側面から調査・検討を行う。」と公表しています。

その後、4/20に「株主からの提訴請求について」を公表。その中で「4月18日、当社の個人株主5名から、当社代表取締役社長宛て「監査役に対する責任追及訴訟提起請求書」と、当社監査役宛て「取締役に対する責任追及訴訟提起請求書」を受領いたしました」という内容です。

現旧監査役計7名に対しては、金品受取り問題について監査役が取締役会へ報告しなかったことにより、善管注意義務および忠実義務に違反したとして、総額51億円の損害金の支払いを。

現旧取締役計12名に対しては、金品受取り問題に関する役員の修正申告時における追加納税分の補填を決定・実施したこと、過去の経営不振時の役員報酬削減分の補填を決定・実施したこと、金品受取り問題を公表せず、取締役会への報告を怠ったこと等により、総額55億6,120万円の損害金の支払いを求める責任追及の訴えを提起することが請求されています。

監査役の判断

監査役は、株主からの提訴請求書面の受領日(4/18)から60日以内に、取締役の責任追及の訴えの提起をするかどうかを調査し決定しなければなりません。そのためこのタイミングで、取締役責任調査委員会が善管注意義務違反を指摘した旧経営陣5人を提訴する方針を固めたということですね。

関西電力の会長、社長 他企業の社外取締役や社外監査役を辞任

週末の日本経済新聞のニュースです。関西電力の会長、社長が他企業の社外取締役や社外監査役を辞任するとのこと。また、別の面では、同社監査役が金品授受の実態を把握していたにもかかわらず、取締役会への報告を怠っていたことも判明したと伝えています。

社外取締役や社外監査役を辞任

前回、会長、社長とも速やかに辞任すべきと書きましたが、その前に社外取締役等の社外職を辞任するようで。しかし、笑っちゃいますね。一億円以上金品受け取ってた人達が社外では取締役会の御意見番やってたってことですからねぇ。社外取締役や社外監査役を続けていると、その企業に迷惑をかける、、、と考えたんでしょうか。だったら、関西電力に対しても同じことです。

関与したことが判明している会長、社長ほか関与していた役員の辞任は速やかに行い、第三者委員会による公正な調査を実施してほしいですね。そして何より重要なのは、過去の不正・不祥事に対する是正対応と、今後の原発再稼働の是非という問題をしっかり切り離して議論することです。当事者たちに限らず、我々国民としてもその点を意識して見守る必要があると思います。

監査役の報告義務違反

前回、金品を授受した取締役について、会社法の「会社取締役の収賄罪」の適用もあるかもしれないことを書きました。こちらは、会社取締役の贈収賄罪を規定した会社法第967条第1項です。

そして今度は、会社法第382条。監査役の取締役会への報告義務違反が発覚しました。もう、何のための監査役なんだか、、、って感じです。不適切だが不正とまでは言えない、、、って解釈なんですかね。382条の条文を載せておきます。

第382条(取締役への報告義務)
監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を取締役(取締役会設置会社にあっては、取締役会)に報告しなければならない。

「強い監査役」機能取り戻せ

6/23 日本経済新聞の記事です。サブタイトルとして、「相次ぐ不祥事で守りのガバナンス、内部監査との連携密に」と続けられています。カルロス・ゴーン元会長が監査役のチェック機能を排除しようとしていたことについて、ガバナンス改善特別委員会の報告書は「うるさい監査役については再任しなかった」とか「何も言わない監査役を探してこいと言われた者もいる」などと報告しているそうで、そこから強い監査役を。と言ってるようです。

社長直属の内部監査部門の問題点

記事のタイトルの「取り戻せ」って誰に言ってるのかって感じなんですが、、、おそらく企業に対して言っているということですかね。内部監査部門と監査役を連携させることで、チェック機能を向上させるみたいなこと言ってますし。けど、普通どこの会社でもこの連携は重要視してると思います。

記事では論点があっちこっちに行ってしまっていて分かりにくいですが、内部監査部門が社長もしくは執行サイドの役員直下の組織になっているケースが9割以上となっている、と言ってます。これを否定的に捉えているんですね。社長やその役員が悪さしている場合は、内部監査部門が機能しなくなると。そこへ、ある有識者は監査役に内部監査部門の指揮権を持たせるべきとも言ってます。

内部監査部門と監査役の関係

日本監査役協会によると、「監査役会は経営者の指揮下にある内部監査部門等に対して、直接指揮する権限を有しない」ということです。海外向けに日本独特の制度である監査役を説明する際にそう言っています。経営者の指揮下にあることを前提としていますので、そうでなければこの限りではないのでしょうが。

監査役もしくは監査役会の直下に内部監査部門をぶら下げる組織ってのは、kuniもまだ見たことがありません。しかし、取締役会で決議して、監査役会が内部監査部門を直接指揮できるようにすることは可能と思われます。

ということで、今回注目したこの記事では、監査役と内部管理部門の連携というか協働について、日産自動車を題材に主張していました。実は2015年の東芝の調査報告書でも同じようなことが書かれていす。再発防止策の一つとして、「内部監査部門は社長やCFOを統括責任者とせず、経営トップからの独立性を確保すべきである」と書かれてたんですね。

あれからもう4年になりますが、また同じようなことが起きてしまったわけです。経済産業省が今月公表予定の企業統治の新指針でも、「監査役への報告を優先させる規定を設けるのが望ましい」という原則が設けられるという話もありましたね。次のコーポレートガバナンス・コードの改正でも、この辺りがどんなふうに取り込まれるのか。注目されます。