パワハラと勤怠管理が企業の不正や不祥事のキーワード

厚生労働省はパワーハラスメントの防止策を義務付ける法律を作るそうです。相談窓口の設置や発生後の再発防止策を企業に求めていくとのことで、悪質な企業は公表もするとも言ってます。ただし、罰則は設けない方向のようです。

パワハラの判断基準

厚生労働省が3月にまとめた報告書によると、パワハラの判断基準は

  1. 優越的な関係に基づいてなされる
  2. 業務の適性な範囲を超えている
  3. 身体的・精神的な苦痛を与える

の3要素だそうです。これらがすべて重なって、パワハラと認定されるということです。判断基準を示されたとしても、、、それでも判断は難しいですけどね。

企業の不正や不祥事とパワハラ

kuniがこれまで見てきた不正や不祥事、法令違反などとパワハラは、かなり密接な関係があるように思います。パワハラが背景にあるケースが多いと言った方がいいですかね。上司等から過大な要求(例えば収益目標)をされ、精神的な苦痛を常時感じている部下が、その状態に堪えられなくなった結果、法令違反を犯して営業成績を作ってしまうようなケースが典型的です。スルガ銀行がまさにこのパターンでした。

また、同じような状況で行う業務は、注意力を欠くことになりますし、コストと見なされる手間をかけた確認も省略されてしまいがちになります。その結果として重大な事故が発生してしまうのです。収益至上主義というとき、パワハラは必ずと言っていいほど同時に発生しています。

この不正・不祥事とパワハラの関係も考慮してなのかは分かりませんが、来年にはパワハラ防止法が出来るということです。企業がパワハラに対してしっかりと向き合うようになることは、不正・不祥事の未然防止や早期発見にも資すると思われます。

不正・不祥事と勤怠管理

これもkuniの経験によるんですが、不正や不祥事と密接な関係がある事象として、もう一つ、勤怠管理の不備や異常が上げられます。現場にその能力を超える要求があると、必ず異常な残業時間や、勤務時間の申告の不整合などといった現象が起きるように思います。勤怠管理については、定量的にとらえることが出来るデータですので、予兆管理にも適してますね。

現場で起きている課題を発見するための体制(発見統制)

不正や不祥事を出来るだけ初期の段階で見つけるための体制を、発見統制という言い方をします。そもそも現場で起きている問題ある状況は、直属の上司が発見し、これをさらに上席者に報告していくことで経営層が認識。経営として必要な資源を投入するなどして解決していきます。この縦の報告ルートをレポートラインと言います(メインラインとも言います)。

上の例で言うと、経営層が現場で行われている、過剰な収益至上主義に陥ったマネジメントを改めさせるということになりますね。

ところが、このレポートライン、中間管理職の機能不全等の原因で、目詰まりしてしまうことが多いです。そのような場合を想定し、多くの企業がホットラインを設けています。中間管理職を経由することなく、現場で起きている問題ある状況を経営層が認識するための体制ですね。

経営が現場を正しく認識するための体制

不正や不祥事が発生する最も大きな原因は、経営が現場で起きていることを知らない状態、つまり経営と現場の乖離です。通常のレポートラインによる適切な報告」、勤怠管理の状況に対するモニタリングにより、経営が現場の状況を常に把握しておくことが重要です。

そして、本来の組織の機能であるレポートラインが、上手く働かなかった場合の備えとしてのホットラインによる補完。少なくともこの3つの機能は、ガバナンスにおける必須の体制だと思っています。

金融庁 失策その3

以前の記事で森長官時代の金融庁の失策として、「仮想通貨」と「スルガ銀行」を指摘したことがあります。実はもう一つあるんですね。いやいや、細かいことを言うとまだまだたくさんあるんですが。代表的なものでは、という意味であと一つ。

毎月分配型投信

毎月分配型投信というのは、投資信託の分配頻度で分類したもので、名前の通り毎月1回分配金が顧客に支払われるタイプの投資信託です。ちょっとややこしいかもしれませんが、何に着目して分類するかによって、さまざまなカテゴリーが出来てしまいます。投資対象によって分類すると、株式投信、公社債投信、不動産投信などに分類されますし、世界のどの地域に投資するかで分類すると、米国株投信、国内株投信、新興国株投信といった具合です。

要するに毎月分配がある投信と言っているだけなので、その中には、何に投資するのか、どの地域に投資するのかなど、様々な投信が含まれています。この中に「通貨選択型投信」と呼ばれる非常に複雑な仕組みの商品があり、一時強烈に残高が増加しました(もの凄い勢いで販売されたと言うことです)。正直言うと、販売する側の証券会社や銀行の営業員もしっかり理解できているとは言えない商品でした。が、販売時の手数料が3.5%ももらえるということで、顧客ニーズと言うよりは販売する側に大きなニーズがあったわけです。

金融庁はこの通貨選択型投信を攻撃し始めます。とうてい顧客が理解しているとは思えない、顧客に大きなリスクを負わせることで、高額な手数料を生み出す商品。とまぁ、こんな感じで批判し、結果的には商品の販売を止めさせたわけです(実際には販売に際しての説明責任を強化することで販売しにくくしたんですね)。ここまでは、kuniも賛同しました。

調子に乗って、次は毎月分配型投信全体に対して攻撃を拡大します。投資元本が生み出す収益は、再投資されることで投資効果が最大化されるという、複利効果を強調する指導です。この一般論で毎月分配型投信全体を止めさせようとしたわけです。

顧客のニーズはどこに

投資元本を切り崩して分配金に当てていることを、顧客が理解しないまま、利回りの高さに魅力を感じて買い付けているケースはもちろん大問題です。販売する各社はそういう販売が行われていないか相当チェックしていました。しかし、このことを十分理解したうえで、年金みたいなものとして歓迎する向きも実は多かったのです。つまり、収入がなく年金に頼らざるを得ない高齢者です。

当時kuniはコンプライアンスを指導する立場にいたわけですが、「顧客がこのことを理解したうえでニーズがあるなら、どんどん販売して良い」と言ってました。「なんなら、より具体的に年金が支給されない月にだけ分配金を払い出す商品作ればどうよ」とまで。それでも、金融庁の度重なる指導の前に各社とも販売を自粛していったのです。

その後、金融ジェロントロジーや人生100年時代に合わせた資産寿命の長期化などが語られるようになり、高齢者にとって年金と同一の効果を持つ毎月分配型投信等が復活してきているようです。10/13日本経済新聞 「シニアを意識 分配型投信隔月主流、適度に元本取り崩し」という記事読んでみてください。わが国における顧客ニーズに基づいた高齢者向けの投資信託の進化。少なくとも5年は金融庁が遅らせた格好です。

おまけですが、地銀なんかこの商品本気で取り上げたらどうですか?顧客は高齢者がメインなんだし、支給される年金額やら口座のお金の出入りまで見えてるんだから。分配金で年金を補完するきめ細やかなサービスできるんじゃないでしょうか?

 

コーポレートガバナンス・コード

前回の投稿で、ガバナンスとコンプライアンスについて整理してみたわけですが、そもそも日本におけるガバナンスの定義になったと思われる、コーポレートガバナンス・コードについても見ておきましょう。

コーポレートガバナンス・コードは、2013年に閣議決定された「日本再興戦略」で掲げた3つのアクションプランの一つ、「日本産業再興プラン」の具体的施策である「コーポレートガバナンス(企業統治)」の強化を実行していくうえでの規範です。金融庁が後ろ盾となって東京証券取引所が制定、2015年から適用されています。

コーポレートガバナンス・コードは規則とは言うものの、最近流行の原則を示したもので、法的拘束力はありません。「コンプライ・オア・エクスプレイン」っていいまして、「この原則を実施するか、または実施しないならその理由を説明しろ」と企業に迫ります。十分拘束力ありますわな。その後、今年6月に改定が行われ、現在の姿になっています。

コードの概要

  1. 株主の権利・平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

という5つの基本原則で構成されており、その基本原則の中で、より具体化した原則や補充原則がいくつか設けられています(合計73原則)。

基本原則の構成だけでも分かるように、基本原則1と5は株主を意識したものであり、このコードが株主に対して大きく配慮したものになっていることが分かると思います。また、基本原則2や3においては、ESG問題への対応や開示に関する考え方なども含んでいます。

株主に対して企業が求められているもの

コーポレートガバナンス・コードが、株主に対する企業の取り組みとして求めている原則を見てみると、株主の権利の確保や、その権利行使に対する環境整備、資本政策や政策保有株式に関する考え方の説明などが並んでいます。

また、買収防衛策や株主の利益を害する可能性のある資本政策といった項目も並べ、経営陣と株主との間で利益相反のありそうな政策等について、その必要性や合理性をしっかり検討すること、株主の理解を得られるよう説明することを求めています。

こんなふうに書くと、特に違和感はないかもしれませんが、これって実は企業経営に非常に重たい足枷になるんじゃないの。ってのが第一印象でした。

その昔、総会屋というならず者が株主総会に現れて、その進行を妨げるといったことが横行していたんですが、今の世の中には物言う株主とかいう株主が居まして、この人たちと折り合いつけていくのも大変なんですね。この話もいずれ書きたいと思いますが。

コードのコンプライ率(実施率)

このように、株主に対して格段の配慮を求めるコーポレートガバナンス・コードですが、東証一部上場企業で、全原則をコンプライした企業(実施した企業)は636社(31.6%)、9割以上の原則をコンプライした企業が1,241社(61.4%)となっており、東証一部上場企業の93%がほぼこのコードを実施しているということです。(データは2017年7月時点)

kuni個人としては、コーポレートガバナンス・コードを非常に前向きにとらえていますが、この株主に対する原則については、やや違和感があると言いますか、消化不良を起こしてるんですね。次回はこのあたりも書いてみたいと思います。今日はここまで、ということで。