天馬 株主総会 会社側の取締役選任議案 一部否決

ベトナム子会社のl贈賄事件という不祥事で取り上げた同社でしたが、会社と元名誉会長、監査等委員会、投資会社入り乱れての取締役選任争いに発展。で、株主総会が一昨日行われました。会社側提案の8名のうち3名が否決されるという結果になったようです。

会社提案 第2号議案

総会の焦点は第2号議案。会社提案の8名の取締役(監査等委員除く)選任議案です。総会でどのような議論が行われ、どう展開してこういう結果になったのでしょう。

否決されたのは同社の創業者メンバーである常務の金田宏氏をはじめ、須藤 隆志氏、与謝野 明氏の3人です。会社側と投資会社のダルトンは意見が一致しているようでしたし、どういう力関係でこの3名が否決されたのか、興味あるところですね。

朝10時から始まった株主総会。「第72回定時株主総会開催結果に関するお知らせ」がTDnetに掲載されたのが19時20分。かなりの長時間もめてたのでは、、、と勝手に想像してしまいます。

今回の株主総会で最も注目されたのが、現行の取締役会の刷新を求める元名誉会長の株主提案でした。新たな取締役候補が全員現執行役員という提案(第5号議案)でしたが、これは否決されています。

監査等委員会は元名誉会長寄りのようでしたし、5号議案が否決されつつ会社側提案のキモである3名が否決という結果が上手くイメージできません。

議決権行使助言会社

元名誉会長が主導する「天馬のガバナンス向上を考える株主の会」というサイトで、有力な議決権行使助言会社である Institutional Shareholder Services Inc.及び Glass, Lewis & Co., LLCのレポートが紹介されていました。

「上記3名の取締役候補について、いずれもベトナムでの贈賄事件に関与した可能性があるため、その取締役選任議案につき反対推奨」するとしていたようです。結果だけ見ると、この議決権行使助言会社の助言通りになったということですね。

積水ハウス 現経営陣の圧勝 株主総会

五反田の一等地をめぐる地面師事件で55億円の損失。その後のクーデターで退陣に追い込まれた和田元会長が、4/23に開かれた株主総会で現経営陣との戦いに挑みましたが、、、結果は現経営陣の圧勝ということです。取締役の選任についても会社側提案が賛成多数で可決となりました。

タイミング悪すぎ

「和田前会長による現経営陣の刷新という株主提案は否決され、「内紛の再燃」と注目を集めた株主総会は大きな波乱なく終わった。」と翌日の日本経済新聞が伝えています。これがまた、めちゃくちゃ小さな記事。この日の日経で読み落とした人は相当数にのぼると思います。

投資情報面(15面)ですから、例によって新型コロナウィルスの影響で今期〇〇%の減益、、、みたいな決算関連記事ばかり。コロナの影響でこのニュース、見事に隅っこに追いやられました。もちろん、前会長側が勝っていたらこんな取扱いじゃなかったでしょうけどね。

コロナの逆風

記事の大きさだけではありません。前会長が株主提案をする旨表明したのが、2月14日でした。東京都内居住者の新型コロナ感染が初めて確認された2月13日にほぼ重なります。そして株主総会が4月23日です。

つまり、株主総会に向けて、世論や他の株主に対し、地面師事件の責任追及や同社のガバナンスの問題を訴え、賛同を得ようとした期間と、新型コロナウィルスの感染拡大の期間が見事にカブってしまったわけです。メディアでも取り上げられることがかなり減ってしまいました。

さらに、新型コロナウィルスとの戦争の真っ最中に、一事業会社のお家の事情(内紛再燃)に振り回されているような姿を晒したくない(見られたくない)という思考も、機関投資家の中にはあったんじゃないでしょうかね。まぁ、とにかく現経営陣にとっては、新型コロナさまさまです。

積水ハウス 元会長が株主提案(その2)

積水ハウスの元会長が、4月の株主総会で株主提案という形で現経営陣との戦いに挑むことになった件、当ブログでも以前取り上げました(この記事、先に読んでいただいた方が良いかも)。その時は五反田の地面師事件のおさらいが中心になってしまいましたので、今日はもう少し深掘りしておきます。

Save Sekisui House

という名前のサイトがあります。このとおりにググってもらうとすぐに出てきます。「本ウェブサイトの目的」には、次のように書かれています。

本ウェブサイトでは、積水ハウスの一部取締役に対する地面師事件及びその後の情報隠蔽の責任を追及する株主代表訴訟に関して、情報を随時更新しておりますので、頻繁に本ウェブサイトを確認されることを推奨致します。

引用した上記文章の手前には、情報提供も歓迎すると書いてあり、元会長が情報収集するために設置したサイトではないかとの見方もあるようです。

和田元会長の追放劇

2018年1月の積水ハウス取締役会。和田会長(当時)は取締役会前夜に賛同する取締役たちと、地面師事件で取引を承認した阿部社長(当時)解任動議に賛成する打ち合わせまでしていたといいます。社長解任は決定的と言っていい状況でしたが、翌日の取締役会では、和田派の取締役2名が阿部社長側に寝返ってしまいます。で、5対5の賛否同数で社長解任動議は否決されます。

その直後、逆に阿部社長が議長を稲垣副社長に交代させる動議を出し、6対5で可決(一人増えてるのは、退席していた阿部社長が戻ってきたため)。続いて和田会長の解任動議が出され、、、この時点で議長が和田会長に自発的な退任を促し、辞任に追い込まれたそうです。(以上、週刊東洋経済2019年10月19日号から引用させていただきました。)

どうでしょう、この展開。後に映画にでもなればかなり面白そうです。このような追放劇で葬られた元会長が、4月下旬に予定される株主総会に挑むわけです。しかし恐ろしい展開ですね。こんな取締役会出たくありません。

積水ハウス 元会長が株主提案 現経営陣の交代

このところ大和ハウス一色になってましたが、今回は積水ハウスの登場です。五反田の一等地をめぐる地面師事件で55億円の損失を被った責任を取った?、かのように退陣したこの和田元会長。4月の株主総会で株主提案という形で現経営陣との戦いに挑むことになりました。

五反田地面師事件

4月の株主総会に向けて盛り上がってきそうですので、ここまでのおさらいを。地面師事件というのは2017年に起きました。地面師(詐欺師)グループが、五反田の他人の土地の地主や地主のアドバイザーになりすまして、第三者に売り付けるという手口で、積水ハウスから63億円(被害額は55億円)をだまし取ったという事件です。

その後犯人たちは逮捕されましたが、この事件、なぜ積水ハウスがこんな詐欺に引っ掛かったのか、事件の全貌が解明されないままでした。そして、この事件を調査した調査対策委員会が作成した調査報告書も公表されないままとなっていたわけです。

調査報告書

その調査報告書が昨年10月、週刊東洋経済にスクープされたんですね。それによると、この五反田の案件、決裁はまず社長から行われ、回議者には事後回付という形で行われています。社長が決裁しているので回議者である役員たちには忖度が生まれたということのよう。

で、問題は、当時の社長と決裁した役員全員が会社に残り、案件に直接関与してなかった当時の会長が追い出される格好になったということなんですね。その追い出された会長というのが、冒頭の和田元会長です。本来であれば事件の責任を取るべき人物たちが、謀反を起こし、逆に会長を追い出すという小説のような展開だったわけです。

和田元会長 復活の可能性

株主提案では経営陣の刷新を求めていて、和田元会長を含む11人の取締役候補があげられています。外国人も二人含まれていて、米国の投資ファンドの幹部だとか。ブラックロックと組んだのでは、などという噂もあるようで、、、株主総会へ向けてかなり面白くなりそうです。長くなったので今日はここまで。。。

RS(リストリクテッド・ストック) 譲渡制限付き株式報酬

6/13付け日本経済新聞、「変わる総会(3)役員報酬業績連動型の導入進む」という記事の中で紹介されていました。RS(リストリクテッド・ストック) 譲渡制限付き株式報酬を役員報酬として導入する企業が増加しているという内容です。記事では、トヨタや京セラが今月開催される株主総会で謀ろうとしていることを伝えてました。

役員への報酬制度については、コーポレートガバナンス・コードが「客観性・透明性ある手続きで報酬制度を設計し具体的に決定する」ことを求めています。譲渡制限付き株式報酬を導入する企業の多くが、「自社の企業価値の持続的な向上を図るインセンティブとなること」や「株主価値を共有できること」を導入の理由として表明しています。

ストック・オプションとの違い

kuniが若い頃は、役員報酬や従業員へのインセンティブという意味では、ストック・オプションが幅を利かせてました。なにせデリバティブ全盛期ですからね。全盛期=マーケットの絶頂期でもあったわけで、ストック・オプションで大儲けしたという先例の話はよく聞いたものの、国内ではあまり儲かった人はいないんじゃないでしょうか。

ストック・オプションは株価が権利行使価格を上回った場合だけ、経済的な価値があります。株価が下がってしまうと、価値がゼロなんですね。株価が恒常的に上昇する場面では非常に魅力があるんですが、最近のマーケットのように先が読めない時代には向きませんし、インセンティブにもならないことも考えられるのです。

これに対して、譲渡制限付き株式報酬は、割り当てられるのはあくまで普通株式ですので、報酬としていただいた後に株価が下げようが、その時点での 時価×数量 の経済価値があるわけです。もちろん譲渡制限が外れた時点で、株価が上がっている方が儲かりますし、儲けたいから役員は企業価値を向上させるべく、頑張るわけです。

時代を反映した選択

役員報酬の客観性や透明性がますます求められるという時代。とはいえ、株式市場(特に自社の株価)が右肩上がりで上昇するかどうか自信が持てない時代。そんな時代を反映した選択かと思われます。

おまけです。「譲渡制限付き株式報酬」でググってみたところ、自己株式の処分に関するお知らせがたくさん出てきます。自己株式を役員に割り当てるということですね。スキームの説明を読んでみると、どこの会社も、「譲渡制限期間中は野村證券株式会社に開設した専用口座で管理される」と書かれています。野村さんこういうところは強いですね。