ガバナンス 女性役員 シニアに成果給

昨日の日本経済新聞に掲載された二つの記事。「女性役員3割 達成を」と「シニアに成果給・ポスト」という二つの記事が総合一面と二面に掲載されました。二つ続けて読むとなかなか面白いなぁと感じた次第です。

女性役員3割 達成を

英国発の推進団体とかで、機関投資家を巻き込んで実現しようという動きだとか。この団体のことはどうでもいいんですが、コーポレートガバナンス・コードも求めているように、女性役員を登用する動きは強まっています。会社法の改正案には社外取締役の義務化が盛り込まれるそうですが、役員の多様化という意味で通じるところがありそうです。

しかし、女性役員を3割とは、これは難題ですよ。もちろん、業種によってはすぐにでも対応できるほど豊富に人材抱えている会社もあるんでしょうが、kuniが見てきた金融界はそんな人材居なかったですね。重厚長大産業をはじめとした古い体質の業界はどこでもそうなんじゃないかと。

仕事のできる女性ほど、さっさと結婚退職してしまい、子育てに。子供が大きくなってみると別の会社に復職しちゃう、、、みたいな展開たくさん見てきました。要するに、彼女たちに対して会社が真剣に向き合ってこなかったんですね。で、今更そう言われても、ないものねだりというか、人材が居ないんですよ。社外取締役に女性弁護士を選べば、一石二鳥。というレベルの発想が関の山でしょう。

シニアに成果給・ポスト

一方でこちらは、労働人口の減少という要求に対する答え。やろうと思えばいつでもできます。毎年毎年、能力の高いシニアが月額20万円ほどの報酬で継続雇用されていきますが、定年前に稼いでいた金額の1/3くらいです。ほとんどの人がモチベーションを維持できず、定年再雇用という形だけを維持しているにすぎません。当然処遇に不満のある人は他社に流れます。

間違いなく60万円以上の価値を生み出す社員であっても、なかなか60万円の処遇を得ることは困難です。前提として労働人口が枯渇することは理解できているのに、会社として行動が起こせないんですね。

確かに、ポストを空けて次世代を引き上げていくことも大切です。しかし、現場がいろいろアイデアを出したとしても、多くの場合が「前例がないから」という人事部特有の発想が邪魔してしまいます。その逃げ口上がいずれ自分たちの首を絞めることになるでしょうに。

60歳定年を65歳定年に引き上げ。成果給や新しいポストの導入など、いま自社で抱えている有能な人材を手放さないのが最初の一歩じゃないですかね。人材が居ないんじゃなくて、実際に居るわけですから、やろうと思えば出来るはずです。20年ほど前に女性に優しくなかった企業はいま、女性役員の人材不足を嘆いているところ。今シニア相手にまた同じことを繰り返しているんですね。

平成30年中の交通事故死者数について

1/5 日本経済新聞で、平成30年の交通事故死者数が過去最低となったことが報道されていました。2018年の全国の交通事故による死者は前年より162人少ない3,532人でした。これを読んで、警察庁のホームページで、統計そのものを確認してみました。

24時間以内の死者数

この統計は交通事故が発生してから、24時間以内に亡くなった方を集計しているんだそうです。つまり、集中治療室等でまる一日以上治療を受けた場合は、亡くなってもこの統計にはカウントされないということですね。

平成5年あたりからは、発生後30日以内の死者数についてもグラフが添えられていましたが、生データが提供されていないので正確な数値は読み取れません。24時間以内のデータよりも数百人多くなっているようです。

交通事故件数と負傷者数

死者数が最も多かった昭和45年を基準年としていて、この年のデータを指数:100として、その他の年と比較しているんですが、死者数は一貫して減り続け、平成30年は指数は21まで下がっています。つまり79%減少したということですね。

死者ではなく、交通事故そのものの件数を見てみると、ピークは平成16年になっています。この年負傷者数もピークを付けていて、指数でみると交通事故件数が133。昭和45年との比較で33%増加しています。負傷者数を見ても指数121。21%増加ですね。

こうしてみると、昭和45年をピークに死者数は減少してきたものの、交通事故件数は平成16年まで増加していることが分かります。まず、事故が発生した場合の衝撃を緩和するテクノロジーや、救命のためのテクノロジーが導入され、その後平成16年以降には事故そのものを発生させないためのテクノロジーが実装されていったと見ることができそうです。

月別交通事故死者数の推移

こちらは平成28年、29年、30年の3年分が集計されていましたが、やはり師走というだけあって、毎年12月が一番多くなっています。昨年で見ると、12月は410人で、最も少ない6月が235人。最も少ない月はこの3年間で2月、4月、6月となっていて、毎年違うみたいですね。

ついでにですが、去年12月の410人という死者数。月間データでみると28年12月の420人以来の400人超となっていて、約2年ぶりの高い数値になっています。

都道府県別交通事故死者数

都道府県別にみてみると、ほとんどの自治体が減少している、もしくは減少傾向を示す中、山形県、神奈川県、広島県が2年連続で死者数が増加していることが分かります。埼玉、千葉も明確な減少トレンドではないようで、人口の増加が影響しているのかもしれませんね。

以上、日経で報道されていなかった視点でまとめてみました。統計ってなかなか面白いです。

化粧品輸出 5,000億円超へ 日本経済復興のカギ

この記事も12/31日本経済新聞から。日本製の化粧品の輸出拡大が続いているという記事です。2018年の1月~11月の輸出額は前年同期比で44%増だとか。1年を通じて初の5,000億円台で、6年連続過去最高を更新することになりそうです。

インバウンド+アルファ

インバウンド消費(いわゆる訪日外国人旅行者の日本での消費のこと)だけでなく、帰国後もその商品をリピートしてくれているのが増加の一因のようです。今年も中国で日本製の輸出に弾みがつきそうな法律が施行されるらしく、さらなる売り上げ増加が見込まれるそうとのこと。この法律って何?

中国で化粧品を販売するためにはCFDA申請なるものが必要らしいのですが、その方法について大きな制度変更が行なわれるようです。登録手続きの撤廃や輸入港の制限撤廃、申請できる地区の拡大といった規制緩和が行われるのではないかという観測があるみたいですね(長くなりそうなのでかなりザックリ説明しました)。 資生堂、花王など。日本の化粧品製造販売メーカーの対中ビジネスに追い風となりそうです。

東京オリンピックと大阪万博の経済効果

大阪万博が決定して以降、東京オリンピックや大阪万博といった催しを高度成長期のイベントの焼き直しとする批判的な意見をよく見るようになりました。「当時の成功体験を持つシニアの短絡的な発想」であったり、「こうしたイベントが経済、産業に与えるインパクトは過去のモノとは比較にならないほど小さい」といった意見です。

確かに日本の経済、産業はあの当時とは大きく変化しました。しかし、やることが決まったんだからどうやって成功させるかを考えるべきじゃないでしょうかね。kuniとしてはこのところのインバウンド消費に注目していまして、さらに帰国後の継続消費にも期待したいところです。

前回との違い

前回と今回の違いはインバウンド消費+αだと思います。前回も多くの外国人観光客を誘致したと思いますが、今回は間違いなくアジアからの訪日客が爆発的に増加するものと思われます。日本が変わった以上に、中国をはじめとしたアジアの国々は大きく発展を遂げました。その富裕層たちの購買力は今更説明する必要はないと思われます。

欧米人にとっての日本商品とアジア人にとってのそれはおそらく違っていて、アジア人は先ほどの化粧品のようにインバウンドで手に取り、買い付け、帰国後もリピートしてくれるんですね。文化や生活様式が近いアジアの人たちだけに、より生活に密着したレベルで日本の商品の魅力を知るきっかけになるはずです。中国、インド、アジアの人口侮れませんよ。

日本の魅力的な商品はハイテク産業機械や自動車だけではありません。化粧品や食品に至るまで、いくらでもあります。ホスピタリティを軸としたインバウンド消費。そしてインバウンド+α、日本経済再興のキーワードのような気がします。

先端技術研究 電池、電力の考察

明けましておめでとうございます。

昨年8月からブログを始めまして、分からないことばかりでしたが、何とか毎日更新を続けてくることができました。読んでいただいてる皆さんに何らかのお手伝いができていればと思います。どうぞ本年もよろしくお願いいたします。

昨年最後 12/31 日本経済新聞一面は「先端技術研究 中国が先行 30テーマ8割で首位」という記事でした。まぁ、中国の躍進といったら、、、凄いことになってるんですね。掲載された一覧表を見てあらためて驚かされた方は多かったんじゃないかと思います。

加えてすべてのテーマにおける論文数で日本が1位になっているものがない。最高でも3位なんだそうで、これにはがっかりというか、危機感を覚えました。皆さんはどう感じましたか。もちろん論文の数だけではないんでしょうが、これはこれで一つのアプローチの仕方ですよね。

最も注目されるテーマ 電池

世界の研究者たちが最も注目している先端技術のテーマで、最も多かったのが「電池」に関するものだったようです。ベスト10だけみても全部で5テーマがランクイン。「ペロブスカイト」、「ナトリウムイオン電池」、「リチウム硫黄電池」、「有機薄膜太陽電池」、「電気二重層コンデンサー」という順でした。

やはり、次世代の電気自動車やロボットなど、新しい産業の要となる新技術ということですね。これに加えて脱炭素を目指す世界の方向性というのもあると思われます。電池というカテゴリーになっていますが、ペロブスカイトは新しい太陽電池の材料ですし、有機薄膜太陽電池もあり、再生可能エネルギー関連技術も2テーマ含まれています。

日本が抱える喫緊の課題

以前、洋上風力発電の記事でも書きましたが、いま日本は原子力発電で躓き、石炭火力等に頼っている状態です。震災による不幸な出来事ではありましたが、時計の針を戻すことができないのも事実です。であれば、その不幸を味わった日本でしかできない技術革新をしていきたいものです。

ただ、いくらカッコイイこと言っても、kuniにはそんな技術も知識もありませんので、ブログを通じて少しでも何らかのお手伝いができないものかと考えております。日本が抱えている喫緊の課題は、原子力発電に代わる再生可能エネルギーを如何に速やかに手に入れるか。今年もこのテーマについて深掘りしながら、皆さんにご紹介していきたいと思います。

TATERU 特別調査委員会 調査結果報告書

今年9月に設置されたTATERUの特別調査委員会が、12/27に調査結果報告書を公表しました。建設資金の借り入れを希望する顧客の預金通帳残高を水増しし、実際よりも多く見せることで、銀行の融資審査を通りやすくしていたという事件です。

本調査の留意事項(調査の前提)

冒頭の留意事項にはいくつか気になることが書かれています。
・入手した資料等から確認できた内容の全てを網羅的に記載したものではないこと
・入手した資料はTATERUから提供を受けたものであり、メールサーバや個々人のメールを独自に全て収集し精査したものではなく、限定的なものであること
こんな感じです。

ほかにも、検討対象となった資料の署名・押印は真正であることを前提としているとか、TATERU側が提出した資料が基本的に正しいことを前提としているとか。社員に対するヒアリングも営業系社員に限定されていたりと、読んでいて全体的に適切性や十分性において疑問を感じさせる内容でした。

第三者委員会日弁連方式

当ブログでも何度か取り上げてきたスルガ銀行などの場合は、日弁連方式で実施した旨が冒頭で書かれています。日本弁護士連合会が公表している「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に即した第三者委員会の運営のことで、企業からの独立性を強く意識した運営方式です。

調査報告書の事前開示は一切せず、企業の現在の経営陣に不利な内容も報告書に記載します。もちろん、真に正しい報告書が出来上がるのであれば、この日弁連方式以外の方法でも全然かまいません。しかし、「会社のことを本気できれいにして再生したい」と思うなら、今のところ日弁連方式を選択すべきです。

TATERUの特別調査委員会の委員も濱法律事務所とTMI総合法律事務所の弁護士となっていますので、委員会設置に際して日弁連方式の選択についての提案はあったものと思われます。しかしながら、その選択はされなかったということのようです。

調査結果

と、こんなふうに、前提がかなり怪しいなぁ、って感じではあるんですが。調査の結果、「営業部長以下31名の従業員が不正に関与し、2,269件の成約物件のうち350件で改ざんがあった」となっています。同時に営業担当常務の辞任、他の取締役の役員報酬減額も発表しています。新聞等ではここの部分くらいしか報道されてません。

調査結果や改善策を見ても、納得感のない点がいくつか。まず、部長より上の経営層には何の責任も認められなかったこと(つまり部長以下の判断で行われたこととして、トカゲのしっぽ切りになっていないか)。そして、「上場前から不正が行われていて、それを発見した際にも、経営が適切な対応を取っていなかったこと」に関する評価の部分。

今年は上場直前に上場申請が取り消される事件が何度かありました。TATERUも上場審査が適切に行われていたら、上場延期、もしくは申請の取り消しとなっていたかもしれません。上場により莫大な創業者利益を得たCEOや役員にとって、今回の減給なんてゴミみたいなもんですね。